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話を終えた赤倉が帰り、タチバナはあのエロ医者の研究室に連れられて行った。
杏子もそれに途中まで付いていって、そのあと帰ったようだ。


しばらくして、デュカが病室を訪ねてきた。

そしてデュカは語った。秀丸から聞いたこと、そしてクツケイから聞いた、世界の『真実』を。


『噴上 瑠獅覇』という少年の話から始まり、サトヨシのこと、そして無限にループする世界、失われてしまう『未来』

奇妙なことに、それらは全て赤倉が語ったことと一致する。
いや、それが『真実』だというのだから一致するのは奇妙なことではないのだが、
ある部分においては、赤倉の話よりもずっと詳しくデュカは語ってみせたこと…それがシバミには奇妙に感じられてならなかった。

なぜあなたがそんなことを知っているの?
その問いかけにはデュカは口をつぐんだ。

言えない理由があるのだろうか…だが、デュカが話していることは単なる戯言でもなんでもなく、
全ての『真実』なのだと、シバミは信じた。


やがてデュカも帰り、シバミは再び病室に一人きりとなった。

それにしても…デュカ…あんなに暗い表情をする子だったかしら…

外は未だ静かに雨が降り続く。


頭の中で色々な考えが渦巻く。
赤倉から聞いた話。デュカから聞いた話。

世界の崩壊。 地獄。  魔王…。    ぐんまけん……。

ザキ…………。



いつしか、シバミは眠ってしまっていた。





夢を見た。

シルビアと戦ったときの夢だ。

そこで、初めてザキと出会った。

そうだ、あの時アイツ、アタシのこと助けてくれたんだっけなあ……


そんで二人で飲みに行って、ああ、こういうのも悪くないなァなんて思ったりして…………

あれ。
なんでだろう。


なんでアタシは、


泣いてるの?




シバミは静かに目を覚ました。
どのくらいの時間が経ったんだろう?
辺りを見回す。

「ヒデエモン…」

ヒデエモンはイスに腰掛けるようにして眠っていた。

ああ、良かった。遅いから何かあったのかと思ったわよ。


ザキは…ザキはまだ…?


病室の中にザキの姿は無かった。

そしてシバミは、自分のベッドの上に落ちていた『ソレ』に気が付いた。



「弾丸…?」



見覚えがある。
そうだ、これは間違いなく。

…ザキの弾丸。

シバミは、ゆっくりと手を伸ばす。


指先が弾丸に触れた瞬間、


全てがシバミの中に流れ込んでいく。

隕鉄の意志、ザキの想い。


「こ…これはァッ!!!!!」



「ん…お嬢…?」





「 い や あ あ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ! !


   こ ん な… こ ん な こ と ッ ッ ッ ッ! ! ! !」

「お嬢!?一体なにが…」


「ああッ何故ッッ 何 故 ッ ッ ッ ! ! ! 」


ザキはすでにこの世にいないという事実までも、感覚としてシバミに伝わっていく。



「 ザ キ ィ ィ ィ ィ ー ー ー ー ー ー ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! !」 

―――――――――――――


病院を後にしたデュカは、あの場所へと歩を進めていた。
色々なことが『起こりすぎた』場所、あの廃マンションだ。


最初クツケイと共に病院行こうとしていたデュカだったが、その前に一人で廃マンションに寄ることにした。

もう一度、独りになって頭の中の色々なことを整理したかった。

だが、そこで松葉に襲われることになる。

しかし誰かが助けにきて…

このあたりはデュカは意識が朦朧としていたのであまり覚えていない。
気が付くとクツケイがそばにいた。

そこでデュカは、知らされた。
彼女にとって世界の終わりとでも言えるような事実を。


「シン…」


クツケイはシバミに会いに行くのはやめて帰って休むように言ってくれたが、デュカは病院に向かうことにした。
シバミに伝えなければならないことがあったから。


そして今再び、廃マンションに行こうとしている。


そこで…誰かが自分を待っているからだ。
不思議な感覚ではあるが…誰かが呼んでいる。そんな気がしてならない。

今頃になって、涙が溢れてとまらない。
シバミの前で泣き出さなくて良かったとデュカは思った。

顔をぐしゃぐしゃに泣き濡らしながら、廃マンションに到着した。 

―静夜は街の雑踏の中を歩き続ける。

その歩みはどこかおぼつかなかった。

―今この街は悲しみに満ちていた。

愛しい人を失い、大切な仲間を失い…

街はその失った『何か』を悲しむかのように静寂に包まれていた。

行きかう人々の笑い声もまるで一枚の壁に遮られているかのようにどこかこもりがちだった。

静夜は『JITTERIN’JINN』に導かれ、知らず知らずのうちに廃マンションへと向かっていた。

『デュカ』という人に『何か』を伝えるために…

トゥルルルル―…、突如静夜の携帯が鳴り響く。

「おいッ静夜!!いまどこにいるんだッ!?」

「ジョーイさん…。僕は大丈夫ですよ。」

静夜はその電話に気丈に振る舞う。

「そうじゃねえッ!!今どこにいるかって聞いているんだよッ!?」

「あれッ!急に耳にゴミが入ったみたいです。聞こえないですッ」

静夜はそう言うとおもむろに携帯を切った。

「すいません、ジョーイさん…まだそっちに帰れそうに無いです。」

静夜は足を止める。

目の前には廃マンションがそびえたっていた。

「……来たね。デュカさん」

灰マンションにいた少年に、デュカは身を強張らせた。

「心配しないで。今日は、君のスタンドを刈りに来たわけじゃない。
 『渡したいもの』……いや。
 『渡さなきゃならないもの』があってきたんだ」

静夜は両手を開いて敵意がないことを示すと、『スレイヤー』を発現させた。

「スレイヤー:C・I。『リボーン』ッ!」

『スレイヤー』の柄に封じ込まれた、『JITTERIN’JINN』が解放される。
デュカは目を見開いた。

「シ…ン……!」

解放されたことで、主人を失った『JITTERIN’JINN』の崩壊が始まる。
『JITTERIN’JINN』は自律型のスタンドじゃない。言葉を喋るタイプでもない。
普通なら、ただこのまま消えてしまうだけのはずだ。

しかし、静夜には何故か、『それで終わらない』予感があった。

「シン……!!」

デュカが、ゆっくりと『JITTERIN’JINN』を抱き締める。

「『キャラメル・ミルク』ッ!」

そして、躊躇いもせずに、自らのスタンドの能力で……
『JITTERIN’JINN』と『キャラメル・ミルク』を同化させた。

「なッ…」

突然のそのデュカの行為に、静夜は言葉を失う。
デュカのその行為は、あまりにも無茶だ。『スタンド』は『魂』の一部。
スタンド同士を同化させるのは、自分の魂を他者の魂で侵食させる事に等しい。

「うああああッ!」

デュカはあまりの激痛に、地面をのた打ち回った。

「『スレイヤー・アルター・オブ』……」

「ま、って…」

その『痛み』を刈り取ろうとする静夜を、デュカは静止する。
激痛と共に、シンの『苦しみ』や『悲しみ』が、伝わってきていた。

『真の愛情』とは。

相手の全てを受け入れ、そして『理解』する事。

デュカに、何か考えや、確信めいたものがあったわけではない。
だからこそ、その『奇跡』は起こった。 

『AVE MARIA』

『真実を照らし出す』能力を持つ。
『キャラメル・ミルク』が『JITTERIN’JINN』と一体化する事により、
『ほんのひと時』だけ現れたスタンド。

『AVE MARIA』の光に照らされ、デュカは全てを理解した。
秀丸への思いは、彼の能力によって作られたこと。


そして、『それでも』デュカは彼に恋をしていたことを。
秀丸が地獄に落ちる瞬間。恋したときに、彼が死んだ、熱病のような刹那の恋。

「シン……」

激痛に耐えながら、デュカは廃マンションの壁に触れる。
『キャラメルミルク』の能力で、その中にしまってあった、『秀丸の像』を取り出す。
それは、デュカが『愛している』相手を想って作った像。

『究極の形』は考えてから彫るのではなく
すでに石の中に運命として『内在している』

記憶から『考えて』作られたその像は、『AVE MARIA』の光によって、
『真に心の示す形』へと、姿を変える。

即ち、シンの姿へと。

「シン……『JITTERIN’JINN』、返すね……」

デュカの胸から、光の玉が飛び出し、シンの像の中へと吸い込まれる。

灰色だった像は見る見るうちに赤みを帯び……ゆっくりと、その、口を開いた。

「デュ……カ……」

二人は、じっと見つめあう。
言わなければならない事が、沢山あるはずなのに。
伝えなければならない事が、沢山あるはずなのに。

胸がつまり、何も出てこない。

「シン……ッ!」

ただ、デュカは、シンの胸の中に飛び込んでいた。

涙を流し抱きつくデュカの頭を、シンは優しく撫でる。

「甘えん坊だな、デュカは」

「うん……うん……」

シンの身体が、崩壊していく。

そして、それに繋がるように、デュカの身体も。

『真実の愛』の光に照らされながら。

「行こうか、『望』」

「うん……っ」

二人は、消えていった。


『本体:デュカ/スタンド:キャラメル・ミルク - 死亡』

第14話 『受け継がれる想い』 


to be continued...

最終更新:2008年01月20日 19:46