「『I loose control』……か……」
眉間にしわを寄せ、赤倉は呟いた。
タチバナとの会話で気になり、赤倉はもう一度教団について調べてみたところ、
妙なことに気がついた。
『I loose control』と『I lose control』。二つの記載があるのだ。
はじめはただのタイプ・ミスかと気にも止めていなかったが、どうやら
その二つの言葉は別々に使われているようだった。
『ルース』と『ルーズ』。綴りも発音も良く似たこの二つの言葉は、その
意味もある種の共通点を持っていた。
「和訳するなら、『コントロールから開放する』……『コントロールを失う』
と言った所か」
どちらも、『コントロール』が無くなるという事を示している。
タチバナにはコントロールを『理性』と訳して見せたが、果たして正しいのかどうか。
正直、赤倉は英語は苦手だ。
ふと、赤倉はかすかな違和感を感じたが、それに意識を向けた途端、
それは亡霊の様に消えてしまう。何か、引っ掛かりを感じる。
しかし、それが何なのかわからない。
「考えても仕方ない、か……
『スーパー・レッド・ダンディ・ブルース』ッ!」
赤倉のスタンドが、ホテルの扉を殴り飛ばす。完璧な不意打ち。
赤倉の戦士としての勘が、扉の外にいる敵の存在を告げたのだ。
しかし、粉々になりながら破砕し、敵にぶつかる筈の扉は、一瞬にして
掻き消えた。
いや、消えたのではない。分子レベルにまで『分解』されたのだ。
「なんだ、タチバナ君か。すまんな、てっきり」
扉の向こうにいたのは、タチバナだった。
どこか虚ろな視線。涙に濡れた頬。そして、血で赤く染まった、両手。
それを見て、赤倉は息を飲んだ。
「……終わったのか」
尋ねる赤倉に、タチバナは首肯する。
「ええ。全て終わりました。『たった今』」
「……え?」
赤倉の視界が、赤く染まる。身体に力が入らない。そのまま彼は床に倒れた。
本当に鋭利な刃物で切られたとき、人は、痛みを感じないという。
タチバナの両手が赤いのは。あの血は。
サトヨシではなく、『赤倉自身』の……
「お疲れ様、タチバナ」
以前と変わらぬ邪気の無い笑みで、サトヨシはねぎらった。
「何故…だ……?」
倒れ伏した体勢から、赤倉は何とか上体を持ち上げる。
内臓をやられたらしい。かなり危険な状態だ。
「わ、まだ生きてる。流石だね」
取り立てて驚いた様子も無く言うサトヨシを無視し、赤倉はタチバナを見上げた。
「タチバナ君…何故、君が」
「人間ってさ。『時計の針が動く瞬間』を、決して見ることが出来ないんだ」
赤倉の問いに、タチバナは反応すらせず、代わりにサトヨシが答える。
「人間は小さすぎる変化を感じることは出来ない。
ゆっくりゆっくり…少しずつ信念を『曲げて』いって、今じゃあ
僕の忠実なお人形、ってわけさ。何せ、信念の塊みたいな男だったからね。
それが曲がってしまえば、何も残らない」
相変わらず虚ろな視線を投げかけるタチバナに、サトヨシは寄りかかった。
「もっとも、それだけじゃあ足りなくて、ちょっと『催眠術』の
助けも借りたけどね」
「催眠術…? そう、か…!」
赤倉の中で、全てが繋がった。そう、カルトな宗教団体には、よくある話だ。
ある特定の『キーワード』をスイッチに、人間を催眠状態に入れる手法。
そして、スイッチには必ず…
酷く嬉しそうにクスクスと笑いながら、サトヨシは続ける。
「さあ、タチバナ。『I lose control』。
さっさとやっちゃって」
肉を引き裂く音。
部屋は、その主の服と同様、赤く染まった。
* * *
「なァ……これさァ~。やっぱ変じゃねえ?」
「贅沢言わない。子供用の義腕なんて、そうそう都合よくあるわけないだろ。
もしあったとしたって、しっかりと調整して、リハビリしてようやく
使えるんだよ。しかも、その後も定期的にメンテナンスが必要。
そんな面倒な事やってられるわけないだろ」
「でも、いくらなんでもコレはねぇよ~ッ!」
瑠獅覇は左腕を掲げ、サトヨシに訴えた。
小さな少年の身体から伸びるのは、10歳の子供にはおよそ似つかわしくない、
筋骨隆々の男の左腕。
タチバナの力で分解し、再構築して繋げた、赤倉の腕。
「パワーありそうでいいじゃないか。
大体、自分で腕消しておいて文句言うなよ」
「大体、何でコイツまで一緒なんだよッ」
タチバナを指差し、瑠獅覇。
「そりゃあ、親友だからね」
邪気のない笑みを浮かべ、サトヨシ。
「さあ、パーティの始まりだ」
悪夢が、幕を開けた。
「ここは・・・」
少年はそれまで担いでいた女を床に寝かせると、
部屋の中へ吸い込まれるように入っていった。
来たこともない部屋。
どうしてここに足が向いたのだろう。
これもバタフライキッスの力なのか。
少年、揚羽は室内を見渡す。
そこはまるで赤いペンキをぶちまけたかのように赤かった。
「うっ・・・」
生臭い匂いが鼻をさす。
彼がその赤を血だと気づくのにそう時間はかからなかった。
カサッ
血を見て呆けていた揚羽は突然の音に体を強張らせる。
「なにビクついている。」
声の先に目をやると女が散らばっていた紙に目を通していた。
「ハイネさん・・・それ・・は?」
ハイネが属していた、今は亡き教団の資料。
あいつと過ごした・・・
『日の本に生まれ出にし益人は
神より出て神に入るなり
この歌は江戸時代にとある神官が詠んだものです。
この歌の通り、神葬とは・・・』
神官の説教が聞こえてくる。
茜・・・
『神葬は故人を神に祀り上げる儀式です。
しかしこの神は基督教で言われる神とは異なります。
日本の神は人間と変わりません。
和魂も荒魂も人より多く持っているのです。
ですから人並み外れて酷い目にあったり、激しく怒りを抱いた者もまた神になることが出来るのです。
だからこそ崇め、奉らなければならない。』
神か・・・お前も偉くなったものだな。
いや・・お前にはふさわしいか。
ハイネは茜の葬式を思い出していた。
『すまないな』
ハイネは葬儀のため、いくつかの寺をあたったが、どこからも悉く断られていた。
『いえ、しょうがないですよ。
遺体があんな状況では、誰だって気味悪がります。』
困り果てたハイネの元に、この神官が尋ねてきたのだった。
神道の葬式など聞いた事もなかったが、ハイネはこれに頼るしかなかった。
『・・・すまない』
『いいんですよ。』
そういい残すと、老いぼれた神官は本殿へと帰っていった。
―茜
気絶していたハイネは夢を見た。
一本の腕がハイネの胴を貫いている。
腕から先はない。
胴体はハイネの目の前に突っ立っている。
光のない目・・・そこからは悲しみの色が見える。
―なにがおこっているんだ?
自分と別の場所に自分がいる。
―夢・・・なのか・・?
夢の中のハイネが何か言っている。
ハイネは聞き取ろうと自分に近づいた。
『こうするしか・・・こうするしかなかった。
あんたを繋ぎ止めるには・・・
少し前まで幸せそうな顔してやがったのに
そんな腑抜けたつらしやがって・・・』
虫の息でハイネはタチバナに掴みかかる。
『ハイネさんッ!どうして・・・?』
少年が叫ぶ。
―あれは、揚羽か・・・
『こうするしかなかったんだ・・・』
(シバミ、ハイネ、聞いてください。
もし・・・もし私が"曲がって”しまったら、その時は・・・)
(心配するな。その時は私が繋ぎ止めてやるからよ。)
『こうするしかッ・・・』
―――――
そこでハイネは目が覚めた。
「ハイネさん?」
揚羽が紙を睨んだまま動かないハイネを心配そうに覗き込む、
「行くぞ・・・嫌な予感がする。」
二人は紙を掻き集めると部屋を後にした。
で、次は誰を殺るわけ?ま~だしっくりこねぇからサ、ちょっと『試し切り』……したいんだよね~。」
体格に不釣り合いな『義腕』をブンブンと振り回しながら、邪悪な笑みを浮かべてサトヨシに訊ねる瑠獅覇。
「解ってるさ。安心しなよ、もう次は決まってるから……ねぇ?タチバナ。」
邪気を全く感じさせない、屈託のない微笑みを浮かべ、タチバナの顔を覗き込むサトヨシ。
「えぇ……そうですね、サトヨシ……。」
双眸に虚無を湛えたタチバナが、問いかけに頷く。
その様子に満足げに微笑むと、サトヨシは空間に歪みを造りだした。
「さぁ、行こうか。キミの『仲間』を……『シバミ』を始末しに、ね。」
外はすっかり闇に包まれていた。
- 静かだ。
こんな静かな夜なのに、不吉な胸騒ぎが止まらない……シバミは、病室の窓から夜空を見上げた。
煌々と照らす満月。
雲は無く、澄んだ星空が光を降り注いでいる夜なのに - まるで、嵐の前の静けさのような不気味な夜空が、シバミの瞳には映っていた。
「タチバナ……ハイネ……何処に行ったのよ……」
不安気な表情を浮かべながら、シバミは呟く。
タチバナがフラッと出ていき、ハイネが跡を追って行ってから、全く連絡がとれない。
(まさか……大丈夫よね?私の考えすぎだよね……?)
胸の前でギュッ、と祈りを捧げるかのように手を組む。
幽玄な月明かりに照らされた病室。
溜め息をついて、シバミは振り返ってベッドに横たわる人影に目をやった。
ヒデエモン。
病院の崩壊に巻き込まれて重体を負ってから、未だ目を覚ますことはない。
「ヒデエモン。こんな時……どうすればいいのかな……?」
弱々しい声で、言葉を投げ掛ける。
返事が返ってくる筈がない。
それでも、今は……それでも、何かにすがっていたかった。
戻ってこない二人が、失われた大切な者達と重なる。
コウ。
ザキ。
もう、あんな思いはしたくない。
だから、力を合わせて闘うって、そう決めたのに……
そう誓ったのに……
どうして、戻ってこないの?
「お願い。タチバナ……ハイネ……無事なら、生きてるなら連絡くらいしてよ……戻ってきてよ……」
熱いものが、頬を伝ってベッドに添えられた手に零れ落ちる。
ガラガラ……
病室の扉が開いた。
突然の出来事に驚き身構えるシバミだが、部屋に入ってきた人物の姿を確認して安堵の表情を浮かべた。
「タチバナ……!!良かった、無事なのね……?」
駆け寄ろうとしたシバミだったが、不意に奇妙な違和感を感じとり足を停める。
「タチバナ……?」
いつもとは様子が違う。
あの自信に満ち溢れた、凛とした眼差しとは比べるべくもない、何もない、虚無を湛えた眼差し。
「遅くなってすみません、シバミ……。」
覇気の感じられない、抑揚のない声で喋るタチバナ。
「ちょっと……一体、何があったの!?ハイネは一緒じゃあなかったの!?」
不安と不信に駆られ、つい激昂してしまうシバミ。
「そう怒らないでよ、シバミさん。」
不意に、タチバナの背後から声が聴こえてきた。
「タチバナが戻ってきたからいいじゃないですか……貴女を『殺す為』に、ね。」
ゆっくりと、タチバナの脇をすり抜けて部屋に侵入してきたのは……サトヨシ。
「サトヨシ!?アンタ、タチバナに何をしたのよッ!?」
キッ、と殺気を込めた瞳で睨み付けるシバミ。
それをサトヨシは余裕綽々で受け流し、無邪気な笑顔を浮かべたまま……宣告する。
「応える必要はないさ……貴女はここで死ぬのだから。」
スッ、とタチバナが一歩前に出る。
傍らには、既に『ブルース・ドライブ・モンスター』が控えていた。
「タチバナ……!」
眼前に『敵』として現れた『仲間』の姿を視て、シバミは悲しみを堪えるように唇を噛み締める。
轟ッ!!
B・D・Dの拳が、容赦なく繰り出される。
「クッ……!」
タチバナとの訓練の成果か、辛うじてだがギリギリのところで回避する。
しかし、この狭い空間では長くは持たない。
(このままじゃ……殺られる!)
そう思うものの、やはりどうしても反撃を躊躇ってしまう。
反して、タチバナは確実に仕留めるべく、次々と精確無比な攻撃を放ってくる。
一撃。
たった一撃で、終わってしまう。
そのプレッシャーが、シバミの精神を疲弊させていく。
ドン。
いつの間にか、壁際に追い詰められていた。
もはや、逃げ場はない。
「さぁ……トドメだ、タチバナ。」
クスッと笑みを零すサトヨシ。
その言葉に従い、無慈悲な一撃が振り降ろされる。
拳が、スローモーションで迫るのが見える。
ゴメン、みんな。
私、もう……………
覚悟を決め、堅く目を閉じる。
しかし、いつまで経っても拳が自分を貫いてこない。
「……………?」
不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。
すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
拳を繰り出したブルース・ドライブ・モンスターの腕を掴む、巨大な姿。
そして……
「ヒデエモンッ!?」
信じられない。
でも、これは間違いなく現実。
ついさっきまで、ベッドに横たわり意識も無かったヒデエモンが、今、シバミを護るようにタチバナの前に立ちはだかっていた。
「へぇ……面白いね、此れは。これも『歪み』の影響なのかな?」
心底楽しいといった風に、サトヨシが感心の声をあげる。
「……大丈夫ですかい?」
声を絞り出すように、ヒデエモンがシバミに訊ねる。
「バカ……起きるのが遅いわよ……!」
涙をいっぱいに溜めながら、シバミは微笑んだ。
「……なぁ、サトヨシィ~!そろそろ俺に『試し切り』させてくれよォ~!?」
我慢の限界に達して、怒鳴り声を発する瑠獅覇。
「そうだね……ま、いいんじゃないかな?」
まるで『今日の献立はハンバーグにするから』と言われた時のように、適当に応えるサトヨシ。
「ハァ~、待ちくたびれて死ぬところだったぜ……この鬱憤、バッチリ晴らしちゃうからよォォォ~……『覚悟』決めなよ、アル中姉さん。」
ゆっくりと、病室に姿を見せる瑠獅覇。
「不味いな……病み上がりでタチバナの旦那相手とは、俺っちも焼きがまわったかな?」
苦し気な表情を浮かべつつも、軽口を叩く。
「大丈夫よ、二人なら……負けたりしないわ!寝起きだからって、私は容赦しないわよ?」
ニヤリ、と唇の端を吊り上げて微笑みシバミ。
その様子を満足そうに見つめて、ヒデエモンは頷いた。
「いいか?走るんだ。走って……生き延びるんだ、シバミ。」
突然そんな事を言われたシバミは、キョトンとした目でヒデエモンを見る。
「は?アンタ何言って……」
言い終わる前に、微笑みで言葉を遮る。
「好きだったぜ、シバミ……達者でな。」
優しく呟いたその背中に、黒い陰を視たシバミは、溢れ出る涙を抑えられないままに、突如足元に開いた穴に吸い込まれていった。
「さぁ……こっからは俺っちが相手になるぜ!」
不敵な笑みを浮かべ、三人と対峙するヒデエモン。
「なんだよ!?逃げられちまったよ!!こんな死に損ないボコってもツマンネーよ!」
不満を露にする瑠獅覇に苦笑しつつ、サトヨシは二人の前に出る。
「良いよ、瑠獅覇。タチバナと一緒に、シバミさんを追うんだ。」
その言葉に、おもちゃを与えられた子供のように喜ぶ。
「ヨッシャァァァッ!ブッ殺ース。殺して殺して、もう一回ブッ殺してやる……オラ、行くぞ。」
タチバナを促して、病室を出ていく瑠獅覇。
部屋に残るのは、二人のみ。
ハァッ、ハァッ……
シバミは走った。走った。
流れる涙を拭うこともせずに、唯一人、夜の帳の中を疾走する。
確かに、あのまま闘っていても勝算は無かった。
それでも、諦めるよりはマシだった。でも……
「ヒデエモンのバカッ……!カッコつけて……!?」
ザザッ。
急に足を停めるシバミ。
「クソッ……!」
息を切らせて、悪態をつく。
眼前には、二つの人影。
噴上 瑠獅覇。
ムトウ タチバナ。
二人はテレポートで先回りをしていたのだ。
「逃がすかよ、バァーカッ!!なぁ……ところで、この腕に見覚えないかァ~?」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら、不釣り合いな『左腕』を見せつける。
その『腕』を見た瞬間、シバミに戦慄が走った。
「まさか……まさかその『腕』はッ!その逞しくて、二の腕に傷のあるその『腕』はッ!!」
笑いを堪えきれなくなった瑠獅覇は、狂ったような笑い声をあげた。
「ウッフフフフフ……ヒヒヒヒヒ……ヒャハヒャハハ!ギャッハハハハハハヒハハハッ!!そうだよ!そォーうだよンッ!!アンタのオジサンの『お手手』だよォォォォォッ!?」
コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛
大気が、震えた。
さすがの瑠獅覇も、一瞬動きを止めるほどの圧力。
「許さない……アンタは絶対に許さないッ!!」
怒りに震える瞳で、瑠獅覇を睨み付ける。
「ハ……ハハッ!!面白いじゃねェーかッ!?グッチョングッチョンのメッチャメチャにしてやんよォォォォォッ!!」
狂喜に打ち震える瑠獅覇。
静かに構えるタチバナ。
そして……
「シバミッ!!」
遠くから近づいてくる、聴き覚えのある声。
ずっと、待ちわびていた声。
共に闘うと、誓った『仲間』。
『ハイネ・ヴェリオールド』。
あそこに行けば、きっと会える。
すべてが壊れてしまうまでに、彼に会わなくては。
煌々と照らす満月とは裏腹に。
彼女の姿はもう、朧気を含んだかのように翳んでしまっていtた。
残る時間がもう少ししかないことを、彼女は理解してしまった。
だから、彼女はいつもの場所に走っていった。
一世一代を賭けた、最期になるだろう淑女の戦いに向かって。
林檎がいない。
少し目を離した隙に、ベッドにいるはずの林檎はいなかった。
ほんの数秒。シルビアは他の事に気を取られていただけだった。
それだけの短い時間で、イリュージョンの如く彼女の姿は消えてしまった。
女帝の存在が否定されたことにより、その血縁である少女もまた存在が否定されていく。
そう、世界が修正を始めていた。
BARの扉を開ける。
いなければいいのに、と少しでも彼女は思ってしまった。
「よう、林檎」
「……バーレル様」
いつもどおりの声。いつもどおりの姿。
ただ違うのは、その手に握られたナイフが彼女に向けられているだけ。
それでも、男が無理をしているのだと、彼女には分かった。
だって、あんなにも優しい表情で。
だって、あんなにも逞しい風貌で。
透き通ったような瞳で、いつも何かを見据えていた。
そんな人物を、彼女は一人しか知らない。
「私を、殺しますか?」
「ああ、俺は、お前を殺す」
それでも、歪んでしまったものは容易く変えられない。
いつもの男の姿をした、とても優しい殺人者は。
まるで恋を歌うように、静かに言葉を紡ぐ。
「殺すよ、俺は、どうしようもなく、今お前のことを殺したいんだ」
瞳から涙がこぼれる。嗚呼、何てことだろう。
少女は今、とても残酷な決断を彼に押し付けようとしている。
「バーレル様。私は……貴方のことが好きだった」
言葉に出すと、何て儚い曖昧な言葉。
「私は貴方に生かされていた女だから、貴方が私を殺すに文句は言いません」
嘘吐きな舌。死ぬのは怖い。だって、好きな人と一緒に生きることが出来なくなるから。
「でも、私は賭けることにしたんです。だから、貴方に殺されるわけにはいかない」
「………何に、賭け、るんだ?」
バーレルの息が荒くなる。我慢している。
最期の言葉を、彼が聞き届けてくれる。
「……バーレル様と、私と、『おばあさま』と……皆、また楽しく過ごせることに」
そう、きっと貴方がいれば。
この『繰り返されているセカイ』も、最後の一回で終わらせられる。
だから、私は、今、ここで。
「お願いです、バーレル様。世界を救って下さい
そして、また、貴方と」
再会出来ることを祈ってます。
その言葉だけは、ついに出すことは出来なかった。
「林檎…………?」
「……出てきて、私のスタンド」
アブソルート・ドメイン。もう一人の私。
ごめんなさい、私、淑女でいられなかった。
「賭けのチップを払います。今ここで、私、道祖土 林檎を」
全力で平伏させなさい。
私は、私の命を賭けて。
もう一度あの人に、戦いに向かわせようという愚かな女だ。
後悔ばかり、未練ばかり。
でも、私は信じている。
あの人と、共にまた過ごせる夢のようなひと時を。
道祖土 林檎 再会を夢見て、死亡
(シバミ、ハイネ、聞いてください。
もし・・・もし私が"曲がって”しまったら、その時は・・・)
不愉快に残る、その言葉にハイネは顔をしかめる。
昔から嫌な予感は外したことがないハイネは、妙にその言葉が気になってしょうがなかった。
「シバミ、タチバナは全部任した」
「ちょっと!無理に決まってるじゃないっ!」
「私は既にアンタ達に負けてるんでね」
「こらぁっ!!見捨てる気かあァ!!」
見捨てる心算はこれっぽっちもない。
一番生存率が高い作戦を当てはめたに過ぎない。
勝率は現段階で1%未満。生存率も絶望的。
冷静に思考の中に戦いに必要な要素を張り巡らせる。
久々に頭を使う。スタンドを得てからは、常に傍に茜がいたから、頭の使いようがなかった。
だから、今度こそ。
今度こそは、私はこの戦いを制してみせる。
私(俺)は頭脳。逆説を以て、強者と弱者を引っ繰り返す……!!
「余所見してていいのかなぁああ!!落 書 き 野 郎 !」
「五月蝿い黙れ糞餓鬼が。今イロイロ考えてるんだから邪魔するな」
スタンドの腕を見切る。
変幻自在の攻撃は、既にもう『見切った』。
攻撃パターンも何度も戦いをしていれば分かる。
……タチバナとも修行がなければ、見切ったところで避ける事も出来なかっただろうが。
「今更モノ考えたって無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
「人間がモノ考えないでどうするんだよ?
私が今考えているのは、そうだな…………。
お前をブッ殺して、タチバナを正気に戻して、ああサトヨシって奴もどうにかして……」
「人の話を聞きやがれえ!!!!」
「人の話も聞かない餓鬼に聞く耳があってたまるか。
もうお前といると『退屈』なんだよ……だから」
もうぼち、死んどけ。
極彩、闇色と茜色が辺りを染め尽くす。
ソリッド・カラーズは色のスタンド。
目に見える世界は、全て虚妄混じる不確かな世界となす。
そう、それは時間稼ぎ。
ハイネはこの現状を覆すための味方を待っていた。
シバミにとどめを刺そうとしていたタチバナの背後から、バーレルがタチバナを殴り、『分けた』。
サトヨシへの思いと歪みによって洗脳されたタチバナ。
そして、杏子への思いを胸に、瑠獅覇を倒すことをハイネと誓い合ったタチバナに。
「わかっていませんね、サトヨシも。こんなことをしなくても私の愛は変わらないというのに」
「違いますね……サトヨシを守るのが私の役目。そのためなら洗脳だろうと何だろうと構わない。それが私のはずです」
対峙する2人のタチバナ。安堵したシバミが言う。
「どっちでもいいッ! アンタが筋金入りのホモだってのはよくわかったッ! そんなことより瑠獅覇をッ!」
「わかっています。あのクソガキを私は絶対に許さない。ですが……B・D・Mッ!!」
タチバナが叫び、目の前のタチバナに殴りかかる。
「私が私の動きを読めないとでも思っているのですか?」
「これ以上面倒な事態は避けたいからな」
バーレルがワイヤー付きのナイフを放ち、カウンターを狙ったもう一人のタチバナを止める。
「『分解』しろ、B・D・M」
B・D・Mの拳がタチバナをとらえ、『分解』。
そして、もう一人のタチバナをも『分解』する。
「何してんのよタチバナッッ!! アンタまで『分解』しちゃったら……」
「ゴチャゴチャワケわかんないことやってんじゃねェッ! いいからサッサと死ねよッ!!」
瑠獅覇が瞬間移動し、シバミの前へ。
ソウルステーションで殴りかかるッ!!
「いや、これでいいんですよ、ビッチ……、失礼」
そう言ってソウルステーションの拳を止めるタチバナ。
「私自身を『再構築』しました。サトヨシの歪みの影響を正して。半ビッチ、バーレル、あなたと……そして杏子のおかげです」
「テメェ裏切りやがったかタチバナッ!! やっぱり最初に殺さなきゃいけないのはテメェだったなァッ!!」
タチバナの手を振り払い、スタンドを分離、マグマとスウィッチが同時にタチバナへと襲いかかったッ!!
「ブルース・ドライブ・モンスター……」
ゆらり、一歩前に出るタチバナのスタンド。
「気迫が足りねえなァタチバナァァッ!
やる気はどうしたよやる気はよォッ!
テメエに殺る気が無くっちゃ……」
マグマの左回し蹴りッ!
スウィッチの右拳ッ!
一方を止めようとも、もう一方が仕留めるッ!
上半身と下半身のバランスを一切無視できる
ソウルステーションならでは、
致 死 の 挟 撃 ッ !
「殺りがいがねえよォォオオァァア
アアーッハッハッハッハハアアアアアアアッッ!!!」
対するB・D・Mは…
ただ、静かにスウィッチへと右手を振った。
「……『 モ ン ス タ ー C . C 』……」
衝撃。
マグマの蹴りに、確かな手応え。
受けたのは……
「お、俺……だとォッ!!」
それはありえない光景だった。
ただ静かに振られただけのB・D・Mの手は、
スウィッチの体にめりこみ、
攻撃の勢いを一切無視してその体を移動させ、
マグマへの攻撃の盾としたのだ。
「チ、分離じゃどうにもならないほどパワーがあるってのかよォッ!
ナマイキなんだよこのクソホモッ!クソッ!ホモクソォッ!!
クソ、クソクソクソッ!戻れ、ソウルステーションッ!!」
静寂。
「え……タ、タチバナ…」
シバミが、呆然と呟く。
そして、同じ声色、
何が起こったか解らないまま、ハイネが、続ける。
「…ゆ、融合していやがる…
あのガキのスタンドと…」
「…一体なぜ、この能力が生まれたのか?」
タチバナは、言葉を荒げない。
ただ、静かな悲しみ、あるいは悟りに近い諦め、
だが、そこに秘められた、確かな意思。
それだけが、彼の言葉に篭っていた。
「バラバラになった『体』が、
ずっと一つに戻りたかったからでしょうか?
分かれた『心』が元に戻ったから?
歪んだ『世界』が私に与えたのか?
それとも、サトヨシに歪められた『私自信が生み出した』のか?」
誰も動かない。
瑠獅覇は呆然と。
バーレルはポーカーフェイスのままで。
タチバナの美しい声だけが、淡々と紡がれる。
「私はそうは思わない。
私のこの能力を生み出したのは…」
見てはいない。
でも、知っている。
それぞれに思いを持ちながら、
自分の体を守ってきた、仲間。
そして、自分を変えてくれた、
…名前を呼ぶ事も、今は辛い…。
だが、タチバナの心には、しっかりと残っている。
タチバナは変わった。
それは、自分には必要ないと思っていた、
自分は欲しないと思っていた、
人との繋がりの暖かさを知ったから。
「モンスターC.C。
新しい能力と言うのもおこがましいほど、
些細な成長ですが…」
「い…」
呻く、瑠獅覇。
「今までの逆。
触れたものと、『つながってひとつになる』能力…」
「いつまで語ってんだこの脇役がァアア!
僕の前では全員端役なんだ、
僕の前で偉そうにすんじゃねえッ!
襲え、マグマッッ!」
「そして…いつまでもつながってはいられない。
必ず、」
…。
「離れる…」
破裂音。
融合が解けた瞬間、スウィッチの中心部で、エネルギーが弾けた。
【B・D・M "モンスターC.C"
触れた物を自分とひとつにさせる。
一定時間で能力は強制的に解除され
ひとつになっていた物にダメージが入る】
「グ、ァアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
絶叫する瑠獅覇。
シバミは、思わず耳を覆った。
それだけの苦痛を示す、叫び…。
「グ、オ、ハ、アアアアッッグッ!!」
吐血する瑠獅覇。
「…終わりだな」
ナイフを構えるバーレル。
「やっと今…お前を、殺す」
近寄る、ハイネ。
シバミは動かない。
ただ、流れた血に、顔を歪めるのみ。
タチバナも動かない。
ただ、静かに、全員を見ている。
「……タァ…チ…バ…ナ……」
瑠獅覇は……タチバナだけを、見ている。
そしてタチバナも、瑠獅覇を見た。
「タチバナ…タチバナァ……
タチバナッ!
タチバナッ!タチバナァッ!タチバナァァァッッ!!
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチ」
グシャァァッ!!
「…こっちを見やがれ」
ソリッドカラーズの拳が、瑠獅覇の頭へと、直撃した。
「大きな巨人…それもねじ曲がれば僕の手下さ…」
「く…ふ…ぁ…あああっっ!!」
ヒデエモンは善戦した。
しかし、相手は自分の数段上を行くサトヨシ。
長引けば長引く程分は悪くなっていく。
「調子が良いんだ…だからこんな短時間で君の巨人を僕のモノに出来た」
何故だろうか、サトヨシはここに来て格段と能力を上げている。
そして、それを臆することなく使いこなしている。
スタンドをねじ曲げるまでに…。
「君が僕を攻撃しようと思えば思うほど、君のスタンドは君を攻撃するようになる。」
マキナの大きな腕が振るわれる。ヒデエモンはそれを間一髪で避けた。
「「エクスマキナ!!一体どうしちまったてんだ!」
主の呼びかけむなしく、マキナはヒデエモンを狙い続ける。
「ははは、楽しいなぁ~。でもそろそろ終わりにしよう。ユグドラシルで君の存在を消してあげるよ!!」
ユグドラシルがヒデエモンに狙いを定める。
「全ての人生を否定し、来世にも残らない位にねじ曲げてあげる。」
そう言ってユグドラシルを使おうとした刹那…
一陣の風が…強く吹いた。
「間に合った…もうこれ以上、誰かを失う戦いは止めにしよう」
風は強く吹き込み、サトヨシを壁に叩き付けた。
「くっ…この野郎ォォォォっ!!」
完璧主義者のサトヨシは考えの通りにいかなかった事に激怒する。
「お前が現れなければ、ねじ曲げることが出来たのに!!お前も一緒に消えてなくなれぇ!!」
ユグドラシルの力が跳ね上がった事を空気がおしえる、張りつめ震える空間。
「サトヨシ…お前に俺を消すことは出来ない!俺は気付いた!死んでいった…この世界を失った者達が、この世界をまだ手にしている俺達に託した思いを!!それは、お前を倒す事だ!」
ブローウィン イン ザ ウィンドウが黄金に輝く。
「波紋は俺の魂だ!そして、スタンドは俺と亡くなっていった者達のミエナイチカラ!!」
ブローウィンの周りに空気が渦巻く、そこにはたくさんの思いが集まる。
シン、デュカ、秀丸、D.M.Q、ジャンケルビッチ、トメ、そして隕鉄。たくさんの想いが集まり、風と共に渦を巻く。
「風が味方してくれる!!俺を今動かそうと風が背中を押してくれる!」
更に風が強くなり、ついにブローウィンの姿は見えなくなる。
「俺は忘れない、愛する者の…友の言葉を!!」
「くっ…何を言ってんだ!ただ風を操れるだけのお前なんか一瞬にしてねじ曲げてやる!!消えろ!ジョー…」
その時、風が止んだ。
そしてサトヨシの声がかき消える。
「ミエナイチカラがサトヨシ、お前と俺の間の空間を真空で裂いた。お前の声は俺の所まで届かない。俺の声もお前の所まで届かないがな。風を操り、真空を創り出す。これが俺の…そして消えていった奴らの思いだ。」
届かない声がサトヨシの心の奥に囚われたもう一人のサトヨシに響いていた。
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて聞こえてくるよ。
世界の終わる音が。
「俺」は世界を救いたかった…。
「僕」は世界をこの手に握りたかった…。
今度も叶わないね、両方、叶わないね。
あれ?一体どっちが「僕」の願いだったのか?
どっちが「俺」の願いだったか?
「君」はどっちだったのか?
始まりの「僕」だったのか、結末の「君」だったのか?
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて近づいてくるよ。
「僕たち」の終わる音が。
ガラガラガラ…ガゴン!ドドン!
エウスデクスマキナの手足が、曲がり、折れ、砕け、
ヒデエモンの眼前で崩れ落ち、瓦礫と化していく。
「戻れ!カーペンターズッ!!」
「オヤカターッ、モウ駄目ダーッ!」
「アッー!!」
それはBUMP OF CHICKENの、極基本的な能力。
「物質を曲げる力」
その力で、ヒデエモンが組み上げた建築をへし折って行く。
ねえ「俺」、
いつもみたいにユグドラシルで消してしまえば良いんじゃないかい?
いいや「僕」、もうその必要はありはしない。
ああ、そうか…もう世界が終わるんだからね。
ジョーイが落下する瓦礫の合間を縫って、サトヨシに迫る。
「おおおおおおおおっ!!」
サトヨシ目掛けて懇親の力で、コークスクリューパンチを打ち込む!
しかし、その一撃はサトヨシを捕らえない。
「な!?パンチがすり抜けた!?」
「予期しないことが起こるから、気をつけて」
さっきと打って変わって穏やかなサトヨシの口調。
「なんだ、おちょくってんのか?!」
もう、一巡前の「俺」も、現世の「僕」も無い。
それらは「統合」しつつあり、一つになる形を決めかねて、
不安定に人格が揺らいでいる。
「僕」は、このカスどもも
次の世界から抹消しておくべきだと思うぜ!
ユグドラシルだ!ユグドラシルだ!ユグドラシルだ!
いいや、もう世界に猶予は無い、
「俺」は無駄打ちは避けるべきだと思うんだ…。
もっと重要な何かの為に残しておくべきだと思うんだ。
ボキャアッ!!
サトヨシを殴りつけたジョーイの腕が関節を逆に曲げられ、
肘から折れる。
「うおあああああああっ!!」
地面を転がるジョーイ、その足が折れる。
グキキッ!!
何だこれは?!手も足も出なねえ!
これほどか?こんな、俺が何もできない程だったのか?!
サトヨシは考え事でもするように突っ立って、
何もしてこないのに、現象だけが起こる。
俺を追い込む現象だけが!?
オカシイ、この世界観は何だ!?
そうだ、手を貸してくれ神城!どこに行った?
どこに行った?一緒に来たハズだ?
一緒に……誰と?誰と来た?!
俺は誰に助けを求めている?!
「だから、言ったよね…もう歪みきっているんだ…
これからどんどん自然ではありえない事が起こる、
それは世界の法則の限度を超える。
計算が成り立たなくなった世界は未来を形作るのを諦めて、
過去をやり直すんだ」
「僕」がユグドラシルを使わなくても消える人間くらい出てくる。
もしかすると、一足先にやり直しの世界に行ってるかもしれない。
それはもう「俺」には判らない。
構築していられなくなった世界が、もがいて暴れて、勝手にやってることだ。
せっかくタチバナに、アトリエで会えたのに、
なにも…伝えれらなかった…「僕」を保てなかった…。
ああ、タチバナ、そうか「俺」タチバナだ、
やり直す前にアイツを消さないと、
そうか、それでユグドラシルを温存だ、やり直すのに最高邪魔だ。
タチバナ消す…伝え消す。
助けタチバナ…タチバナ、タチバナ、タチバナ…。
タイバナ、タチバナ、タチバナ、タチバナ。
「タチバナ…タチバナァ……
タチバナッ!
タチバナッ!タチバナァッ!タチバナァァァッッ!!
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチ」
グシャァァッ!!
「…こっちを見やがれ」
ソリッドカラーズの一撃を受けても、
なお反撃の一撃をハイネに見舞う瑠獅覇。
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺して」
どんなに足掻いても、もう勝負は見えている。
構築者として、その能力が進化し続けるタチバナ。
一対一でも、もう手も足も出ない。
それは完全統合したサトヨシと同等の世界。
森羅万象の限界を操作する存在なのだ。
せめて、せめて、コイツだけでも消えてくれれば。
俺は他の誰にも負けねぇ!俺は魔王だっ!魔王だっ!!
──その願いは叶う
「!?」
一同が驚く!?
「なんだ、何が起きた!?」
そこは知らない場所だった、
突然、自分たちは知らない場所にいた。
そこには瑠獅覇、ハイネ、バーレル。
タチバナとシバミの姿が無い……。
世界の歪みが、三人の存在した場所を歪めた。
「…あはっ!なんか知らんけど、タチバナのクソがいねぇっ!」
歓喜する瑠獅覇、その目はギロリとハイネ、バーレルを捕らえる。
「く、来るぞ!」
バーレルに警戒を呼びかけるハイネ。
いくら相手が化け物でも、すでに瑠獅覇は重症。
バーレルの戦闘力はかなり高い、やれる、やるんだ!
しかし、バーレルの様子がおかしい。
「どうした!ぼけっとするな!」
怒鳴るハイネに、バーレルは非常事態を伝える。
「…スタンドが、出ない」
世界は激しく歪み、その有り様を変えて行く。
「うしゃああああああああああっ!!」
襲い掛かる瑠獅覇!!
予期しないことが起こるから、気をつけて。
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて聞こえてくるよ。
世界の終わる音が。
・・・・・
腕が『 折れた。』
足が『 折れた。』
『 神城』ドコ行ったか解らねぇー。
圧倒的なパワーに『 ビビリすら覚えちまう。』
世界が終っちまう。
俺達がやってきた事ってのは・・・。
『 何 だ ったん だ ! ! ! ? 』
ー 歪みか。
ー フム。何が幸運するか解らないモノだな。
「ッッ!!!?」
どこからともなく聞こえる声ッ。
そして・・・。
「な・・・・ッ!?」
サトヨシは『 驚 愕』したッ!!
虚空より現れわれし『 その 紅き 両 腕 にィーッッ!!!』
「フッフッフ。」
「先に君達に、八つ裂きにされ、存在も消された『 赤倉男平だよ。』」
・赤倉男平
スタンド名:スーパー・レッド・ダンディ・ブルース 能力:怪力ィーッッ!!。
備考:怪力は、スタンド能力への『 抵抗力』に繋がるッ!即ちッッ!!
「『 その存在消されるに、遅くッ!
歪んだ事象は、瀕 死 の 重 傷 を、かき消したのだよッッ!! 』」
「離せッ!離さんかァーッッ!!?」
もがくはサトヨシッ!
「ジョーイくん。」
「『 神 砂 嵐 』だ。」
「まず、この『どうしようもない 歪 み 』を破壊しなければ、『 構 築は無理だ。』」
「なぁーに、私の事は気にするな。」
「どの道、『 消え行く 運 命 だ。』」
ジョーイッ!
「誰だか解らねぇーがッ!
ここはッ!やるっきゃあ ねぇー ようだなァアアアア ア ア ア ア ア ! ! ! ! 」
ジョーイが、突き出す『 両 拳 ッ ! 』
しかして実体ッ! 『 破壊的 小 宇 宙 ッッ!! 』
『世界を、壊されてたまるかァアアア ア ア ー ッ !
俺達の叫びを、受け取りやがれぇええ え え え え え ! ! 』
ジョーイが、背ッ!
黄金の風 、 巻 き 起こりッッ、
しかして、『 世 界 包み込むは ッ ! ! 』
ー 『 ゴ ー ル ド マ ン 的 ・ 小 宇 宙 ゥウウウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ! ! ! 』 ー
「『 俺 達 は 、 ス タ ン ド (立ち上がる者) だ・・・・ッッ!!! 』 」
『 風 は、放たれた・・・ッ!!』
『 ミエナイチカラ』を共にして・・・ッ。
・・・・・
「俺は『 疲労』していた・・。
この街に・・・、この世界に・・・。」
「『 生き甲斐が死んだ 世 界 』に、興味などないからだ。」
男は、消え行く。
満足気に笑みを浮かべて。
ー「 石仮面 」
脳に骨針を突き刺す事により、『 邪悪なる力』を引き出す『 奇妙な 仮 面 』
そして、その力は・・・。
『 死 者 の 復 活 に、通じ る ッ ッ ! ! 』
「『 吸血鬼』になれて、良かった。」
「『 完 全 世 界 』・・・。」
こうして、ブルースは消滅をした。
蘇らせた『 誰か』に思い馳せ・・・。
ダン
ダン
ダン
ダン
ダンン
ダンンン
ダンンンン
「『 無 限 の可能性に生きる・・・。
そう考えれば 今 日 も、 楽 し い だ ろ ? 』 」
「 この身、腐り行くのみの『 屍 生 人(ゾ ン ビ)』。」
「だが・・・。
『無限』の可能性に『 夢 馳せる』なら、私は幸せで楽しい。」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
・レッド
スタンド名:LA'rcーenーciel 能力:死んだ存在をこちら側に呼び出す事ができる。
備考:吸血鬼・ブルースの力で、屍生人として復活。そして、その『 野 望』はッッ!!
「 『 完 全 世 界 。 』 」
「捻じ曲げた『 存在』は、悲しい。」
「捻じ曲がった『 世 界』が虚しい。」
「私は狂っているが『 捻じ曲がってはいない』つもりだ。」
「そして、なお『 死こそが 完 全』と認識しているッ!!」
レッドは歩み行く。
機、熟せし事を理解しているからだ。
「誰もが『 生まれ・・。』」
「誰もが『 死す。』」
「終着、『 死』ぞ 到 達と充たすなら・・。 『 完 全 世 界 』、其処にあり。」
ー 行こう、死せる者達よ・・・。
ー 終幕、統べしは『 陰 陽 師 』であるッッ!!!
そして、
最後の戦いが始まる。
第19話 『 世界は、壊れる?それとも狂う?? 』
to
be continued...