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外伝『捻れ行く、この『世界』に捧ぐ。』

一人。
 少年が一人。
 闇の中に佇んでいた。
 少年は、たった一つのことだけを思っていた。

 「親友の大切なものを『絶対に守る』」

 そして、彼は目覚めた。
 闇の中で。
 彼の願いは、世界の終わりを導くことになるかも知れない。


 ・・・・・・それでも、彼は目覚めた。
 親友の大切な息子「サトヨシ」を守る。
 ただ、それだけのために。

「まずは情報収集、だね。
行こうか、ソウルステーション。
サトヨシを守らなきゃ」

 しかし。
 心に何かが引っかかった。
 その奇妙な『違和感』は、涙となって彼の目から零れ落ちる。

「何で? 何で俺泣いてんの?
 わけわかんないよ・・・・・・。格好ワリィなァ・・・・・・。
 何でサトヨシ守らなきゃいけないかもわかんないし・・・・・・
 思い出せないんだよッ!!
 と・に・か・くッ!
 サトヨシの敵を全部やっつければいいんだッ!!
 早く終わらせてやるッッ!!」

 初めてだった。
 彼が泣くのも。
 佐藤の『存在』が『世界』から消えてしまったことも。
 それでも動き出した。
 彼の『大切だったはずの何か』のために。


――――――


 コウが死んだ。
 守ってくれた『誰か』も思い出せない。
 でも。
 彼らが遺してくれた「大切なもの」は、今も確実に、俺達の中に息づいている。

 だから。

 絶対に俺は。

 アイツらだけは許せない。


 何があろうと・・・・・・絶対にだ。

「シバミ。あのコウが遺してくれたあの映像。アカシックレコードだっけ? サトヨシはわかるけど、もう一人のあの女。アイツに見覚えある?」
「わからない。でも、オジさんなら知ってるかも。ちょっと待ってね」
 シバミはポケットから携帯を取り出し、赤倉の番号を呼び出す。
「わかった、じゃあ俺は・・・・・・アイツに連絡してみる」
「ザキの旦那、それってまさか・・・・・・」
 ザキが取り出したのは『ザキのものではない携帯電話』。
 ヒデエモンが複雑な表情を見せるのも無理もない。
「ああ、隕鉄だ。アンタには悪いけど、アイツがスタンド使い殺しに加担してたんなら、あのクソアマのことも知ってるに違いない、そう思ってさ」
「まあ・・・・・・仕方ないっすね。コウの姐御のためっスから」
 ヒデエモンの了承を得て、ザキはウェイの携帯を使い、隕鉄に電話をかけた。

 ・・・・・・右手が、ひどくうずくな・・・・・・。

 携帯を持った『少し黒ずんだ』右手を、左手でさすりながら。

――――――


 シン、君も『こちら』に来てしまったんだね。
 僕が。
 僕があの廃マンションで君達を助けた時からずっと、僕は君に嫉妬していたんだ。

「ああ・・・・・・。どうでもいいよ」

 いや、お願いだから、もう少し聞いてほしいんだ。
 僕の、言い訳を。

「好きにしろよ。デュカが俺のために作ってくれた『両腕』でさえ、俺はデュカを守っても、抱きしめてもやれなかったんだ・・・・・・。そんな奴に何か言いたいんなら、勝手にしてくれよ」

 わかった。
でも、本当にごめん、シン。
 僕はずっと君に嫉妬していたんだ。『こちら』に来てからも。
 確かに彼女は僕の像を作ってくれた。
 確かに僕は彼女と話すことが出来た。
 でもね、シン。
 彼女の心の中には、

 いつも、君がいたんだよ。

 僕も、ずっとデュカを思っていた。
 今まで、『愛』なんてくだらない。そう思っていたんだけどね。
 でも、違ったんだよ。
 彼女は、デュカは、いつも君を思っていたんだ。
 だから、僕を受け入れなかった。受け入れることができなかったんだよ。
 彼女の優しさ、そして君への『愛』ゆえにね。
 僕も、生きている時にそういうことを教えてくれる人に出会いたかった。
 もう『思い出すことも出来ないあの人みたいな』、ね。
 でも。
 僕は幸せだった。
 最後に大切なことに気が付けて。
 デュカを愛することが出来て。
 そしてデュカが。
 『シン、君を愛してくれて』。
 信じてもらえないかもしれない。
 でも。
 僕は幸せだよ。
 だから、さようなら。
『次に会うときは友達になれるといいね』

 秀丸の姿がぼやけていく。
 最後にデュカを救ったことで、『地獄』を開いた男が『天国』へと登っていく。

「秀丸・・・・・・。デュカ・・・・・・。

 デュカァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」

 もう、生きてなんていないのに。
 それでも、『涙』が出た。
 何でだろ。
 今更。
 もう遅いのに。
 ・・・・・・望(のぞみ)。
 結婚したら、そう呼んでやる、って決めてたのにさ。
 不味いかも知れないけど、頑張ってケーキ作って。
 誕生日とかに二人でお祝いして。
 アイツが言うんだ。
 「シンってプラモデルとかは上手いのに、こういうのはちっとも出来ないね」とかってさ。
 でも。
 もう、遅いんだよな。
 何で、何で俺は今頃気付くんだろうな。
 しかも、アイツにあんなひどいこと言っちゃってさ。
「デュカ、ごめんな・・・・・・デュカァッ・・・・・・!!」
 止まらない。止める気もなかった。
 涙は頬を伝って、どこまでも落ちていった・・・・・・。

トゥルルル…トゥルルル…

ガチャ

『はいドッピオです』

「何言ってんのオジサンつまんないよそれ」

『…やあシバミ君』
平静を装う赤倉だが、受話器の向こう側では自らのスーツと同じくらいに顔を赤く染めていた
『あー…彼の右腕はどんな調子かな?』

「ザキの義腕のことね、だいぶ良さそうみたい」

SPW財団特製の義腕
シバミが赤倉に頼んで特別に作ってもらっていた

シバミはザキの右腕に目をやる
届いた時よりいくらか黒みがかっているように見えるが…気のせいだろうか

ザキが渋い顔をして携帯を手放した
どうやら隕鉄に繋がらなかったようだ

「それでオジサン、聞きたいことがあるのだけど―…」

『ふむ、あの場所でのことかな?』

「そう!あの時、誰がいて…何が起こっていたのかを、もっと詳しく聞きたいの!」

『いいだろう。
それだけではなく、もっと話さなければならないともたくさんある。今からそちらへ行こう。』

「わかった。今病院にいる。」

『義腕を送った病院で良いんだな。
ではすぐに行く。』

そして二人は電話を切った

「今から赤倉のオジサンが来るって!」

「そうか…これで色々なことがわかりそうッスね…

ん」

ザキがベッドに放り投げた携帯の着信音が鳴る
三人はハッと顔を見合わせる

おそるおそる、ザキは電話に出た


『ザキか』


「隕鉄…!」


『時間が、無い』

「お前一体…ッ」

『今夜…約束の場所へ来い
 …最後の決着をつける』

ザキの額から汗がにじみ出る

「……

ああ、わかった」


それだけの言葉を交わし、静かに電話を切った

「…ザキ?」

「ちょっと…出かけてくるッス」

「出かけてくるって…今の、隕鉄だったんでしょ!?」

「ああ…奴と…隕鉄と直に会って話さなきゃいけないことがたくさんある」

「旦那!一人でいくつもりですかい?そりゃあ危険だ、あっしもお供しますぜッ!!」
ヒデエモンは立ち上がろうとするが、ザキはそれを制す

「いや、いい。

隕鉄はきっと一人で来る

だから俺も一人でいく

…それだけのことさ」


「ザキ…でも義腕にもまだ慣れてないのにッ…」


ザキはニコリと笑って言う

「大丈夫!ちゃあんと戻ってくるッスよ!
少し遅くなるかもしれないけど…
今晩は皆で飲みに行くッス!!」

「…わかったわ。
約束よ…

すっぽかしたら承知しないからッ!」


「…ありがとうッス」

再びザキは真剣な顔つきになり病室を出て行った 

「ザキ…」

「旦那…」



ザキが出て行った扉から、Dr.ERが現れる
「やれやれ…この不良患者どもめ…また無断外出か」

「う、エロ先生」

「エロは余計だよ

…ところでさっき、病院の裏庭で実に興味深いものを発見したんだがね

「興味深いもの…ですかい?」

「ああ、これなんだが。」

Dr.ERは、背後からその『興味深いもの』をあらわした


「こッッこれはあああーーーッッッッ!!!!」

『 ム ト ウ タ チ バ ナ 』

   (の上半分)

「ヤあビッチ…オ久しブリデす…ね」

「あんた一体ッ…そんなボロボロになって…


(はッ!!

そ…そうかタチバナはサトヨシのところにいたんだ…
サトヨシが真の敵だというなら…タチバナも危なかったということ…)

タチバナ…その傷…やったのは…サトヨシなのね?」

タチバナはうつむき、答えない

だが答えないということはイエスと同じだ

「それに体がまだ直ってないじゃない…上半身はほぼ完全みたいだけど
下半身は!?」

「そんナ…こと私ニダッテ…わかりマセせンよ」


トメ達が渡した下腹部、その他杏子やアルジスが集めてきたタチバナのパーツは
佐藤が独自に保管していた
サトヨシの裏の人格に既に気付いていた佐藤は、タチバナを完全に元に戻しては逆に危険であると考えたのだった
だが、佐藤という存在が消えた今、その在り処を知るものはいない


「コの街のどこカニアるのは感じルノですガ…如何せんエネルギーが弱まっテイて…
それユエに余計早ク元に戻らないトいけナイノでスが…

はっ、マニエルは…マニエルはドうシマシた!?」

「ああ、あの白いワンコかい?宿直室で寝かせてあるよ。さすがに病室に連れてくるわけにはいかないからね」

「ソうデスか…」
ひとまずタチバナは安堵する

だがそれと同時に様々な悲しみが胸にあふれる


「タチバナ…泣いてる?」

「馬鹿ナ…こノ私が涙ナど…

………」

シバミとヒデエモンは黙ってタチバナを見つめる


「失礼するよ」
男が病室に入ってきた

赤倉だ

「あ…オジサン」

「ふむ…なかなか面白い面子が揃っているね

それじゃあ…早速話をはじめていいかな?」

「…どうやら手遅れのようだな。」 病院の外にサトヨシはいた。
「タチバナはすべてを明かし『僕』の元を離れるだろう。杏子も…アルジスも…。」

―そう呟くとサトヨシは歩き出す。

「あの男がパーツをどこに隠したか…『俺』は心で理解している。親子のつながりか…。存在が消え去っても役に立ってくれるとは…、フフ…ありがとう『とうさん』…。」
口元が歪む。

―問題なのは『頭部』…ただそれだけ。『シルビアを始末する』それがもっとも重要なこと。

サトヨシは近くのベンチに座っている男に合図を送った。
「『ブルース』、この女を捜せ。」 そういうと、その男の方へと写真を放る。

<本体:ブルース/スタンド:カウボーイフロムヘル>

「もう『俺達』の出番かい?」 ブルースは写真を拾い、持っていた本に挟み鞄にしまった。

サトヨシは手に入れていた。 『僕』の仲間ではない、『俺』の部下を。

「ああ…頼んだ。…邪魔者は始末しろ。」 そう言い放つサトヨシの表情に『僕』の面影は―ない。

―了解。と言うかのようにブルースは手を頭上でばたつかせ、消えていった。

サトヨシは再び歩き出す。
病院を抜け人気の無い廃墟へ足を踏み入れると、立ち止まり後ろを振り向いた。
「出てこいよ。ここなら二人きりだ。」 

―そこにはバーレルがいた。

「タチバナの再生の邪魔はさせない…。」
「俺の部下がすでに動き始めている。もう手遅れだ…。」 サトヨシは笑みを浮かべた。

「フン…、それはどうかな?」 バーレルは懐から携帯を取り出しサトヨシの前にちらつかせた。

「何…? まさか…、 …!! 貴様…ッ!!」 

「―すでに俺の仲間が動いている。シルビアを捜しているのはお前だけじゃあないって事だ。」

「そして…俺の仕事はここでお前を『始末』することだ…ッ!!」

┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″・・・・・ 

「「『Bulls・Eye』!!
『BUMP OF CHICKEN』!!」」

2人の拳が交錯するッ!!

吹き飛ばされたバーレルが起き上がると、そこに姿は無く足音だけが様々な方向から響いていた。

「BOCはあらゆるものを『屈折』させる能力…。光を屈折させ姿を消した…。
さらに空気の流れと音の反射を屈折することで俺の位置を見つけることはできないッ!!」

BOCの拳がバーレルの顔面にめり込む。

「―――ッ、…そこにいるな?『戻れ』――――ッ!!」
バーレルは体制を崩しながらも向きを変え能力を発動する。

その瞬間、サトヨシの背後から『何か』がわき腹を貫きながらバーレルの手元に戻っていった。
地面がサトヨシの血で赤く染まる。

「すでにBulls・Eyeで瓦礫を二つに分けていた…。どうやらわき腹にでも命中したようだな。これでお前の居場所はわかった…。終わりだッ!!」

風景から剥がれ落ちるように姿を現したサトヨシにバーレルの一撃が襲いかかる。

かろうじてその一撃を避けるとサトヨシはバランスを崩して地面に腰を落とした。

(この能力…危険すぎる…もしも俺自身が能力を受けたら…)

サトヨシはわき腹を押さえ起き上がる。

(…もし体が完全に『2つ』になったら…、『僕』に自由を与えてしまうッ!!)

┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″・・・・・

(この能力…、俺にとっての『天敵』ッ!!)

この目の前の男にサトヨシは戦慄を覚えた。

「『デュカ』ッ!」

そう叫んだ、自分の声で。

静夜は目を覚ました。

「…夢…?」

ただの夢にしては、あまりにもリアルすぎる映像。
そこではシンと、名前しか知らない秀丸が言葉を交わしていた。

「…お前が見せたのか? スレイヤー…いや。
 『JITTERIN’JINN』」

先の闘いで、『刈り取った』シンのスタンド。それは、シンが死んだ
今もなお、スレイヤーの柄の中に封じ込められていた。

「…会いに行かないと」

漠然とした予感に突き動かされ、静夜は立ち上がった。
『これ』を『デュカ』に届けなければならない。

(何故、会わなければならないのか…
 会って、どうするのか…
 『JITTERIN’JINN』を開放して、どうなるのか。

 それは、わからない…

 だけどッ! 『会わなければならない』ッ!
 そう、僕の心が叫んでいるッ!)

身支度を整え、家を出る。目的地は…廃マンション。

シンとデュカが一緒に過ごしていた場所であり

二人がジョーイとであった場所であり

シンが、死んだ場所。

そこにデュカはいる。何故か、静夜にはその確信があった。

静夜が廃マンションまでたどり着いたその時、中から悲鳴が聞こえてきた。
急いで階段を駆け上がった静夜がみたものは。

地面に倒れ伏すデュカと、それを見下ろす見知らぬ男。
男は静夜に気付くと、鬱陶しそうに手を振った。

「誰だかしらねえが、取り込み中だ。消えな」

静夜はデュカを一瞥する。
ぐったりとして地面に倒れてはいるが、死んではいない。

「わかりました、そうします」

くるりと後ろを振り向き。

そのまま、一回転する!

「『スレイヤー:クライスト・イリュージョン』ッ!」

回転の勢いで鎖を伸ばし、一閃!
しかし、その攻撃は避けられ、男の頬を掠めるだけに終わった。

「てめぇ…聞いてるぜ、鎌使い。神城 静夜だな?
 俺の名は松葉! そして、コイツが」

松葉の背後にスタンドが浮かび上がる。

「『ウルトラソウル』だッ!」

闘いの火蓋が、切って落とされた。



============================================



用があるといって赤倉との会話から抜け出し、ヒデエモンは一人歩いていた。
向かう先は、病院の、ある一室。
そこには、『あるはずの部屋』が出来上がっていた。

「…ここは、アンタが作ったのか?」

その部屋に立つ男が一人。ヒデエモンはその問いに頷いた。

「他を巻き込むわけにはいかねぇもんでね」

轟音を立て、彼の入ってきた通路が塞がれる。これで、逃げ道はなくなった。

「確か…『シバエモン』とか言ったか? 『カーペット』の」

「『カーペンターズ』の『ヒデエモン』だ」

「おっと、そいつぁ失礼」

陽気な笑みを浮かべ、男…ブルースは謝った。

「一番の雑魚って聞いてたもんでね」

ヒデエモンはその挑発に、あえて頷く。

「確かにそうかもしれねぇ」

「自覚してんなら……とっとと! 死んでもらうぜッ!」

ブルースのスタンド、『カウボーイフロムヘル』の掌から、蛇の様に鎖が伸びる。

しかしそれは、ヒデエモンにあたる寸前、床から突き出た柱に阻まれた。

「『覚悟』……あっしはそれを十分持ってるつもりだった」

「どんどん行くぜッ!」

『C・F・H』のもう片方の掌から、更に鎖が伸びる。
それは、同じように突き出す柱を迂回し、ヒデエモンを背後から狙う!

が、それも天井から落ちた杭に鎖の輪を貫かれ、地面に串刺しになる。

「…だが、そうじゃあなかった。
 ただあっしは、盲目的にシバミ姐さんについてきただけだった。
 『この街を救いてえ』『シバミ姐さんの手助けをしてえ』
 そんな漠然とした目的しかなかったんだ」

「何ゴチャゴチャ……言ってやがるッ!」

『C・F・H』は両腕の鎖を振り回し、杭と柱を破壊した。
振り回される鎖の鞭。その先端の速度は、音速を超える。

「死ねッ!」

左右同時からの攻撃。
それに加え、『カウボーイフロムヘル』自体が真っ直ぐに突っ込む。

「だけど、『彼女』は違った…ずっと、そ知らぬ顔で、笑いながら。
 『一人』で戦っていた! 『裏切者』の汚名を着る事さえ躊躇わずッ!

 あっし達を『守る』為にッ!」

二枚の壁が、左右の鎖からヒデエモンを守る。
そこにすかさず、『カウボーイフロムヘル』が豪腕を叩き込む!

「絶対にゆるさねえ。『サトヨシ』も…お嬢を殺した女も!
 そう、『覚悟』したッ!」

『巨大な腕』……それが、『C・F・H』の拳を掴んでいた。

『0011011100101101』…

ヒデエモンの左手の甲に、『1』と『0』の羅列が走る。
それは、コウが残した最後のプレゼント。

高速な計算を可能にする、『演算専用』の『体内回路』。

『地面から突き出た腕』から、ケーブルが生え、鉄骨が突き出し、コンクリートで
固められ、見る見るうちに人型へと変化を遂げていく。

「…『カーペンターズ:デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)』」

巨神が、ブルースを見下ろした。

「貴様ッ!『神の尖兵』ッ!」

静夜は松葉を見ていう。

「ハッ!お前は『傷を治せる』からなァッ!あるかせておくには厄介すぎるんだよッ!ウラウラウラウラァッ!」

ビビビッ!

3発のレーザーが静夜を襲う。

静夜はスレイヤーの刃でガードする。

「当てたな!?貴様のスタンドは…!?」

カァン!

銀色に光る刃は『鏡』となりレーザーをはじいたのだ。

「これがキミの能力…?殺傷力も高くなさそうだし…『刈り取らせてもらうよ』。」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !

キィィィィィィィィッ!

松葉と静夜を光が包む。

「これは何なんだよぉッ!?」

「わかりませんよッ!スタンド攻撃じゃないッ!スレイヤーで刈り取れないッ!」

パァァァァァァ…

二人は光に包まれて消えていった。

現場には倒れたデュカだけが残った。

―――――――

同刻

ド ド ド ド ド ド ド !

向かい合うはサトヨシとバーレル

サトヨシは空間を曲げながら撹乱を駆け、『致命の一撃』を叩き込むタイミングを狙っている。

バーレルは試してみたい…『こいつを2人に分けたらどうなるのか』

「Bull's Eyeッ!」

バババババッ!

ビッ!

一発がサトヨシの腕をかする。

「ぬぅッ!」

変化する様子はない。

「不発かッ!?」

その瞬間にサトヨシはバーレルを捉えた!

「 ユ グ ド ラ シ ル !」

パァァァァァァ!

その時、光に包まれながら松葉と静夜が現れる。

「ガキ!?何で…お前!?」

「ガキじゃありません。神城です。これは・・・やはり…」

松葉が問う。

「てめぇ一人で解ったような顔してんじゃねぇッ!説明しろッ!」

神城はやれやれといった顔で説明する。

「『辻褄が合わなくなっている』ンですよ…。『誰か分らない人』の思い出があったり…。今のは『空間が曲がってくっついた』…。つまるところが・・・。」

サトヨシはニヤっとわらう。

「『空間の崩壊』が始まっている。ということだよ。」

松葉は青筋を立てる。

「涼しい顔してんじゃねェェェェェッ!ウラァッ!」

ビィッ!

レーザーがサトヨシを襲う。

「…曲がれ…」

ビッ!とレーザーが屈折し、それは静夜の「スレイヤー」の「柄」に当たる。

静夜は苦しみ始める。

「う・・・あ・・・・・あああ・・・おおおおおお・・・ッ!」

スレイヤーの色が『黒』く染まる…

さらに禍々しく…今まで抑えてきた「確かな悪」が…暴発刷るかのごとく。

神城静夜:スレイヤー・キル・アゲイン 

「フフフフフ・・・・・・ハハハハハハッ!!!
神城静夜は暴走、そしてバーレルは消えるッ!! これで俺の世界が完成へと近づくッッ!! 気分がいいッ!! 実に気分が・・・・・・ハッ!!」

 立っていたッ!
先ほどと変わらぬ姿で、確かにバーレルは立っていたッッ!!

「アブネェ事は好きくねェんだよォ・・・・・・ッたく勘弁して欲しいよなァ・・・・・・」

そう、先ほどのBulls Eyeは確かに決まっていたのだッ!!
スタンド能力によって拳が分かれ始めたことにより、BOCの放っていたユグドラシルは軌道を外れ、新たに現れた静夜へと向かっていたッ!!

「スレイヤー・シーズンズ・イン・ジ・アビス。
自分のスタンドくらい管理しろよバカヨシッ! 僕の存在を『歪ませよう』なんてナメたマネしてくれちゃってさァッ!」
漆黒の瘴気を刀身と自らの身に纏い、静夜が引きつった笑みを浮かべていた。
「ククッ・・・・・・驚いたかい? そうだよなァッ! 驚いたよなァッ、サトヨシィィッ!!
君の目障りな『ユグドラシル』はねェッ!!」
 そこまで言って真顔に戻る静夜。ニヤリ、と笑って静かに言う。

「・・・・・・アンタが戦ってるボンクラ野郎に当たる前に、僕がスレイヤーで二人の間の『空間』を刈り取ってやったよ」

「面白い、面白いじゃねェか神城静夜ッ!! だがテメェの相手はこの俺、ウルトラソウルの松葉だぜッッ!!」
 叫んでレーザーを乱射する松葉。残弾を全て打ちつくす。

「全然面白くないんだよボケナスが。スレイヤー・キル・アゲインとこの僕に、そんなチャチなスタンドが通用すると思ってるのかい? ハッキリ言って・・・・・・

刈 り 取 る 価 値 す ら 無 い」

静夜へ向かったレーザーは、全て彼の周りの闇へと消えていく。

「寝言は聞き飽きてんだよこの俺はッ! ウルトラソウルを食らってより強くなりやがるッ! そういう相手とこの俺が一回も戦ったことがないと、そう思ってるんならよォ
・・・・・・テメェはとんだ勘違い野郎だぜッッ!!」
 いつの間にか、ウルトラソウルの右腕が青白く輝き始めていた。
「コイツはサトヨシのための『とっておき』ってヤツだが・・・・・・、見せてやるぜ神城静夜ッ! 衝撃(ショック)にやられて目を覚ましやがれッ!

食らえ『蒼い弾丸』ッッ!!!」

 ウルトラソウルの右手から、まばゆく輝く蒼い光の『弾丸』が飛び出したッ!

「光ある所には影がある・・・・・・。だが、闇のある所に光があるとは『限らない』。
スレイヤー・キル・アゲインッッ!!」
 宙をさまよいながら静夜へと向かった『弾丸』を、静夜のスレイヤー・K・Aが真っ二つに両断した。『弾丸』はそのまま後ろへと飛んでいく。
 そこに立っていたサトヨシとバーレルをめがけて。
「分けろ、Bulls Eye!!」
『BUMP OF CHICKEN!!』
 バーレルは『弾丸』を二つに分けて回避する。そして、サトヨシは・・・・・・
「馬鹿なッ! なぜ僕はッ!!」
 すでにッ!
サトヨシは分裂していたッ!
片方のサトヨシが『弾丸』の軌道をあらぬ方向へと『捻じ曲げ』ッ!
もう一人のサトヨシがさらにその軌道を『バーレルの方向へと捻じ曲げた』ッッ!!

「今度こそ終わりだ。

さ よ う な ら 、 バ ー レ ル」

バーレルのスタンドはBulls Eye。
触れた物質、生物を「二つに分ける能力」。
 生物が分けられた場合、その2体は別々の意思を持ち、行動できる。
 本人が再起不能に陥るか、「戻す」と宣言しない限り、効果は続く。

バーレルは、スレイヤーによって二つに切り裂かれた『弾丸』の片方を『分けて』いた。
つまり、もう片方をスタンドで防御することは不可能。

 ・・・・・・そして、Bulls Eyeは。

『自分自身を分けることはできない』



――――――



「お婆様・・・・・・すみません、カップの取っ手が折れてしまいました。ドレスに紅茶がこぼれてしまいましたわ。淑女として、はしたない真似を・・・・・・」
 BAR「Bulls Eye」。ドルチを抱きながら、思考に集中するトメと、それを不安げな目で見つめる林檎。焦ってばかりいても仕方ない、少し落ち着こうと紅茶に手を伸ばしたとき、カップが壊れてしまったのだ。
「それよりも大丈夫かい? うら若い乙女が火傷でも作ったら大変だ」
「ありがとうお婆様。でも、カップがこんな風になってしまうなんて・・・・・・。考えすぎかもしれませんが、あの方たち大丈夫でしょうか」
 ふん、と軽くため息をつき、思案するトメ。林檎と同じく不安げな表情を浮かべながら答える。
「ジョーイに言わせれば『ドリームチーム』だそうだけどね。ただ・・・・・・、良くない事が起きてる。もう、始まっているからね、世界の歪みが。『流れ』が乱れ始めてる。
そろそろ私達も動く時だね」
 そう言って、トメは立ち上がる。
「お婆様、私も行きます。バーレル様のお役に立たなくては」
 二人はBARを後にする。

 何気なく見上げた空には、雨雲が出始めていた。
 まるでこれからの未来を暗示するかのような、真っ黒な雲が。

     ズキュウウウウウウンッッッ


「やれやれ…

この男…バーレルにはまだまだ動いてもらいたいからね…」

グィィィィィッ
バーレルを掴み、弾丸の軌道上から引き離す

「『最期の審判』は近い…」

それは、善と悪の最終決戦。
最期の審判により、神が再臨し、神に忠実に生きた善人のみを救い出す。
そしてその後に、神が直接統治する千年王国―…『地上の天国』が建国される。

それが僕達の…『未来』


「五秒…今はここが限界か」

    ズキュウウウウウウンンン


  「「「はっ」」」

バーレルに向かっていたはずの弾丸は、その背中をかすめ後ろの壁を破壊した
バーレルは振り返る
「…ケイか…助けられたな…」
ケイはバーレルに一瞥もくれず、二人のサトヨシを見据えた

「フ…サトヨシ…随分と可愛い姿になっているじゃあないか……」

「ケイィィィッッ貴様ァァァァァッッッ」
サトヨシの体はスデに完全に二つになっていた

勿論、その大きさ・重さも二等分されている

だが、サトヨシの中にあった二つの精神が別々に、それぞれの体に宿っている

「くうっ…これは…僕はいったい…目が…目が見えないッッッ」
『表』のサトヨシは目が見えず、状況を理解できない

先の戦闘でソマが使った最期の大技『シャットダウン・フォー・ナイトライフ』
対象から光を奪い、目を見えなくさせる
これは相手の『体』ではなく『精神』に直接影響を与える
サトヨシはこの技を受けた瞬間、完全に光が奪われる前に、一瞬だけ『表』のサトヨシと入れ替わりその技を受けさせていた

「松葉…帰るぞ…」
「しかしまだ……」

「今戦ってもお前は勝てない」

「なッ…」

松葉は歯噛みする
だが、実際そうかもしれない…神城相手に善戦とは言い難かったと自分でも思う

「サトヨシ…貴様はいずれこの僕が倒す…必ずだ」
「必ず…?『神に誓って』ってやつか」

「僕は誓いなど立てない。

天に誓わない。そこは神の玉座だから。
地に誓わない。そこは神の足台だから。
この髪の毛一本でさえも、神の支配の下にある。
全ては神の御心のままに。

…それじゃあな」

「待てよこのビチグソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっッッッッ」
静夜がサトヨシに切りかかる

「…フン」
ズキュウウウウウウウンッッッッ


気がつくと、そこにケイの姿は無かった。松葉も、バーレルも。

また、バーレルが能力を解除したのだろう、サトヨシは再び一つの体に戻っていた。
「クソカスどもめ…仕方ない一旦退くとするか…
静夜…また会おう」

サトヨシもまた空間の歪みの中へと消えていく

「はっ待てこの野郎ッッ

…う…」
ウルトラソウルの効果が切れ、暴走がおさまっていくスレイヤー
それと同時に静夜は気を失った
(デュカに…会いにいかなければ…………) 

―――――――――――

「これが、あの時起こったことの全てだよ。」
赤倉は話を終えた
「『教団』…ね。
それにしても、なんだか曖昧な部分が多いわね」
「ああ…どうも…私にもよくわからないのだが、『何か』を『歪められて』しまっているような…
忘れているのではない。が、記憶に無い…」
「ふうん?まあいいわ、とにかくコウをやったのは、その『教団』の『藤宮茜』って女なのね。」
「ああ、それは間違いない。

さて…他に聞きたいことは?」


「…ぐんまけん!」
杏子が言った

もはやサトヨシの下に向かわせるのは危険と考え、タチバナがここに呼んだのであった

「ふむ…『ぐんまけん』…か」
「うん、最初は土星さんの口癖かと思ってたけど…どうも違うみたいで…」

「『ぐんまけん』という言葉自体は我々は重要視していないがね

本来は『GOLD MAN CAME』という言葉だった
ずっと昔に米から来た宣教師がその言葉を発し、それが日本の人々の間でなまって伝わるようになったのだ」

「ゴーるドまん…?」

「うむ
『大きな災いや戦いが起こるとき、GOLD MANは必ずそこにいる』
そんな伝説が世界中のあちらこちらに存在するんだ…有名ではないがね

そのGOLD MAN とはいったい何者か?

『ゴールドマン』という名前の人物なのか…
単に災いや争いの現象そのものを指すのか…
あるいは文字通りに『黄金の人間』なのか…

それはわからない

しかしマイナーとはいえその伝わっている地域の範囲の広さは興味深いな…

とにかく、伝説が残る地域ではそうした災いや争いが起こったとき、『ゴールドマンが来た』という意味で『GOLD MAN CAME』あるいは『ぐんまけん』と言うそうだ。」

「ゴールドマン…か…」

シバミはふと窓の外に目をやる
雨が降り始めていた

(それにしても…ヒデエモン遅いわね…

それにザキ…大丈夫かしら)

―額から溢れてくる血を拭いブルースは激昂しつつも冷静に思考をめぐらせていた。

(1つだけわかった…。こいつは『建物を操る』能力…先ほどの『 罠 』もこいつの能力ってわけだ…。)

―ヒデエモンは自身の能力によってこの病院内に足を踏み入れた『スタンド使い』を『 部屋 』に閉じ込める『 罠 』を仕掛けていたのだった。

サトヨシと分かれた直後、ブルースはこの能力によって『 部 屋 』に閉じ込められていた。

「畜生がッ!!『C・F・H (カウボーイフロムヘル)』!!!」

C・F・Hから放たれる鎖は蛇のようにうねりながらヒデエモンに襲い掛かったが、『D・E・M (デウス・エクス・マキナ)』の拳はその鎖をたやすく吹き飛ばした。

その一撃は凄まじくスタンドのガードごとブルースを吹き飛ばした。

「…ッ!! 幾度も死線を乗り越えているこの男が雑魚なはずが無かったッ!! ただ『 一 つ 』足りなかっただけだったんだ…ッ!!」

ブルースは壁に衝突し、力なくその場に座り込んだ。
「足りなかったのは…、『『 覚 悟 』』ッ!!」

睨み付けるヒデエモンに今までの面影は無かった。
「今のこいつには…『『 凄 み 』』があるッ!!」

「…あっしはもう迷わない―。お嬢の敵を…。ただそれだけのためにッ!!」
D・E・Mが動き出す。その拳にはありったけの力が込められていた。

「『D・E・M』ッ!!」
その拳がブルースめがけて打ち下ろされる。

「…俺は『 疲 労 』。 …していた…。この街に、この世界に…。」

「ただ見たかっただけだった…。 あいつ(サトヨシ)の創る世界を…。」

「お前と同じ…盲目的。 …だった。」

「俺には『 覚 悟 』が無かった…。 だからお前に勝てない…。」

「誰かが言った…『覚悟こそ幸福』だと…。」

「俺も『 覚 悟 』するぜ…。 『 殺 す 覚 悟 』を…ッ!!」

C・F・Hの鎖が先ほどとは比べ物にならないほどの速度でD・E・Mの腕に巻きつき、引くことでものを切断する『鋸』のように、高速回転した刃によって切断する『チェーンソー』のように、動き出しD・E・Mの拳を切断した。

鈍く響く音とともに舞い散った粉塵のなかからブルースは息を荒らげ現れた。

「その能力…屋内でも屋外でも無い『別の空間』ではどうなるんだろうな…?」

「…5mだ。もし俺から5mの中に入ったらお前は負ける…。」

┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″┣″・・・・・

「…懐かしいな」

古びた手すりを撫で、ザキは呟いた。そこはザキの母校の屋上。
いつも隕鉄と過ごした、思い出の場所だった。

「何がだ?」

その声に、ザキは振り向く。

「隕鉄…なの、か…?」

ザキは、隕鉄の変わり果てた姿に目を見開いた。
全身を包帯で覆ったその姿は、まるで死神のようだった。

「ああ…時間が無い。早速はじめようか」

「待て!」

スタンドを発現する隕鉄を、ザキは制止した。

「何故、スタンド使いを殺す!? 一体お前に何があったって言うんだ!」

ザキの問いに、隕鉄は黙って彼を見つめる。その瞳には、迷いが感じられた。

「俺が勝手に思ってるだけかもしれないが、俺とお前は互いに
 たった一人の親友だと思っている。…何があったのか、教えてくれないか」

その言葉に、隕鉄はゆっくりと息を吐く。

「『たった一人』の親友、か…」

隕鉄はスタンドを消し、懐から煙草を取り出し、火をつけた。

「この世界は歪みきってる。だから、壊す。それだけだ」

煙を吐き出しながら、隕鉄は呟くように言う。

「確かに、この世界はロクでもない奴が多いかもしれない。だけどな…!」

「『懐かしい』。お前はそういったな」

ザキの言葉を遮り、隕鉄は鋭い視線を彼に向けた。

「だが、一体何が懐かしいというんだ?
 折原と馬鹿な話で盛り上がったことか?
 日野を取り合って、お前と周防が殴りあったことか?
 隠れて煙草を吸って、佐藤先生にこんこんと説教されたことか?」

「折原? 佐藤先生? 誰の事だ?」

ザキには、どの名前も思い出せない。しかし、その名前に胸が騒いだ。
何か、とても大切なことを忘れているような。

「この世界は歪みきっている。
 『世界』ってのは、『人間』だとか、『社会』だとかじゃあない。
 この世界、宇宙そのものを歪ませている奴がいる。
 歪みはどんどん蓄積し、やがて…崩壊する」

淡々と、隕鉄は続ける。

「歪みに耐えられなくなった世界は、『過去に戻る』事で崩壊を防ぐ。
 それがもう、何度も続いている。
 俺とお前は、『一巡』前の世界でも親友だった。
 その前の世界でも、更にその前でも、その前も、その前も、その前もだ。
 だが、最初から『たった一人』じゃあなかった。
 折原が消え、周防が消え、日野が消え…この世界で、佐藤先生も、消えた」

ザキの脳裏に、コウに見せられた映像が蘇った。消滅させられた、名も知らぬ男。
あれと同じように、今までに何度も消されているというのか?

「…何故、お前は覚えているんだ?」

「簡単な事さ」

再度、隕鉄はスタンドを出す。

「俺も『同じことができる』からだ」

『ツイスター・R・R』。それは空間さえ捻じ切る力。

「もっとも、破壊するだけで、都合よく曲げるなんて器用な真似は出来ないがな」

自嘲じみた笑みを、隕鉄は浮かべた。

「なあザキ。この世は絶望に満ちてる。
 そんな中で、お前は俺の最後の『希望』だ。
 だから…もっと早くこうするべきだった」

隕鉄が、ザキに向けて手を伸ばす。


そして、『ツイスター』の拳が、地面を深く抉った。

「何故だ!? 何故戦わなきゃならない!?」

かろうじてその一撃を避け、ザキは叫んだ。
攻撃の手を緩ませず、隕鉄は叫び返す。

「世界は歪みきっている! 何度戻ろうとも、歪みは完全には
 元に戻らない! 崩れ去るのは、時間の問題だ。
 そうなれば、この世にいるすべてのスタンド使いは消滅する!」

だから。

「だから! 俺は、その前に殺す…全てのスタンド使いを!
 全ての『大切な者』を! 
 そしてその後、サトヨシと共に…この世界と共に!
 『全てを壊し』! この『悪夢』を終わらせる!」

それは、何よりも深い絶望。
親しい人間を殺さなければならない。
自分は消滅しなければならない。

だが、その深い『絶望』ゆえに、隕鉄は今まで歩いてこれた。
他に方法は無い。ならば、真っ直ぐ歩くしかない。そう思えばこそ。


だが、今、彼の心に『希望』が差し込んでいる。


それは、八手が与えたもの。そしてザキが。ジョーイが支えているもの。
『サトヨシを倒してくれるのではないか』という、ささやかな、希望。

「馬鹿な事を……! 俺たちが、サトヨシを倒す!
 そうすれば、その『悪夢』は終わる! そうじゃないのか!?」

しかし、その希望を、隕鉄は否定する。

「無理だ。全ての『現実』を捻じ曲げる力……他者の存在を消し、
 死を超越するその力に、誰が対抗できるというんだ?
 『同じタイプ』の俺にはわかる。人間に勝てる相手ではない!
 だから…俺が、この『世界』ごと『捻じ切る』しかない!!」

隕鉄の包帯が風に舞い、素顔が曝け出された。
焼け爛れ、腐り、崩れ始めたその顔。
ゆっくりと、ゆっくりと、隕鉄は『屍生人』へと近づいていた。

「隕鉄、お前……!?」

「…もう、時間が無い。
 ザキ、お前の命……ここで『捻じ切らせて』もらうッ!」

佐藤先生のように、手遅れになる前に。
隕鉄は、その言葉を飲み込んだ。 

隕鉄はすでに『覚悟を固めていた』。

対するザキは『大きく迷っていた』。

精神力は一目瞭然。ザキのN・Aは真価を発揮できない。

「やめろ隕鉄ッ!この場で俺たちが戦う意味なんてないッ!」

ザキは強く訴えかける。それは友を思う故の気持ちであり、ザキの本心であった。

それを聞いて隕鉄は眼を血走らせる。

「ザァァァァァキィィィィィッ!」

バキィィッ!

隕鉄は自らの拳でザキを殴りつける。ザキはそれによって隕鉄の気持ちが伝わったことを感じた。

(隕鉄にはもう時間がないんだ…自らの意思を伝える相手に『俺』を選んだ…。『自分を殺させるために』ッ!)

ザキの瞳に悲しみと闘志が宿る。

「…隕鉄…お前の意思は・・・俺が先へ持っていくッ!」

ド ド ド ド ド ド ド !

ザキには隕鉄がフッと笑んだようにさえ見えた。

「ツイスタ ァ ァ ァ ァ ァ ―――――ッ!!!」

「N ・ A ェ ェ ェ ――――ッ!!」

ザキは『弾丸』を込める。腕の黒ずみが弾丸に移動し、弾丸を黒く変える。

N・Aの新しい能力。

ズ ガ ァ ァ ン ッ !

隕鉄は難なく弾丸をかわす。いや、『かわしたはずだった』。

「…ガフッ!」

隕鉄の肩に『後ろから』命中しているザキの弾丸。

「『弾丸の覚えた匂い』に向かって自動追跡する。これが…『俺の受け継いだもの』ッ!」

ザキは弾丸を込める。色は黒くならない。

ズ ガ ン !

隕鉄は避ける。弾丸は追ってこない。

「『4発』。『4発』だけだ。この『黒い弾丸』は・・・」

隕鉄にすでに『痛みはなかった』。肩から激しく出血し、目からは以前のような隕鉄の覇気は無くなっていた。

「う・・・オオオ…ザ・・・キ・・・ィ…」

ザキは変貌していく親友から目を背けなかった。隕鉄の意思をすべて受け入れるために。

弾丸を込める―黒い弾丸―

「あと3発で…隕鉄ッ!お前を解放してやるッ!」

ズ ガ ァ ァ ン !

隕鉄の右足に命中する。痛みはないため倒れることはなく距離を詰める隕鉄。

「ツ・イ・ス・タ ァ ァ ァ ァ --ッ!」

バ キ ッ !

ザキの体に拳がヒットする。

バ キ バ キ バ キ バ キ !

「う・・・うがァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ―――ッ!」

ザキの骨が音を立てて捩れる。今のツイスターのパワーならば強靭な人の骨さえも一瞬で捩切れる。

ザキは倒れる。もはやあばらは粉々で状態を起こしたままの姿勢が維持できない。常人の拳の一撃でもくらえば内臓に致命的なダメージを受ける。まして相手は屍生人と化しつつある隕鉄。『黒い弾丸』はあと2発。

「 ウ オ オ オ オ オ オ オ オ ッ ! 」

ズ ガ ァ ァ ン ッ !

ビ ス ッ !

隕鉄の額にヒットする。しかし隕鉄は歩みを止めない。

「ザ…キ…ィ…ッ !?」

バ キ ィ !

ザキの頬を拳がとらえる。ザキは意識が朦朧とした。頭蓋骨が捩じれて、頭を走る決定的な血管がいくつも…切れた。

「お…ゴ…ォ…ッ!?」

隕鉄は激しく吐血し、ザキの横に倒れた。すると爛れた皮膚や、狂気を帯びた瞳に以前の覇気が宿る。

「N・A…黒い弾丸は『付加特性』の効果も強力になっている…『癒す特性』を付加しておいた…。隕鉄…。お前を『人間として死なせてやるために』…」

隕鉄・ザキとも地面に倒れたまま…隕鉄は以前のような口調でいう。

「ザ…キ…あ・りが・と…う…」

ザキはその言葉を聞いて涙を流す。親友は今、自分の手で救われたのだ。隕鉄がそのまま口を開くことはなかった。

隕鉄・人間のまま死亡/リタイア

「俺もこのまま…だな…。最後に…隕鉄と俺の意思を…『黒い弾丸』に付加する…。シバミに…届いてく…れ…」

ザキは黒い弾丸を空に向かって撃った。そのあと、永遠の眠りについた。

ザキ・死亡/リタイア

――――――

「へえ・・・・・・。5m以内に入った時、あっしが負ける、そう言ったのかい?」

 ヒデエモンは言いながら、どんどん前に歩いていく。
「・・・・・・テメェ脳みそが間抜けか? それを分かっててなぜ歩いて来る?」

 『覚悟』を決めたブルースだが、ヒデエモンの行動には意表を突かれた。
 だが、ヒデエモンは動じない。

「あっしは負けられねえ。じゃねえとシバミのお嬢を守れねえ。
 けどよォ、コイツはあっしの『覚悟』と実力を試す、その為の戦いなんでえ。お前さんの全力を乗り越えなきゃあ、あっしはお嬢を守りきれねえッ!


 ・・・・・・だから、あっしは退かねェ。


 あっしは・・・・・・全力を持って『お前さんをブチ殺す』ッ!!」

 明確なる『覚悟』。明確なる『決意』。

 それを言葉にしたと同時、切断されたヒデエモンの腕が光を放った。空間に「0」と「1」が走り、数字が、ケーブルが、ヒデエモンと彼の腕を繋ぎ、一つになる。


 カーペンターズ:デウス・エクス・マキナ。
 ラテン語で『機械仕掛けの神』。
 病院という舞台、ヒデエモンとブルースというたった二人の役者の為、全ての『運命』を覆す『神』として、再びヒデエモンと共にD・E・Mは歩き始める。


「馬鹿な・・・・・・テメェの腕はこの俺が・・・・・・」

「てやんでえッ! お嬢を守る為、そしてこのヒデエモンの為、コウの姐さんが力を貸してくれてるんでえッ!! お前さんは黙って金槌に叩かれた釘みてェに、あっしにブッ潰されてりゃいいんでいッッ!!!」

 ヒデエモンは止まらない。そして到達する。


 ・・・・・・ブルースから5mの距離に。

「さあ、やれるもんならやってみやがれってんだッ! 今のあっしを止められるものは何もねェッッ!!」

 ブルースがニヤリと笑う。勝利を確信し、最も危険な能力を発動するッ!

「今だッ! C・F・Hッッ!!」


 空間が歪む。
 不快な感覚と共に、ブルースとヒデエモン、そして二人のスタンドは異空間へと連れ去られた。
「驚いたか? 俺もこの能力を使ったのはしばらくぶりだ。
死ぬ前に教えてやる。『パンテラ』、この特殊空間から脱出する術はたった二つ。

 テメェが死ぬか、俺が死ぬかだッ!
 食らえC・F・Hッッ!!」 

C・F・Hの両手から放たれたチェーンが、縦横無尽に空間を走るッ!
 その一つ一つがまるで意思を持つかのように、必殺の威力を持ってヒデエモンに襲い掛かったッ!

「くだらねェ、くだらねェッてんだタンカス野郎がッ! このヒデエモンを殺すつもりなら、もっと気合い入れてきやがれってんだッッ!!」

 D・E・Mの演算能力によって、チェーンの軌道は全て『計算済み』。
 ヒデエモンは襲い来るチェーンの嵐の中を、散歩でもするかのように悠々と歩み寄る。

「捕まえたぜ」
 ブルースの胸倉を、D・E・Mが掴む。



 ドグシャアアァッッ!!!



 無言でD・E・Mがブルースを殴り飛ばす。
 吹っ飛び、倒れ臥すブルース。

「・・・・・・ナメていた。この俺が『パンテラ』を発動した以上、負けはない、そうタカをくくっていた。
・・・・・・だが、あえて言おう。改めて『覚悟』を決めたこのブルースに、『敗北はない』ッ!」

 倒れた姿勢から、再度チェーンを放つブルース。
 無駄だと言わんばかりに平然とそれを避けるヒデエモン。

 しかし。

『!』

「俺のC・F・Hは自在に操れる。一度かわしたからと油断していると足元をすくわれるぞ?」

 ヒデエモンの肩に血がにじんでいた。さらにその後ろからは、通り過ぎたチェーンが無数に迫るッ!

「へッ・・・・・・わかってねェなァ・・・・・・。あっしは『お前さんを殺す』と、そう言ったんだぜ? たかだか傷一つつけたくれェで調子に乗りやがって、よォッ!」


 ギャギャギャギャギャッッ!!!


 D・E・Mがチェーンの束をまとめて掴む。ヒデエモンの手からは、爆発した活火山のように鮮血が勢いよく噴き出したッ!


「カーペンターズ:D・E・M、とっておきでェッ!!」

 
掴んだチェーンに無数のケーブルが走るッ!
光る数字の羅列が『情報を書き換え』ッ!
チェーンは鉄棒に姿を変えたッッ!!

「鉄棒ッ! つまり『建材』ッ! ならば大工にできねえことは・・・・・・『何もねェ』ッッ!!!」

 数本の鉄棒が骨組みになり、ブルースとC・F・Hを閉じ込めるッ!
 そしてッ!



「アァァァルアルアルアルアルアルアルアルアルアールシー(鉄筋コンクリート)構造!!」

 グサグサグサグサグサグサグサグサッッ!!!

 残りの鉄棒が鉄の杭となって、ブルースを思い切り突き刺したッッ!!



「お嬢の邪魔はさせねェ・・・・・・。ここは病院だ。運が良ければ命ぐれェは助かるだろうぜ」



(ブルース/カウボーイ・フロム・ヘル:リタイア)

話を終えた赤倉が帰り、タチバナはあのエロ医者の研究室に連れられて行った。
杏子もそれに途中まで付いていって、そのあと帰ったようだ。


しばらくして、デュカが病室を訪ねてきた。

そしてデュカは語った。秀丸から聞いたこと、そしてクツケイから聞いた、世界の『真実』を。


『噴上 瑠獅覇』という少年の話から始まり、サトヨシのこと、そして無限にループする世界、失われてしまう『未来』

奇妙なことに、それらは全て赤倉が語ったことと一致する。
いや、それが『真実』だというのだから一致するのは奇妙なことではないのだが、
ある部分においては、赤倉の話よりもずっと詳しくデュカは語ってみせたこと…それがシバミには奇妙に感じられてならなかった。

なぜあなたがそんなことを知っているの?
その問いかけにはデュカは口をつぐんだ。

言えない理由があるのだろうか…だが、デュカが話していることは単なる戯言でもなんでもなく、
全ての『真実』なのだと、シバミは信じた。


やがてデュカも帰り、シバミは再び病室に一人きりとなった。

それにしても…デュカ…あんなに暗い表情をする子だったかしら…

外は未だ静かに雨が降り続く。


頭の中で色々な考えが渦巻く。
赤倉から聞いた話。デュカから聞いた話。

世界の崩壊。 地獄。  魔王…。    ぐんまけん……。

ザキ…………。



いつしか、シバミは眠ってしまっていた。





夢を見た。

シルビアと戦ったときの夢だ。

そこで、初めてザキと出会った。

そうだ、あの時アイツ、アタシのこと助けてくれたんだっけなあ……


そんで二人で飲みに行って、ああ、こういうのも悪くないなァなんて思ったりして…………

あれ。
なんでだろう。


なんでアタシは、


泣いてるの?




シバミは静かに目を覚ました。
どのくらいの時間が経ったんだろう?
辺りを見回す。

「ヒデエモン…」

ヒデエモンはイスに腰掛けるようにして眠っていた。

ああ、良かった。遅いから何かあったのかと思ったわよ。


ザキは…ザキはまだ…?


病室の中にザキの姿は無かった。

そしてシバミは、自分のベッドの上に落ちていた『ソレ』に気が付いた。



「弾丸…?」



見覚えがある。
そうだ、これは間違いなく。

…ザキの弾丸。

シバミは、ゆっくりと手を伸ばす。


指先が弾丸に触れた瞬間、


全てがシバミの中に流れ込んでいく。

隕鉄の意志、ザキの想い。


「こ…これはァッ!!!!!」



「ん…お嬢…?」





「 い や あ あ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ! !


   こ ん な… こ ん な こ と ッ ッ ッ ッ! ! ! !」

「お嬢!?一体なにが…」


「ああッ何故ッッ 何 故 ッ ッ ッ ! ! ! 」


ザキはすでにこの世にいないという事実までも、感覚としてシバミに伝わっていく。



「 ザ キ ィ ィ ィ ィ ー ー ー ー ー ー ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! !」 

―――――――――――――


病院を後にしたデュカは、あの場所へと歩を進めていた。
色々なことが『起こりすぎた』場所、あの廃マンションだ。


最初クツケイと共に病院行こうとしていたデュカだったが、その前に一人で廃マンションに寄ることにした。

もう一度、独りになって頭の中の色々なことを整理したかった。

だが、そこで松葉に襲われることになる。

しかし誰かが助けにきて…

このあたりはデュカは意識が朦朧としていたのであまり覚えていない。
気が付くとクツケイがそばにいた。

そこでデュカは、知らされた。
彼女にとって世界の終わりとでも言えるような事実を。


「シン…」


クツケイはシバミに会いに行くのはやめて帰って休むように言ってくれたが、デュカは病院に向かうことにした。
シバミに伝えなければならないことがあったから。


そして今再び、廃マンションに行こうとしている。


そこで…誰かが自分を待っているからだ。
不思議な感覚ではあるが…誰かが呼んでいる。そんな気がしてならない。

今頃になって、涙が溢れてとまらない。
シバミの前で泣き出さなくて良かったとデュカは思った。

顔をぐしゃぐしゃに泣き濡らしながら、廃マンションに到着した。 

―静夜は街の雑踏の中を歩き続ける。

その歩みはどこかおぼつかなかった。

―今この街は悲しみに満ちていた。

愛しい人を失い、大切な仲間を失い…

街はその失った『何か』を悲しむかのように静寂に包まれていた。

行きかう人々の笑い声もまるで一枚の壁に遮られているかのようにどこかこもりがちだった。

静夜は『JITTERIN’JINN』に導かれ、知らず知らずのうちに廃マンションへと向かっていた。

『デュカ』という人に『何か』を伝えるために…

トゥルルルル―…、突如静夜の携帯が鳴り響く。

「おいッ静夜!!いまどこにいるんだッ!?」

「ジョーイさん…。僕は大丈夫ですよ。」

静夜はその電話に気丈に振る舞う。

「そうじゃねえッ!!今どこにいるかって聞いているんだよッ!?」

「あれッ!急に耳にゴミが入ったみたいです。聞こえないですッ」

静夜はそう言うとおもむろに携帯を切った。

「すいません、ジョーイさん…まだそっちに帰れそうに無いです。」

静夜は足を止める。

目の前には廃マンションがそびえたっていた。

「……来たね。デュカさん」

灰マンションにいた少年に、デュカは身を強張らせた。

「心配しないで。今日は、君のスタンドを刈りに来たわけじゃない。
 『渡したいもの』……いや。
 『渡さなきゃならないもの』があってきたんだ」

静夜は両手を開いて敵意がないことを示すと、『スレイヤー』を発現させた。

「スレイヤー:C・I。『リボーン』ッ!」

『スレイヤー』の柄に封じ込まれた、『JITTERIN’JINN』が解放される。
デュカは目を見開いた。

「シ…ン……!」

解放されたことで、主人を失った『JITTERIN’JINN』の崩壊が始まる。
『JITTERIN’JINN』は自律型のスタンドじゃない。言葉を喋るタイプでもない。
普通なら、ただこのまま消えてしまうだけのはずだ。

しかし、静夜には何故か、『それで終わらない』予感があった。

「シン……!!」

デュカが、ゆっくりと『JITTERIN’JINN』を抱き締める。

「『キャラメル・ミルク』ッ!」

そして、躊躇いもせずに、自らのスタンドの能力で……
『JITTERIN’JINN』と『キャラメル・ミルク』を同化させた。

「なッ…」

突然のそのデュカの行為に、静夜は言葉を失う。
デュカのその行為は、あまりにも無茶だ。『スタンド』は『魂』の一部。
スタンド同士を同化させるのは、自分の魂を他者の魂で侵食させる事に等しい。

「うああああッ!」

デュカはあまりの激痛に、地面をのた打ち回った。

「『スレイヤー・アルター・オブ』……」

「ま、って…」

その『痛み』を刈り取ろうとする静夜を、デュカは静止する。
激痛と共に、シンの『苦しみ』や『悲しみ』が、伝わってきていた。

『真の愛情』とは。

相手の全てを受け入れ、そして『理解』する事。

デュカに、何か考えや、確信めいたものがあったわけではない。
だからこそ、その『奇跡』は起こった。 

『AVE MARIA』

『真実を照らし出す』能力を持つ。
『キャラメル・ミルク』が『JITTERIN’JINN』と一体化する事により、
『ほんのひと時』だけ現れたスタンド。

『AVE MARIA』の光に照らされ、デュカは全てを理解した。
秀丸への思いは、彼の能力によって作られたこと。


そして、『それでも』デュカは彼に恋をしていたことを。
秀丸が地獄に落ちる瞬間。恋したときに、彼が死んだ、熱病のような刹那の恋。

「シン……」

激痛に耐えながら、デュカは廃マンションの壁に触れる。
『キャラメルミルク』の能力で、その中にしまってあった、『秀丸の像』を取り出す。
それは、デュカが『愛している』相手を想って作った像。

『究極の形』は考えてから彫るのではなく
すでに石の中に運命として『内在している』

記憶から『考えて』作られたその像は、『AVE MARIA』の光によって、
『真に心の示す形』へと、姿を変える。

即ち、シンの姿へと。

「シン……『JITTERIN’JINN』、返すね……」

デュカの胸から、光の玉が飛び出し、シンの像の中へと吸い込まれる。

灰色だった像は見る見るうちに赤みを帯び……ゆっくりと、その、口を開いた。

「デュ……カ……」

二人は、じっと見つめあう。
言わなければならない事が、沢山あるはずなのに。
伝えなければならない事が、沢山あるはずなのに。

胸がつまり、何も出てこない。

「シン……ッ!」

ただ、デュカは、シンの胸の中に飛び込んでいた。

涙を流し抱きつくデュカの頭を、シンは優しく撫でる。

「甘えん坊だな、デュカは」

「うん……うん……」

シンの身体が、崩壊していく。

そして、それに繋がるように、デュカの身体も。

『真実の愛』の光に照らされながら。

「行こうか、『望』」

「うん……っ」

二人は、消えていった。


『本体:デュカ/スタンド:キャラメル・ミルク - 死亡』

第14話 『受け継がれる想い』 
To Be Continued...   外伝『14話外伝』

最終更新:2008年02月01日 22:26