・外伝『 教 師・佐藤 』
・外伝『 噴上瑠獅覇(ルシファー)』
シンに隠している事が一つだけ。
アレは彼があたしを求め過ぎてやった事だから何も言わずにいる。
シンはようやく動ける様になったみたいで、あたしと外に出るようになった。
一人家にいる時は、キャラメル・ミルクで彼の造型を生み出す。
表情の無い彼。活きていない彼を見て、涙が今宵も溢れ出した
オリジナルスタンドバトル拾参之噺
ふと瞬間に考えるのはいけない事かしら?
いつでもシンの事だけを考えて恋をしていた頃の自分が羨ましい
シンはあたしの絶対。
絶対の彼氏。
あの人は?
永久…。
不完全な永久の愛。
恋かもしれない。
どちらとも呼べない不完全な思い出。
「デュカ…秀丸は…」
そう言いかけて何も言えなくなるシンは優しい人。
あたしを思って口に出せない。彼を思って言葉に詰まる。
きっと、本当にあった事を話してもシンは受け入れてそれでも彼の死を悔やむと思うけど、やっぱり口に出せないあたしが居た。
―力が欲しい、あたしはもう間違いたくない。
守れないなんて嫌だから、大切な人が死んで行く姿を見たくない。
そう思いながら、あたしはシンの手を強く握りしめた。
「シン?」
手を握りながら問いかけるとシンはこっちを見る
「大好き。」
あたしはそっと彼に口付けた。
その夜も、独り部屋で彼の造形を眺めた。
―君の心には僕への恋心の欠片が残っているかもしれない、だがそれは単なる作られたものだ
そう言っていた彼の言葉を今も信じ切れず、彼に寄せている思いは消えずに残っている。
その上で、感じたことは。シンを守りたい事だった。
砂に還る手を手に入れたシンの傍にこれからも傍に居たい。
けれども、あたしのスタンドではシンを守れない。
「シンを守りたい…。」
そう呟いた時、窓の外から何かがぬらりと入ってくる気配がした。
「誰!?」
開かれた窓から侵入して来たのは一匹の蛇、だった。
「アカマタ…」
アカマタは静かにあたしに近づくと、キャラメルミルクと同化した。
その時かすかに聞こえた声は、決して幻聴ではないと今も思っている。
―僕は、ここに居る。
その声は、彼の造形から聞こえた気がした…。
BAR『Bulls・Eye 』にはスタンド使いたちが集まっていた。
ジョーイ、バーレル、林檎、静夜、もう一人知らない男、
そして女帝。
バーレル
「ドリームチームって訳だ」
静夜は帰らなかった。
トメと出会い、全てを知ってしまったから。
彼らの目的がサトヨシを倒すことである以上、
先生や揚蝶さんを敵に回すことになる。
それでも僕らは、
来なくなってしまった未来を取り戻さなくてはならない。
トメは全体を見回すと「壮観ですね」と言って
膝の上の猫の背を撫でた。
ジョーイ
「そのサトヨシってのがナガセの敵なんだろっ!
回りくどいことしてねぇで、さっさとそいつを倒しちまえば
いいんじゃねーのかよ!」
トメ
「いけません、あの方を追い詰めて力を使わせては、
いつ何時、世界が崩壊するとも限りません、事は慎重に進めなくては」
佐藤たちを懐柔できないのはその点だ
近すぎる彼らに真実を知らせるのは、
サトヨシに計画を悟られる危険がある。
ジョーイは「ちぃ」と舌打ちをする。
バーレル
「ジョーイ、静夜、お前たちの仕事は、
決戦までにサトヨシの周りのスタンド使いを狩って、
邪魔が入らないようにしておくことだ」
それはシバミ達も含む、
これまでの戦いで大分数の絞られた
全てのスタンド使いが対象だ
そして、進化した静夜のスタンドなら、
乱暴をせず無力化できるハズだ。
反してジョーイは
「一月くらい動けない怪我を負わせば手っ取り早いな」
そう言ってやる気まんまんだが……。
トメ
「アナタ方がこのチームのエースです、頼りにしていますよ」
ジョーイ
「世辞はいらねぇ、俺にはババァがエースだって解ってんだよ」
静夜が「行きますよ」とジョーイを促すと、
ジョーイは「生意気なガキ」っと悪態をつく。
可能性を秘める若いコンビ。
ジョーイと静夜がBERを後にする。
バーレル
「さてっと、面倒臭ぇけど俺たちも行くかね」
バーレルと、もう一人の男が立ち上がる。
彼らの役割はケイの仲間たちと共闘し、信頼を得ること。
トメ
「任せますよ」
バーレル
「ああ、アンタがいるから俺も安心して行けるぜ」
林檎
「バーレル様、お気をつけて」
バーレルは林檎を見てニコリと笑うと、BERを後にする。
トメ
「ここからは地獄になるねぇ」
トメはこの繰り返しの輪廻を断ち切る為、
地道に行動を起こしていた。
そしてついに戦争は始まったのだ。
膝の上のドルチが「ニャー」と鳴く。
トメ
「よしよし、アンタのせいじゃないよ」
林檎
「これから敵になるというのに、どうしてあのお方の部位を
佐藤様に渡してしまわれたのですか?」
トメ
「あの方が敵に回れば私でも敵わないかもしれないねぇ」
トメは「フフ」と笑う。
林檎
「お婆様!」
トメ
「いいですか林檎、この戦いの目的は、
捻じ曲がった輪廻を断ち切ることにあります」
「捩じ曲げた針金は戻しても完全な直線にはならない」
それを正常な状態に戻せるのは
「分解して再生する能力」
タチバナがサトヨシに引かれて側にいるのは、
世界が導いた「崩壊へのカウンター」そして「正常化への可能性」
「分解して再生する能力」 それの使い方が鍵だ。
トメ
「そして、スタンド能力は本人の意思でしか発動しない、
例え私たちの強大な敵になろうとも、あの方には
自分の意思で、正しい選択をして貰うしかないのですよ」
しかし、世界は今まで救われることは無かった。
それは、彼が「愛する人の命」と「世界の未来」を天秤にかけて、
正しい判断を下せなかったからだ。
そして、今回もきっと……。
しかし、繰り返しながら世界は少しづつだが形を変えている。
そこに賭けるしかないのだ、足掻くことを続けるしかない!
トメ
「……それを導くのが、私の最後の仕事だと思っていますよ」
そして、志半ばで自分が倒れた時、
それを遂行するのは林檎の勤め。
林檎は覚悟を込め「はい!」と返事をする。
バーレルたちがケイの配下と共闘し、サトヨシの戦力を削ぐ、
しかし、例え目的が同じでもケイを野放しにはできない。
トメと林檎の分担は、「ケイの暗殺」
そして、その兵隊を取り込む算段はしている。
ジョーイと静夜はトメに渡された、
この町の残る全てのスタンド使いが記されているメモを広げていた。
ジョーイ
「あのババア何でも知ってやがるな、気味悪ぃぜ」
静夜
「それだけ、苦労なさってきたんですよ」
「まず、コイツだ」そう言ってジョーイはシン、デュカを指差す。
静夜
「友人じゃないんですか?」
ジョーイ
「ああ、マブさ。だからこそ力ずくでもスタンド引っこ抜いて
この戦争から一刻も早くリタイアしてもらう」
あいつらには普通が似合ってる。
幸せで平和な、恋人らしい生活がよ、
そうだろD・M・Q?
静夜
「解りました、全力で二人を狩りましょう」
ジョーイと静夜がシン達に迫る。
- 「静かな夜だね。タチバナ」
「エエ……」
夜間のキャンパスにはこの二人しかいない。ソマは『散歩してくる』と言ったきり、どこかへ行ったまま。
「月が……紅いね」
「ヒカリノ、クッセツデスヨ。キレイデスネ」
「ふふ……でもね、ある人達はこう言っているそうだよ」
――紅い月夜は良くない日。俺たちの知らない所で、血に塗られる計画が進んでれる
・・・・
「ソノモウソウニ、カンドウシマスヨ」
「そうかな?僕は合ってると思うよ」
「サトヨシ?」
月光に当たり、サトヨシの顔は妖しく輝いている。
その顔は、タチバナがいつも見ている顔では無い。
「ドウシマシタ?サトヨシ?」
「凄く、気分が良いんだよソマ、君はどうだい?」
「……」
いつの間にかソマはそこにいた。月に対して背を向ける恰好をしているため影がかかり、表情は見てとれない。
「俺はね、君の心を知らずに歪めてたらしいよ。この世界でも、君は協力してくれると思ったのに」
ソマは顔を上げ、吐き捨てるように言い放った。
「君は……歪み、曲がってしまった。私は、盲目だからこそ、“魂の進むべき道”が分かる。今のサトヨシ……君は」
螺曲がっている!!
「はははッ!!ソマ、面白いよ、面白いよ君は!」
「今、私の力では君を、世界を守ることはできないだろう……だが!」
ナイト・ヴィジョン!
「うッ」
サトヨシの目をジャックする。
「タチバナを……構築者を、“希望ある者達”へと会わせることはできるッ!」
タチバナを抱えて、ソマは夜のキャンパスを疾走した。道は、まだ歪められていない。彼らの向かう道は、まだ……
「ふふふ……分からせてあげるよ。“俺が世界を構築する”ということを……」
サトヨシはゆっくりと、後を追った。
とある場所に男が立つ。
(俺はよ、お前が嫌いだったぜ、チャーの旦那)
その男は、存在が消えてしまった筈のチャーを覚えている。
そして、サトヨシを知っている。
コウを知っている。
シバミを知っている。
ケイを知っている。
トメを知っている。
シンを知っている。
(自分の感情のまま動いて、よ。
そして正しいことを普通にしやがる。違うな、普通にする男――だった)
そこは、チャーの存在が消された場所。
サトヨシ本人すら解らない存在を理解する男。
(だけど、消えてほしくは無かったぜ。
嫌いな分だけ、尊敬していたから、な。
俺は、そういうところで失敗するからな)
見上げた空、そこには紅く輝く月あった。
(今回は、遅いな。
コウ、お前の仮説は正しかった。
お前がアカシックレコードを覗かなければ、まだまだ後だったかもしれない。
サトヨシを知るものが増えれば、サトヨシというこの世界は危機感を覚え。
以前のサトヨシを消す。
そして
全ての能力を、サトヨシ“本人”が使えるようになる―――
そして、サトヨシはこの世界がなんども繰り返しているとは知らない。
俺達がこの輪廻から抜け出せるかどうかは、これからにかかっている)
「サトヨシを殺す」
(進化した存在、そいつらが倒せるキーワードになるはず、だ。
今回増やした選択肢はケイを進化させ、ケイに前回のことを教えたこと。
シンを助けた事)
ケイの能力“ゴスペル・オブ・シン:アルターコール”
シンの能力“JITTERIN’JINN ALTERATION”
破壊の力、創造の力。
これが俺が握る鍵だ。
(しかし今回は誤算も多い。
死せる者が、生きている。
スタンドだけが一人歩きをしていること。
それらは、捻じ曲がった世界を現しているのかもしれない)
携帯を握り締める。
婆さんも動き始めている頃だろう。
互いの接点を減らし、極限までサトヨシに悟らせない。
その為、お互い殺し合いをすることもあった。
それでも俺達は停まらない。
この停滞した世界を抜けるために、停まるわけには行かない。
俺は、この世界を忘れない。
地獄。
繰り返される地獄。
消える仲間、増える仲間。
その、全てを護る為に。
サトヨシ、お前を殺してやる。
男の名は『クツケイ』
進化する矢に貫かれた一番最初の存在。
【本体:クツケイ/スタンド:ハイブリッド レインボウ】
?????:スタンドを無効化する(自分を含める)
…………
「デュカ。」
「君の声を…。」
「聞かせて欲しいンだ……。」
秀丸さんの声が聞こえる。
「秀丸さん…。」
「秀丸さん……ッ。」
肩が震える。
デュカは、押さえ切れなかったッ!
「『秀丸さぁぁぁ ぁぁ ぁぁぁ んッ!!』」
「遭いたかったッ!」
「忘れられなかったッ!」
「私ッ!
『秀丸さんの 事 が ッ! !』」
遮るは、優しい声…。
「『デュカ…。』」
だから、言い切れなかった。
余りにも、優し過ぎたから……。
「デュカ…。」
「時間が無い。」
「『君は 打ち倒さなければ、ならない。』」
「ネジ曲がった世界が、生み出した、『最悪の不幸。』」
「『 弓矢』、『 赤石』、『 石仮面』を『 母』とする『 少年』。」
「『魔王……。』」
「『 噴上 瑠獅覇(ふんがみ ルシファー)を。』」
…………
包帯男だ。
煙を挙げて歩いている。
それは『 波紋傷』。
ジョーイの蘇生は、『死へのカウントダウン』であった。
吸血鬼と化した『 八手』の体液を受けた、『 隕 鉄 』はッ!
『 屍生人 体質』へと、変化をし続けッ。
その身、波紋ッ
溶かされ続けて居たッッ!!
隕鉄は思い返す。
殺されていたのだ。
既に。
俺は、『 少年』を許せなかった。
俺は少年を殺そうとした。
だが、殺せなかった…ッ!
少年は
『既に、殺した。 恩師・佐藤の 父 』を、盾にしたからだッッ。
少年は、去って行った。
『捩じ切れた 破壊』を、残して……。
俺を知るスタンド使いは、皆俺を疑ったッ! だがそれ以上に『 自分が許せ無かったッッ! ! 』
あの『 邪悪なる 存在! 強力(石仮面)の力を得た、 スタンド 使いを、 野に放ったッッ!! 』
『 己 の 甘さ がァ ー ッッ !! 』
………
そして。
その少年の名は。
『瑠獅覇(ルシファー)』
この世に『 地獄を作る者』。
それは、愛する者同士が、『 悲しみの中、 傷付け合う世界 』。
魔王は、『本当に、最小限の介入』で、それを実行し。 『 地獄化』を進行させている。
地獄へ沈んだ僕が、
数刻だけ、話せるのが、何よりの証拠さ。
そして……。
幾つかは『 もう手遅れッ!』
『 魔王が、コウを殺害』した事により、『最早、歯止めが効かない状態になってしまったッッ!! 』
『 地 獄 の幕開けが始まってしまった ン だ ッ ッ! ! 』
『 本当に、 不幸な事が 、これから 始まる ッ ッ ! ! 』
『デュカ!』
『君だけは、 知って居て ! ! 』
『不幸を、悲しンでも良いッ!』
『でも、 憎まないでッ ! 』
『間違わないでッ!』
『 本当 ニ 、 倒サナケレバ なラナイ テキ ヲ ッッ 』
伝エテ!
シバミ タチ ニ!!
秀丸の声は消えていった……。
ジョーイ
「おぉらぁっ!!」
ジョーイが吼える!
翌朝にジョーイは早速シン、デュカを呼び出し、
戦闘、いや強奪は唐突に始まった。
シンの進化した能力は非常に強力だが、
戦争ではない決闘において勝敗を左右するのは
威力ではない、経験と覚悟だ。
喧嘩慣れしていないシンに比べて、
これまで復讐心でスタンド使いを追い立ててきた
ジョーイの狩猟本能は圧倒的な圧力と速力だ。
決定的な本能の差、戦闘神経の差だ。
ジョーイは風に乗り、地面を滑るように回り込み、
宙を舞い、苛烈に攻め立てる。
その獣の様でいてしなやかで華麗な動きは
ム-ンライダーをも髣髴とさせる。
ジョーイ
「ババァがいなけりゃ、オレがエースなんだぜっ!」
ジョーイの風を纏った拳を
シンは「絶対に壊れない腕」でガードする。
しかし、そんなことでは防げないのだ。
どんなに硬い盾を持とうと、
ジョーイの突進を支える足腰はシンには無い。
吹き飛ぶシン、受身を取れるわけも無く
地面に叩き付けられる。
ジョーイ、隕鉄、秀丸、その他の
戦いに身を置いてきた人間の強さを
見せ付けられる結果になる。
一方、静夜もけして場馴れしてはいないが、
男子としても優れた運動神経と、戦闘向きのスタンド能力で
か弱い女子であるデュカを追い詰めるのは容易なことだ。
シン、デュカは戦闘する脳でも、肉体でもないのだ。
ジョーイ
「だから!テメェらにスタンドなんて持たせてられねぇ!!」
静夜
「手荒な真似はしたくありません、
ただスタンド能力さえ手放してくれれば」
それが一番安全な解決法だと説得したのだ、
少し前の二人なら二つ返事で納得しただろう。
二人で幸せに暮らせたらいい、
二人がずっと一緒にいられるなら何もいらない。
危険になんて巻き込まれたくない。
しかし今は事情が違う。
シンはそれをしたら両腕を失う。
そしてデュカは、
「この力を手放せば、
もう秀丸さんの声を聞くことはできなくなる」
そう考えていた。
二人でずっといられたらなにもいらない。
そのハズだったのに。
二人は説得に応じず、反抗した。
デュカ
「シン!シン助けて!」
当然、シンにそんなユトリは無い。
それどころか、デュカを怒鳴り散らした。
シン
「オマエのフォローが悪いからっ!!」
デュカ
「怒鳴らないで!どうしたのシン!?」
ジョーイは強い、しかしシンも不調だった。
苛立ち、集中力が無い。
シンは知っていたのだ、いや知らされていた。
デュカと秀丸のことを。
ある日、ケイという男が訪ねてきた。
その手に、コウに録らせた生々しい証拠の映像を携えて。
シンは若く、
デュカを生涯のパートナーとして疑ったことがなく、
アニメのヒロインを愛してきた彼にとって
清廉潔白であることへの憧れはとても強くある。
自分をヒーローだと、デュカをヒロインだと、
そう信じていた。
秀丸のマネキンを部屋に飾っていて、
それで?助けてシン?なんだそりゃ?
ワケワカンネェ、キモチワリイ
アア、キモチワリイ、キモチワリイ
キモチワリイ、キモイワリイ……。
シン
「キモチワリイ、キモチワリイ、オンナ」
シンが突然嘔吐する。
「シン!?」駆け寄るデュカ
シン
「触んなぁぁぁぁぁぁっ!?」
デュカを跳ね除けるシン。
ジョーイ
「…オマエら、どうしちまったんだ?」
期待が大きければ大きいほど失望は大きく、
愛が深ければ深いほど絶望は大きい。
ハレルヤ、嫉妬は七つの大罪の一つ。
ハレルヤ、それは許されざる悲劇
ハレルヤ、嫉妬は人を狂わせる、何よりも強く、オカシク。
ケイ
「助けてあげようか?」
いつのまにかシンの横にケイの姿が現れる。
ジョーイ、静夜は戦慄する。
ケイ
「キミが、僕の申し出を受けるなら
手を貸してあげるよ」
信じられるものは自分だけ、
頼れるものはもう、この「JITTERIN’JINN」しかない。
失うわけにはいかない。
シン
「ああ、オマエの仲間になってやる
だからコイツら全員ぶっ殺すのを手伝ってくれ」
堕ちた!
弱い女は要らない、進化したシンのスタンドさえあれば。
デュカがシンの名を叫ぶ。
しかし、シンの目に彼女の姿は映らない。
シン
「オマエは死んで、秀丸とでも一緒になれよ」
ケイ
「いいだろう、恋人のフリをしていた獣、
友人のフリをしていた獣、全部地獄に落とそう。
僕とキミの聖なる力で」
ジョーイ
「ちっ、予定より少し早ぇがな、やるぞ!静夜ぁ!!」
…二人で幸せに暮らせたらいい、
…二人がずっと一緒にいられるなら何もいらない。
シン
「あー…あーあ、皆殺しだ…」
ハァッハァッ……
闇夜を疾走する男と、“人間のような者”を背中に乗せて走る犬。
異質な組み合わせだ
「タチバナ、次はどこを曲がれば良い?」
「サトヨシ……」
「くそッ」
無気力、脱力、虚弱、薄弱。ありとあらゆる物が、“再構築者”の体を、心を蝕んでいく。
『限界があるな……感覚とマニエルだけのナビじゃあ、逃げ切れるわけが無い』
「ウォン!」
「分かっている」
迫ってくる足音
闇夜へと誘う笑い声
ラビリンスウォール
「君たちは『永遠の迷宮』に迷いこんだよ」
「どんな場所にも出口は有ると思うかい?」
「否。出口なんて無いんだよ。全てが始まりであり、終わりの無いまま繰り返すのさ。」
俺 の 手 に よ っ て ね
螺曲げられた概念
もはや、道すらも歪んで行く。
そう、ソマは感じ始めていた。
「ソマ、諦めなよ。この建物に出口なんて無い。君はもう……終りだ」
いつの間にか、サトヨシは背後にいた。
艶やかな顔に笑みを浮かべ、楽しむかのように……
振り降ろされる拳
月明かりも消えた
まるで、希望が無くなったかのように
「タチバナ、君はいつも邪魔をしてくれるね」
「サトヨシ、ヤメルンダ」
タチバナは立ち上がった。拳をブルースが受け止める
「希望を消す訳には……いかない」
ソマは自分の下半身を無理矢理分解させ、タチバナに接合した。
体組織を分解させての接合。当然、拒絶反応も出る。
「一分だ。タチバナ、充分な時間だろ?」
向かい合った二人には、昔の面影は無かった。
JITTERIN’JINN ALTERATION…それは、何のための力だったのか。
「シンッ!!」
デュカの悲痛な叫びに、ほんの少し、ほんの少しだけ…。
シンは躊躇う。
しかし、ケイは許さない。
「シン?
君がやりたくないというのなら 僕は強制はしないよ
でも君がやらなくても この『僕』がこいつらを送ることは既に決まっているのだからね」
「はッ! だあれがてめえなんかにッ やられるかよおおおお!」
吹きすさぶ黄金の風、それらは真空の刃となりケイを切り裂く、はずだった。
「『アルターコール』」
真空の刃はケイにあたらず、それどころか
「まずは1発」
何故かケイはジョーイの目の前にいる。
「動くのは早いみてえだがなあああ!! スタンドにパワーが足りねえなッ!!」
(おかしいぞッ あいつはジョーイさんから10メートルは離れていたはずだッ それがなぜこんな近くに)
「後9発」
「あ?」
「私の能力 ゴスペル・オブ・シンの能力
貴様は後 私に9回触られたら 電子レンジに入れた卵よりも醜く破裂する
せいぜい恐怖することだ 神の力にな」
「ジョーイさんッ離れて!」
「君の能力はねえ 『刈り取る』ッていうのは確かに恐ろしいが
止めてさえしまえばッ どうということはないッ」
大振りな神城の攻撃よりも先にケイの攻撃が体に触れる。
「おいッ! ガキッ!」
よしっ!入った!!
「え?」
(??? な なんだ? ケイはッ!?)
「『戦ってる最中にとまんなッ!!』」
「え??」
停まってなどしていない、神城は確りと腕を振り下ろした。
しかしそこにはケイの姿はすでにない。
ケイを探す。
ケイはシンの真横にいた。
「シン 君の力を見せていただきたいのだが いいかい?」
シンは答えない。
「…いつかは こうなるんじゃないかなって思ってたんだよな。
そりゃあ 昔からの付き合いっていっても ただの幼馴染だし」
ケイはまったく微動だにしない。
聞き入っているという様子ではないのだが。
「だけどよお あれはねえよなあああああああああ」
「シンッ! あれはッ」
「アレはなんだよッ!! デュカ!!! なんか言えるなら言ってみろよ!」
「あれは…」
「もう やめておけシン。 彼女に弁明の余地はないよ
全てを消し去りたまえ 彼女の作ったその『腕』なら出来るだろう?」
「…さよなら、ジョーイさん。
『JITTERIN’JINN ALTERATION』…」
その声と共に腕が黄金の光に包まれる。
「もう 全てを消し去ってくれええええええええええええええええええええ」
腕から放たれた光が、神城、ジョーイに放たれる。
(この 光ッ
この光に触れてはいけないッ)
「くそッたれえええええええ 風よ!! 俺の周りに集まれえええ」
しかし、集まったのは脆弱な弱い風だった。
(一か八かだッ)
「『スレイヤー』ッ!! この光を刈り取れッ!!」
光に突き刺した鎌が、押し込まれるッ
しかし、黄金の風が追い風となり手助けをするッ
「ガキッ こ ら え ら れ る か ッ」
「僕の名前は 『神城』だッて 何度言わせるんですかッ!!!」
「神城ッ!」
「こ ら え ら れ ま す ッ」
その一言と同時に、光は消え去る。
しかし、それはシンの放った一撃のほんの一部分でしかなかった。
あたりの、ビル、家…その全てが砂へと変わっている。
「シイイィィィィンンンンンンンンンッッ!!!
なにしたかわかってんのかてめえええええ」
シンは俯き、顔はうかがえない。
「シン?
どうして デュカを攻撃しなかった? もしや
まだ『未練』があるとでもいうのかね?」
びくっと、体を震わせる。
同じ年といえども、この貫禄の差はすさまじい。
「では デュカ君。
今まで シンと仲良くしてくれてありがとう
これからは私がいるから気にせずに
先に『逝』ってくれたまえ」
静かに、デュカに近づきそして触れる。
が、まるで立体映像のようにゴスペル・オブ・シンの腕は空に触れる。
「これは…」
「クツケイッ!! 貴様かッ!!」
ほんの少し離れた位置にクツケイが景色を揺らめかせ顕れる。
能力による同化をしていたようだ。
「ケイよお 俺はお前にいったよなあ シンとデュカには手をだすなってよ…」
すこしずつ、毛が逆立つ。
「手など出してはいないさ 私の仲間になってほしいとお願いをしているだけだ
それにその子は私の信ずる神が許してくれないことをしたのだよ?
君との約束よりも神を取るのは当たり前だろう?
そしてッ
君にもここで死んでもらうッ
『アルターコール』ッッッ!!!」
止めた時間の中を、ケイが近づく
(デュカを抱えているのは私にとっても好都合。
ばらばらに逃げられては困るからな。
クツケイ 君には感謝しているよ 神の前に今一度立たせていたのだからなッ
しかし その娘の能力と シンの能力 危険すぎる…
だからこそ今ッ 消させてもらう)
余裕の笑みを浮かべる。
後ほんの少し、その距離。
しかし、主人の危機に反応したかのように『ハイブリッドレインボウ』の右甲から虹色の光が漏れる。
「『C a n y o u f e e e e e e e e e e e e e l ! ! ! ! 』」
「なんだとッ!? 時は止めたはずだッ」
ラッシュに吹き飛ばされながらも、ケイは冷静に考える。
(この程度 私のスタンドには何の問題もないッ
それよりも重要なのは この男の能力を知ることだッ)
「クツケイ!! 触れさせてもらうッ!!
あの男ッ!!!!!!!!!」
そこに残っているのは、クツケイの能力により造られた偶像だった。
「まあ、いい
あいつはハイネか松葉に追わせて能力を見極めてからでも遅くはない。
まずは、『刈り取る』男を確実に処分しなくては」
自分にゴスペル・オブ・シンで触れる。
5秒。
ケイは動き出し、シンと共に神城を―――――。
皆、動きを止めた。
ケイも、シンも、ジョーイも、クツケイも。
デュカと静夜は、目も当てられない程、嘆き悲しんでいる。
皆、その男を知っていた。
道は違えど……。
皆、その男を『 敬愛』していたのだ。
皆、その男の『 教え子』だったッ!
『教師・佐 藤 』
その左半身は『 消え去って いた。』
佐藤は、口を開く。
「教え子達よ……。」
「時間が 無い。」
「最後の授 業を、 行 う。」
「『 真 実 』」
………
噴上 瑠獅覇(ルシファー)。
永遠に『11歳に辿り着けない 人知を超えた、 スタンド使い 。』
この私、佐藤は。
瑠獅覇の唯一の友達である。
彼は『 純粋だった。』
幾度となく『 10歳を繰り返す 孤 独』。
悪さは、寂しさの『 裏 返し。』
瑠獅覇が、11歳になる前 日。
私は、瑠獅覇と、『 約束 をした。』
また、会おう瑠獅覇。
私は、教師になる。
いつの日か。
再び、出会う日を信じて……。
『私は 、教師 になるッ!!』
12時の鐘がなり、
瑠獅覇は、消えて行った。
消え行く、瑠獅覇は、満足気だった。
………
左手が消え去った。
私の息子・サトヨシのスタンドが、暴走したのだッ!!
ショックの余り、家を飛び出すサトヨシ!
私の父は、『この力の 恐ろしさ を悟り』、
『 サトヨシ殺害』を、決意して、サトヨシを追って行くッッ!!
止めなくては!
だが、我が身を襲う『 鈍痛』酷く、
身動き一つ 出来やしない!!
このまま では!!
『佐藤……ッ!』
『誰だよッ!』
『お前ぇーを 泣かした ヤツ は よぉーーッッ!!』
憎しみに 身を震わす少年。
瑠獅覇 が、 私の目の前に現れた。
………
私は、誤ってしまった。
父を止めてくれ。
じゃあなく。
『サトヨシを、 守って欲しい。』
と、言ってしまったのだ。
瑠獅覇は、『 私の 父』を殺してしまった。
大いなる『 憎しみ』と共に。
瑠獅覇と、巡り逢えぬまま。
月日は、流れ行く。
瑠獅覇の、人知を超える『 生まれながらの 能 力。』
『感情が、 世界に干渉する能力』をしらずに。
佐藤は。
最早、左 顔面 部分のみである。
誰もが、目を放す事が、出来なかった。
誰もが、耳を背く事が、出来なかった。
佐藤は、力を振り絞り……。
「『最後の 授 業』」を続ける。
………
私の体が、このようになったのは、
数日前の話だ。
視覚される事だけが、消えて居た 私の左手が、ゴッソリと『 消えて 無くなり』、左腕、左下半身へと『 侵食』が、開始されたのだ。
侵食をされる度。
私の脳内に、 真実が、流れ来る。
まとめるに、
『真実』は、こう言う事だ。
・瑠獅覇 の 目的は、『 サトヨシを 守る事である。』
・その感情は、 『 サトヨシの敵への 憎しみ。』
・『 負の心 で、ある。』
・感情は『 俺ヨシ の力 の増大に 影響。』
・かつて、消え去って私の左手が、『 侵食された』のは、その影響 である。
・このままでは、世界は、 俺ヨシ の 力の増大に伴い『 地獄 と 化す』だろう。
・止める手段。
・サトヨシ、瑠獅覇のどちらかを、『 止める事』。
・消え行く私に
・それが出来ない事。
・何よりも、心残りである。
・愚痴だな。これは。
私の 授 業は、以上だ。
唇のみの佐藤は、
『ニコリ 』と、微笑んだ。
………
ある者は、涙をし。
ある者は、歯噛みをする。
皆、感じているのだ。
目の前の男が、 誰 で、あるのか、
『 解らなく』なっているのを。
皆、痛 感していたッッ!
自分は、人知を超えた力を、持っているッ!
だがッ!
今、目の前で、起こり行く事に『 余りに 無 力 ッッ!!』
『余りに 無 力 である事をッッ!!』
そんな皆を、勇気 付けるように。
佐藤は、
力 強く、言い放ったッッ!!
………
「この世で、 一番大切なモノは……『 愛 』である!!」
「愛を忘れるが故。 『 悲しい事が、起こるのだ。』」
「君達は、それぞれ違った道を行き。」
「互いを傷付け合うかも、知れない。」
「だが。」
「例え、傷付け合う事になろうと。」
「『尊敬 の 念』を持って競い合い。」
「互いを『 愛し合うのだぞ。』」
「『愛する生徒達へ。』」
「『君達は、 卒 業 だ。』」
男は消え去った。
誰も、その男が誰であったか、解らなかった。
──数日前
白い月明かりが差し込むだけの照明が照らすアトリエに、
ヘンテコなシルエット。
それは、タチバナの上半身を抱きかかえて、
彼が絵を書くことをサポートする杏子。
下半身が無い、鼻から上も無い、
不気味なそれを甲斐甲斐しく抱きかかえる少女の絵は、
奇妙であるが、美しくもあった。
普段は少しでも触れれば鬱陶しがるクセに、
絵を描いたりする時は、こんなに密着しても平気なんだな…。
杏子
「タチバナさん、一旦ストップ、腕がつかれた」
タチバナ
「だらしないですよビッチ、絵はもうすぐ完成だというのに」
二人は椅子に腰を掛け向かい合う。
杏子
「タチバナさんの絵、マジで凄いねっ!
アタシがもし同じ色で、同じ線を同じ風に引くっしょ?
でも、この赤は出せないって、うん、分かるよ」
それは濃く深い黒雲、その中にある真っ赤なエネルギー、月。
雲が切れ間に向けてグレーにグラデーションしていく切れ間を、
赤い月明かりが裂くようにあふれ出る。
凶暴なコントラストが、神々しく、鮮烈で、美しい。
タチバナ
「しかし、これは私の描きたい絵では無い」
そう言ってタチバナは、サトヨシのことを思い出すのだ。
杏子は「ふーん」と少し不愉快気に相槌を打った。
杏子
「二人が凄すぎて、タチバナさんと
サトヨシさんの間に付け込む隙がないっ!」
タチバナ
「落ち着きなさい、この騒がしい雌が」
杏子に絵の技術のことは分からない、
だから、杏子がこの絵を手伝うのは、
二人の時間を作る為、ただそれだけ。
でも、その絵ももう完成してしまう。
すぐ、次を描いてくれないかな。
タチバナ
「やはり、私はサトヨシのようにはいかない。
この忙しい時にこんなことをしてる場合じゃあない、
絵はこれで御終いです。」
杏子
「ええ~~~っ!!」
タチバナ
「…アナタは一体どうしたいのですか?」
杏子
「タチバナさんが完全に戻ったら、
腕を組んでデートがしたい。
そしてクラスの皆に自慢するの!
どう、アタシの彼って超イケてるでしょ!
何だってできる完璧超人!
スーパーマンなんだから!って」
タチバナは軽蔑の眼差しで杏子を見ると、
その変化に気づいた。
あちこちに傷ができた手足、強い眼差しの光。
タチバナ
「少し、筋力がつきましたね」
杏子
「はへ?うん、最近アタシも戦ってるからね!」
タチバナ
「しかし、中学時代の大切な時期をサボっていたせいで
一行に持久力は伸びてない」
杏子
「しゅーん…」
タチバナ
「いいですかビッチ、私は
今はそれどころでは無い、と言っているのですよ」
カンベエ、あの連続殺人鬼の話を先生に聞いたとき、
実はかなりの共感があった。
私には人というものの価値が解らない、
低能、強欲、醜悪、そういった類の人間は
死んでしまった方が世の中の為。
そう思えた、どんなに頭を捻っても、
他に結論が出なかった。
だからね、私はいつも人を殺したい
その衝動を押さえつけて生きてきた。
でもその私が、サトヨシと出会い、
今はこうして人を守る為に戦っている。
だから、私にとってのサトヨシが、
あの殺人鬼にとっての神だったみたいに…。
タチバナ
「忙しい時ですからね、
取り分け先生には感謝しているんです。
サトヨシの意に反して私から協力を頼んでおいて、
仕事を全てやらせる羽目になってしまった」
でもね、でもあの人はそれを苦にしないんだよ。
それが大切なことだって解っているからね。
自分が損をしたとか、苦しいとか思いすらしない。
タチバナ
「世界がどんなに地獄でも構わない、
どんなに世界が間違えていても、
彼らが美しいことだけは間違いではないのだから、
そんな尊い人たちを守ることを使命と思えたら、
彼らの命を守れるなら…それは何にも変えがたい」
サトヨシも、先生も、私が殺させない。
杏子はタチバナの笑顔を見たことが無い。
でも、そこに無いハズの笑顔が今、くっきり見えた。
杏子
「やっぱりタチバナさんは大きな、
誰よりも大きな『愛』を持った人だね」
タチバナ
「ば…馬鹿な!?」
杏子
「タチバナさんが好き!
あたしはタチバナさんが超!超!好きっ!」
タチバナ
「やめなさい、大きな声で!このアバズレ!」
杏子は門限の時間だ。
杏子
「ああ…帰らなきゃ」
荷物を持って立ち上がる杏子。
「杏子」
タチバナがそう彼女の背中に声をかける。
杏子は驚いて振り返る。
タチバナは少し正面を外しながら。
「デートなどではありませんが、体が完全に戻ったら
画材を買いに行くのを手伝ってください」
「杏子」それには特別な意味がある。
杏子はボロボロと泣きながら
何度も何度も首を縦に振った、
杏子
「じゃあね……。
あの…ね、だったらタチバナさんはアタシが守るよ
タチバナさんはワタシが殺させない!
それが、アタシの幸せ!」
タチバナ
「鬱陶しいですよ、早く帰りなさい」
杏子
「そしたら、タチバナさんは安心して、
大好きなサトヨシさんと佐藤先生と、
また一緒に世界の平和を守れるね!」
──今
向かい合うタチバナとサトヨシ。
タチバナ
「今…私ノ中ノ…トテモ、トテモ大キナ…
大切ナ物ガ消エタ……誰ダっ!?コレハ一体ナンダっ!!」
サトヨシが苦しみ出す、
邪気の無い、泣き顔?
サトヨシ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
父さんの顔が!思い出がぁ!全部、全部なくなった!!
ああ!ああっ!!タチバナぁっ!!僕の中に悪が!!
巨大な悪が住んでいる!!助けて!助けてタチバナぁぁぁぁっ!!」
【佐藤/スタンド名:オールラブ 消滅 】
タチバナは攻撃を躊躇した。今のサトヨシは以前から知っていたサトヨシじゃあない。
分 か る
そ ん な こ と は 分 か る ん だ
「父さん!どこへ行ったの!?僕は何なんだ!?ぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくはぼくは……」
「サトヨ……」
二度目の躊躇。それが決定的な一瞬なった。
「タチバナ、『俺』は何なんだ?」
「!?」
BUMP OF CHICKENの拳が振り下ろされる。
骨が砕かれる音
飛び散る鮮血
タチバナの前にいた『黒い影』が全て彼の身代わりのとなった
「ソマアアアアアアアアアアアアアア!?」
叫ぶタチバナにソマは優しく、語りかける
『タチバナ、よく聞いてくれ』
―全ての物事には“終わり”があり、“始まり”があるように、私はここで終わりかもしれない。
しかし、絶対に潰えない物がある。
それは、未来を創りあげ、新たな世界を見るための“希望”なんだ
私は希望をタチバナ、君に捧げるよ。
希望を持ち続けてくれ、タチバナ。
サトヨシを救い、皆を正しい方向へと導く“希望”を……
「ソマ、何をごちゃごちゃ言ってるんだい?」
体制を立て直し、迫ってくるサトヨシ。
ソマは動かない。
接続していた下半身を再び戻させ、タチバナをマニエルの背中に乗せる。
「……せめて、何かをもたらすことを……」
一度、ソマはサトヨシの視力をジャックしている。
だから“あれ”ができる。
一度だけの技
自分の命と引き換えに
未来有る者達へのために
『シャットダウン・フォー・ナイトライフ』
「!?」
サトヨシは暗闇に包まれた。晴れることの無い闇夜。永遠の闇夜。
『タチバナ、君が運命の奴隷では無いことを……再び繰り返さ無いことを……』
私は祈る
「ソマ!?貴様、俺に何をした!」
……
「くそッ!タチバナ、どこへ消えたああああああ」
「ソマ……私ハ……理解シマシタ……」
一人と一匹は壁を分解し、キャンパスから外へと出る。
「マニエル、アソコヘムカッテクレ」
「ウォン!」
マニエルは呼応すると、シバミ達のいる病院へと駆け出した。
(なぜ 俺は泣いているッ
いや それ以前に …なぜここに戻ってきているッッ!!)
クツケイが一番に気づいた、その異変に。
距離を取った場所でデュカに説明をと思っていたのだが、
『気が付いたら』あふれる涙を止められず、皆立ち止まっていた。
ケイもジョーイもシンも神城もデュカも。
その中で一人
人が消えることの悲しみを一番体験している彼が気づいた。
そう、今回もまた『誰か』が消えた。
(誰がッ! いや 考えても解るはずが無い
存在が消えているのだからッ)
何かを思い出すためだけに、能力は使えない
今回は後何度使えるのか、それがわからないのだから。
ケイも、ジョーイも今は隙だらけ
(今重要なのは逃げること そして逃げた先でデュカとシンを―――)
思い出す、既にシンはケイの手中だ。
クツケイの顔は苦虫を噛み潰したようだ。
(計画が 台無しだな
しかし 今のケイの傍にいるなら シンが死ぬこともないだろうよ)
『ハイブリッド レインボウ』
クツケイは静かにデュカと自分を背景に同化させる。
嗚咽を漏らしているデュカには悪いが、
「デュカ すまないが付いてきてくれ」
デュカは振り返る、そこには何も無い。
「え?」
しかし、なにかが私を呼んだ。
デュカの目には奇異に見えただろう、手には握られた感覚がある。
しかし、自身の腕も相手の腕も目に映ることは無い。
見えない者は耳元で話す。
「今 シンを殺すことも シンに殺されることも
『 君 は 望 ん で い な い』」
静かに、そして低く響く声が頭に伝わる。
「でも シン…」
「秀丸絡みであるのであれば、
ケイも言っていた通りだ 君には弁明する余地はないだろう?
いや、その気持ちも無いはずだ
せめて 自分の中の意見を固めるまで 離れておくのがいい
『あまり時間はない』 駄々をこねる様であれば 無理矢理にでも」
デュカは見る。
自分の愛している人を。
まるで、私に対する非難の涙に見えなくも無かった。
違うとは思っていながらも、シンを思う気持ちがそう思わせる。
『「オマエは死んで、秀丸とでも一緒になれよ」』
それでも、私は。
愛している のよ
「…」
シン。
「……行きます」
「ああ とりあえず離れよう」
信頼できる、声は。
腕を握るこの男。
見知らぬ男、だが。
どこかで、遠いどこかで。
この声と私は関わったことがある、そう感じる。
静かに走り去る途中。後ろを振り返る
いまだ涙を流し続けるシンをおいて。
…二人で幸せに暮らせたらいい、
…二人がずっと一緒にいられるなら何もいらない。
誰の言葉だったのだろう。
駅近くの潰れたお店に二人はいる。
「―と、いう話だ」
クツケイは全てを話した。
この世界が繰り返している事。
いつも、追い詰めては世界を捻じ曲げられる。
(解らないことも 増えたがな
秀丸が地獄を開いた事により 瑠獅覇と呼ばれるスタンド使いが
考えたくは無いが 『地 獄 』 から出てきたのだとすれば…
死んでいるものが動き回ったりするのも 地獄からはいずりあがってきたと考えれば
…果てしない妄想だな これは)
「奥津…さん」
うろうろと、落ち着きがなく歩きながら何かを考えている男に言う。
「…クツケイとよんでくれないか?
本名が嫌いってえワケじゃないんだ
同級生といっても ここは学校でもないんでね」
「どうして私を助けて くれたのですか?」
「君とシンの力が必要だったからだ
もちろん 当初の計画ではね
さっきの話を君が全て真実と認めた上で聞いてくれ
君はレッドという男を知っているよな?
そう秀丸の兄さんさ」
『秀丸』その一言にデュカは反応する。
「あの兄さんの能力として夢の扉を開くっていうのがある
あれは スタンド攻撃すらも潜り抜けられ
以前 レッドはソレで世界の繰り返しを逃れたことがあった
君たち二人に 世界の繰り返しの起こる瞬間に 夢の扉を『作って』力を『与えて』
世界が 捻じ曲げられた後 記憶の捻じ曲げが入った瞬間 無効化する
ああ 君もたまにあるだろう 『デジャブ』 が あれは君達が本当に体験した記憶なんだよ
『 捻 じ 曲 げ ら れ』てはいるがね。
記憶の捻じ曲げを無効にすることにより 存在の消された者以外 全て生き返り
新しいサトヨシになった後だから 裏サトヨシもそこまで力を使えない
ハッピーエンド
という つもりだったんだがね」
「クツケイさん… 他の世界での私達は どうなっていましたか?」
「君が秀丸とくっついた世界もある まあ その世界でシンは死んでいるがね
シンの『生きている世界』では 君はシンといた
君が 今誰を想っているのか それは僕にはわかりはしない
だがこの世界では すでに秀丸は死んでいる
…ああ 君は何をしたいんだ?」
私は
「私は シンを止め たい…」
あの腕の力を
私の作った腕は街を破壊するほどの力を秘めていた
「…でも どうやってとめればいいか…」
「簡単だ また 溶かして作り直せばいい
君の想いを シンは力に変えている
破壊したりする腕じゃない 普通の腕に変えてやればいいんだよ
…いや 君を抱きしめる為の腕にすればいいんじゃあないか?」
クツケイはニッと口角をあげ、笑う。
「シンは 許してくれ ない…」
「そこは自分で考えてくれ さて と
俺もあまり時間がない
どこか行きたいところは あるかい?」
『『 本当 ニ 、 倒サナケレバ なラナイ テキ ヲ ッッ 』
伝エテ!
シバミ タチ ニ!!』
姿の見えない、秀丸の声がデュカの頭に蘇る。
「シバミさんという方に いう事が あります」
「じゃあ決まりだ 病院にいこう」
静かに歩き出す。
デュカの心は晴れぬまま、だが。
何かを見つけた、そんな気がした。
・・・・・
神城静夜は泣いている。
人目をはばからずに、泣いている。
止め処も無い『 悲しみ』であった。
僕の中で、『 大切な 誰 か が消えた。』
とても大切な『 誰かが。』
お祖父ちゃん(神城 朝陽)でも無い。メリッサお祖母ちゃんでもない。
トメお婆さんでも無ければ。 林檎さんでも無い。
揚蝶さんと・・・。
揚蝶さんと一緒に会ったハズの人なんだ。
そうだったのだろうか?
もう、それすらも曖昧だッ。
悲しいッ!悲しいッッ!悲しいッッ!!
悲 し い ッ ッ ! ! !
それを忘れた事が、『僕にとって、一番悲しい事と思えてならないッ。』
揚蝶さんと一緒に・・・ッ。僕はその人に『 救われたハズ』なんだッッ。
その人が居なければッ、
僕は此処に、居なかったハズなんだッッ!!
本当に そうだったの だろう か ッ?
消えていくッ!
本当に大切な『 誰か がッッ ! ! 』
うぁあああ あ あ あ あ あ あ ああああああ ! ! ! ! !
・・・・・
ジョーイも、また泣いていた。
俺は。
何度も学校をふけた。
その度、『 誰 かが、俺を叱ってくれた』ハズなんだッ。
それは、『 軽蔑 の 瞳』じゃあなかったンだッ!
そいつは、『 厄介者 を 見る瞳 』じゃあなかったンだッ!!
如何なる過酷にも『 立ち上がる』、 不 屈の瞳ッ。
如何なる邪悪も『 屈さない 』、 博 愛の瞳ッ。
その瞳が消えて行っちまうッ!
大切な瞳が『消えて行っちまうッッ!!』
D・M・Qッ!
俺はまた、『 取り返しの付かない事を し ち ま っ た のか ッ ッ ! ! 』
また、愛する誰かを失っちまったのかッ!
また 失 く し ち ま っ た の か ! !
うわああああ ぉ お お オ オ オ オオオオオ オ ー ッ ッ ! ! !
・・・・・
「泣いているンですか? ケイさん。」
「オカシイかね?」
「俺も泣いています。」
ケイとシンもまた泣いていた。
あの場は離れた。
だが、彼等もまた、涙が止め処も無く流れていた。
私はかつて『 救世主』であった。
それは・・・。『 大切な誰か』の気高さに胸を打たれたからだった。
本当にそうだったのだろうかッ?
俺は人を好きになった。
照れ臭かった。けれども、誰かと一緒に居たいと言う気持ちは、
『 変 な 事 じゃあない 事』を教えてくれた『 大切な誰か』が居たハズなんだ。
本当にそうだったのだろうかッ?
狂おしい程『 歯噛みしたッ』。
唇噛み切れる程、『 歯 噛 み したッッ』。
・・・・・
「この世で、 一番大切なモノは……『 愛 』である!!」
静夜「ああ。 何て安らぎを覚える言葉なのだろう。」
・・・・・
「愛を忘れるが故。 『 悲しい事が、起こるのだ。』」
ケイ「十字軍を正義と信じる。」
・・・・・
「君達は、それぞれ違った道を行き。」
シン「デュカ・・・。」
・・・・・
「互いを傷付け合うかも、知れない。」
デュカ「シン・・・。」
・・・・・
「だが。」
クツケイ「繰り返しを、止めなければならない。」
・・・・・
「例え、傷付け合う事になろうと。」
揚蝶「すべての罪を背負って、生きていけるように。」
・・・・・
「『尊敬 の 念』を持って競い合い。」
静夜「闇に飲まれちゃいけないのだから。」
・・・・・
「互いを『 愛し合うのだぞ。』」
ジョーイ「俺達は、スタンド(立ち上がる者)なのだから。」
・・・・・
「『愛する生徒達へ。』」
皆「片隅にも残らぬ、愛する 誰 か よ。」
・・・・・
「『君達は、 卒 業 だ。』」
・・・・・
皆、一つだけ理解した。
『 精 一 杯 、 生 き る 事 』
それが、誰かへの餞(はなむけ)であるのだろう。
サヨウナラ・・・。
『 先 生 。 』
不思議と・・。
それだけは、『 理 解 』ができた。
──シン、奥津さんからこの世界の真実を聴きました。
このままだと、世界には未来が訪れないんだって。
場を支配した悲しみ。
その場にいるすべての人間がもう
戦える精神状態ではない。
常識で考えたらそのハズだった。
なんだい、なんだい?
それで気分じゃあないから
「帰ろうバイバイ」かい?
いやいや、目的を果たすよ、シンを連れ帰る。
神城静夜はついでに今日この場で破壊しよう。
何故って?
一人くらい壊して帰らないと、
この興奮は収まらないでしょう?
自らを決して疑うことなど無い、独善。
信仰からくる歓喜の涙で頬を濡らした、邪悪。
──そう言われても、頭の悪い私には今一ピンときません。
ただ、未来が無いということが、シンとの終わりだとして、
想像してみたら、怖くて、悲しくて、涙が止まりません。
ケイ
「どうした、まるで動きが鈍くなってしまったぞ
神城静夜。キミはあと五発だ」
「愛」こそは僕の行動の指針。
「だから『愛』が正しいということは、
『僕』が正しいということ」
誰が何を言ったか思い出せないが、
この肯定されたような高揚感、
キミをこの快感の煮得にしよう。
嬉しくってね涙がでるよ!
「んふ、んふっ」
ケイが消えては別の位置に現れ、
悲しみに縛られた静夜を翻弄する。
止める、触る。
それだけの子供でもできる単純作業。
──今度のことは、私が全部悪かったね、
ゴメンねシン、裏切ってゴメンね、辛い思いをさせたね。
でも許して…どうかお願い、許してください。
ケイ
「あはん!あと二発だよ、
どうするんだよぉ?!どうしちゃうんだよぉ?!」
ジョーイ
「させるかっ!!」
ジョーイが助けに入るが、
ケイはそれを瞬間移動でもするかのように
スルリスルリと抜けて、静夜に触れてしまう。
よくわからねぇが、時間でも止めてやがるのか?
そして自分は安全に相手に触れて追い詰めていく。
痛みも交わさねぇ、危険も冒さねぇ、
血も汗も涙も流さねぇ、クソみたいな戦い方だ。
ケイ
「これで最後だ、さよなら神城静夜」
いや、俺はそんなものを「戦い」とはみとめねぇ、
オマエのそれはただの「遊び」さ、おぼっちゃんよぉ!
風が駆ける!
──笑顔が見たいの、触れて欲しいの、もう一度やり直したいの。
だから我が侭言ってゴメンナサイ。
償うから、私が一生アナタの両手の代わりになるから。
ジョーイが「シン」に襲い掛かる。
シン
「!?」
シンは反射的にそれを迎撃しようと、
その腕から破壊の光を放つ。
至近距離、避わせるかは賭けだった。
シンの手から放たれた光線、その放射上にケイ!?
奴はその能力を使えば避けるだろう。
だが、いい、それだけのスキがあれば十分だ。
ジョーイ
「悲しみに飲まれて、
仕事を忘れるほどガキじゃあねぇよなっ!」
一気に間を詰める静夜。
彼の思考は、死に追い詰められながらも
冷静にタイミングを狙っていた。
静夜
「その破壊の力、強き心の無い者に持たせてはおけない!」
静夜がスレイヤーを振り下ろす。
ケイ
「うわあああああっ!?やめろおおおおっ!!」
──この世界の未来を取り戻す為には、私たち二人の
スタンド能力が必要なんだって。
改めて、シンとの運命を感じずにはいられません。
二人で世界を救いたい、シンは好きだよね、そういうの。
鎌が素通りした後、シンの腕が崩れて落ちた。
その鎌が刈り取ったものは、シンのスタンド能力。
ジョーイ
「これでテメェの計画はパーだな。
俺たち二人が何一つなぁ、思い通りにはさせねぇ!」
静夜
「攻撃されてる間、
ずっと僕の大切なものを侮辱されている気分でしたよ」
黙り込み、うつむくケイ。
ケイ
「ああ、計画が振り出しに戻ってしまったよ…」
ケイがまっすぐに歩み寄ってくる。
静夜はあと一度でも触れられたら死が決定している。
避ける二人。
ケイ
「今日は済まなかった二人とも、
どうしても欲しい玩具があってね。
それを取られたくなかったんだ」
ケイは二人に、もう戦意は無いことを示す。
ケイ
「謝罪する。
だから今日のことは水に流して、
女帝には黙っていて欲しいんだ。
そして、これから僕らは協力して
世界を守ろうじゃないか!神の為に!」
──ねえシン、怒らないで聞いてね。
私はシンを愛しています、アナタが信じないと言っても、
この気持ちは決して失われることなく此処にあります。
ねえ、シン、愛してる。
シン
「デュ…カ…愛…」
ケイ
「シン…壊れた玩具はもういらない」
そう言ってケイは笑顔で、
シンの肩にポンと手を置く。
シン
「……?」
それが何を意味するか、その場の人間が理解し、
しかし消化する間も無いまま。
ケイ
「僕は、神への愛を貫かなくちゃいけないんだ
煩わせないでくれないか?」
聖職者のような優しい語りかけ。
──でも、このあと私は、「愛」が死んだことを知る。
今夜、沢山の取り返しのつかない事が起きた。
沢山の人にとっての大切な人が、安息が、
二度と手の届かない所へ行ってしまった。
だから神様なんていない……。
ケイ
「電子レンジに入れた卵よりも醜く破裂する 」
…二人で幸せに暮らせたらいい、
…二人がずっと一緒にいられるなら何もいらない。
そうだ、それオレの言葉だ…った…。
ボンッ。
【シン/スタンド名:JITTERIN’JINN 破裂死 】
未来なんて無かった!!神様なんていない!!絶対にいない!!
第13話『神様なんていない…』
To Be
Continued... ・外伝『13話外伝』
最終更新:2008年02月01日 22:20