彼の者は闇の化身、そしてそれを追うのもまた闇の化身…。
計画がことごとく失敗に終わっていくことに、
ケイは苛立ちを覚えていた。
あんなにいた神の尖兵も、
最終決戦に至る前に大半が失われてしまった。
裏切りも多く含まれる。
「私はなんて孤独なんだろう…こんなにも理解されない…」
知っている。
人というものは俗深く、
俗物には崇高すぎる私の理想を真に理解できるものは少ない。
理解者が少ない、ゆえに私は正しい。
「…神よ、私という存在のなんて尊いことでしょうか」
松葉を偵察に送り、
トメ、ヒデエモンは意識が戻らないことを確認できた。
「あはははははははははっ…」
下品にも高笑いをしてしまう。
どんなに考えても打倒する手立てがなかった女帝を
駒の一つが偶然にも成し遂げてしまった。
愉快でならない。
そういう意味ではまだまだ立て直しが利くということだ。
当たり前だ、正義が成り立たない訳が無い、
私が勝てないような世界なら滅びたほうがいい。
クツケイ、次に邪魔なのは明らかに奴だな…。
松葉、ソバサイに始末させよう。
敗北してもその能力ぐらいは明らかにしてくれるだろう。
シンを壊した時の感触を思い出す。
恍惚の表情。
「んふ…クツケイ、私が壊してみてもいい…」
背筋を怖気が走る。
『ケイちゃん…』
時折、ケイの耳に女の声が届く。
大切な存在だった…。
唯一無二の女だった…。
クツケイを打倒する為に最適な駒だったのに!!
あんなに可愛がっていたのに!
クツケイを確実に始末できるお気に入りだったのに!
お気に入りの玩具が次々と…。
吐き気がする!役目も果たさずウロウロと!
「滅せよ、私は不浄の存在を容認しない…」
女の名を口にしようとしたが、
計画に組み込まなくなった駒の名はすでに忘れていた。
「無駄に割く記憶のスペースがないんだ」
臭い、臭い、
いつかの女の霊もそうだ、
亡霊がこうもハッキリ存在を露にする。
オゾマシイことだ、
手を下せないのが腹立たしい。
不可解なことが多い、
未来の破壊まで、もう時間がないのかもしれない。
「憂いを断って、世界を救わなくてはな…」
……闇が濃い。
シルビアは壁に塗りつけられた絵の前に佇んで、
それを見上げていた。
クツケイが書いた絵、そこには闇があった。
ケイとクツケイは似ている。
きっと辛い思いをしてきたと思う、
繰り返し敗北して、孤独だったと思う。
それを愛おしく思えるのは、
私がやはり孤独に飲まれていたからだ。
負の精神が負の精神と出会うとき、
「この人なら、私の苦しみを理解してくれる」
そう期待してしまう。
だから私はケイの闇に飲まれて、
神の尖兵になってしまった。
でもそれは陶酔なんだよ、自分が可愛かったんだ。
エゴを通すために、人を傷つけるのを厭わなかった。
男の人に必要とされる、
そんな時がくるなんて思わなかった。
だから凄く嬉しかったけど、
前の世界で幸せになれなかったように、
私じゃアナタを幸せにできないんだよ。
「解り合えると思っても、闇は闇を深くするだけなんだよ…」
あの人には光が必要、闇を照らせるのは光なんだ。
私には足りない…傷を舐め合っても幸せにはなれない…。
シバミと出会って私はこんなにも救われた。
霧が晴れて、前を見通すことができるようになった。
人を幸せに出来るのは、
いつだって「陽の気」を持つ人なんだ。
酔ってはいけないんだ、
闇に酔って抜け出すことを恥じてはいけない。
「誰か、彼に光を見せてあげて…」
それには私は力不足だ…。
クツケイさん、闇はいつでもエゴから来るの。
見渡して、愛して、受け止めるの。
そうだよね、シバミ…。
クツケイの絵には闇がある、
同時にそこには絶望とは違う、渇望がある。
神の希望、人の渇望、獣の絶望。
誰か…どうか彼に光を見せてあげてください。
─────
クツケイは
かつて同志だった男のもとへと足を進める。
「シルビアの為にも、今度こそ世界を救う…」
シルビアが生きていて良かった。
彼女は孤独の辛さを知っている女だ、
俺の苦しみを理解できる特別な存在なんだ。
二人で幸せになろう、愛するシルビア…。
俺は、強くなるよ。
美術部に入部し、
絵を教えてくれた先輩は美しく、強い人だった。
絶望を知る人間の美しさを教えてくれた。
俺は、先輩に近づいてます。
アナタを目指して強くなった、絵もこんなに近づいた。
今も先輩は絵を描きますか?
観たいな、どんなに凶暴で華麗な絵を描くのか。
タチバナ先輩、俺は世界を救います。
勇気を与えてください、力を貸してください。
絶望は圧倒的な力だから、
それと向かい合い、乗り超える時、
人は全てを乗り越えられる。
「そして、絶望を覆せる唯一の感情は怒り、
怒りだけが絶望を打ち負かすことができる!」
クツケイはケイのアジトにたどり着く。
闇だけを力と信じ、道しるべとして。
****
あは、、、あはははははははは、はははあは、は、ははははは、は、は、はははあは、ははははッ
地獄なんて生易しいんだよ?
なんなら君も来てみる?
なーんてね。冗談
やっぱり本気!
さあ、来なよ、怖がらないで……
――盟約――
サトヨシを守る
邪魔する者を殺す
それが、僕
ゾクウゥッッッッ
「ッ!?」
「アル姉……?」
杏子の熱烈な誘いを断りきれず、アルジスは買い物に付き合っていた。その帰り道、異変がアルジスを襲う。
『なんなの、この全身を貫く様な……感じ』
アルジスは寒気と吐き気を同時に感じる。感じたことが無いほどの……
『吐き気を催す……邪悪』
「アル姉顔色悪いよ……救急車呼ぼうか?」
「いらない」
アルジスは歩くペースを早め、杏子に話しかける。
「杏子……よく聞いて」
「……?」
――嫌な感じが徐々に近づいてくる。一刻も早く、何かしらの対応をしなければ……
「敵が近くにいるわ」
沈黙、杏子はキョトンとしていたが、苦笑いする。
「またまたぁ。冗談は程々にしてくださいよぅ」
すこし苛立ったアルジスは、強引に杏子の肩を掴む。
「真剣よ。そう、あなたにもある“女の勘”ってやつがはたらいたの」
「……女の勘?」
「何となく、分かるはずよ。女の子なら、誰でも持ってるから」
言い終えると、アルジスは杏子の背中を無理矢理押す。
「走りなさい、タチバナの元へ。エレチュンを活用しながら」
「じゃあ、アル姉はどうすんのよッ!!」
「ふぅ……」
妹を守るのは
姉の役目でしょ?
行きなさい、杏子
「アル姉……けど」
「さあ、早く!」
杏子は駆け出す。何度も後ろを振り返りながら。
『未来を守るのも、大人の役目』
『それ以前に、私はおせっかい焼き』
『希望ある、若者のために……』
杏子の姿が視認できなくなると、アルジスは口紅を取り出す。
「さあ、来なさい……」
一歩一歩、“アレ”が近づいてくる
チュッ
「さあ、行って……」
幾つかの紙飛行機にキスし、別々に飛ばす。風任せだが、逆に“風”だから良い。
『2号異常ナイカ?』
『2号ヨリ1号ヘ。風ニ不穏ナウゴキハ無イ』
『3号ヨリ皆ヘ、イキテカエルゾ』
『ラジャー!!』
「あー、ちょっちやりすぎたかな?」
紙飛行機に無線など無いため、口で互いの連絡をとる。うるさい。
目的、それは風の動きを知る。動く者があれば、風は必然的に乱れる。それを風に敏感な“紙飛行機”に、感じ取らせてようとした。
『コチラ4号、風ガ“乱レ”……』
『4号オオオオ!?』
「そこねッ!」
私からから距離約9m、塀の陰!!そこに向かって『投げキッス!』
「塀は反抗的になって……崩れる」
ガラガラガラガラガラガラガラカラ
「さあ、これぐらいで殺られないでしょ?出てきなさい」
瓦礫から少年が出てくる。少年?青年にも見える?分からない。ただもっと奇妙なのは……
「スタンドが……上半身だけ……?」
****
ハァハァハァハァ
「エレチュン!次は!?」
「チュン!」
「左ね!了解」
杏子はエレチュンを先頭に、全力疾走していた。目的は1つ
タチバナに会うため
走り抜ける。道を、杏子はタチバナへの元へと。
「エレチュン、まだなのッ!?」
「チュンチュン!!」
「後少しなのねッ」
「チュン!」
希望へと、杏子は走る。そして、遂に!!
「おや、杏子。どうしました?今迎えに行こうと……」
「タチバ……」
タチバナは、杏子の姿は見てとれた。
刹那
何者かが、杏子に覆い被さり、一緒に消えた。
タチバナには、“下半身”に見えた。あれには、見覚えがある。
「……杏子!」
****
「サトヨシの邪魔をするやつは」
コロス
「ふん、あいつのせいで、“死んだ人”が大勢いるんだよ」
……チャン
「だから、許さない。従っているお前も、サトヨシも!」
怒りのアルジスを前に、瑠獅覇は飄々とした態度を取る。
「怖いね……こんなことされると、どうする?」
スタンドはいつの間にか、下半身がついていた。しかし、アルジスはそれよりも“その手に握られている方”に目がいく。
「杏子!?」
「逃げてたから、連れて来ちゃった」
杏子は首を押さえられ、苦しそうにもがいている。
「さあ、どうするどうするどうするどうするどうするどうする?」
ど う す る ?
あッはははッははははははははははッははははッ
「杏……子」
アルジスは、どうすることもできなかった。
(私…は…)
ここは、…最近見た場所だった。
(病室 ね)
病室で寝ている自分、それは
(私は 負けたという事かしら
…でも 記憶がある
そう ケイやあの人の孫や ……)
「目が 覚めたみたいだね」
トメの隣に男が座っていた。
見たことの無い顔をしていたが、それが誰かはすぐにわかった。
「ああ きにしないで
寝ていて大丈夫だよ」
不意に病室のドアが開かれる。
音は立たず、静かにしかし開くのが遅いというわけでもなく。
そう、ドアを開けるまでは100点満点をつけてあげたい位だった、だがその後がいけなかった。
「ーーーあなたはッ!!
ここで何をしているのですかッ!!」
林檎が今にも襲い掛からんと声を張り上げる。
「林檎… 静かにしなさい
それでは点数をつけることさえできませんよ」
軽く微笑みながら、大事なものを見る目で見つめる。
「申し訳ありませんが 席をはずしていただいてよろしいですか?」
「ああ 俺かい?
いや 用事は特にないから帰ろうかなとも思っているんだが」
「いえ、また後ほどお話がありますので」
男は そうかい? と呟くとゆっくりと椅子から立ち上がり病室を出て行く。
ドアの横にたったままだった林檎は小さく「申し訳ありませんでした」と言い、男が廊下を曲がったのを確認してからドアをゆっくりと閉じる。
「おばあさま あの方は一体?」
林檎はトメに布団を掛けなおし、椅子に座る。
夏だというのにここ最近涼しい。
エアコンの風に揺られ風鈴が“ちりん”と音を立てる。
「おばあさま?」
「林檎 あなたはバーレル様とどうなのかしら?」
「おおおおおばあさま!! なに なにを急に!!
わ わたしとバーレル様は その…」
「その?」
「… なにもかわっていませんわ おばあさまがバーレル様に私を護る仕事を渡したときから
ずっと かわっていません わ…」
「好きなのかしら?」
林檎はその名の通り 真っ赤に顔を染め
「…は い」
「思いは 伝えないと伝わりませんよ
たとえあなたに親が決めた 許婚がいようとも
あなたの好きなように生きたらいいのですよ
私は それが 私の夢なのです」
「おばあさま?」
トメが小さく手を振る
こっちに寄りなさい、そういうことなのだろう
林檎は顔を近づける
「実は私も 家出 をしたことがあるのですよ」
にっこり微笑みながらトメは言う
「ええ ええええええ えええ?!」
「もう 知っているのは極一部の 使用人頭くらいですから あなたが知らなくても無理はありませんよ」
「おばあさまも だったのですか?!」
「ええ もう… 50年は昔になりますね
そうそう 神城様のおじいさまに 恋に落ちたのもそのころですわね
しかし 今の旦那様と出会って あなたが生まれていることも
今の私にとっては幸せなのです」
「おばあさま?」
「林檎 バーレル様の許へ行きなさい
そして確りとあなたの想いを伝えなさい
捻じ曲がっていくこの世界で 自分の曲がらない思いを相手にぶつけなさい
私のことはもう 気にしないでいいですから
ですから 林檎
貴女は もう ここにきてはいけませんよ」
「何を言っているの ですか おばあさま
私はーーーー。」
「恋は何よりも優先すべしですよ
淑女ならば 自分の想いをぶつける先を確りと捕まえておきなさい」
若い女性よりも輝く笑顔
林檎にはトメの顔がそう見えた。
そして、何も言わずに立ち上がり。
病室のドアに手をかけ言う。
「また 来ますわ」
林檎が去って数分
先ほどの男が病室へと入ってくる
「もういいのかい?」
「ええ 十分ですわ サトヨシさん」
サトヨシは微笑む
「顔 変えてみたんだがよくわかるね
さすがは女帝 というところかな?」
「誰でもわかりますわ それよりも」
「そう それよりも ここで貴女を殺させていただく 僕の目的はそれだ
彼女を逃がしたのは …まあ 気にしない
元々的ですらなかったからねえ彼女は
相手を認識しないと戦えないなんて、僕にとってはありを踏み潰すより勘単に手玉に取れる」
「男性のおしゃべりは 嫌われますよ」
「寝たきりの君がさみしいんじゃないかなって思ってしゃべってあげてるんじゃないか」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「いえ もう 十分です」
あたりの空気がピシピシと音を立て凍っていく。
「そうだね
君みたいに重傷の人を相手にするのは
はばかれるが
邪魔をした報いだと思ってくれ」
病室で静かに戦いの幕が上がる。
あの『 ウーマン』さぁ。
固まったままだったからさぁー。
グ チ ャ ッ !
あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!
殺 すのに、
『時間 か け な い タイプ 』なんだよねッッ!!
『 雑魚い事』、嫌いなんだよゥ。
ゲームで『 勇者に、スライム当てる』よーな、スットロイ事って言うの?
みすみす、チャンス与えるよーなモンじゃん?
俺が魔王だったら、『 絶対そんな事しない ね ッ ! 』
あ・・・ッ!
『 俺 、 魔 王 じゃん ッッッッッッッッ ! ! ! ! ! 』
あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!
・・・・・
急だった。
目の前の景色が変わって。
アルジスさんが居て。
危ないなって思うよりも先に。
グ チ ャ ッ !
・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
それは、突然過ぎる『 死 』であった・・・・。
横断歩道を、渡っている最中。
ダンプや、タンクローリーに、はねられたか の ような・・・。
唐突に、訪れた。 『 生 の結末。』
杏 子 は 、 息 絶 え た ・・・・。
ー 杏子 スタンド 「 エレクトロ・チューン 」
首から 上 が、コ ロ コ ロ 転がって 『 死 亡 』
・・・・・
怒り。
悲しみ。
喪 失 。
悲鳴よりも早く渦巻く 感 情 。
『許せないッ!!』
そう思うよりも早く。
あのスタンドの『 上半身』と『 下半身』とが『 合 体 』をして・・・・ッッ!!!
・・・・・
「『ゴミ みてぇ。』」
「スットロいよぅ、『 熟れ 過 ぎ た ウ ー マ ン 』」
「『 雑巾』みてぇーに、『 殺 し ちまうかァ。』」
ー 上半身 『 スウィッチ』
ー 下半身 『 マグマ』
二つが一つに合わされば・・・・。
全 国 制 覇 も・・・。
「『 夢 じ ゃ な い ッッッッッ ! ! ! 』 」
「 『 ソ ウ ル ・ ス テ ー シ ョ ン ! ! ! ! 』 」
・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
ー ああ・・・・。
ー 無力だね。
ー でも、それは罪じゃあない。
ー 君は、精一杯生きた。
ー 死なんてそんなモノ。
ー 君の死を、哀しむモノが居るだろう。
ー 哀しむ人が、誰か居る。
ー それは、何よりも『 生の証。』
ー だから僕の『 初恋』は『 報われ た ん だ。 』
ー ああ・・・。『アルジス。』
ー ああ・・・・・。『アルジスッ!』
ー アルジスッ!
ー アルジスッッ!!
ー アァァァァ ァ ァ ア ア ア ルジィイイ イ イ イ イ イ ーーー ス ッ ッ !!
ドゴドゴドゴドゴ ド ゴ ド ゴ ド ゴ
ブチャブチャブチャ ブ チ ャ ブ チ ャ
ビチャビチャビチャビチャ ビ チ ャ ビ チ ャ
・・・・・・・・・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
ー アルジス スタンド 「 ラブトーク 」
肉、骨、皮、血、 判 別 つかぬくらい、 グチャグチャになって 『 死 亡 』
・・・・・
噴上 瑠獅覇は、考える。
何で・・・。
「 サトヨシ」守んなきゃなんねぇーのか な ?
大した事ねぇー理由、だたぁ思うンだけどさぁ。
こーして、『 殺していく度に。』
『 理 由 が 、 泣い て る 気 が、 してなんねぇンだよなぁ・・・・・・ 。 』
クソッ!クソッッ!!
この瞬間が『 大 嫌 い 』だッッ!!
まぁ良い。
次は『 決 着』を着けようとしている、『 ケイ』と『 クツケイ』だなァアア・・。
蛇と蛇とが、互いの『 尻 尾』、喰い合うみてぇーに、潰し合ってくれよォ。
最後に、美味しく頂くの『 俺 に 、すっからさぁああああ あ あ あ あ ! ! ! 』
あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!
ー 噴上 瑠獅覇 は、この場を去った・・・。
・外伝『ふたり』
「……面白い、実に面白いことになりましたね……」
『二つの物体』を見ながら、『一人の男』がつぶやいた。
その声に込められたのは、哀愁、憎悪、後悔、その他数えきれない程の感情。
「ブルース・ドライブ・モンスター。二人を完全に『分解』してください。もう誰にも触れることができぬよう」
ムトウタチバナのスタンド、BDMが、『二つの物体』つまりアルジスと、そして杏子の遺体に優しく触れ、原子単位で『分解』する。それまで二人の人間の形をしていたそれは、光の粒となって空へと静かに溶けて行った。
「……不本意ながら私の恩人であったビッチと……そして私がこの人生の中で唯一『かなわない』とそう認めた女性を……その最期を……私以外の手に委ねる訳にはいきませんからね。そして……」
眼鏡を直し、ネクタイを締めながら、タチバナは決意の言葉を口にする。
「絶対に許しませんよ、クソガキ。必ず私がこの手で殺します。『分解』して『分解』して『分解』して『分解』して『分解』して『分解』して『分解』し尽くしてやらなければ……私の気が治まりません」
右の拳を握りしめ、その場を後にするタチバナ。
「さようなら。あなた方のようなビッチに流す涙はありませんが……」
溜息。
「……ありがとう、杏子。すまなかった」
「入りたまえ」
何百年も前からそこに立っていたであろう、とその静かで厳かなたたずまいが主張しているかのような大聖堂の一室で、一人の神父が扉の外にやってきた二人の使徒に声をかけた。
神父―ケイの前に出てきたのは松葉とソバサイ。
ケイは二人に背を向けたまま声をかける。
「待っていたよ。松葉、気分は落ち着いたかね? まさかいつまでも下らないことに縛られている男でもあるまい」
突っかかろうとする松葉を、ソバサイが手で制する。
後ろを向いたまま、ケイは続ける。
「まあいい。私は挨拶をするために君達を呼んだのでもなければ、そんな悠長なことをしている時間も残されてはいないだからね。……間もなく、前夜祭が始まる」
ケイの言葉に怪訝な表情を浮かべる二人。ソバサイが問う。
「前夜……祭、ですか?」
「ああ、来るべき『最後の審判』の、前夜祭だ。尊い殉教者の血によって、『ハルマゲドン』はその重たい幕を静かに開けることになる……。楽しみだ。本当に楽しみだよ……ククッ……クフフフフ……もう、すぐそこまで来ているはずだ。あの男、かつて私と思想を共にしたあの男が……クハッ……クフハハハハハハハッ!!」
ケイは振り返り、その顔に狂喜をたぎらせて叫ぶ。
「さあ行こう! トランペットが鳴り響くまで時間がないッ! 生贄はすぐそこだッ!! 始めようッ! 待ち望んでいたッ! ずっと待ち望んでいた最後の時はもうすぐそこなんだッッ!! 待ちくたびれた、本当に待ちくたびれたぞッッ!!」
扉を思いきり開け放ち、無人の礼拝堂を駆け抜けるケイ。
「ついて来い、出来損ないの神の尖兵共ッ! さあ、今扉が開くぞッ! 楽しい余興の、前夜祭の始まりだッッ!!」
自らの思想に絶対の自信を持ち、
他人をけして認めないケイ。
そのエゴイストが警戒する数人の内の一人。
何せソイツを倒す為に、
茜とハイネのコンビを用意したってくらいだ。
俺は別に誰かに従いたいってわけじゃないんだよね、
ただこのままじゃあ世界は終わっちゃうし、
救える可能性がある人の手助けはしたいワケ。
まあ、自分自身の為にね。
元凶のサトヨシってのは何でも捻じ曲げて、
「はい、今の無しよ~っ」って、何でも消しちゃって、
挙句、世界まで壊しちゃうってんだから怖ぇよな。
ケイが多少時間を止められるっても、
どうにも勝ち目は薄い。
十回触れねぇだろ~っ、どう考えても。
つーかね、ケイくらいなら
俺と松葉で倒せちゃうと思うんだよなぁ~。
「どうかね松葉ちゃん、
そのクツケイってのがケイよりも見込みあったらさ、
寝返るってのも一つの手かもよ?」
ケイを遠巻きに、
俺はソバサイとその指示を待っていた。
「ケイはあれでも一応命の恩人だからよ」
そう言ってソバサイの提案を突っ撥ねたが、
ケイが俺を助けたのは、
奴自身の為でしかないことも理解してる。
それでも男がホイホイ付く側を変えてたまるか、
決めた場所で結果を出す。
指導者はクズでも目的は同じ筈だ。
「まったく、その融通の利かなさには恐れ入るよ…」
ソバサイはやれやれといった様子だ。
待ち構える俺たちの前に姿を現す男。
なんだか辛気臭い野郎だ。
本当に強いのか?
クツケイとケイが対峙する。
「ケイ、相談がある」
「相談とは、この期に及んで穏やかな表現だな」
ケイは明らかに見下した態度だ。
「もう時間がない、
奴を倒すのにお前の時間を止める能力が必要なんだ」
「キミには私の力が必要、
その意見のどこに私へのメリットがあるのかな?」
どの道ケイには、
クツケイを生かしておく気がない。
破壊衝動が快楽を求めている。
「さあ、決着をつけよう
キミは最終戦争に向かう戦士たちへの生贄だ」
ケイが松葉とソバサイに合図を送る。
「あーあ、俺は手を組もうってんなら
力を合わせるべきだと思うんだけどねぇ」
ソバサイは腰が重い。
「松葉とソバサイか…」
クツケイは迫る二人の名を呼ぶ。
「何だよ、俺たちのこと知ってるのか?
俺はテメェのこたぁ知らないぜ」
「ああ、知っている。
アマエ達では俺の相手は務まらない」
その能力も実力も、クツケイは前の世界で熟知している。
クツケイの余裕の態度に松葉がキレる。
「試してみるかよぉ!!
ウラウラウラウラウラウラウラウラウラウラッ!!」
飛び掛る松葉、ウルトラソウルでラッシュを見舞う!
それをクツケイのハイブリッドレインボウが防御する。
「クツケイのスタンド能力は自在に着色する力だ」
ケイのアドバイス。
着色…ハイネみたいなもんか?
茜がいればともかく、それって攻撃力無いよな?
色塗られて痛ぇ訳じゃねぇし、目くらましにしかならない。
オマエ、怖くねぇゼ!
松葉のラッシュを捌くクツケイのスタンド。
パワー、スピード共に互角、経験値でクツケイに分がある。
真っ向勝負じゃ荷が重い。
しかし、こっちはホームなんでね。
「松葉ちゃーん!オッケーイっ!」
ソバサイの合図、
クツケイの足元の影に重力場が発生し、動きを封じる。
「決着!!」
松葉が距離を取り、ウルトラソウルの拳を突き出す!
「喰らいやがれっ!動けない的相手に外しゃしないぜ!
絶対必中だっ!!」
ギャギャギャ!!
放たれるレーザー光線!!
光線は真っ直ぐクツケイへと向かい、
突然「ギガガッ!」と音を立て左右に反れて
見当違いの場所に着弾した。
「何だと!?」
色を着けると一言で言っても、
クツケイのそれは色を塗りたくる訳ではなく、
「光の反射を操作して、任意の色に見せる力」
光線は光ゆえに、その反射角を操作された。
また、跳ね返すことだってできるハズだ。
クツケイは何事もない様に前へ足を進める。
「か、影が…」
クツケイの足元にだけ
スポットライトでも当たったように光が集まる。
光の反射を操作するのだ、当然影など落ちない。
つまり、対クツケイにおいて
松葉、ソバサイはまったくの無力!?
殴り飛ばされる松葉。
ケイは舌打ちする。
「新しい能力を使わせることすらできない、
何たる無能か…」
しかし、ケイは確実に勝ちたい。
本気でぶつかれば勝てる相手にも苦戦をせず、
苦渋を舐めさせ、失意のうちに敗北を味わって欲しい。
つまり弄んでやりたい。
だって、それが快感だから。
「クツケイ、これは何だろうなぁ?」
ケイの手の中にはいつの間にか少女の姿があった。
絶対的有利の中、相手が悔しがる姿を見て、
その上でこの手で「破壊」したいんだ。
このいきがった小僧、ナルシズムに酔った馬鹿に
思い知らせてやりたいんだ。
「くふ、くふふっ」
クツケイの顔が青ざめる。
「あひゃあ!そう、その顔だよクツケイィィィ!!」
「シルビアァァァァァァァァ!!」
叫ぶクツケイ。
ケイの腕の中のシルビアから反応は無い。
考えれば、
シルビアがクツケイより先に
ここに辿り着くはずは無い。
しかし、根が激情家なクツケイは
冷静さを完全に失っている。
「んふ、はははははっ、いぃぃぃい顔だねぇぇぇぇ」
ケイの肩には猿が乗っている。
シルビアに化けたのはルピのスタンド。
BARへの道を、林檎は走った。今、彼女に有るのは『希望』『未来』しかし、じきにそれは『絶望』となる。
「ねえねえ、なにをしてるのぉ?」
「……?」
林檎の進路を塞ぐように、瑠獅覇が立ちはだかる。
「坊や、どいてくださいますか?」
「あははははははは!!!どいてだって?『どいて』だってさああああああ?あはははははははははあああははははは」
得体の知れない瑠獅覇の前に、林檎は寒気を覚える。
「分からないんだよね……なんで皆は“サトヨシ”の邪魔をするのかな?」
死ぬだけなのに
「教えてよ お 姉 さ ん 」
――ソウル・ステーション――
「……ッ」
スタンドの放つ拳を皮一枚で避けると、林檎は構える。
「あはははははは、逃げると辛いだけだよ?」
2発、3発と繰り出される拳を林檎はなんとか避ける。しかし、限界が来た。
「ウグッ……」
肩に一撃を受け、壁に叩き付けられる。
『痛っ……肩の骨……大丈夫かしら……』
ジワリ、肩から夥しい量の血が流れ出る。
「あはは、終わり?終わり?終わり?」
なら死ねよ
『……バーレル……さま』
ガシィッッッッッ
何者かが、ソウル・ステーションの拳を受け止める。
「逃げてなさいビッチ、失礼」
それは、タチバナだった。
「あは?確か僕が“茜”を始末した時にいた……」
タチバナは答えない。いや、スタンドを出したことが答えになる。
「ガキ……貴方は命を奪い過ぎた。もう、分解なんて生っちょろいことは言いません」
砕け散れ
「あらららら?オッサンにできるのおおお?」
「少なくとも、青二才のガキなは負けませんよ」
瑠獅覇が先に動く。
「あはははははははははははははははははははは」
「ブルース・ドライブ・モンスター」
タチバナの動きには“無駄”が無い。動体視力、体のバネ、更に判断力と言ったものが凄まじい。
今回は、それが仇となった
向かって来る瑠獅覇の攻撃を受け流しながら、タチバナは反撃のチャンスを伺う。
『早いですね……しかしッ』
ソウル・ステーションの拳を素早くかいくぐり、瑠獅覇の胸元に飛び込む。
「スマートさが足りませんよ」
ソウル・トレインは腕を伸ばしているため、懐のタチバナを殴れない。
『このまま、胴体と下半身を分解してあげましょう』
「おっさあ~ん。あんた、自分の失敗に気がついてない?」
「……?」
気がついた時には遅かった。スタンドの下半身がタチバナを蹴り上げる。
「分裂……マグマとスウィッチ」
いつの間にか、スタンドが分裂していた。不意を突かれたタチバナは、上半身(スウィッチ)の乱打を受ける。
「あはははははは、誰だろうと、この瑠獅覇には敵わないんだよ!?」
最後の一撃だああああ
「瑠獅覇!平伏しなさい」
「ズアッ!?」
「ビッチ……逃げて無かったの……ですか」
「人助けも、淑女の嗜みですわ……」
これで貸し借りは有りませんわ、とでも言いたげに、林檎はその場を去る。
タチバナは横目でそれを確かめ、今度は強い目で瑠嗜覇を睨む。
「終わらせますよ。殺しの連鎖を……」
「ぐあああああああああああああああッあああああああああああてめえええええ」
――殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺して殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる――
瑠獅覇は雄叫びをあげ、向かって来ようとするが、まだ林檎の射程距離内。体を動かせない。
「無様ですね……」
タチバナは構えた
****
カランカラン
「いらっしゃい……と言いたいがまだ開店前なんだ。すまないが、出ていってくれ」
バーレルはグラスを磨きながら突然の客に対応する。
「…………」
ドサッ
「!?」
驚いて振り向くと、入口には大量に出血している林檎が倒れている。
「とにかく、救急車だ」
「あ……う。バー、、レル」
「今は話すな。さあ、乗れ」
再び、バーレルと林檎は“あの病院”へ向かう
****
――半時ほど前
「ヘヘッ、オジサンはやっぱり馬鹿だなあ」
「……」
無言で拳を繰り出すタチバナ。なんとか防御する瑠獅覇。しかし、代償は大きい。
「まずは片腕を分解……」
タチバナに握られた片腕は跡形も無く消え失せる。原子まで分解された腕は、もう再生は不可能。
「次はどこにしますか……」
「スウィッチ!!」
しかし、出しても地面に這いつくばる形になる。攻撃もヘッタクレも無い。
「さあ、最後ですよ」
腕を振り下ろすBDM。しかし、瑠獅覇は平然としている。
「あはははははは、やっぱりひっかかったあああああああああ」
「!?」
『テレポーテーション』瑠獅覇の体が消え失せる。後には、瑠獅覇の血だけが残った。もちろん、BDMの攻撃は不発
「私を蹴った時点で、既に“逃走”する準備をしていた訳ですね……」
つまり、マグマはタチバナを蹴った後にずっと走行を続けていた。
「これには、確かに一本取られましたよ」
テレポートの先は、予想がつかない。つまり“見失なった”形になる。
「……油断していなかった筈ですが……」
自分が変わり始めている。タチバナは実感し始めた。
ガチャガチャ
ドアノブをまわす音がする、あの人が帰ってきた、のかな?
「やあ 相変わらずけしからん尻をしとるねえ シルビア」
「Dr.ER?」
「ん? 愛しのクツケイじゃなくてがっかりしたのかい?」
右手をワキワキし、笑いながらドクターは言う。
「…いえ そういうわけでは」
「まあ とりあえずここから出よう。
ケイの手の者が来ないとも限らないからな
ん――この絵は?」
壁一面に塗りたくられた絵をみてドクターは。
「これは君が?」
シルビアは小さく首を振る。
(こういう絵 心理学的には
強い不満、圧迫感からの逃避欲求、自分を支配するものへの反抗心だったか?
不安や恐怖を受け止めようという気持ちだったか??)
「どうしてドクターはここに?」
「クツケイに頼まれたのさ 君を守ってくれってね」
「わたしには 守る価値なんか ないわ
だからドクター 私のことは気にせずに病院に戻ってください」
「そういうわけにもいかない 君を守れなかったらクツケイがどんな顔をするかわかるからな」
「私が死んでしまえば クツケイさんは他の人を選べる――だから」
シルビアは先ほど考えた事をドクターに告げた。
自分ではクツケイを幸せに出来ない、もちろんその逆も。
だから
「私は いない方が人を幸せに出来る」
「… 君はそうクツケイに言われたのか?
それともシバミに そう言われたのか?
君がクツケイを幸せに出来ない 君じゃない誰かならクツケイに光を見せてあげることが出来ると」
「いえ 二人にはいわれていません…だけど」
シルビアの表情は辛く悲しい。
あの二人に いま自分がおもっていたことを言われたらと考えたら。
それは――。
はぁ、と小さくため息を吐きドクターが
「陽の気 っていうの俺も持ってるかな?」
「ドクターは 持ってると…おもいます」
「じゃあ俺がクツケイを幸せにできるかな?
うお 考えただけで気持ち悪いッ!!」
両手で体を抱えて小刻みに震えている、何をしているのか
「いいかシルビア!! お前がどう考えている事は別にして
クツケイにとっての希望ってのはお前のことなんだよ 間違いなくな
君だってクツケイが嫌いじゃあないんだろう?
だから こうやって奴の部屋にいる 奴の帰りを待っている。
本当に 自分がいなくなったほうがいいなんて考えるんなら
この部屋から出て行くべきだ だがお前は出て行かなかった」
「それは」
「それはお前のエゴだな
エゴの何が悪い 人を傷つけるのもエゴなら 人を癒すのもエゴだ
俺は医者だ スタンド使いである前に医者なんだ。
どんな奴が来ても 俺は全力で治してやる、それがサトヨシだろうとケイだろうとクツケイだろうと
どんな奴が来てもだ。
俺の所に来たんなら いくらでも治してやる。
相手が思うことなんか気にしねえ 俺のいる病院に来たのが間違いだったんだ
黙ってエゴを受け入れさせちまうね。
エゴの何が悪い!
愛だって最初はエゴだ…
クツケイの言う話は 前世がどうとかみたいだから好きじゃあねえが
お前の心にも クツケイを思う気持ちが生まれてるだろう?
生まれてるから 幸せにしてやりてえから いなくなるとか言ってるんだろう?
考えすぎる奴の気持ちはよくわからんが 幸せにしたい エゴがどうとかいうのなら
クツケイのエゴにあわせてやれ
全部は終わった後考えろ。」
「………」
「…バーレルか」
携帯を取り出し、耳につける。
「病院にもどらなければならなくなった
とりあえずシルビア お前も来いよ」
「私は どうしたらいいか まだ」
「まだわかってないんなら いなくなることも無いだろうよ
生き延びてそれから考えろ
時間は多い方がいい」
ドアへと向かうドクターの背中を見ながらシルビアは思う
自分を必要としてくれる人
その人を。
・・・・・
血管ヒクつくぜ、『 ムトウ タチバナ。』
『 完 璧 過ぎる』ンだっつーの!
林檎(キラキラ淑女)の存在忘れるくれぇー、マジになっちまうなんて よ ォ ! !
クソ ッ ! ク ソ ッ ッ ! !
『逃 げ は「 負け(ビビリ)」と同じ だぜ ッ ! 』
カビみてぇ!ドブ猫みてぇに、逃げるので手一杯じゃあねぇ か ッ ! !
噴上 瑠獅覇は、心底悔しい。
今まで戦ったどんな『 大人。』
今まで戦ったどんな『 スタンド使い。』
どんな者よりも『 ムトウは完璧で。』
とんな者よりも『 タチバナは最強であった。』
『 ムトウ タチバ ナ ッ ! 』
認めてやるッ!
お前ェーは『ダンチだッ!』
お前ェーは『ルビーだッ!』
俺が忘れちまった 理 由に、
『どこか似てい る 気 』がす るッ ッ! !
だがよゥ、タチバナァーッ!
何故『 今日ゥッ!』
俺が、『チャン(札束紳士)に受けた傷が、完治しないまま』
派 手 に 殺しまくってたと 思 うかァ ア ア アアアアアアア ア ア ア ア ア ?
ー 噴上 瑠獅覇
永遠に『 11歳に辿り着けない存在』。
シュゥウウウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ・・・・。
日付が変わり、『11歳の誕生日』を迎えたと『 同時に・ ・ ・ 。 』
ゴォオオオオオオオオオオオ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! !
瑠獅覇は。
『 新しい自宅に、居た。』
再び10歳の始まりだ。
新しい環境。新しい町と共に・・・。
瑠獅覇は「 左腕」を見やる。
「新しい環境。「 札束紳士」に受けた傷は 完 治 だ。
左腕もまた・・・『 で も 良かった』がよゥ・・・。」
瑠獅覇の「 左腕」は。
『 喪 失 した ま ま 』だった。
「あえて『 治 さ なかったぜ。』」
「第2ボタン、嵌め辛くて仕方ねぇけどよゥ。
『 タ チ バ ナ にケチョられた(負けた)屈 辱 』、
『 忘 れ ね ぇー 為に な ・・・・ ッッ ! ! 』 」
タチバナ。
お前ェーは、左腕無しに、勝てる相手じゃあ無ぇ。
完璧。それは『 躊 躇しねぇ』事。
俺が、杏子を殺す時、『 時間をかけなかった』のと同じで、
お前ェーもまた『 時間をかけない』。
片腕喪失のまま戦いを挑めば、『 死 に繋がる』だろォよ。
噴上 瑠獅覇は考える。
「 義 手(お手手) が欲しいな。
義手っちゃあ、『スピードワゴン財団』か。
死んだ『 ザキ(カゲ薄)』を見るに、『 技 師』が日本に来ている見てぇーだ。」
噴上 瑠獅覇は決定する。
「『 情 報 収 集』だな。
テレポの連打で、集められねぇ 情 報 はね ぇ 。 」
噴上 瑠獅覇は動き出す。
「財団っちゃあ、
『 赤倉 男平(紅(くれない)オヤジ)』かァ ? 」
「『マジりたくねぇ(本気でやりたくない) 相 手』だぜ。
けどよゥ。リスクを恐れた『 覚 悟』は無ぇんだよなァァァ~~~~!
『 魔 王 の「 気 張 り 」見せてやらァ ッ ッ ! ! 』」
噴上 瑠獅覇は忘れない。
「その間。
サトヨシが、お姫様みてぇに危ねぇ目、遭うかも知れねぇが・・・・。
『やる事ァ、既に シ ちまいといた ぜ 。 』 」
『神城 静夜(ボンクラ)』が、
はねっ返りに、矢と赤石とで『 やんちゃ してた時』。」
「盗(ギ)っ といたンだよなァ。」
『 石 仮 面 』。
ボンクラジジイ(神城 朝陽)もバカだよな。
トメ(老いぼれ淑女)との思い出が、そんなに 大 事かね?
「石仮面」破壊しときゃあ、こんな事起こらずに済んだってのによォ。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
『 ブルース は、「 吸 血 鬼 」と 化 したぜッッ!! 』
「サトヨシ」を守るも良し。
「ケイ」と「クツケイ」狙うも良し。
「石仮面」は『テメェーに預けたッッ!!』
「 『 この世に 地 獄 を、
見 せ て やりなぁああああアア ア ア ア ア ア ー ッ ッ ! ! 』 」
ー ブルース スタンド カウボーイ・フロム・ヘル
サトヨシの部下。
ヒデエモンの戦闘で、生死不明の重傷を負うが、『 吸血鬼』として復活ッッ!!
あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!!
噴上 瑠獅覇は、闇へと消えて行った。
同刻。
「遅いね、ホモ」
「ああ、遅いな」
シバミとハイネがタチバナの帰りを待っていた。
とうの昔に日は落ち、シバミの前には空ボトルが十本近く並んでいた。
世界の終わりが迫っているこの時期に、いくらあの男でも連絡もして来ないのは流石に心配だ。ハイネが言う。
「どうせ今頃はホテルで……」
「ええー? でも筋金入りのホモでしょ?」
シバミが怪訝そうに問い返した。
「最近は両方いけるようになったって噂も……」
「ええッ!? でもそれじゃアイデンティティが……」
「待て、今はそんな場合じゃないだろう」
シバミが頬をふくらませて言い返す。
「先にこっち系に持ってったのハイネでしょぉー?」
「いいから行くぞ酔っ払い」
「仕方ないなあ……ひょっとしてハイネ、ホモのこと……」
その言葉に本気で言い返すハイネ。
「馬鹿なことを言うなッ!! 私はそんな安っぽい感情に流されるような人間じゃない、大体だな……」
「行くよ、ハイネ」
「おい待て酔っ払いッッ!! 私の話はまだッッ!!」
***
「にゃああう」
猫が、一匹。
暗い部屋で鳴いた。
ブッ飛んだデザインの服に身を包み、この戦いのすべてを見守ってきた猫が、一声鳴いた。
『スタンド能力を忘れさせる』
混迷した状況を一気に変え得る可能性を持つ、ラストピース。
その猫が、古臭く厳かな大聖堂の前で、大きく鳴いた。
***
「もしもしぃー? クサレホモー?」
『なんですかビッチ……』
タチバナを探しに外へ出て、シバミは酔っぱらったまま適当に歩き、ハイネがそのシバミにまくしたて、さ迷った挙句に電話すれば良かったのだ、と思い立って今に至る。
「今どこー? よろしくやってるぅー?」
『黙れクソビッチ……』
受話器の向こうから、かすかに雑音が聞こえた。
何かを殴りつけた音のように聞こえたが、はっきりとはわからない。
『失礼。……ついさっき『仇』を逃したところで気が立っていますので、すみませんが不用意な発言は控えていただけますか』
酔いが醒めた。
シバミはタチバナの言葉に普通じゃない何かを感じ取り、聞き返す。
「今、『仇』ってそう言った? アンタがサトヨシのことをそう呼ぶとは思えないから、……まさか」
『たまには酒だけじゃなく頭も回るようですね、酒ビッチ。ですが、それ以上は言わないでください。この携帯を誤って『分解』しかねません』
「ごめんね、タチバナ。合流できるなら今いる場所を教えて」
『わかりました。今の場所は……』
「何ィッッ!! 貴様タチバナッッッ!!! アイツを目前にしながらッッ!!」
激昂するハイネ。今にも殴りかかりそうな勢いでタチバナの胸倉につかみかかる。
「待ってハイネ。あなたが戦った時も突然出てきたんでしょ?」
「ならば何故連絡しなかったッッ!! 私はッ! あのクソガキをッッ!!」
タチバナは答えない。ただ静かに怒りを抑えている。
自らへの怒りを。
「そんな余裕で戦える相手じゃないでしょ。ハイネだってそのことは……」
「わかってるッッ!! わかっているさそんなことはッッ!!!
だがッ!! それでも私はッッッ!!!」
止めるシバミと叫ぶハイネ。
ゆっくりと顔を上げるタチバナ。
「すみません、そのくらいにしてもらえますか半ビッチ。悪いのは私です。今の私は何かがおかしい。何かが変わってしまいました。それでも、今は自分を抑えられません。だから……申し訳ありませんが少し静かにしてもらえませんか」
タチバナの態度に、少し前の自分を重ね、落着きを取り戻すハイネ。
「悪かった。だけど、次は絶対に呼んでくれ。アイツは、私が倒す」
「失礼ですがそれはできません。あのクソガキは……今度こそ私が必ず殺します」
「……早い者勝ちだ。それで手を打つ」
「いいでしょう。もっとも……あなた程度の半ビッチに後れを取る私ではありませんが……失礼」
かすかに、タチバナの表情が柔らかいものに変わる。
それを見てシバミは安堵の息を漏らし、ハイネも落ち着きを取り戻す。
「うるさいホモ野郎。訓練では負けたが実戦で勝つのは私だ」
それぞれの決意を胸に、三人は歩みを共にする。
気がつけば、風が強く吹き始めていた。
「さぁて、これで僕がキミに触れるのは一体何回目だいクツケイ?」
肩に担いだ、シルビアに擬態したWestward Odysseyを見せつけながら、
ケイは棒立ちのクツケイを殴打する。
切れた口から血を流すクツケイ。
「七回だ…」
「そうそう、七回だね。
ちゃんとキミが数えておいてくれないと、
間違えて十回触ってしまうからね?」
優しく子供を諭す様な声で言い、
罪人を裁くように容赦なく打ち付ける。
「なぁぁなぁぁ♪はぁぁちぃぃ♪
あれ?さっきが七だったからこれはもう九?」
当然確信犯だ、九回で止めると言って、十回叩き破壊する。
そういう趣向のプレイ。
「まあ、どっちでもいいや、
あはん…さよならクツケイ!アーメンっ!!」
ケイの拳がクツケイの顔面に減り込む!!
「……なぜ破裂しない?」
ケイが疑問に硬直した瞬間、
ハイブリッドレインボウの拳がケイを殴り飛ばす!
「げっぱあああああ!!?」
吹き飛ぶケイ。
同時にシルビアを奪還するクツケイ。
「シルビア大丈夫か!シルビア!」
しかし、クツケイの腕の中のシルビアは消失する!?
ケイが吹き飛ばされた衝撃で、
ルピがスタンドを解除してしまったのだ。
クツケイは自分が騙されていたことに気がつく。
立ち上がるケイ。
「ちぃ…バレてしまったか…でも、貴様の能力も大体掴めた。
それは相手の攻撃による効力を無効にする可能性が実に高い」
クツケイの本来の能力は絡め手の目くらまし、
そして新たな力は自分に作用する能力による影響の無効化か?
ならば、時間を止めて直に肉体的な外傷を与える方が確実、
そうケイは考える。
「茶番だったな」
クツケイがケイに迫る。
「茶番?いいや、そうでもないさ。
僕のシナリオはまだ完遂されていないからね、
舞台はまだまだ楽しめるハズだよ」
礼拝堂の入り口が開け放たれる、そこに立つのはERとバーレル。
二人がそれぞれ抱えるのは、意識を失ったシルビア、林檎。
ケイは叫ぶ。
「グッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥドッ!
最高の舞台に最高のタイミングで現れる名優たちっ!」
「ケイさん、ルピは大事に扱って返してくださいね」
沢山の患者をカウンセリングしてきた彼には
シルビアの様なタイプを納得させる口上はお手の物で、
知り合いである安心感も手伝って、意識を奪うのも簡単な作業だった。
「申し訳ないけど俺は医者だし、それゆえにリアリストだからね」
ERは調査の末、全てを知り、
トメの敗北を切欠に、ケイをパートナーに選んだ。
バーレルはサトヨシの存在を知ってから、
掃除屋の血が騒いで仕方なかった。
世界の破壊を二の次にしても、
最強の獲物とガチで勝負する浪漫に取り付かれていた。
トメにあんなにも「手を出すな」と言われたにも関わらず、
独断でサトヨシに手を出し、
思う存分戦った彼は、その闘争の快感を忘れられない。
トメが倒れ、ケイに懐柔された時、バーレルは闘争の道を選んだ。
そして、ERと示し合わせて此処に現れた。
「ケイ、依頼されてた頭領の身柄だ」
意識のない林檎を地面に投げ捨てる。
女より、生き甲斐だ。
「これで、実質女帝の組織は壊滅だ。
アンタは俺が奴と戦うのに口出ししないんだよな?」
「グッドだ!さすがは掃除屋バーレル、確実な仕事だ!」
クツケイを囲むケイ、バーレル、ER、松葉、ソバサイ、そしてルピ。
「さあ、6対1だ。この俗物を始末して、最後の戦いへと我等は乗り出す」
バキィィ!!
「どぅはっ!?」
突然、松葉がERを殴り飛ばし、シルビアを回収する。
ソバサイの顔色が変わる…まさか…まさか!?
「松葉ちゃん!それは駄目だって!これは勝ち目ないって絶対!」
シルビアを林檎の横に下ろし、その前に立ち塞がる松葉。
「色々、堪えてきた…けどよぉ、もう我慢なんねぇ!
ケイ!テメェのド腐れたやり口が俺はもう完全に許せねぇ!!」
ケイは理解しかねるといった様子で松葉を見下す。
「自分の意に沿わない、そんな理由でこれまでの全ての努力を無駄に?
クツケイに味方すると?気でも触れたのかい松葉、5対2だぞ?」
「これも、茶番の一環か?」
疑念の眼差しを松葉に向けるクツケイ。
「信じなくてもいいぜ根暗野郎、
俺はムカツクから個人的にケイをぶちのめす、そんだけだ」
松葉の横に立つソバサイ、それはあまりに自然で、
計算高い彼が裏切りという無謀を冒す事件にも抵抗がない。
「いいんだぜ、俺に気を使わなくても」
「どうかな?色々考えたらやっぱ俺もアイツ嫌いだしぃ、
クツケイが手伝ってくれれば案外勝機があるから手伝うんだぜ?」
構える松葉、クツケイに目配せするソバサイ。
「敵としてアンタと俺らの相性が悪いってのはさ、
味方として最高に相性がいいってことなんだけど、どう?」
二人の能力を完封できる。
すなわち、クツケイはそれを自在に操作できるということだ。
「バーレル、ER、新しい仕事だ」
ケイの前に歩み出るバーレルとER。
迎え撃つ松葉、ソバサイ、そしてクツケイ。
「3対4、面白い舞台にどんでん返しは必要不可欠ってねぇ」
「ぶっとばすぜ!!」
****
「ユグドラシル」
トメの存在が消え始めたと同時に、バーレルは到着した。傷だらけの林檎を抱え、医療室へと駆け抜ける。
「ER!林檎が……治療道具を貸せ」
「バーレル……」
掃除屋バーレルとは思えない姿だった。ERにとってバーレルは相棒、幾多の危機を繰り広げたパートナー。
それが1人の少女によって、変えられようとしている。
「なあバーレル」
ERは宥めるように、囁くように、女性に話しかけるような口調でバーレルに話しかける。
「お前は戦いたく無いのか?」
「……誰と……だ?」
林檎の傷を消毒しながらバーレルは答える。服を脱がすのには、多少なり抵抗感が有ったらしく、赤面している。
「お前はサトヨシと闘った。そして、破れた」
「……否定はしない」
「責めてない。むしろ、素晴らしいことだ」
「ER……何が言いたい?」
治療の手が止まる。
「女帝は後少しで死ぬ」
「!?」
衝撃、驚愕、不信
「相手は……?」
「サトヨシだ。バーレル、君の負けたね」
「ッッッッッ!」
いきなり部屋を出ていこうとするバーレル、必死で止めるER
「どこへ行く気だ!?」
「決まっている!戦うんだ!!」
「逆に問おう。戦ってどうなる」
バーレルが静かになる。
「もう少しで我々が縛られる必要は無くなる。思う存分、戦えるんだ」
「……」
「義理と人情だけでは何事も解決しない。そこにいる少女も……だ」
「女帝が死ねば、孫は邪魔なだけ……足手まといになる」
「バーレル、我々に目的など無い筈だ。雇われる側につく、それがスィーパーだ」
畳み掛けるようなERの声。今やバーレルはジッとしていて動かない。
「どうだバーレル、もっと強い奴と戦いたくないか?」
「……それは誰だ?」
乗ってきた。ERは勝利を確信する。
「クツケイだ……彼奴は強い。思う存分戦えるだろう」
「新たな……依頼主となるのは誰だ?」
「ケイ。世界を守ろうとしている。やり方は若干汚いが、大義名分が有る」
「大義名分などいらない。そいつに従えば、クツケイとかいう野郎と戦えるのか?」
「もちろんさ。だが……」
ERは足元の林檎に目を移す。
「バーレル、その娘を差し出さなければいけない」
非情な言葉。
「女帝の孫を差し出せば、信用するだろう」
「……」
バーレルは気絶している林檎に目を移し、口を開いた。
「……分かった。行こう。ER」
「OK、準備はできている」
ERはワゴン車を出す。見るからに救急車を改造した姿をしている、
「シルビアも一緒だ。クツケイの動きを封じれるからな」
「俺には関係無い。ただ、勝負に手を出すな」
返事をせず、ERは車に乗り込む。バーレルは舌打ちすると、林檎を抱き上げる。
「バ……レルさま……」
林檎が薄目を開け、途切れ途切れに話しかける。
「どうした?」
「よかっ……た……私は……バ…レルさま…のこと……」
「そうか……」
返事を聞くと、満足そうに林檎はまた目を閉じた。
「バーレル、早くしろ」
「ああ、分かった」
急かすERに対し、バーレルはゆっくりと乗り込む。
「ところでバーレル」
「なんだ?」
「女帝……誰だったかな」
「……さあな」
今の俺には、関係無い
「ウルトラソウルッ!!」
松葉が叫び右腕から光が迸る
その光は直接ケイを狙い伸びてゆく、だが
「松葉 君は頭が悪――何ぃッ!?」
光は途中からYの字に分かれケイに襲い掛かる。
そんな能力は松葉には、松葉“には”?
「ああ なるほどそういうことか」
ケイは落ち着き払い自分の腕を突き出す、その腕に何も無いが何かがある感触に触れた。
Yの字に伸びた光は後ろへと流れる。
(クツケイの能力と併せてということか)
「クツケイッ!
世界を見てきたその力見せてもらう!」
表情には見え無いがバーレルは喜んでいた。
血の滴るナイフを構え、クツケイに襲い掛かる。
強者 それと 戦える。
ナイフで一閃、二閃、クツケイに傷をつけることはできない。
(当たっている はずだが感触がない?避けられているのか)
「ER!」
「叫ばなくても解っているさ バーレル」
ブラッディクロス、腕から血を流す男が小さな声で。
バーレルの振るうナイフの刀身が伸びる、紅く濁った血の色に。
伸びた刀身は吸い込まれるようにクツケイへと伸びる。
「悪いな ソレはただの映像だ」
不意に右から声と共に拳が現れバーレルにめり込む。
吹っ飛ばされながら理解する。
なるほどそりゃあたらねえな。
ケイは停まっている、か。
「ソバサイお前がケイを相手にしてくれ」
「俺がッ!?
いや まてよどうして俺がなんだよ!
あんたつええんだろ あんたやってくれよ」
「俺と松葉じゃ 相性が悪い」
返事に詰まる。
「クツケイ あんた本当になんども世界をやりなおしてきたのか?」
当然の質問を松葉がする、スタンドは信じられる、だが
「自分のいる世界がなんども終わっているとは思いたくない か」
クツケイはシルビアを見る。
「何百回目だとかは覚えていないが
ああ お前等二人の能力は確り把握しているよ 松葉 ソバサイ。」
クツケイが振り返る。
「そろそろケイが動き出す。
ソバサイ お前がケイの足止めだ ケイは時を破壊して止めれる。
だがその間スタンド攻撃から逃れられるというわけじゃねえ 物理法則からも逃げられない。
松葉 お前はERを頼む。
奴は体そのものがスタンドみたいなもんだ 相性はいいだろう。
それに ああいう奴嫌いだろ」
クツケイは松葉に対し笑ってみせる 昔からの親友に見せるような屈託の無い笑みを。
「おいおい 何を飛ばされている
確り働いてくれないと こまるよ」
「契約は 裏切らない」
クツケイへと突進しながら答える。
「女帝との契約はどうしたバーレル!」
クツケイが併せて飛び出す。
「女帝?
契約を結んでいるのは ケイとだけだッ」
クツケイは理解した。
トメが捻じ曲げられたという事を。
隙が生まれる、バーレルは見逃さずそこへ返す刀で切りつける。
「ソバサイ 君が僕を裏切るとは思わなかったよ
あの時 君が僕に言った 命を掛けてでも守る というのはそんなに軽いものだったんだねえ」
まるでそこだけ戦闘が無いようだった。
広い空間ではない、目の端にERと松葉、バーレルとクツケイが戦っているのが目に見える。
「君さえよければ また一緒に神の為に働かないか?
神の為にスタンド使いを一緒に探そう。
あの夜 街のカスどもからスタンド使いを見つけたときのように」
「あの 暴走族の連中か」
ふと思い出す、雑誌に書かれていた名前を。
「あの頃から少しずつ 嫌になってはいたのだがな」
ムーンライダー、自分が生み出したスタンド使いの名前。
自分のスタンド名と酷似する因果。
「ソバサイ? どうなのかな?」
「おことわ――」
ケイの様子がおかしい。
「…すでに 能力を使っていたのか ソバサイ」
苦虫を噛み潰したかのような顔でいう。
「時を止めたんだな。
すでにお前の足地面に貼り付けたまま動かないはずさ ケイ
俺のムーンライト・シャドウ
クツケイの言う通り足止めは確実に出来るようだ。」
ー その瞬間であ っ た ッ ! !
ガシィイ イ イ ーッ ! !
「あ はん♪
良い体をしているね。『 ソバサイ。』」
ケイは『 時を止めたッ!』
ソバサイの後に回り込み、ソバサイを『 羽交い絞め』するッ!!
そして、先に『 ソバサイ』が動きを止めた『 男』は・・・ッ!!
「キキキ
(ケイは、ただ『 つっ立っていたんじゃあねぇ。』
お前と対峙した時、既に1度『 時を止めて居た』のさ。
俺と『 入れ替わる為にな・・・。』」
ー ルピ スタンド Westward Odyssey(ウェストワード・オデッセイ)
俺は自由で居たい。
だがこの身、悲しくも『 コモンリスザル』。
俺が知る『 本当の自由』に程遠い。故に俺は『 神の尖兵』に。
ケイはイカレてる男であったが、彼の作る世界は俺にとって『 自由』であると感じられた。
もう一度言うぜ・・・。
『 故に 俺 は、 神 の 尖 兵 』に、な っ た ッ ッ ! !
「ウワァアア ア ア ア ア ッ ッ ! ! 」
ソバサイは、パニックだッ!!
「『 罪な声』だ。
私の胸を、こんなにも『 高鳴らせ る ッ ッ ! ! 』」
ー 『 X・コマンドメンツ(テン・コマンドメンツ)』
「10発殴ったものを例外無く『破壊』できる」能力。
「い・嫌だぁああああああ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! 」
ソバサイは、『 死』に恐怖しているッ!
「『 駄 目 だよ。』」
あ と『 一 発』ゥ・・・ッ!
私は、『 神の尖兵、その全て』に・・・・ッッ!!
『 既に 「 9発」の「 コマンドメンツ」をブチ込んでいるのさァ~ ッ ! 』
『「 炬燵 の 死に様」、覚えてるぅううゥ~~~?
既ニ『 9発』。与エテイタ…。
って、言ったしょ?
だから・・・うふ!うふふ!!うふふふ ふ ふ ふ ふ ! ! ! ! 』
ソバサイは、それを「 知っている。」
ソバサイのケースは、「 特に酷い。」
神の尖兵にしてやる事と引き換えに、その能力を『 知らされながら、9発殴られた』のだ。
「ソバサイィイイイイイ イ イ イ イ イ ! ! ! 」
松葉が吼えたッ!
「クソ・・ッ! 判断・・・ミ ス だ ッ ッ ! ! 」
クツケイは後悔をしたッ!
「面倒臭くねくて、嬉しいぜ。」
バーレルは不敵笑う。
「おぉう、けしからん。」
そう言いつつも、一人減った事に、ほっとするER。
「キキキ
(テメーは、ケイを裏切った・・・。)
ルピもまた不敵に・・・。
ー ニャァァウ・・・・。
そんな折『 鳴き声』が一つ・・・。
・・・・・
始めに動いたのは松葉だった。
その『 鳴き声』に『 希望』を感じたからだ。
「そして、羽ばたけ・・・・ッ!」
「『 ウ ル ト ラ ・ ソ ウ ル ! ! ! 』」
・・・・・
クツケイは夢中だった。
「シン」、「デュカ」、お前達二人を思うと、慟哭(どうこく)を覚えるッ!!
そして・・・。
何度も救う事ができなかった『 シルビア・・・。』
「もうこれ以上の 犠 牲 は ッ ! 」
「『 沢 山 だぁあああああ あ あ あ あ あ あ ! ! ! 』 」
・・・・・
『 いい馬鹿』が、此処に行けと言った気がしたんでな。
そして俺は。あの時『 俺は、馬鹿に出会った。』のだな。と、また思った。
・・・・・
ー 暴走巻き起こす『 ウルトラソウル。』
ー 慟哭の色塗りし『 ハイブリッド レインボウ』
そ し て 。
似てる名の『 因 果』は、 『 希 望 』と変わり・・ッ!!!
「『 アォオオオオオオ オ オ オ オ オ オ ン ン ! ! ! 』 」
『 慟哭』の色した『 ウルトラソウル』を身に受けたッ
『 ソバサイが 姿、 そ れ 正 に ッ ッ ! ! 』
「『 ム ー ン ラ イ ダ ー ・ シ ャ ド ウ ゥウウウ ウ ウ ウ ウ ! ! ! 』」
・『本体:ソバサイ/スタンド名:ムーンライダー・シャドウ
能力:ウルトラソウル+ハイブリッド
レインボウによって進化した、ムーンライト・シャドウ。 3分間、「 ムーンライダー」+「 ムーンライト・シャドウ」の能力で戦え る ッッ!!』
但しッ! 重量の磁場は、『 己にしか 効 果が、 無 い ッ ッ ! ! 』
「んふぅっ、面白い、面白いよぉソバサイィィィッ!!
だが、だがねェェェ……」
チッチッチッ、と舌を鳴らしながら人差し指を振るケイ。
「あまい、あますぎるんだよこの異端野郎がァッッ!! 貴様みたいなタンカスに、社会のクズのスタンド能力が合体したところで、所詮は神に打ち倒されて地獄に落ちたサタンの足元に這ってるウジ虫よりもミジメなんだよォッ!!」
アオオオォォォォォンッッ!!
すべてに逆らい、すべてを切り裂き、すべてを破壊すべく、ムーンライダー・シャドウの咆哮が響き渡る。
『思えば俺は多くの罪を犯しすぎた。
救えるはずの命がたくさんあった。
救えるはずの未来が輝いてた。
……だが、俺はそいつらをことごとく見捨ててきた。
たった一つの理由、『神』とやらのために、だ。
しかし。
俺はそんな『神』を信じたりしない。
俺はもう、『神の尖兵』なんかじゃない。
たったひとりの『人間』なんだ。
そして、ケイ。
アンタも同じ人間なんだよ。
だから、俺は言ってやる。
……ケイ、アンタは『間違ってる』ッッッッッ!!!!!』
ソバサイの叫びに、目を見開くケイ。
静かに、じっとソバサイを睨む。
そして。
「ククッ……フフ……フフフハハハハハハハッッッ!!! 吠えるねェ、ソバサイィィッ!!
誰に教えてもらったんだいッ? エーッ? 『神』はそんな教えを君に伝えたりしなかったはずだぞォォォォッッ!?
そ・れ・にッ!」
スタンド・ゴスペルオブシンと共に、ケイがソバサイを指さして言った。
「忘れたのかなァーーーッ? 貴様はもう、私に9回も殴られちゃってるんだよォォォッ!!!」
ケイの勝ち誇った台詞を聞いて、ソバサイは答える。
『関係ないさ。殴られなければ、俺が勝つッッッッ!!!!』
叫び、全力で飛び上がるソバサイ。
今、ムーンライダー・シャドウの能力でッ!
その跳躍力は軽くビルすらも飛び越えられるッッ!!
「そこから何をする気だいッ? 私のゴスペルオブシンは……負けることは決して無いッ!!
神に誓ってッ!!」
アオオオォォォォォンッッ!!
吠えるソバサイ。
迎え撃つケイ。
「さらにッ!
今の貴様は空中ッ!!
一度跳躍した以上、貴様が取れる行動はただ一つッ!!
落下するのみの私が、時の流れすら支配するこの私がッッ!!!
この手で確実に貴様を裁き殺すッッッッッ!!!!!」
『ムゥゥゥゥンライダァァァッッッ……』
「テンッッ!! コマンドメンツッッッ!!!」
宙を流れ落ちるソバサイの体から、月明かりの作る影が、ケイに向かって真っすぐ伸びている。
ムーンライダー・シャドウの能力で、重力場によって影響を与えられるのは己自身のみ。
しかしッ!
『シャドォォォォウキィィィィィックッッッッッッ!!!!!!』
「ファイナルカウントォォォォォッッッッッ!!!!!!」
腰だめに構えた右拳を思いきり突き上げるケイ。
だが、ソバサイは自らを重力波によって極限まで『重く』していたッッ!!!
したがってッ!
ソバサイの蹴りはその『速度』と『威力』を『重力』によってさらに倍増していたのだッッ!!!
そして今、ソバサイの放った必殺の蹴りによって、ケイは右腕ごとその拳を圧倒的な破壊力で叩き潰されたッッッ!!!!
「ギィィィヤァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」
さらにッ!!
アオォォォォォォォンンッッッッッ!!!!!!
ケイが腕をやられてひるんだ隙に、ソバサイはケイの頭をつかみ、その肩口に思いきり噛みついたッ!!
「ゴスペルオブシンッッ!!!……ハッ! 貴様はッッ!!!」
噛まれたショックで立ち直ったケイが、ソバサイを殴り、時を止めようとした。
だがッ!
ソバサイは動き続けるッ!
そのソバサイの足元ッ!!
そこにいたのはッ!!
「……ドルチ。なぜ、今頃コイツを……」
「ニャァァァァッ」
ドルチ/スタンド名:ダイハード・ザ・キャット
能力:スタンドの使い方を忘れさせる。
「なるほど、やってくれる、やってくれたよ裏切り者。しかし、このケイひとり生きてさえいれば、何も、問題はない」
ソバサイがムーンライダー・シャドウ へと変貌を遂げた直後、
クツケイはバーレルに追い込まれていた。
たしかになかなか駆け引きはうまいようだが…。
サトヨシのような圧倒的なヤバさもなければ、
スタンドのパワーもそれなりって処か…。
消極的で、馬力もなく、緊張感に欠ける。
「なにか、奥の手はないのか?」
バーレルがナイフを三本、四本とクツケイに向かって投げる。
それを、クツケイ自らは背景の色に溶け込み、
さらに光を屈折させて作り出した残像をオトリにしてやりすごす。
バーレルのナイフ攻撃が止む。
攻撃に転じるクツケイ。
「いらっしゃいっ!」
ナイフが尽きたと思わせるフェイントでクツケイを呼び込む。
「しまった!?」
前傾姿勢で間を詰めるクツケイはバーレルの正面。
バーレルの手には片手に四本づつ、八本のナイフが握られ、
それを一気に散布するように投げる!
「戻す」
クツケイを中心に挟んで、
背後に散ったナイフとバーレルが投げたナイフが元に戻る。
十六本のナイフが倍の大きさを持つ八本のナイフに戻る為に、
全方位からクツケイに襲い掛かかる。
スタンドでガードするが間に合わず、
その内の二本がクツケイを捕らえる。
大腿部と、背中に突き刺さる!?
「くあっ!?」
その隙にバーレルが間を詰め、Bulls・Eyeが触れる。
「分ける」
しかし、クツケイに能力が通じない。
「なるほど、そういう力」
「ならば」と、素早く切り替え格闘に移行するバーレル。
バーレルは右腕を振りかぶり視線を頭部へ、
フェイントにかかり、頭をガードするクツケイ。
Bulls・Eyeの拳がわき腹にめり込み、
めり込んだ部分にバーレルの後ろ回し蹴りが炸裂する。
Bulls・Eyeのパワーは強くない、
しかし、同じ部位への二重の衝撃に肋骨が数本まとめて折れる。
「物理攻撃は効果てきめんか?」
掃除屋バーレルの圧倒的なスキル。
衝撃に意識が飛ぶクツケイ。
マズイ!トドメを刺される!
しかし、バーレルは追い討ちをかけてこない。
レーザーの残弾は3発。
能力の相性が良い。
しかし、松葉にとってERという人間は
絶望的に性格の相性が悪い。
「バーレル!そのままシルビアを盾に!」
松葉の背後に声を飛ばすER。
「何!?」
ERのブラフに反応し振り返る松葉。
ERを狙ったレーザーは大きく照準がズレ、外れる。
「はい、あと2発ね。
キミはモリーよりずっと楽な相手だね」
ニヤニヤと笑うER。
ERの誘導尋問に引っかかり、
松葉は撃てるレーザーに制限があることを暴露してしまった。
「くっそがぁぁぁ…」
松葉は完全に相手のペースにハマっていた。
「次にキミは右に動く」
右に?…その予言に何の意味があるんだ?
なら、左に動いてやる!
…いや、もしかして俺を左に移動させる為に…だったら素直に右?
いや、前だっ!!
しかし、松葉は一歩も動けなかった。
「はい、ご苦労さん」
クツケイを倒し、フリーになったバーレルが、
ERに気を取られる松葉を背後から貫いた。
バーレルの動きを見ていたERのそれは、
自分に集中する人間から、周囲を警戒するユトリを奪うための
一言だった。
「うまく適材適所に役割分担したつもりらしいが、
団体戦の鉄則は一人づつ集中攻撃、まず相手の数を減らす、
それが正解」
クツケイは一人になりたがる、
心のどこかで人を信頼できない。
自分一人の方が身軽、
不確定の要素が減って確実だ。
自分も人の面倒を見るユトリは無い。
協力する自信がないから、
そんな当然のことを無視した指示を出した。
ナイフを刺された松葉の体から血が噴出す。
「がああああああっ!」
「おっと」
振りほどこうとした松葉にBulls・Eyeが触れる。
ニ分割され半分になった松葉の片方が距離をとる。
バーレルの手に松葉の片方が残る…。
ドチュッ!!
そして、躊躇無く手の内の松葉にトドメを刺す。
「半分の体力じゃまるで子供だな…ER!」
松葉の死骸をERに放るバーレル。
「オーライ」
受け取り、傷口に触れる。
ERは自分の血液を全て松葉と同じ成分に変化させ、
松葉の血を体内に吸い上げる。
そして、一体となった血液を自分の物に戻す。
「血を使いすぎて眩暈がしていたところだ」
松葉から新たな血液を吸収したERは
余分な血液で球を作って操り、空中に浮かせる。
「おお、これは使い放題」
自分が目の前で殺され、
血液を吸われる異常な風景に取り乱す松葉。
「テメェェェェェッ!何やってんだぁぁぁぁっ!!」
「うるさいな…戻れ」
バーレルが能力を解除し、
完全に血を抜かれ死んだ半身と、健全な松葉が一つに戻る。
立ち上げるクツケイ。
視界には無残に倒れる松葉。
バーレルは言う。
「お前は落第点だな、これはお前の判断ミスが招いた結末だ」
――そうか、死ぬって、寒くて暗いんだな
目の前に広がる暗闇、感覚的に感じる寒さ、松葉は認識していた。
徐々に意識が途切れ始める。
――俺、頑張ったよな?充分に……
馬 鹿 野 郎 ! !
――誰だ?
『誰だって?よく言うぜ松葉』
俺の声?俺自身の声?
『ケイを裏切り、やっと目覚めたお前の“正義”はそんなんで終わるのか?』
ソウルが無いんだよ 馬 鹿 野 郎
****
ERは血の球体を鋭い“槍”にする。バーレルは再びナイフを取り出し、狙いを定める。
「どんな気持だクツケイ、自分の責で仲間を失う気持ちは?」
バーレルの問いかけに、返事は無い。
「まあいい、任務は完了だ。」
さよらな クツケイ
刹那
3つの閃光が走る。
2つは血の槍に弾かれ、壁に当たり、消えた。しかし最後の1発は……
「な……腕が!!」
ERの右腕を貫く。何かが宿ったかのように、腕が震え始めた。
「ウルトラソウル……スタンドを……やっと……捉えた」
血の気を失い人形と化した松葉。だが、目には爛々と“闘志”が浮かんでいる。
「死に損ないが……バーレル、クツケイを頼む」
ERのターゲットがクツケイから松葉に移る。
「30秒間……ER、貴様のスタンドは暴走する」
絞るように松葉は言葉を発する。確かに、“血の槍”はコントロールを失い、せわしなく空間を漂っている。
「ハハハ松葉君、私は医者だ。患者の症状は、見れば分かる。失血による体力の低下、五感の機能障害」
「君は私まで来ることはできない」
「更に、レーザーを撃ち尽くした君には“攻撃手段”が無い」
ERは“わざと”言っていた。早く攻撃を出させるために。
『ウルトラソウルの拳が蒼く光っている。どうせ、レーザーの強いやつだろ』
レーザーは反射する。ERの周りにはコントロールを失ってはいるが、鏡となる“血の槍”が有るのだ。
そして、その一発さえ回避すれば松葉は死ぬ。実に簡単なことだ。
「蒼き弾丸よおおおえおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
松葉が力の限り叫ぶ。
「魂の限りいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
徐々に光は大きくなっていく。
「貫けええええええええええええええええええええ」
いま、弾丸が発射された
一筋の閃光となり
ERに向かって蒼い弾丸が刻々と近づいていく。
「運が悪いね、松葉君」
“血の槍”は、ERを囲むように密集していた。無論、ERがやったのではない。偶然の産物、運命からの贈り物。
弾丸が“血の槍”に当たる、反射する、反射する、反射する、反射する、反射する、反射する、反射する、反射する、反射する
何度も反射を繰り返す。そのうち弾丸は反れ、あらぬ方向へと飛んで行く。
「最後の一撃か……一矢報いる、まさに最後に相応しい」
ERが不敵に笑う。しかし、バーレルに笑顔は無い。むしろ、バーレルは遠くに行ってしまった。
「ER、お前の負けだ」
「!?」
1つの“血の槍”が不気味な音色を奏で始める。人間なら誰しも知る『液体が沸騰する音』
「血をも沸騰させるほど“ソウル”」
パァン
1つの槍が爆発した。その衝撃で近くにある槍も爆発する。そしてそのまた近くにある槍も……連鎖的に爆発していく。
「突沸か!!」
突沸……いわゆる過加熱。液体を沸騰させない状態にし、液体の温度を100℃以上にする。すると、少しの衝撃で液体は急激に沸騰し、爆発する。(電子レンジで長時間加熱すると起こる)
「弾丸でもレーザーはレーザー……熱を持った物が乱反射すると、やっぱり熱くなる」
液 体 で も ヒ ー ト す る ん だ ぜ ! !
「くそッ、火傷させやがって!!」
ERの体は真っ赤に染まっている。所々に火傷をした後が残っている。
「こんなので殺られると思うか!?」
「いいや……」
松葉はニヤリと笑う。その笑みに気がついた時には、ERは遅すぎた。
突沸により弾けた“槍”。しかし、爆発したのは一番初めに弾丸を反射し、熱を一番持った“血の槍”
なら、あまり反射していないER付近の“血の槍”はどうなるだろう?当然100℃以上だろうが、果たして『爆風』を受け、そのまままでいるだろうか?
「爆風で……槍を撃ち込んだ……?」
無数に刺さる血の槍。スタンドが暴走しているERにとって、防げる代物では無い。
バアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンアアアアアアアアアアアアアアアアンッ
刺さった槍が衝撃で突沸する。ERの体は弾け飛び、辺りに飛散した。
それを見て、松葉もまた倒れる。
****
――ウルトラソウル、これで良いんだろ?
『上出来だよ松葉』
――ヘッ、主人に馬鹿野郎は無いだろ
『火をつけるためだ』
――分かったよ。今までありがとな。あばよ、ソウル
『ああ、サヨナラだ松葉』
ソバサイ、クツケイ、勝てよ。世界に、平和を……
『ER』『松葉』 死亡
「……運命は ある」
ゆらりとだるそうにクツケイは立ち上がる。
「…なんだと?」
「流れ というべきかな。
こういう“結末”になる流れっていうのは ある んだ。」
松葉を見下ろし言う。
「毎回 毎回 同じ動きをするやつは いない。
気付いていなくても 心の奥底で“わかっている”からこそ
違う動きをとる。
だが 結末はどれもかわらない ……。」
シルビアを見る
「だが 変える。
変えなければッ何度も繰り返すこの世界は終わらないッ !!」
「……何度も 強いヤツと戦えるテメェがうらやましい ぜッ!!」
バーレルがナイフを放つ
先程よりも更に小振りなナイフを
「何度も同じ手が通じると思うなッ」
ナイフとバーレルを結ぶラインから逃れる
「ハイブリッド レインボウ!!」
バーレルの周囲が闇に覆われる
「バーレル お前に光はもう届かない
周囲を黒で塗り潰した、黒は光を吸収する……。
もう一度考え直せ……アンタは戦うことが好きだ、だがそれだけじゃあないだろう?
少なくとも、此処じゃない 今 でアンタはそう言ってた んだからな」
(バーレルよりも ケイだ。
松葉が死んだ今 シャドウは…。
!)
ナイフが 二本 三本と 出鱈目にとばされる。
光のないバーレルにはクツケイを直接狙えない
「戻れ」
(ナイフの戻るラインにはいない バーレル)
しかし、バーレルが戻したものは
ナイフの尻につけられていたテグス。
テグスは合体を邪魔するものをまるで バター を切るかのように進む
(な 何かが戻ろうとしているが……見えないッ!)
クツケイといえど見えないものに見えやすく着色もできない。
右手小指の先端 左耳半分
それはクツケイの髪を逆立たせ戦闘に駆り立てるには十分だったが――。
ケイの笑い声と共に 支柱をなくしたビルが崩壊する。
そして崩れた天井がクツケイの目の前でシルビアを埋もれさせる。
「うあぁああああ!!
色よ戻れぇぇぇぇ!!」
クツケイへと染めた色が集まる。
「弱者の一『撃よ岩を砕けッ!?』
光の戻ったバーレルによるブルズアイ、それはクツケイを二つに分ける。
しかし、クツケイは気にしていないようにシルビアの周りの岩を砕き続ける。
バーレルは最後にブルズアイを放ち、閉じ込められていた。
傍らに林檎を寝かせ
瓦礫による暗闇を見つめていた。
「こいつは 蝶か?」
「蝶ですよジョーイさん
蝶 知らないんですか?」
「蝶?」
丁度 ムーンライダーシャドウが産まれた頃 ジョーイは奇妙な蝶を見つけた。
何が奇妙かって?
「僕には見えないから
スタンドなのかな」
裕がジョーイ、神城に笑いながら言う。
「スタンド か」
言うなり ジョーイは蝶をスタンドでなぐりとばす。
「……害は無かった、な」
「ジョーイさんッ もう少し考えて行動をッ!!」
生ぬるい風が吹き
空間が揺らめく
その中から
「…パンテラが解除されただと?」
いま、ジョーイが潰した蝶にまとわりつかれた男と古臭い格好をした男が現れる。
ジョーイは気付く
ヤツの雰囲気に
それは以前味わった、あの――。
「…あいつは…
吸血鬼ッ!!」
・・・・・
ド グシャアアアア ア ア ア ア ア ア ア ーーーッ ッ ! !
衝 撃 音ッ!!
ソバサイ(ムーンライダー・シャドウ)は吹き飛ばされるッ!
そして・・・。
起き上がった「 ソバサイ」が見たモノは・・・・ッッ!!
『「 ル ピ」・・・なの か ? 』
それは。
『人間大』の『 猿の化 け 物』の姿であった ッ ッ ! !
「は・・・ははん??」
ケイすらも。
ルピのこの姿は予想外であった。
・・・・・
俺は、ルピ。
サーカスの団長に飼われていた、『 コモンリスザル』だ。
ストレスのはけ口となり『 虐待』を受ける毎日。
相手の顔色をうかがうことから、人間観察が癖になった。
人間・・・。見れば見るほど『 自由な生き物だ。』
憧れた。痺れた。俺も人間になりたい・・・。そう切に『 願った!』
ある時。俺は『 矢』に触れて『 スタンド』が発現。
『 自由』になりたいッ!『 人間』になりたいッッ!
その気持ちが『 スタンド』として発現した!!
その姿が・・・。
この『 SON-GOKOU( 孫 悟空 ) 』だ・・・ッッ!!
猿でありながら人間である事を望んだ『 この 卑しい姿』。
比類なき戦闘力は、俺をサーカスと言う名の『 束縛』から解き放った。
だが・・・それは『 本当の 自 由 』ではない。
本当の『 自 由。』
それは・・・『 笑いたい時に笑い。』『 泣きたい時に泣き。』
その事柄を共にする、
『 掛け替えの無い 友 が、いる事じゃあないの か ? 』
もう一度言う。
『 この 卑しい姿』・・ッッ!!
俺は必死の努力の末、この卑しいスタンドから、
『 Westward Odyssey(ウェストワード・オデッセイ) 』へと進化させた。
サーカス時代、優しくしてくれた・・・・。
『この卑しい姿を見・・・、小便垂らしながら。
「殺 さ な いで、 と 泣 い た」友人の姿をした『 スタンド』としてな・・・ッッ。
フッ・・・。
ウフフフフフ・・・・!
皮肉だぜ!
人間である事を望んだ結果が『 共に生きていきたい』と望み・・・!
共に生きていけない事を『 態度で持って、教えてくれた友人』の『 姿』だなんてな!!
幾度と無く、姿を変えようと努力をしたッ!
だが・・。何度やっても『 1日』で、この姿に戻ってしまうッ!!
そんな折、俺は『 ケイと出会う!』
・・・・・
「ケイは言ったぜ!
『 神』に従いッ!『 神』を崇めッ!!
『 神』に『 殉ずる者』、全ては等しく『 平 等 』であ る と な ! 」
「この身悲しくも『 コモンリスザル!!』
だがッ!
俺は『 何よりも 平 等 に、自 由 』でありたいィーッッ!!」
「ソバサイっ!
い や さ ! !
『 ムーンライダー・シャドウゥーッ!!』」
「 俺は、『 人 間 』である為に『 戦 う ッ ッ! ! 』 」
「 『 神 の 為 に ッ ッ ! ! ! 』 」
ソバサイは・・・。
応えるッ。
『ルピ。』
『俺はずっと思っていた。』
『救えるかな「 世界」。 救うんだろ「 世界」・・・。』
『そう思い。ケイに付いて行った。』
『その行動が「 罪」である事を知りながらッ。』
『何よりも「 生き長らえたい 事 柄」から・・・ッッ!!』
『だがな、ルピ・・。
俺は 今 なら言えるんだッ!!』
ー 天が 呼ぶッ!
ー 地が 呼ぶッ!
ー 世界を、救 え と俺を呼ぶッッ!!
ー 聞けッ! 神の名借りて『 罪』を犯す者どもよ・・・ッッ!!
ー 俺の名は『 贖罪(しょくざい)の 戦 士・・・ッ』
「『 ムゥゥゥゥウウウウウウン ラァイダァァァァアアアアアアアア・・・・・!!! 』 」
「『 シ ャ ド ォ ォ ウ ゥウウウ ウ ウ ウ ウ ーーーッッ ! ! ! 』 」
・ソバサイ スタンド:『 ムーンライダー・シャドウ』
能力:残り1分ッ!「 ムーンライダー」+「 ムーンライト・シャドウ」の能力で戦え る ッッ!!
・ルピ スタンド:『 SON-GOKOU』
能力:猿を人間大に等倍したパワーとアクションを誇るッ! 『 尻尾』が強力な武器となるッッ!!
「世の中には変わるものと変わらないものがある。わかるか、ソバサイ。君は変わってしまった。でも、変わらないものもあるんだ……わかるかね?」
天を見上げ、十字を切ってケイが言う。
「私が神に選ばれた者であり救世主だ、ということだ。それだけは変わらない。例え君やそこのドブ猫が、教会へと急いでいる時の道路工事みたいに邪魔になろうとも、これだけは変わらないんだ……」
ルピは走る。語るべきことは全て語ったと、無言でソバサイへと右手を振り上げて襲いかかる。
グボウゥンッッ!!
紙一重でかわすソバサイ。一歩退いて飛び上り、必殺のキックを放つ体制を取る。
「無駄だソバサイッ!! 神は、そして運命は私を選んだのだッ! エテ公に殴られて女に振られたサエナイ男の様にミジメに死んでゆ……グゥッ!!」
ケイの上体がぐらりと揺れた。
先ほどルピに吹き飛ばされる前、確かにソバサイはケイに噛みついていたッ!
一度はシバミを追い詰めたムーンライダーの能力が今発動したのだッ!!
「なぜだッ! 頭が割れそうに痛むッ!! 視界が真っ赤に染まっていやがるッ!! 神は……神は私を選んだはずだァァァッ!!!」
「ライダァァァッ……」
ムーンライトシャドウの能力で、自らに対して重力波を発生させるソバサイ。
しかしルピが飛びあがった。
ソバサイの頭上へッ!
「クキャアアァァッッ!!」
そのままルピはソバサイを殴り飛ばしたッ!!
能力の解除も間に合わず、重くなっていたソバサイは思いきり床に叩きつけられるッ!!
血みどろになりながら、ゆっくりと立ち上がったソバサイの前に、ドスンッとルピが着地する。
とどめとばかりに追撃に入るルピ。ソバサイは紙一重で避け、カウンターで拳を叩き込む。
ドグシャァァァァッッ!!
しかし、またしてもソバサイが吹っ飛ばされていた。
反撃を試みたソバサイを、ルピの尻尾がとらえていたのだッ!
「テメェ猿の分際で……憧れの人間様をぶん殴りやがっ『ズッギャァァァァァンッッッ!!!!』
光が辺りを包んだ。
目を覆うソバサイ。
振り返るルピ。
「うふっ……くふふふっ……ふふフフはハははハハハハハハッッ!!!!」
すぐ近くでビルが崩れ落ちる音がした。
クツケイとバーレルが戦っている方向だ。
だが、気にした様子もなく、むしろそれすら楽しんでいるかのような、ケイの笑い声が響き渡った。
「超えた、私は自分を超え、神にまた一歩近づいたッ!!
ゴスペルオブシン・アルターコール……これが本来の『私のスタンド』だったのだッ!」
ケイは立っていた!
ムーンライダー・シャドウの能力を受けて尚ッ!!
その後ろにはッ!!
ドルチのスタンド攻撃を受けたにも関わらずッ!
六枚の翼を持ったケイのスタンドが立っていたのだッ!!!
その姿に、唇を噛むソバサイと、ニヤリと笑うルピ。
「やはりッ!
神はこのケイを選んだッッ!!
私はドブ猫のッ! そして貴様の『スタンド能力を超越したッ!!』」
「関係ない。
俺はスタンド使いッ!
俺は……立ち向かうもの(スタンド)だァッッ!!」
ソバサイは天を指差し吠えたッ!!
アオオオォォォンッッッ!!!
「来いッ! アポロォォォォッッ!!!」
ゴゴゴゴゴ……
ソバサイの足元の影が伸び、やがて物体としての形を取り始める。
ナガセの愛車、アポロと同じ形を。
「ムーンライダーの能力を完全に使えるのが、今の『俺の能力』。
当然アポロを操作できるのも『俺の能力』だ」
ソバサイはアポロにまたがり、ケイと、そしてルピを睨む。
「時間がない。とっとと決めるぜクソザル。そこの勘違い野郎を、『人の道』に戻してやらなきゃならないからな」
ドルルルルゥゥゥンッッ!!
アクセルペダルを握りこむソバサイ。
神経を、ルピに集中する。
そして、走り出すッ!!
グアアァァォォッッ!!!
ルピが吠える。
ソバサイが姿勢を低くし、突撃の体制に入る。
ルピも体を低く構え、接触に備える。
風になるソバサイ。
迎え撃つルピ。
ぐちゃり。
ギャギャギャギャギャッッ!!!
急ブレーキをかけるソバサイ。
目の前には、すでに絶命した……ルピ。
「あれェ? 間違えたかなァ? でも、仕方ないよなァッ!?」
現れたのは一人の少年。
「どうせみんなサトヨシの敵なんだろ? だったら殺して正解じゃん」
繰り返す世界が生んだ小さな『魔王』がそこにいた。
「やっぱりここにいたなケイッ! ぶっ殺しちゃおうかなァッ! でもクツケイもタチバナもムカつくし、ブルースが誰をぶっ殺すかも楽しみだし……」
噴上瑠獅覇は迷っていた。そしてあることを思い出した。
「そうだッ! まだ情報収集の途中じゃんッ! 義手作れる人知らない?」
言葉を失うソバサイ。無言でほほ笑むケイ。
「知らないの? じゃあいいや。今日は生かしといてやるよ。じゃあな」
そして魔王は、闇に消えた。
(ルピ・リタイア)
そして、時は止まる。
今この時、私は真に神に選ばれていた。
「んふ…私は怖くなってしまう。
こんなにも神に贔屓されている自分自身が…あはぁん」
止まった時の中で、静止するムーンライダーシャドウ。
身悶えするケイ。
「イケナイ私…こんなに快楽に火照って…ふぅ…
ソバサイ、ありがとう」
ムーンライダーシャドウの顔に手を伸ばす。
「そして、さ・よ・う・な・ら♪」
完全破壊への、10度目の接触。
瓦礫の下に埋もれるバーレル。
二つに分けたクツケイは、もう大したことはできない。
逃げたか、あるいは瓦礫に埋もれて死んだか…。
林檎が隣に横たわる、近くにいたから回収した。
バーレルは取れる獲物は逃さない主義だ。
「さあ、幸せな夢から覚めぬように、オヤスミお姫様」
バーレルがナイフを林檎の胸に振り下ろす。
ルピが肉塊と化し転がっている…。
松葉とERの死骸が瓦礫の下敷きになる。
彼らが死に、彼女達が死に、誰が消滅した。
意識の無いシルビアの頬を、涙が伝う…。
──お元気ですか?
あの悲しい戦いから、もう三年が過ぎましたね…。
私は今、ニュージーランドに来ています。
ソマさんのこともあって、
「本物の白夜を見たい」から始まった旅行は、、
もう世界中を飛び回っています。
サトヨシさんは先生を目指してがんばっていますか?
サトヨシさんが教師になりたがったのも、
「キミの才能の方が優れているから」
そう言って、彼の背中を押してくれたのも、
今では全てに納得がいく気がします。
ただの女子高生だった私も、
彼について世界中を旅している内に、
三ヶ国語を喋れるようになってしまいました。
ビックリでしょ?
彼が忙しすぎるから、
私もなんとか時間潰さなきゃってしてたら、こんなものです。
あと、彼の写真集が発売されます。
こちらはカメラマンさんと
「脱ぐ」「脱がせない」とかで大喧嘩したのですが、
ぶつかり合ったかいあって、良い出来みたいです。
見てあげてね。
遅くなりましたが。結婚式の写真ありがとう!
日本に帰ったら真っ先にそちらに行きますね。
「杏子、三番目の筆を取ってください」
「あ、はいっ!」
私は彼に筆を手渡す。
世界中が注目する、彼の新しい作品の完成が近い。
黄金色に輝く並木道。
その木の一本一本がそれぞれに違う色合いの金色で、
全部の色が違うのに、絶妙な並び巡で調和を取っている。
最初は、私そっち退けで夢中な絵が嫌いだったけど、
今は集中してその美しい内面を平面に吐き出す、
彼の眼差しが好き、背中が好き。
「これ、この木はシバミさんだ」
私は描かれた木の一本を指差した。
「こっちはサトヨシさん、でアル姉…土星さん!?」
それは運命に立ち向かった、
たくさんの掛け替えの無い人たちが織り成す道。
こんなに沢山の木が、人が、道を形にする…。
私は胸が締め付けられて、涙が出た。
「目が養われてきましたね」
彼はニコリと笑って私を褒めてくれる。
なんて……夢をみちゃったwキャーーーーーーッ!!
ね、幸せでしょ?!
タチバナさん、想像してみて。
タチバナさんはきっと今、苦しいね、辛いね、
だけど杏子がいるよ。
まだ未来はあるよ、幸せな将来を目指そう?
ね、想像してみて!
タチバナは携帯を開き、杏子から来たメールを見返す。
「長いんですよ、これだから女ってやつは…」
直前まで送られてきた写メールが一杯だ。
ウエディングドレス姿の杏子、アルジス。
──アルジス ご心配なく。
杏子はとても綺麗になって、将来アナタを満足させることでしょう。
PS、私の写真は恥ずかしいから消しておいて!
「まったく騒がしい…」
着信履歴も、メールフォルダも、杏子だらけ。
画像フォルダは彼女が取った写真ばかりで溢れ返っていた。
「毎日毎日、飽きもせず…」
その一枚一枚を確認していく、
延々と続く笑顔…。
「私が、サトヨシの為に平和を守らなくては…」
「私が、世界の為にサトヨシを倒さなくては…」
「私が、杏子達の仇を取らなくては…」
タチバナは携帯の写真を見ながら、ブツブツと呟く。
「私が…私が…」
杏子がいるよ。
まだ、未来はあるよ、幸せな将来を目指そう?
ね、想像してみて!
「何処にも…いないじゃないか……」
想像してみて…
あたしはタチバナさんが、超、超、好きっ!
第17話『少女達が夢見た未来』
To
Be Continued...