「男性のおしゃべりは、嫌われますよ。」
「寝たきりの君が、
寂しいんじゃないかなって思って、
喋ってあげてるんじゃないか・・・・。」
語りかける男は、『 サ トヨシッ!! 』
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「いえ、もう 十分です」
・ジュール & カロリー
微生物サイズの超小型スタンド。
女帝がトメ、一度操れば『 空気がピシピシと音立て、凍る。』
「そうだね。
君みたいに重傷の人を相手にするのは、
はばかれるが
邪魔をした報いだと思ってくれ・・・・ッッ!!」
病室で、静かに戦いの幕が上がる・・・ッッ!!
-外伝『トメvsサトヨシ』-
グゥ・・・・ッ
女帝・トメが作り上げた氷壁は・・・、
パ パリィィィイイ イ イ ー ン ! !
あっと言う間に砕かれたッ!!
「脆いね・・。」
近付き迫るは、サトヨシ、BUMP。
「儚いね・・・。」
その右腕には『 大いなる 歪み。』
その名に震えよ『 ユ グ ド ラ シ ル ! ! 』
なまっちょろいぜ、女帝がトメ。
今、その存在。『 捻じ曲げてくれようっ!!』
ド ド ド ド ドドドドド ド ド ド ド ド ド ド
「過去、レクイエムタイプのスタンドを2体撃破し、
『神城 朝陽』と共に、吸血鬼の野望を打ち砕いた『 歴戦の女帝』も、
こうなっては、『 借りてきた 猫 』だね。」
ゾ クリッ。
「『 存在』ごと消えて欲しいな。」
ゾ クリッ。
「君のように、老いぼれてしまった人には、疎い事だろうけどね。
『この世は俺の ゲ ー ム なのだよ。』」
ゾ クリッ。
「ゲーム知ってますゥ~~?
何でもかんでも、『 ファミコン』って言うの無しで す ぜ ? 」
ゾ クリッ。
「気に入らないキャラは『 消す。』
危なくなったら、『 リセットボタン。』
俺にはねぇ・・・・。
ゲームばっかやってるから、『 対人関係が拙(つたな)い』だとかッ!
『ゲーム脳の懸念』、脳の退化なんて言葉は、関係無いのだ よ ッ ッ ッ ! ! ! 」
ゾ ゾ クリッ。
「『 この世は俺だけの ゲ ー ム 。 』
「忘却と言う名の・・・!
『 ニ フ ル ヘ イ ム ( 死者の国 )』へ送ってあげるよ・・・ッ ッ ! 」
ー ・・・・・。
ー 凛( リ ン ッ ! ! )
ー トメは、凛とした態度を『 崩さないッ!!』
サトヨシッ!
「淑女ぶるなよ?
もうすぐ君を知る人間が『 居なく』なンですぜぇえええええ!!
ト メ さ ん ? ? 」
「君は『 神城 朝陽』に会う事は無いッ!
レクイエムスタンドの『 惨事』を防ぐ事もできないッ!
カワイイカワイイ『 林檎たん』に会う事も無いッ!
ジョーイに『 希望を与える事』も出来ないッ!!
まァ・・・。
朝陽が他の女とよろしくやった結果の『 神城 静夜』に出会わなくても良いのは幸いかァ?」
サトヨシは、下卑(げぴ)た笑みを浮かべるッ!!
「クカカカカカ カ カ カ カ カ ! ! !
捻れて曲がって、この世をゲームに例える『 ど クズ』に負ける『 稀代の 傑 物ッッ ! ! 』
たまらないねぇぇぇぇえええーーーッッ!
こうしてまた一人、忘却の彼方『 ニ フ ル ヘ イ ム ( 死者の国 )』
捻れて曲 がれ ッ ッ ! ! 」
「 『 ユ グ ド ラ シ ル ッ ッ ッ ッ ! ! ! 』 」
・・・・・
ー その瞬間、サトヨシは『 戦慄したッ!』
ー 吸血鬼ッ! そして、レクイエムスタンド2体を打ち倒した、
ー『 女 帝 ・ ト メ の 恐 ろ し さ に ッ ッ ッ ! ! ! 』
・『 ジュール & カロリー 』
微生物サイズの超小型スタンド。
スタンドを出したときには1体だが、『 自己増殖』を繰り返す。
このスタンドは生物体内以外の『 水(水蒸気、氷を含む)』の中に入り込むことができる。
トメはこのスタンドを使い、冷暖房要らずの『 快 適 空 間』を作り上げている。
「『 花 咲き誇る事、短きけれど・・・ッ。』」
「『 枯れぬは、想いッ!
淑 女 が 作 法 ッ ッ ! ! 』 」
・・・・・
「チベタイッ!」
「チ・チベタイッ!!」
「チベタイッ! チベタイッ! チ ベタイッ! チ ベタイッ ッ ! ! 」
「凍ォオオ・・ ・ る ッ ! 」
「凍ッテル ジャ ナイ カァアアア・・ ・ ・ ! ! 」
「 『 ユ グ ド ラ シ ル
グォォオトォオオオ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! ! ? 』 」
・ジュール & カロリー
そして、その『 真骨頂ゥーッ!』
『 快 適 な 空 間』作り上げッ!!
『 不快適空間』、『 打 ち 消 し 冷 や す ッ ッ ! ! 』
ー 淑女が命、賭けましょう。
ー 恋する乙女・・・。
ー 捧 ぐは 、『 華 道 ッ ッ ッ ! ! ! 』
華ッ!
華 華 華 華華 華 華華 華 華 華ッッ!!!
華華華華華華華華華華 華 華 華 華 華 華 華 華 華 華 ッッッ!!!
ー ジュール & カロリー・・・。
ー 咲 き 誇 れ、『 氷 結 華(ひょう けつ か ) 』
ー サトヨシさん。
ー 花と散る淑女が、捧ぐ『 永 久 凍 壁 』です。
ピシッ!
ー かつて、吸血鬼が見せた『 気 化 冷 凍 法 』を参考に編み出した・・。
ー 対レクイエムスタンドへの『 切 り 札 でございます。 』
ー それは即ち・・・。
ー ユグドラシルと言えど『 逃れる事ができぬ 力 ッ ッ ! ! 』
ピシッ!
ピシピシピシッッ!!
凍りつく空間と共に、
崩れ行くは『 トメ。』
ー 代償として、『 波紋法』持ってしても逆らえぬ『 絶大なる老い』が訪れる。
ー 生涯3度目・・・。
ー この傷から言っても、『 生き残れないでしょうね。』
ピシピシピシピシピシ ピ シピ シピ シ ィ !
ー サトヨシさん・・・。
ー『 貴 方 を 、 封 印 しますッッッ!!! 』
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
ピシピシピシピシピシピシピシピシィ!
・・・・・
それは、『 僕』じゃなかった。
それは、『 俺』じゃなかった。
じゃあ誰なんだろう?
僕かな?俺かな?
どっちもなのかな?
ああ・・・。壊れていく・・・。
だって。
意識しなくても・・・。
ガラガラガラガラ、音立てていくよ・・・・っっっ。
・・・・・
「恐れ入ったよ。」
「封印・・。なる程ね。
遭いたくないタイプの『 スタンド』だな。」
「『 消し過ぎて 慢心』していたねぇ・・・。」
「いやいや、恐れ入ったよ。」
「でもねぇ・・・。」
「ゲームは、マスター(主人)を、『 愛しているって・・・・♪ 』 」
・・・・・
ガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラガ ラ ガ ラ・・・・ッッ
ガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラガ ラ ガ ラ・・・・ッッ
ガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラガ ラ ガ ラ・・・・ッッ
・・・ガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラガ ラ ガ ラ・・・・ッッ
ガラガラガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラガ ラ ガ ラ・・・・ッッ
・・・・。
世界が崩れる音がした。
勝手に崩れ落ちた空間は『 ト メ と共に、捻じ曲がり・・・。』
そして、消えて行った。
もう誰も『 女 帝 の名を、呼ぶ者は居なかった。』
・『 女帝・トメ』
スタンド名:ジュール & カロリー 能力:温度の調節。
崩れ行く世界(空間)と共に 『 消 滅 』。
・・・・・
-第十九話『世界は、壊れる?それとも狂う??』開始-
少年が、一人商店街を歩いている
すぐ後ろには、約十代と思われる少年がついて歩いていた
二人の少年の名を 『佐藤ヨシヒサ』 『噴上瑠獅覇』 といった
「サトヨシー、何処行くンだよォーー。」
「……。」
「なあァ、なァ、黙っていでナンか言えよォ。俺はお前ヲ守るって決めてるンだから、あんまり勝手に行動されちゃ困るンだよなァ。さっきも危なかったしよ。ッたくゥ。」
サトヨシは沈黙を破らない
「だんまりかよッ…。いいぜ、アンタが何処に行って、何しようったって、俺が守ってヤるよ。 ナァ、『表のサトヨシ』。 」
サトヨシの足が止まる
「…気付いてたんだ。」
ルシファーはきょとんとしてサトヨシを見る。そして、ケラケラ笑い出した
「あっははは!あったりまえジャんッッ!普通気付くって!!だいたイ裏ん時のお前とオーラが違うよ、オーラがッ!何?わざと笑かソうとシてんの!?くはっはハはは!!!!」
「…そうか。」
サトヨシはルシファーを冷たくあしらうと、また前へと進み出した
「オイオイー。冷たいナぁ、お姫様。あれ??でも、ナンだ、お前、目ェ見えてるの?」
「見えてないよ。でも、スタンドがあれば問題ない。障害物に当たる前に、その対象の方向性を『曲げ』れば、けっして何者も僕には何も当たらない。」
サトヨシのい言う通り、商店街の中は人でごった返しているが、誰一人としてサトヨシにはぶつからない
「ナーるほど、でもいいのかァ?スタンド使ったら、お前もっとネじ曲がるんだろ?性格が。」
「…。」
サトヨシはやりきれない表情でうつむく
だが、その表情は失意だけではない。
その目には、これからやろうとする事への確かな決意が宿っていた
「もう、時間がないから。…いいんだ。」
倒れる土星さん 絶望するソマ 駆け寄るタチバナ 叫ぶクツケイ
これは、前の世界の僕の記憶
ソマの目を治してからというもの、みんなでアトリエに集まってよく絵を描いた。
父さんはいつもタチバナに注意してたな。
『タチバナ、ヌードは確かに芸術だ。だが、お前は脱ぎすぎる。もうちょっと隠せ。』
『な、佐藤先生。これは健全な芸術への探求ですよ?どこに隠す必然が…!』
『…せ、先輩…。』
『クツケイ…気にしないです。 ぽえーん。』
『はぁ、サトヨシ、お前の仲間は退屈しないな。』
ソマが笑う、クツケイはうつむいて赤くなる、土星さんは相変わらずマイペースだ
父さんがどうしようもないなといって呆れている、タチバナは何処吹く風だ、まったく。
僕は、そんなみんなと居る時間が大好きだった。
ずっと、みんなと居たかった。
もっと、この幸せが続けば、と。
だから、スタンドを使って、すこしでも良くしようと世界を曲げて、みんなが幸せになれる様、力を使った
でも、いつからか… 僕の中に小さな『俺』が生まれた
いや、、生まれたのか、最初から居たのか…
それはゆっくりと、けれど確実に大きくなっていき、僕はだんだん『俺』に近くなっていった
『俺』はそっと囁く
『俺はお前だ。悩まなくていい。もう少したてば、ちゃあんと理解できるさ。俺は何者で、これから何をすべきかも、な。』
嫌だ 嫌だ 嫌だ!
僕の中で大きくなっていく『俺』!
力を使わざる得ない状況!
そして自分の力にだんだん過信していく『僕』!!
僕は、、こんなの望んで無かった
倒れる土星 絶望するソマ 駆け寄るタチバナ 叫ぶクツケイ
そして、笑う 俺
俺の中から『僕』が消えた
前の『俺』の記憶は全て受け継いだ
何をするべきか?簡単だ。 この世を曲げて手に入れる。
しかし、少しやりすぎたか?またやり直さなければならないようだ。
まぁ、いい。 また『僕』の中で、機が熟すのを待つさ。
__________
そうして、僕の中にまた『俺』が宿った
もう時間がない
この世界でも、僕は自分に飲み込まれてしまう
前の世界の記憶がわかる 父さんが思い出せる スタンドを使う事に抵抗が無くなってきている
…もうすぐ、完璧に『俺』になってしまう
その前に、行かなきゃいけない。
会わなきゃ、アイツに。
揚蝶さんには悪いけど、あのまま僕が死んでもこの世界は曲がったままなんだ。
一度歪んだ世界の崩壊は止まらない。
僕が死んでも、また次の世界が始まる。そこで僕が最初から曲げ直す危険だってある。
この世界を歪みから救い出し、崩壊を止めなくては。
それが出来るのは…
『タチバナ』
アイツだけが、この世界を分解できる。再構築出来る。
だから、アイツに会って、言うんだ。
世界を救う為に
『俺』を殺す 覚悟をしてもらう為に。
_________
「…ルシファー、これから僕が行く所には、敵は居ない。だから、一人で行かせてくれないか?」
「何言ってンダヨォ、サトヨシ。さっき言ったじゃん!お前は危なっかしくて目ぇ離してラレなっての!!」
商店街を抜け、住宅街を進む二人
「…僕を守りたいなら、ドルチを先に片付けにいきなよ。あの子はやっかいだろ?」
「…ぐゥッ。」
「それとも、何?君もスタンドを消されるのは『怖い』の??」
途端、ルシファーは声を荒げる
「ハアァァァッ!??『恐い』だって!?この俺があんナ猫一匹に『恐怖』するだってェェ!?冗談!!!!あぁぁ、分かっタよ!!見てろよサトヨシ、ちょっくらブチ猫ぶっ殺シてクらぁ!!すぐ戻ってくるからアブねぇ事スんなよッッ!!!!」
そういうと少年は一瞬で姿を消した
「…これでいい。これで、ゆっくりと話ができる。 ……ドルチ、ごめんよ…。」
サトヨシは、泣いていた
ドルチ、彼のアトリエにいつしか迷い込み、仲良くなった友人
いつも、力を貸してくれた、どこか不思議な猫
その友人を、今、 売った
「…でも、僕にはもう時間が無いんだ。『俺』になる前に、タチバナに僕を殺す覚悟させる事、それだけが今の僕に出来る最後の…」
涙でかすむ目を腕でぬぐう
…かすむ?
そうか…ソマの攻撃を喰らった目がだんだん見えてきたんだ。
時間が無い。
『俺』になりつつある。
もう、僕の想いは曲がり、消えてしまう。 永遠に。
急がなきゃ、みんなでいつも笑っていた、あのアトリエに。
タチバナは、きっとあそこにいる。
小さいクツケイがパタパタと走り回っている。
一人はお粥を作り、そしてもう一人は小さい洗面器にたっぷりとお湯を入れてドアの前で立ち往生していた。
いや、チラチラとシルビアを見ている。
(何かしら?)
シルビアはソファから立ち上がりクツケイのクツケイに近付く。
『このソファは昔二人で買ったのと同じなんだよ!
だから買おうシルビア!
また幸せな時間を作ろう!』
普段とは違い熱い口調てクツケイは喋った。いつもクールな彼もやはり根ッコには陽の部分があったのだろう。
思い出すとソファから離れたくなくなった。―昔を思い出せはしない、でも今の想いの詰まったソファから。
ドアの前で立ち往生しているクツケイは涙目だった。
クツケイは体だけでなく心も分けられた。
(こっちは隠のクツケイさんね)
どうして欲しいのかは分かった。
でもあえて
「どうしたの?」
と、聞く
「ドア 開けて 欲しい……」
精神も分けられ、全てが子供並――いや、子供になってしまったクツケイは陽気だと疲れるしわがままだし(気持は明るくなるけど)、陰気な方は暗いしすぐ泣くし(でも最近可愛く感じる)もう少し
いじめたかったけど、中にいる子を考えて開けてあげた。
私は雨粒で目を覚ました。
いや、涙だったのか。
周りには瓦礫しかないところで二人のクツケイは泣いていた。
「シルビアーー!」
現実に戻された。
台所からクツケイが呼んでいる。
(小さい子供を持つ母親みたいな気持――ね)
お母さんもこんな気持ちだったんだろうか。
台所ではクツケイにお粥の試食を頼まれた。
正直 おいしくはない。
普段の料理は私が作っているのだが…これはクツケイが作る。『俺のワガママで運んだんだ シルビアに頼むわけにはいかないよ』
ほんの少し
嫉妬とよべるか微妙なラインでシルビアは悩んでいた。
あの雨の帰り道に拾い
いまベッドに寝ている林檎の事を。
「バーレル?」
ジョーイは戸惑う。
まるで魂が抜けたかのような、バーレルのその雰囲気に。
元々魂の溢れる男ではなかったが、研ぎ澄まされた魂が感じられるそんな男だった。
だが、目の前にいるのは。
「ジョーイ……さん」
神城がジョーイを呼ぶ、ジョーイが振り向く。
「林檎を ……探さなければ」
フラフラと歩き出すバーレル。
「おいッ 説明ぐらいッ!!」
バーレルは振り返らない
もう誰を追うかは決めているから
もうジョーイ達は必要ないから
釘を取り出す
“BAR”
「戻れ」
ただ、一言
その一言でバーレルは消えた。
「なんなんだあいつはッ!」
「とりあえず ケイは倒したか位は聞きたかったですが…
生きているということはそうなんでしょうね」
裕と揚蝶それとドルチはタチバナを探しに出かけた。
「ジョーイさん これからどうするんですか?」
「……サトヨシを狙う」
ジョーイは瓦礫を歩き出す。
世界を崩壊から守るために。
同じ悲しみを繰り返さないために。
踏みしめる瓦礫は今までに壊された世界のような気がした。
赤倉の宿泊しているホテルの一室
赤倉の前には来訪者が腰掛けていた
「―以上が、『ぐんまけん』と『聖人』についての私の考えだ。
何か他に聞きたいことはあるかい?
タチバナ君」
「そうですね…
『I lose control』について…何かあれば」
「…例の『教団』の中で使われていた言葉だね。
意味は『私は理性を失う』だな…
聖書では『理性』は一つのキーワードとなっているが…
まあ教団での単なる合言葉のようなものではと考えている」
「…なるほど」
タチバナは手を組み、一点を見つめたまま動かない
「ふむ?この回答ではしっくり来ない、という顔だね?」
「…いえ、そんなことありませんよ」
「そうか?
…それから、今度は私から話したいことがある」
「…どうぞ」
「…
世界が幾度と無く繰り返されているという話、
私には俄かには信じられないが…
もはやそれを否定することのできないところまで事は進んでしまった
ところで、もしも、今のこの世界が再び、過去のある時点へ戻るとしたら…」
タチバナの眉がピクリと動く
「それはどこまで戻るのだろうね?
その一時点の後に起きたことは無かったことになるのだろう
ならば、命を失った人々も――」
「赤倉さん」
「そうだ。
例えば、 杏 ―― 」
「 赤 倉 さ ん 」
タチバナの鋭い眼光が赤倉を射抜いていた。
「…すまない」
「…では、失礼します」
「気をつけて帰りたまえ
それから、シバミ達が心配していた
連絡くらい―」
「ええ…そうですね、わかりました。…では」
「ああ、そうだ、最後に、もう一つ――」
雑踏を縫うようにタチバナは歩く
街はごみごみしてて、好きじゃない。
一番居心地が良いのは、あの場所。
少し薄暗い、それでいて暖かい光に包まれるあの場所。
きっと…『彼』もそこに…
「行かなければ…」
大通りを抜けてビルとビルの間の路地へ入る
歩きながら、赤倉との最後のやりとりを思い出す
『最後にもう一つ』
『はい?』
『君は、過去の世界の記憶を持っていないのか?』
―答えは、NOだ
だが…いつか見たあの悪夢はきっと…過去の世界の記憶…
そして『I lose control』
何故、この言葉を聞くと、体が震えるのだろうか。
これも…過去の世界との関係が―
「ニャア」
「!」
いつの間にか、足元にはよく知った一匹の猫がいた
「ドルチ」
ドルチの後からやってきた揚蝶と裕が声をかける
「タチバナさん!」
「あなた達は…」
「お久しぶりです…揚蝶です」「どうも、裕です」
「ええ、勿論覚えてますよ…なんとなく。…失礼。」
「見つかって良かった…!
あの…タチバナさん、ケイが…倒されました…」
「!
そう…ですか。
教団に信者がどのくらいいるのかは知りませんが、トップ的存在がやられたのなら事実上の崩壊でしょうね。
…それを伝えに?」
「あ…はい、それから、ジョーイさんが、サトヨシを倒すと言ってどこかへ…」
「ふむ…そうですか…」
それは当然すぎることなのだが、サトヨシが誰かに憎しみの念を持たれるというのは、やはり複雑な気分だ。
そして、だからこそ、サトヨシを倒すのは自分ではなくてはならない、とタチバナは拳を握り締める。
ピクリ
タチバナが背後に気配を感じ取る
「ニャあニャアにャアニャあ 見 イ ー つ け た ァ ァ ァ」
それは、聞き覚えのある声。そして、最も憎い声。
揚蝶が声を上げる
「『瑠獅覇』…!」
「…そのドルチってぇ猫を殺しにきたんだけどさァ
余計なの3匹もいんのかぁあ~
本当は義手を手に入れてからのが良かったんだけどなァ」
「出たなこの糞ガキ…!」
「しょーがねえよなあ…タチバナぁッ
やるしかねえよなぁあああああッッ!?」
「上等だ…今度こそぶっ殺してやる!!」
瑠獅覇とタチバナはお互いを睨み付ける
しかしその瞬間
「待て」
頭上から、またも新しい声。
「タチバナ…ここは私にやらせてもらう
こいつは…私がやらなければ気が済まないッッ!」
辺りが茜色に染まる
「…ハイネ!!」
「それに…今は行かなければならない場所があるはずだ…貴様には!」
瑠獅覇の前にハイネは着地する。
「さあ…行け!」
「おいおいおいなんだよォお前はッッ
皆まとめて殺してやるっつーーーのッッ!!」
「殺されるのは…貴様だ!」
「なッ」
瑠獅覇の右足は茜色に上塗りされ、踏み出せない。
「さあ…タチバナ!」
『行かなければならない場所』、それを察し、揚蝶もまた叫ぶ
「行って下さい、タチバナさん!」
「…すまない。」
その一言を残し、タチバナは走っていく。
ハァハァハァ
タチバナは…
ひたすら走った。
速く!
速く!
もっと速くッ!
「急がなくてはッ」
――道中頭をよぎる。
あの3人と一匹で
本当に瑠獅覇をたおせるのだろうか?
本当に
大丈夫なのか…?
いや、
今は余計な心配だ。
私は、『私のするべき事』をしよう。
信じよう…
「彼ら」を――ッ!!
【同刻】
「あぁあァァァァァァッッ!!」
瑠獅覇が吠える。
「うざってェェ!!
カスが束になったって所詮はカスじゃン?
意味ねェェェーーーッッてのッ!!
ハハハハハハハ!!
とっととこのクソ猫とカスを殺してサトヨシンとこ戻るとすッかァァ~~!!
…んン~~、まずは一人ィィ!!」
ドグシャァ。
「う、ァ…!?」
祐の躰を上半身だけのスタンドが貫く。
そう、瑠獅覇のスタンドが。
決して油断していたわけではない。
だが、一瞬。
ほんの一瞬の『虚』をつかれた。
まるでゴミを屑籠に捨てるように、祐の躰は宙に投げ飛ばされた。
ドォン。
「祐ゥゥゥゥゥゥゥゥーーーッッ!!!」
「な、なにィッ!?
――ッ!!
駄目だッッ!!
行くんじゃあないッ!」
ハイネが純を止める。
「いいかッ!
まだ今は彼の元にいっちゃあいけない!
ヤツはまたそこを突いて来るッッ!!
それがヤツの狙いだッ!!
いいか、私がヤツを引きつける……
君はその間に、隙をみていくんだ!
いいなッ!!」
無言で頷く揚蝶。
「深く、呼吸をするんだ。
スゥゥゥハァーー。
よし、イイ子だ!
いくぞォォッ!!」
「あ、れ……
僕、
どうなったんだ。」
祐は、
一瞬状況が理解できないでいた。
ただ、
投げ飛ばされるその瞬間、瑠獅覇のほくそ笑む顔と、驚くハイネと揚蝶が彼の目には映っていた。
酷い傷口
おびただしい出血
祐の躰は一刻を争う状態
彼は、理解した。
「ああ駄目だ。
僕は確実に死ぬみたいだ。
自分の躰の事だし、なんとなくわかる。
でも、嫌だ。
このままで、
何もせずにただ死んでいくのは、
嫌 だ ッッ !!
格好つけたいわけじゃないけど、
このままなんて嫌だ。
ああ。僕はなんて無力なんだ……
なぁ。
アボガドスキー。
もう見えないし、感じる事はできないけど、
最後の最後に
もう一度だけ僕に力をかしてくれ。
お願い……だか…ら。」
ドドドドドドドドドド
刹那。
少年の目に映ったものが何だったのか知る由もない。
「アボガドスキー。」
目の前にたたずむのはかつての自らの半身。
その姿からパワーなどは感じられなかった。悲しさとかそういったものしか伝わってこなかった。
アボガドスキーは少年を一度振り返ると歩きはじめた。そのまま二度と振り向くことはなかった。
祐はすでに『敗北していた』。あの時自らの意思でスタンドを捨てた時点で。自らの闘志を捨てたも同然だったから。
そのことに関しては後悔とか絶望はなかった。少年はそれも当然だと思っていたし、スタンドを失ってからの拭えない喪失感からも逃れたいと思っていたから。
自分の最後にその姿を見れただけでよかった。
「ありがとう」
少年はそのまま眼を開けることはなかった。
祐/アボガドスキー:死亡
――――――
「ちょっと…もう…祐…動きませんよ…」
揚蝶は動きが止まってしまう。
「動きを止めるなッ!」
ハイネが叫んだ。瑠獅覇が迫る。
「もういっちょオォ――――ッ!!」
拳が揚蝶に迫る。
ブ ォ ォ ォ ン !
拳は『揚蝶』を貫いた。いや、『はずだった』。
「…『ソリッド・カラーズ』。それは『ただのゴミ箱』だ…。『揚蝶』はすでに透明にしてある。」
ド ド ド ド ド ド ド !
「『いつ透明にしたかわからなかったか?』・・・。これでサシだな。」
魔王の目に殺気が帯びた。
「お前ェェェよォォォッ!俺ァ相手をハメるのは大好きだが自分がハメられるのは大ッ嫌いなんだよォォォッ!」
対する者は冷たい視線。
「…同感だ。」
不意に茜の顔が思い浮かぶ。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !
既にハイネの背から『闇』が広がり始めていた。
茜色に染まり始めた瑠獅覇と闇に染まるハイネのコントラストがとても美しかった。
それを見る猫。
「ニャア」
ただ一度鳴いた。そして猫もスタンドを発現させる。
猫は自由で、何物にも縛られない。
光る蝶を一匹捕まえると猫はそれをムシャリと食べた。
ド ド ド ド ド ド ド !
ドルチ。
彼の視線の向かう先は。
『この俺が、たかが“落書き野郎”“ただ運の良いやつ”“畜生”に愚弄されている』
瑠獅覇の怒りは並大抵では無い。叫び、皆殺しにして内蔵を道路にぶち撒けたいほどの屈辱を感じていた。
『どいつも、こいつもよォェェォ、邪魔すんなよナァァァァァ』
―足が上手く動かねぇ……何かやりやがったな
ハイネの闇は静かに、確実に侵攻していく。それは端から見ても明らかで、瑠獅覇に逃げ場は無いと思われた。
「マグマ アーンド!!」
出現した“スタンドの下半身”、ハイネは身構える。そして見えない揚蝶へと注意を促した。
マグマは瑠獅覇の肩を踏み台とし、反動を利用して、直線的にハイネへと飛び蹴りを放つ。
「うぉッ……そうだ、こいつは分離できるんだったな」
ハイネは辛うじて体を捻り、マグマの攻撃を受け流す。そのままマグマは民家のガラスを蹴破り、歩き出す。
「無駄だぞ、瑠獅覇!!」
「どうかなぁ?」
瞬間、膝まで闇に浸かっていた瑠獅覇が目の前から消える。
ハイネの顔には驚きの色が灯ると同時に、“確信”した表情になる。
『確か、能力は“ワープ”だったな』
『闇から抜け出したことには、驚いた』
『しかし、俺の計算した通りだ』
ハイネが笑む。顔は笑ってはいるが、目は笑ってはいず、“覚悟”を灯していた。
「揚蝶」
見えない仲間へ、声をかける。
「俺は瑠獅覇を討つ、たとえ死んでも……な」
『ハイネさん!!』
揚蝶がハイネの意図を知り、距離を取る。
「ヒハハハハハハハハハハハハハ」
「やっぱり……な」
背後から瑠獅覇の声があがる。向き直ろうとするハイネの首を押さえつけ、そのまま地面へ叩きつける。
「馬鹿にしやがって……この落書き野郎」
何度も、何度もハイネの顔を地面へ叩きつける。
「お前なんてよォ、地面を真っ赤に染めて死んじまえエエ」
瑠獅覇が拳を振り上げる。殺気と怒気を発し、それは十分“致命傷”てなり得る。
「待っていた……その瞬間、大振りになる瞬間」
鼻を折られ、唇を切られ、血だらけのハイネが顔をあげる。
「太陽はもう沈んでいる。“夜は全て影”なんだ……」
周りの地面が波立つ。
全てを飲み込まんと、
生有る者を溶かしこまんと
大きく、黒く
「ヤベェ、ワープしなきゃ――」
「させない」
ハイネが瑠獅覇の腕を掴む。『プライドを汚された』『痛めつけられた』そして、何より
茜を殺した
全てを込めて、ハイネは瑠獅覇を掴んではなさない。
「正気かァ?貴様も死ぬんだぜ」
「俺は構わない」
ハイネが躊躇いの無い、はっきりとした口調で言い放つ。
「俺は“構わなく無い”んだよ、落書き野郎がああああああ」
瑠獅覇が叫ぶ。既に闇は下半身を全て染め、ハイネにいたっては胸元まで染まっていた。
「畜生がああああああああああああああああああ」
ハイネを殴ろうとするも、既に手遅れだった。闇に手を飲まれ、そして顔半分も浸かっている。
『お前の……元へ行けるぞ――』
2人は闇へと消えた。揚羽を残し、闇へと
そして、ドルチが鳴く――
揚蝶には、何が起こったか分からなかった。
ハイネと瑠獅覇が闇に飲み込まれたまでは理解できたのだが、後の事が――。
「にゃ~ん」
ドルチが一鳴きし、全てが消えたのだ。後には倒れた“ハイネ”“瑠獅覇”が残っていた。
「Miracle……僕の蝶を食べて、ドルチに何かが……」
揚羽は用心深くハイネに近づき、心音と脈を確かめて頷く。
「生きている……ハイネさん」
――けど、気絶しているみたいだ。
安堵のため息をして、ハイネを引きずる。彼の意思では無いだろうが、病院に連れて行かなければならない。
「運が有るようだなァ……」
「!?」
瑠獅覇がズルズルと這って来る。狂気をはらみ、目の輝きは増していた。
「まだ、死なねええんだああああ俺は」
……
揚羽が背を向ける。誰にも味方しない、蝶。羽ばたく運命の化身。
バタフライ・キッス
何がどうなるか分からない、気まぐれで、不安定なスタンド。
「佐藤先生の時は、ダンプが突っ込んでも大丈夫だった……」
先程、マグマが蹴破った民家。その窓のガラス片を揚羽は上に投げつける。
「高圧線……上にね。民家が有るか、おのずと有るんだ」
「!!」
ガラス片が線を大きく真っ二つにし、片側が瑠獅覇に巻き付いた。
何百万ボルトの電力が瑠獅覇を襲う。奇怪な悲鳴を上げ、瑠獅覇の体が炭化していく。
「今、電線を切れたのは、キッスの能力か、それとも僕の技術かは分からない……」
「でも分かる事、それは……」
貴方、いや瑠獅覇。もう終わりだッ!!
「冗談じゃあねいあなゃなやまだあああ“義手”をををををを」
バタフライ・キッス
やはり何にも味方してはいない――
輝きが消えると同時に、瑠獅覇の姿も消えた。虚しく線だけがトグロを巻いている。
「なッ……」
ドルチが血を流して倒れ、横には血のついた石が転がっている。
「あの状況から……ドルチに石を当てたのか!?」
ドルチのスタンドが解除され、瑠獅覇はワープした……信じられない。
「バタフライ……キッス。くそおおお」
闇夜に響く声
運命が2人を生かした
果たして、瑠獅覇に何をさせたいのか
揚蝶は再び叫んだ
「……っはぁっはぁッ!」
不甲斐ない……。
少し走っただけでこんなに息切れするとは……。
いや、これは私の心の焦りの表れかもしれない……。
現に私は迷っている。
『サトヨシと会ってどうしようと言うのだ……?』
ドアに手をかける……心なしか重い感じがする。
しかし、そこにはサトヨシの姿は無く……
「これは……」
何故だか私は『ソレ』を見た時に心が落ち着きを戻したような気がした……。
『何も描かれていないキャンパス』
そうだ……サトヨシに会ったら……
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急がなきゃ……もう時間が無い。
お……僕が僕である内に彼に会わないと……。
『会ってどうするつもりだ?』
くそ、焦れば焦るほど道が長く感じる……。
『本当は会いたくないんだろう?』
アトリエへと続く道……こんなにも長かっただろうか……?
『もう、逃げ出そうその方が楽だ』
涙で滲んでいるのか目の前が歪んで見える……。
『心配はしなくて良い……俺が……』
……違うッ!これは涙のせいなんかじゃあないッ!
おれ……僕の能力が……ッ!
そう気付いた瞬間にアトリエへの道が崩れ去り……再構築された。
…………。
自然と笑みがこぼれる。
何時もそうだ。
俺の……僕の困った時は何時も手を差し伸べてくれた……。
迷う必要なんか無い……。
サトヨシがドアを開く……。
少し暗いアトリエの中に光が差し込む。
中には……
全裸のタチバナが居た。
「……」
「……」
サトヨシは無言でそのままキャンパスの前へと座る。
タチバナはキャンパスの前で軽くポーズを決める。
二人は言葉は発しない。
サトヨシは理解していた。
タチバナの心を……。
『生まれたままの姿を描いて欲しい』
静寂の中、筆の音だけが走る……。
先に言葉を発したのはサトヨシだった。
「こうして絵を描くのも久しぶりなような気がする……」
「……あぁ、最近は何かと忙しかったからね」
「だけど、こうしていると昨日の事の様に思えてくるね?」
「毎日出来上がるサトヨシの作品の数々は素晴らしく、待ち遠しいものでしたよ?」
「……ありがとう。でも俺は……僕は出来上がる時よりも描いてる時の方が凄く楽しかった……」
サトヨシは額に流れる汗を拭わず筆を走らせながら続ける。
「俺……と、タチバナと、父さんと……ソマや土星さん……クツケイもいたっけ……」
「……サトヨシ……?」
聞きなれない名前とサトヨシの変化に戸惑うタチバナ。
「あぁ……クツケイとは『前の世界』だったね……」
苦悶の表情を浮かべながら筆を進めるサトヨシ。
「この筆で最後だ……『僕だった時の作品』は……」
そう言って最後の筆を入れるとサトヨシはキャンパスをタチバナに披露せず奥へと運ぶ。
「最後のキミの頼みは叶えた……今度は俺の頼みを聞いてくれタチバナ……俺の前から消えて無くなれッ!!」
「……」
タチバナは答えない……。
「『I loose control』……か……」
眉間にしわを寄せ、赤倉は呟いた。
タチバナとの会話で気になり、赤倉はもう一度教団について調べてみたところ、
妙なことに気がついた。
『I loose control』と『I lose control』。二つの記載があるのだ。
はじめはただのタイプ・ミスかと気にも止めていなかったが、どうやら
その二つの言葉は別々に使われているようだった。
『ルース』と『ルーズ』。綴りも発音も良く似たこの二つの言葉は、その
意味もある種の共通点を持っていた。
「和訳するなら、『コントロールから開放する』……『コントロールを失う』
と言った所か」
どちらも、『コントロール』が無くなるという事を示している。
タチバナにはコントロールを『理性』と訳して見せたが、果たして正しいのかどうか。
正直、赤倉は英語は苦手だ。
ふと、赤倉はかすかな違和感を感じたが、それに意識を向けた途端、
それは亡霊の様に消えてしまう。何か、引っ掛かりを感じる。
しかし、それが何なのかわからない。
「考えても仕方ない、か……
『スーパー・レッド・ダンディ・ブルース』ッ!」
赤倉のスタンドが、ホテルの扉を殴り飛ばす。完璧な不意打ち。
赤倉の戦士としての勘が、扉の外にいる敵の存在を告げたのだ。
しかし、粉々になりながら破砕し、敵にぶつかる筈の扉は、一瞬にして
掻き消えた。
いや、消えたのではない。分子レベルにまで『分解』されたのだ。
「なんだ、タチバナ君か。すまんな、てっきり」
扉の向こうにいたのは、タチバナだった。
どこか虚ろな視線。涙に濡れた頬。そして、血で赤く染まった、両手。
それを見て、赤倉は息を飲んだ。
「……終わったのか」
尋ねる赤倉に、タチバナは首肯する。
「ええ。全て終わりました。『たった今』」
「……え?」
赤倉の視界が、赤く染まる。身体に力が入らない。そのまま彼は床に倒れた。
本当に鋭利な刃物で切られたとき、人は、痛みを感じないという。
タチバナの両手が赤いのは。あの血は。
サトヨシではなく、『赤倉自身』の……
「お疲れ様、タチバナ」
以前と変わらぬ邪気の無い笑みで、サトヨシはねぎらった。
「何故…だ……?」
倒れ伏した体勢から、赤倉は何とか上体を持ち上げる。
内臓をやられたらしい。かなり危険な状態だ。
「わ、まだ生きてる。流石だね」
取り立てて驚いた様子も無く言うサトヨシを無視し、赤倉はタチバナを見上げた。
「タチバナ君…何故、君が」
「人間ってさ。『時計の針が動く瞬間』を、決して見ることが出来ないんだ」
赤倉の問いに、タチバナは反応すらせず、代わりにサトヨシが答える。
「人間は小さすぎる変化を感じることは出来ない。
ゆっくりゆっくり…少しずつ信念を『曲げて』いって、今じゃあ
僕の忠実なお人形、ってわけさ。何せ、信念の塊みたいな男だったからね。
それが曲がってしまえば、何も残らない」
相変わらず虚ろな視線を投げかけるタチバナに、サトヨシは寄りかかった。
「もっとも、それだけじゃあ足りなくて、ちょっと『催眠術』の
助けも借りたけどね」
「催眠術…? そう、か…!」
赤倉の中で、全てが繋がった。そう、カルトな宗教団体には、よくある話だ。
ある特定の『キーワード』をスイッチに、人間を催眠状態に入れる手法。
そして、スイッチには必ず…
酷く嬉しそうにクスクスと笑いながら、サトヨシは続ける。
「さあ、タチバナ。『I lose control』。
さっさとやっちゃって」
肉を引き裂く音。
部屋は、その主の服と同様、赤く染まった。
* * *
「なァ……これさァ~。やっぱ変じゃねえ?」
「贅沢言わない。子供用の義腕なんて、そうそう都合よくあるわけないだろ。
もしあったとしたって、しっかりと調整して、リハビリしてようやく
使えるんだよ。しかも、その後も定期的にメンテナンスが必要。
そんな面倒な事やってられるわけないだろ」
「でも、いくらなんでもコレはねぇよ~ッ!」
瑠獅覇は左腕を掲げ、サトヨシに訴えた。
小さな少年の身体から伸びるのは、10歳の子供にはおよそ似つかわしくない、
筋骨隆々の男の左腕。
タチバナの力で分解し、再構築して繋げた、赤倉の腕。
「パワーありそうでいいじゃないか。
大体、自分で腕消しておいて文句言うなよ」
「大体、何でコイツまで一緒なんだよッ」
タチバナを指差し、瑠獅覇。
「そりゃあ、親友だからね」
邪気のない笑みを浮かべ、サトヨシ。
「さあ、パーティの始まりだ」
悪夢が、幕を開けた。
「ここは・・・」
少年はそれまで担いでいた女を床に寝かせると、
部屋の中へ吸い込まれるように入っていった。
来たこともない部屋。
どうしてここに足が向いたのだろう。
これもバタフライキッスの力なのか。
少年、揚羽は室内を見渡す。
そこはまるで赤いペンキをぶちまけたかのように赤かった。
「うっ・・・」
生臭い匂いが鼻をさす。
彼がその赤を血だと気づくのにそう時間はかからなかった。
カサッ
血を見て呆けていた揚羽は突然の音に体を強張らせる。
「なにビクついている。」
声の先に目をやると女が散らばっていた紙に目を通していた。
「ハイネさん・・・それ・・は?」
ハイネが属していた、今は亡き教団の資料。
あいつと過ごした・・・
『日の本に生まれ出にし益人は
神より出て神に入るなり
この歌は江戸時代にとある神官が詠んだものです。
この歌の通り、神葬とは・・・』
神官の説教が聞こえてくる。
茜・・・
『神葬は故人を神に祀り上げる儀式です。
しかしこの神は基督教で言われる神とは異なります。
日本の神は人間と変わりません。
和魂も荒魂も人より多く持っているのです。
ですから人並み外れて酷い目にあったり、激しく怒りを抱いた者もまた神になることが出来るのです。
だからこそ崇め、奉らなければならない。』
神か・・・お前も偉くなったものだな。
いや・・お前にはふさわしいか。
ハイネは茜の葬式を思い出していた。
『すまないな』
ハイネは葬儀のため、いくつかの寺をあたったが、どこからも悉く断られていた。
『いえ、しょうがないですよ。
遺体があんな状況では、誰だって気味悪がります。』
困り果てたハイネの元に、この神官が尋ねてきたのだった。
神道の葬式など聞いた事もなかったが、ハイネはこれに頼るしかなかった。
『・・・すまない』
『いいんですよ。』
そういい残すと、老いぼれた神官は本殿へと帰っていった。
―茜
気絶していたハイネは夢を見た。
一本の腕がハイネの胴を貫いている。
腕から先はない。
胴体はハイネの目の前に突っ立っている。
光のない目・・・そこからは悲しみの色が見える。
―なにがおこっているんだ?
自分と別の場所に自分がいる。
―夢・・・なのか・・?
夢の中のハイネが何か言っている。
ハイネは聞き取ろうと自分に近づいた。
『こうするしか・・・こうするしかなかった。
あんたを繋ぎ止めるには・・・
少し前まで幸せそうな顔してやがったのに
そんな腑抜けたつらしやがって・・・』
虫の息でハイネはタチバナに掴みかかる。
『ハイネさんッ!どうして・・・?』
少年が叫ぶ。
―あれは、揚羽か・・・
『こうするしかなかったんだ・・・』
(シバミ、ハイネ、聞いてください。
もし・・・もし私が"曲がって”しまったら、その時は・・・)
(心配するな。その時は私が繋ぎ止めてやるからよ。)
『こうするしかッ・・・』
―――――
そこでハイネは目が覚めた。
「ハイネさん?」
揚羽が紙を睨んだまま動かないハイネを心配そうに覗き込む、
「行くぞ・・・嫌な予感がする。」
二人は紙を掻き集めると部屋を後にした。
で、次は誰を殺るわけ?ま~だしっくりこねぇからサ、ちょっと『試し切り』……したいんだよね~。」
体格に不釣り合いな『義腕』をブンブンと振り回しながら、邪悪な笑みを浮かべてサトヨシに訊ねる瑠獅覇。
「解ってるさ。安心しなよ、もう次は決まってるから……ねぇ?タチバナ。」
邪気を全く感じさせない、屈託のない微笑みを浮かべ、タチバナの顔を覗き込むサトヨシ。
「えぇ……そうですね、サトヨシ……。」
双眸に虚無を湛えたタチバナが、問いかけに頷く。
その様子に満足げに微笑むと、サトヨシは空間に歪みを造りだした。
「さぁ、行こうか。キミの『仲間』を……『シバミ』を始末しに、ね。」
外はすっかり闇に包まれていた。
- 静かだ。
こんな静かな夜なのに、不吉な胸騒ぎが止まらない……シバミは、病室の窓から夜空を見上げた。
煌々と照らす満月。
雲は無く、澄んだ星空が光を降り注いでいる夜なのに - まるで、嵐の前の静けさのような不気味な夜空が、シバミの瞳には映っていた。
「タチバナ……ハイネ……何処に行ったのよ……」
不安気な表情を浮かべながら、シバミは呟く。
タチバナがフラッと出ていき、ハイネが跡を追って行ってから、全く連絡がとれない。
(まさか……大丈夫よね?私の考えすぎだよね……?)
胸の前でギュッ、と祈りを捧げるかのように手を組む。
幽玄な月明かりに照らされた病室。
溜め息をついて、シバミは振り返ってベッドに横たわる人影に目をやった。
ヒデエモン。
病院の崩壊に巻き込まれて重体を負ってから、未だ目を覚ますことはない。
「ヒデエモン。こんな時……どうすればいいのかな……?」
弱々しい声で、言葉を投げ掛ける。
返事が返ってくる筈がない。
それでも、今は……それでも、何かにすがっていたかった。
戻ってこない二人が、失われた大切な者達と重なる。
コウ。
ザキ。
もう、あんな思いはしたくない。
だから、力を合わせて闘うって、そう決めたのに……
そう誓ったのに……
どうして、戻ってこないの?
「お願い。タチバナ……ハイネ……無事なら、生きてるなら連絡くらいしてよ……戻ってきてよ……」
熱いものが、頬を伝ってベッドに添えられた手に零れ落ちる。
ガラガラ……
病室の扉が開いた。
突然の出来事に驚き身構えるシバミだが、部屋に入ってきた人物の姿を確認して安堵の表情を浮かべた。
「タチバナ……!!良かった、無事なのね……?」
駆け寄ろうとしたシバミだったが、不意に奇妙な違和感を感じとり足を停める。
「タチバナ……?」
いつもとは様子が違う。
あの自信に満ち溢れた、凛とした眼差しとは比べるべくもない、何もない、虚無を湛えた眼差し。
「遅くなってすみません、シバミ……。」
覇気の感じられない、抑揚のない声で喋るタチバナ。
「ちょっと……一体、何があったの!?ハイネは一緒じゃあなかったの!?」
不安と不信に駆られ、つい激昂してしまうシバミ。
「そう怒らないでよ、シバミさん。」
不意に、タチバナの背後から声が聴こえてきた。
「タチバナが戻ってきたからいいじゃないですか……貴女を『殺す為』に、ね。」
ゆっくりと、タチバナの脇をすり抜けて部屋に侵入してきたのは……サトヨシ。
「サトヨシ!?アンタ、タチバナに何をしたのよッ!?」
キッ、と殺気を込めた瞳で睨み付けるシバミ。
それをサトヨシは余裕綽々で受け流し、無邪気な笑顔を浮かべたまま……宣告する。
「応える必要はないさ……貴女はここで死ぬのだから。」
スッ、とタチバナが一歩前に出る。
傍らには、既に『ブルース・ドライブ・モンスター』が控えていた。
「タチバナ……!」
眼前に『敵』として現れた『仲間』の姿を視て、シバミは悲しみを堪えるように唇を噛み締める。
轟ッ!!
B・D・Dの拳が、容赦なく繰り出される。
「クッ……!」
タチバナとの訓練の成果か、辛うじてだがギリギリのところで回避する。
しかし、この狭い空間では長くは持たない。
(このままじゃ……殺られる!)
そう思うものの、やはりどうしても反撃を躊躇ってしまう。
反して、タチバナは確実に仕留めるべく、次々と精確無比な攻撃を放ってくる。
一撃。
たった一撃で、終わってしまう。
そのプレッシャーが、シバミの精神を疲弊させていく。
ドン。
いつの間にか、壁際に追い詰められていた。
もはや、逃げ場はない。
「さぁ……トドメだ、タチバナ。」
クスッと笑みを零すサトヨシ。
その言葉に従い、無慈悲な一撃が振り降ろされる。
拳が、スローモーションで迫るのが見える。
ゴメン、みんな。
私、もう……………
覚悟を決め、堅く目を閉じる。
しかし、いつまで経っても拳が自分を貫いてこない。
「……………?」
不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。
すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
拳を繰り出したブルース・ドライブ・モンスターの腕を掴む、巨大な姿。
そして……
「ヒデエモンッ!?」
信じられない。
でも、これは間違いなく現実。
ついさっきまで、ベッドに横たわり意識も無かったヒデエモンが、今、シバミを護るようにタチバナの前に立ちはだかっていた。
「へぇ……面白いね、此れは。これも『歪み』の影響なのかな?」
心底楽しいといった風に、サトヨシが感心の声をあげる。
「……大丈夫ですかい?」
声を絞り出すように、ヒデエモンがシバミに訊ねる。
「バカ……起きるのが遅いわよ……!」
涙をいっぱいに溜めながら、シバミは微笑んだ。
「……なぁ、サトヨシィ~!そろそろ俺に『試し切り』させてくれよォ~!?」
我慢の限界に達して、怒鳴り声を発する瑠獅覇。
「そうだね……ま、いいんじゃないかな?」
まるで『今日の献立はハンバーグにするから』と言われた時のように、適当に応えるサトヨシ。
「ハァ~、待ちくたびれて死ぬところだったぜ……この鬱憤、バッチリ晴らしちゃうからよォォォ~……『覚悟』決めなよ、アル中姉さん。」
ゆっくりと、病室に姿を見せる瑠獅覇。
「不味いな……病み上がりでタチバナの旦那相手とは、俺っちも焼きがまわったかな?」
苦し気な表情を浮かべつつも、軽口を叩く。
「大丈夫よ、二人なら……負けたりしないわ!寝起きだからって、私は容赦しないわよ?」
ニヤリ、と唇の端を吊り上げて微笑みシバミ。
その様子を満足そうに見つめて、ヒデエモンは頷いた。
「いいか?走るんだ。走って……生き延びるんだ、シバミ。」
突然そんな事を言われたシバミは、キョトンとした目でヒデエモンを見る。
「は?アンタ何言って……」
言い終わる前に、微笑みで言葉を遮る。
「好きだったぜ、シバミ……達者でな。」
優しく呟いたその背中に、黒い陰を視たシバミは、溢れ出る涙を抑えられないままに、突如足元に開いた穴に吸い込まれていった。
「さぁ……こっからは俺っちが相手になるぜ!」
不敵な笑みを浮かべ、三人と対峙するヒデエモン。
「なんだよ!?逃げられちまったよ!!こんな死に損ないボコってもツマンネーよ!」
不満を露にする瑠獅覇に苦笑しつつ、サトヨシは二人の前に出る。
「良いよ、瑠獅覇。タチバナと一緒に、シバミさんを追うんだ。」
その言葉に、おもちゃを与えられた子供のように喜ぶ。
「ヨッシャァァァッ!ブッ殺ース。殺して殺して、もう一回ブッ殺してやる……オラ、行くぞ。」
タチバナを促して、病室を出ていく瑠獅覇。
部屋に残るのは、二人のみ。
ハァッ、ハァッ……
シバミは走った。走った。
流れる涙を拭うこともせずに、唯一人、夜の帳の中を疾走する。
確かに、あのまま闘っていても勝算は無かった。
それでも、諦めるよりはマシだった。でも……
「ヒデエモンのバカッ……!カッコつけて……!?」
ザザッ。
急に足を停めるシバミ。
「クソッ……!」
息を切らせて、悪態をつく。
眼前には、二つの人影。
噴上 瑠獅覇。
ムトウ タチバナ。
二人はテレポートで先回りをしていたのだ。
「逃がすかよ、バァーカッ!!なぁ……ところで、この腕に見覚えないかァ~?」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら、不釣り合いな『左腕』を見せつける。
その『腕』を見た瞬間、シバミに戦慄が走った。
「まさか……まさかその『腕』はッ!その逞しくて、二の腕に傷のあるその『腕』はッ!!」
笑いを堪えきれなくなった瑠獅覇は、狂ったような笑い声をあげた。
「ウッフフフフフ……ヒヒヒヒヒ……ヒャハヒャハハ!ギャッハハハハハハヒハハハッ!!そうだよ!そォーうだよンッ!!アンタのオジサンの『お手手』だよォォォォォッ!?」
コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛
大気が、震えた。
さすがの瑠獅覇も、一瞬動きを止めるほどの圧力。
「許さない……アンタは絶対に許さないッ!!」
怒りに震える瞳で、瑠獅覇を睨み付ける。
「ハ……ハハッ!!面白いじゃねェーかッ!?グッチョングッチョンのメッチャメチャにしてやんよォォォォォッ!!」
狂喜に打ち震える瑠獅覇。
静かに構えるタチバナ。
そして……
「シバミッ!!」
遠くから近づいてくる、聴き覚えのある声。
ずっと、待ちわびていた声。
共に闘うと、誓った『仲間』。
『ハイネ・ヴェリオールド』。
あそこに行けば、きっと会える。
すべてが壊れてしまうまでに、彼に会わなくては。
煌々と照らす満月とは裏腹に。
彼女の姿はもう、朧気を含んだかのように翳んでしまっていtた。
残る時間がもう少ししかないことを、彼女は理解してしまった。
だから、彼女はいつもの場所に走っていった。
一世一代を賭けた、最期になるだろう淑女の戦いに向かって。
林檎がいない。
少し目を離した隙に、ベッドにいるはずの林檎はいなかった。
ほんの数秒。シルビアは他の事に気を取られていただけだった。
それだけの短い時間で、イリュージョンの如く彼女の姿は消えてしまった。
女帝の存在が否定されたことにより、その血縁である少女もまた存在が否定されていく。
そう、世界が修正を始めていた。
BARの扉を開ける。
いなければいいのに、と少しでも彼女は思ってしまった。
「よう、林檎」
「……バーレル様」
いつもどおりの声。いつもどおりの姿。
ただ違うのは、その手に握られたナイフが彼女に向けられているだけ。
それでも、男が無理をしているのだと、彼女には分かった。
だって、あんなにも優しい表情で。
だって、あんなにも逞しい風貌で。
透き通ったような瞳で、いつも何かを見据えていた。
そんな人物を、彼女は一人しか知らない。
「私を、殺しますか?」
「ああ、俺は、お前を殺す」
それでも、歪んでしまったものは容易く変えられない。
いつもの男の姿をした、とても優しい殺人者は。
まるで恋を歌うように、静かに言葉を紡ぐ。
「殺すよ、俺は、どうしようもなく、今お前のことを殺したいんだ」
瞳から涙がこぼれる。嗚呼、何てことだろう。
少女は今、とても残酷な決断を彼に押し付けようとしている。
「バーレル様。私は……貴方のことが好きだった」
言葉に出すと、何て儚い曖昧な言葉。
「私は貴方に生かされていた女だから、貴方が私を殺すに文句は言いません」
嘘吐きな舌。死ぬのは怖い。だって、好きな人と一緒に生きることが出来なくなるから。
「でも、私は賭けることにしたんです。だから、貴方に殺されるわけにはいかない」
「………何に、賭け、るんだ?」
バーレルの息が荒くなる。我慢している。
最期の言葉を、彼が聞き届けてくれる。
「……バーレル様と、私と、『おばあさま』と……皆、また楽しく過ごせることに」
そう、きっと貴方がいれば。
この『繰り返されているセカイ』も、最後の一回で終わらせられる。
だから、私は、今、ここで。
「お願いです、バーレル様。世界を救って下さい
そして、また、貴方と」
再会出来ることを祈ってます。
その言葉だけは、ついに出すことは出来なかった。
「林檎…………?」
「……出てきて、私のスタンド」
アブソルート・ドメイン。もう一人の私。
ごめんなさい、私、淑女でいられなかった。
「賭けのチップを払います。今ここで、私、道祖土 林檎を」
全力で平伏させなさい。
私は、私の命を賭けて。
もう一度あの人に、戦いに向かわせようという愚かな女だ。
後悔ばかり、未練ばかり。
でも、私は信じている。
あの人と、共にまた過ごせる夢のようなひと時を。
道祖土 林檎 再会を夢見て、死亡
(シバミ、ハイネ、聞いてください。
もし・・・もし私が"曲がって”しまったら、その時は・・・)
不愉快に残る、その言葉にハイネは顔をしかめる。
昔から嫌な予感は外したことがないハイネは、妙にその言葉が気になってしょうがなかった。
「シバミ、タチバナは全部任した」
「ちょっと!無理に決まってるじゃないっ!」
「私は既にアンタ達に負けてるんでね」
「こらぁっ!!見捨てる気かあァ!!」
見捨てる心算はこれっぽっちもない。
一番生存率が高い作戦を当てはめたに過ぎない。
勝率は現段階で1%未満。生存率も絶望的。
冷静に思考の中に戦いに必要な要素を張り巡らせる。
久々に頭を使う。スタンドを得てからは、常に傍に茜がいたから、頭の使いようがなかった。
だから、今度こそ。
今度こそは、私はこの戦いを制してみせる。
私(俺)は頭脳。逆説を以て、強者と弱者を引っ繰り返す……!!
「余所見してていいのかなぁああ!!落 書 き 野 郎 !」
「五月蝿い黙れ糞餓鬼が。今イロイロ考えてるんだから邪魔するな」
スタンドの腕を見切る。
変幻自在の攻撃は、既にもう『見切った』。
攻撃パターンも何度も戦いをしていれば分かる。
……タチバナとも修行がなければ、見切ったところで避ける事も出来なかっただろうが。
「今更モノ考えたって無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
「人間がモノ考えないでどうするんだよ?
私が今考えているのは、そうだな…………。
お前をブッ殺して、タチバナを正気に戻して、ああサトヨシって奴もどうにかして……」
「人の話を聞きやがれえ!!!!」
「人の話も聞かない餓鬼に聞く耳があってたまるか。
もうお前といると『退屈』なんだよ……だから」
もうぼち、死んどけ。
極彩、闇色と茜色が辺りを染め尽くす。
ソリッド・カラーズは色のスタンド。
目に見える世界は、全て虚妄混じる不確かな世界となす。
そう、それは時間稼ぎ。
ハイネはこの現状を覆すための味方を待っていた。
シバミにとどめを刺そうとしていたタチバナの背後から、バーレルがタチバナを殴り、『分けた』。
サトヨシへの思いと歪みによって洗脳されたタチバナ。
そして、杏子への思いを胸に、瑠獅覇を倒すことをハイネと誓い合ったタチバナに。
「わかっていませんね、サトヨシも。こんなことをしなくても私の愛は変わらないというのに」
「違いますね……サトヨシを守るのが私の役目。そのためなら洗脳だろうと何だろうと構わない。それが私のはずです」
対峙する2人のタチバナ。安堵したシバミが言う。
「どっちでもいいッ! アンタが筋金入りのホモだってのはよくわかったッ! そんなことより瑠獅覇をッ!」
「わかっています。あのクソガキを私は絶対に許さない。ですが……B・D・Mッ!!」
タチバナが叫び、目の前のタチバナに殴りかかる。
「私が私の動きを読めないとでも思っているのですか?」
「これ以上面倒な事態は避けたいからな」
バーレルがワイヤー付きのナイフを放ち、カウンターを狙ったもう一人のタチバナを止める。
「『分解』しろ、B・D・M」
B・D・Mの拳がタチバナをとらえ、『分解』。
そして、もう一人のタチバナをも『分解』する。
「何してんのよタチバナッッ!! アンタまで『分解』しちゃったら……」
「ゴチャゴチャワケわかんないことやってんじゃねェッ! いいからサッサと死ねよッ!!」
瑠獅覇が瞬間移動し、シバミの前へ。
ソウルステーションで殴りかかるッ!!
「いや、これでいいんですよ、ビッチ……、失礼」
そう言ってソウルステーションの拳を止めるタチバナ。
「私自身を『再構築』しました。サトヨシの歪みの影響を正して。半ビッチ、バーレル、あなたと……そして杏子のおかげです」
「テメェ裏切りやがったかタチバナッ!! やっぱり最初に殺さなきゃいけないのはテメェだったなァッ!!」
タチバナの手を振り払い、スタンドを分離、マグマとスウィッチが同時にタチバナへと襲いかかったッ!!
「ブルース・ドライブ・モンスター……」
ゆらり、一歩前に出るタチバナのスタンド。
「気迫が足りねえなァタチバナァァッ!
やる気はどうしたよやる気はよォッ!
テメエに殺る気が無くっちゃ……」
マグマの左回し蹴りッ!
スウィッチの右拳ッ!
一方を止めようとも、もう一方が仕留めるッ!
上半身と下半身のバランスを一切無視できる
ソウルステーションならでは、
致 死 の 挟 撃 ッ !
「殺りがいがねえよォォオオァァア
アアーッハッハッハッハハアアアアアアアッッ!!!」
対するB・D・Mは…
ただ、静かにスウィッチへと右手を振った。
「……『 モ ン ス タ ー C . C 』……」
衝撃。
マグマの蹴りに、確かな手応え。
受けたのは……
「お、俺……だとォッ!!」
それはありえない光景だった。
ただ静かに振られただけのB・D・Mの手は、
スウィッチの体にめりこみ、
攻撃の勢いを一切無視してその体を移動させ、
マグマへの攻撃の盾としたのだ。
「チ、分離じゃどうにもならないほどパワーがあるってのかよォッ!
ナマイキなんだよこのクソホモッ!クソッ!ホモクソォッ!!
クソ、クソクソクソッ!戻れ、ソウルステーションッ!!」
静寂。
「え……タ、タチバナ…」
シバミが、呆然と呟く。
そして、同じ声色、
何が起こったか解らないまま、ハイネが、続ける。
「…ゆ、融合していやがる…
あのガキのスタンドと…」
「…一体なぜ、この能力が生まれたのか?」
タチバナは、言葉を荒げない。
ただ、静かな悲しみ、あるいは悟りに近い諦め、
だが、そこに秘められた、確かな意思。
それだけが、彼の言葉に篭っていた。
「バラバラになった『体』が、
ずっと一つに戻りたかったからでしょうか?
分かれた『心』が元に戻ったから?
歪んだ『世界』が私に与えたのか?
それとも、サトヨシに歪められた『私自信が生み出した』のか?」
誰も動かない。
瑠獅覇は呆然と。
バーレルはポーカーフェイスのままで。
タチバナの美しい声だけが、淡々と紡がれる。
「私はそうは思わない。
私のこの能力を生み出したのは…」
見てはいない。
でも、知っている。
それぞれに思いを持ちながら、
自分の体を守ってきた、仲間。
そして、自分を変えてくれた、
…名前を呼ぶ事も、今は辛い…。
だが、タチバナの心には、しっかりと残っている。
タチバナは変わった。
それは、自分には必要ないと思っていた、
自分は欲しないと思っていた、
人との繋がりの暖かさを知ったから。
「モンスターC.C。
新しい能力と言うのもおこがましいほど、
些細な成長ですが…」
「い…」
呻く、瑠獅覇。
「今までの逆。
触れたものと、『つながってひとつになる』能力…」
「いつまで語ってんだこの脇役がァアア!
僕の前では全員端役なんだ、
僕の前で偉そうにすんじゃねえッ!
襲え、マグマッッ!」
「そして…いつまでもつながってはいられない。
必ず、」
…。
「離れる…」
破裂音。
融合が解けた瞬間、スウィッチの中心部で、エネルギーが弾けた。
【B・D・M "モンスターC.C"
触れた物を自分とひとつにさせる。
一定時間で能力は強制的に解除され
ひとつになっていた物にダメージが入る】
「グ、ァアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
絶叫する瑠獅覇。
シバミは、思わず耳を覆った。
それだけの苦痛を示す、叫び…。
「グ、オ、ハ、アアアアッッグッ!!」
吐血する瑠獅覇。
「…終わりだな」
ナイフを構えるバーレル。
「やっと今…お前を、殺す」
近寄る、ハイネ。
シバミは動かない。
ただ、流れた血に、顔を歪めるのみ。
タチバナも動かない。
ただ、静かに、全員を見ている。
「……タァ…チ…バ…ナ……」
瑠獅覇は……タチバナだけを、見ている。
そしてタチバナも、瑠獅覇を見た。
「タチバナ…タチバナァ……
タチバナッ!
タチバナッ!タチバナァッ!タチバナァァァッッ!!
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチ」
グシャァァッ!!
「…こっちを見やがれ」
ソリッドカラーズの拳が、瑠獅覇の頭へと、直撃した。
「大きな巨人…それもねじ曲がれば僕の手下さ…」
「く…ふ…ぁ…あああっっ!!」
ヒデエモンは善戦した。
しかし、相手は自分の数段上を行くサトヨシ。
長引けば長引く程分は悪くなっていく。
「調子が良いんだ…だからこんな短時間で君の巨人を僕のモノに出来た」
何故だろうか、サトヨシはここに来て格段と能力を上げている。
そして、それを臆することなく使いこなしている。
スタンドをねじ曲げるまでに…。
「君が僕を攻撃しようと思えば思うほど、君のスタンドは君を攻撃するようになる。」
マキナの大きな腕が振るわれる。ヒデエモンはそれを間一髪で避けた。
「「エクスマキナ!!一体どうしちまったてんだ!」
主の呼びかけむなしく、マキナはヒデエモンを狙い続ける。
「ははは、楽しいなぁ~。でもそろそろ終わりにしよう。ユグドラシルで君の存在を消してあげるよ!!」
ユグドラシルがヒデエモンに狙いを定める。
「全ての人生を否定し、来世にも残らない位にねじ曲げてあげる。」
そう言ってユグドラシルを使おうとした刹那…
一陣の風が…強く吹いた。
「間に合った…もうこれ以上、誰かを失う戦いは止めにしよう」
風は強く吹き込み、サトヨシを壁に叩き付けた。
「くっ…この野郎ォォォォっ!!」
完璧主義者のサトヨシは考えの通りにいかなかった事に激怒する。
「お前が現れなければ、ねじ曲げることが出来たのに!!お前も一緒に消えてなくなれぇ!!」
ユグドラシルの力が跳ね上がった事を空気がおしえる、張りつめ震える空間。
「サトヨシ…お前に俺を消すことは出来ない!俺は気付いた!死んでいった…この世界を失った者達が、この世界をまだ手にしている俺達に託した思いを!!それは、お前を倒す事だ!」
ブローウィン イン ザ ウィンドウが黄金に輝く。
「波紋は俺の魂だ!そして、スタンドは俺と亡くなっていった者達のミエナイチカラ!!」
ブローウィンの周りに空気が渦巻く、そこにはたくさんの思いが集まる。
シン、デュカ、秀丸、D.M.Q、ジャンケルビッチ、トメ、そして隕鉄。たくさんの想いが集まり、風と共に渦を巻く。
「風が味方してくれる!!俺を今動かそうと風が背中を押してくれる!」
更に風が強くなり、ついにブローウィンの姿は見えなくなる。
「俺は忘れない、愛する者の…友の言葉を!!」
「くっ…何を言ってんだ!ただ風を操れるだけのお前なんか一瞬にしてねじ曲げてやる!!消えろ!ジョー…」
その時、風が止んだ。
そしてサトヨシの声がかき消える。
「ミエナイチカラがサトヨシ、お前と俺の間の空間を真空で裂いた。お前の声は俺の所まで届かない。俺の声もお前の所まで届かないがな。風を操り、真空を創り出す。これが俺の…そして消えていった奴らの思いだ。」
届かない声がサトヨシの心の奥に囚われたもう一人のサトヨシに響いていた。
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて聞こえてくるよ。
世界の終わる音が。
「俺」は世界を救いたかった…。
「僕」は世界をこの手に握りたかった…。
今度も叶わないね、両方、叶わないね。
あれ?一体どっちが「僕」の願いだったのか?
どっちが「俺」の願いだったか?
「君」はどっちだったのか?
始まりの「僕」だったのか、結末の「君」だったのか?
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて近づいてくるよ。
「僕たち」の終わる音が。
ガラガラガラ…ガゴン!ドドン!
エウスデクスマキナの手足が、曲がり、折れ、砕け、
ヒデエモンの眼前で崩れ落ち、瓦礫と化していく。
「戻れ!カーペンターズッ!!」
「オヤカターッ、モウ駄目ダーッ!」
「アッー!!」
それはBUMP OF CHICKENの、極基本的な能力。
「物質を曲げる力」
その力で、ヒデエモンが組み上げた建築をへし折って行く。
ねえ「俺」、
いつもみたいにユグドラシルで消してしまえば良いんじゃないかい?
いいや「僕」、もうその必要はありはしない。
ああ、そうか…もう世界が終わるんだからね。
ジョーイが落下する瓦礫の合間を縫って、サトヨシに迫る。
「おおおおおおおおっ!!」
サトヨシ目掛けて懇親の力で、コークスクリューパンチを打ち込む!
しかし、その一撃はサトヨシを捕らえない。
「な!?パンチがすり抜けた!?」
「予期しないことが起こるから、気をつけて」
さっきと打って変わって穏やかなサトヨシの口調。
「なんだ、おちょくってんのか?!」
もう、一巡前の「俺」も、現世の「僕」も無い。
それらは「統合」しつつあり、一つになる形を決めかねて、
不安定に人格が揺らいでいる。
「僕」は、このカスどもも
次の世界から抹消しておくべきだと思うぜ!
ユグドラシルだ!ユグドラシルだ!ユグドラシルだ!
いいや、もう世界に猶予は無い、
「俺」は無駄打ちは避けるべきだと思うんだ…。
もっと重要な何かの為に残しておくべきだと思うんだ。
ボキャアッ!!
サトヨシを殴りつけたジョーイの腕が関節を逆に曲げられ、
肘から折れる。
「うおあああああああっ!!」
地面を転がるジョーイ、その足が折れる。
グキキッ!!
何だこれは?!手も足も出なねえ!
これほどか?こんな、俺が何もできない程だったのか?!
サトヨシは考え事でもするように突っ立って、
何もしてこないのに、現象だけが起こる。
俺を追い込む現象だけが!?
オカシイ、この世界観は何だ!?
そうだ、手を貸してくれ神城!どこに行った?
どこに行った?一緒に来たハズだ?
一緒に……誰と?誰と来た?!
俺は誰に助けを求めている?!
「だから、言ったよね…もう歪みきっているんだ…
これからどんどん自然ではありえない事が起こる、
それは世界の法則の限度を超える。
計算が成り立たなくなった世界は未来を形作るのを諦めて、
過去をやり直すんだ」
「僕」がユグドラシルを使わなくても消える人間くらい出てくる。
もしかすると、一足先にやり直しの世界に行ってるかもしれない。
それはもう「俺」には判らない。
構築していられなくなった世界が、もがいて暴れて、勝手にやってることだ。
せっかくタチバナに、アトリエで会えたのに、
なにも…伝えれらなかった…「僕」を保てなかった…。
ああ、タチバナ、そうか「俺」タチバナだ、
やり直す前にアイツを消さないと、
そうか、それでユグドラシルを温存だ、やり直すのに最高邪魔だ。
タチバナ消す…伝え消す。
助けタチバナ…タチバナ、タチバナ、タチバナ…。
タイバナ、タチバナ、タチバナ、タチバナ。
「タチバナ…タチバナァ……
タチバナッ!
タチバナッ!タチバナァッ!タチバナァァァッッ!!
タチバナタチバナタチバナタチバナタチバナタチバナ
タチ」
グシャァァッ!!
「…こっちを見やがれ」
ソリッドカラーズの一撃を受けても、
なお反撃の一撃をハイネに見舞う瑠獅覇。
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺して」
どんなに足掻いても、もう勝負は見えている。
構築者として、その能力が進化し続けるタチバナ。
一対一でも、もう手も足も出ない。
それは完全統合したサトヨシと同等の世界。
森羅万象の限界を操作する存在なのだ。
せめて、せめて、コイツだけでも消えてくれれば。
俺は他の誰にも負けねぇ!俺は魔王だっ!魔王だっ!!
──その願いは叶う
「!?」
一同が驚く!?
「なんだ、何が起きた!?」
そこは知らない場所だった、
突然、自分たちは知らない場所にいた。
そこには瑠獅覇、ハイネ、バーレル。
タチバナとシバミの姿が無い……。
世界の歪みが、三人の存在した場所を歪めた。
「…あはっ!なんか知らんけど、タチバナのクソがいねぇっ!」
歓喜する瑠獅覇、その目はギロリとハイネ、バーレルを捕らえる。
「く、来るぞ!」
バーレルに警戒を呼びかけるハイネ。
いくら相手が化け物でも、すでに瑠獅覇は重症。
バーレルの戦闘力はかなり高い、やれる、やるんだ!
しかし、バーレルの様子がおかしい。
「どうした!ぼけっとするな!」
怒鳴るハイネに、バーレルは非常事態を伝える。
「…スタンドが、出ない」
世界は激しく歪み、その有り様を変えて行く。
「うしゃああああああああああっ!!」
襲い掛かる瑠獅覇!!
予期しないことが起こるから、気をつけて。
ねえ、「君」ガラガラガラと、
ガラガラと音を立てて聞こえてくるよ。
世界の終わる音が。
・・・・・
腕が『 折れた。』
足が『 折れた。』
『 神城』ドコ行ったか解らねぇー。
圧倒的なパワーに『 ビビリすら覚えちまう。』
世界が終っちまう。
俺達がやってきた事ってのは・・・。
『 何 だ ったん だ ! ! ! ? 』
ー 歪みか。
ー フム。何が幸運するか解らないモノだな。
「ッッ!!!?」
どこからともなく聞こえる声ッ。
そして・・・。
「な・・・・ッ!?」
サトヨシは『 驚 愕』したッ!!
虚空より現れわれし『 その 紅き 両 腕 にィーッッ!!!』
「フッフッフ。」
「先に君達に、八つ裂きにされ、存在も消された『 赤倉男平だよ。』」
・赤倉男平
スタンド名:スーパー・レッド・ダンディ・ブルース 能力:怪力ィーッッ!!。
備考:怪力は、スタンド能力への『 抵抗力』に繋がるッ!即ちッッ!!
「『 その存在消されるに、遅くッ!
歪んだ事象は、瀕 死 の 重 傷 を、かき消したのだよッッ!! 』」
「離せッ!離さんかァーッッ!!?」
もがくはサトヨシッ!
「ジョーイくん。」
「『 神 砂 嵐 』だ。」
「まず、この『どうしようもない 歪 み 』を破壊しなければ、『 構 築は無理だ。』」
「なぁーに、私の事は気にするな。」
「どの道、『 消え行く 運 命 だ。』」
ジョーイッ!
「誰だか解らねぇーがッ!
ここはッ!やるっきゃあ ねぇー ようだなァアアアア ア ア ア ア ア ! ! ! ! 」
ジョーイが、突き出す『 両 拳 ッ ! 』
しかして実体ッ! 『 破壊的 小 宇 宙 ッッ!! 』
『世界を、壊されてたまるかァアアア ア ア ー ッ !
俺達の叫びを、受け取りやがれぇええ え え え え え ! ! 』
ジョーイが、背ッ!
黄金の風 、 巻 き 起こりッッ、
しかして、『 世 界 包み込むは ッ ! ! 』
ー 『 ゴ ー ル ド マ ン 的 ・ 小 宇 宙 ゥウウウ ウ ウ ウ ウ ウ ウ ! ! ! 』 ー
「『 俺 達 は 、 ス タ ン ド (立ち上がる者) だ・・・・ッッ!!! 』 」
『 風 は、放たれた・・・ッ!!』
『 ミエナイチカラ』を共にして・・・ッ。
・・・・・
「俺は『 疲労』していた・・。
この街に・・・、この世界に・・・。」
「『 生き甲斐が死んだ 世 界 』に、興味などないからだ。」
男は、消え行く。
満足気に笑みを浮かべて。
ー「 石仮面 」
脳に骨針を突き刺す事により、『 邪悪なる力』を引き出す『 奇妙な 仮 面 』
そして、その力は・・・。
『 死 者 の 復 活 に、通じ る ッ ッ ! ! 』
「『 吸血鬼』になれて、良かった。」
「『 完 全 世 界 』・・・。」
こうして、ブルースは消滅をした。
蘇らせた『 誰か』に思い馳せ・・・。
ダン
ダン
ダン
ダン
ダンン
ダンンン
ダンンンン
「『 無 限 の可能性に生きる・・・。
そう考えれば 今 日 も、 楽 し い だ ろ ? 』 」
「 この身、腐り行くのみの『 屍 生 人(ゾ ン ビ)』。」
「だが・・・。
『無限』の可能性に『 夢 馳せる』なら、私は幸せで楽しい。」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
・レッド
スタンド名:LA'rcーenーciel 能力:死んだ存在をこちら側に呼び出す事ができる。
備考:吸血鬼・ブルースの力で、屍生人として復活。そして、その『 野 望』はッッ!!
「 『 完 全 世 界 。 』 」
「捻じ曲げた『 存在』は、悲しい。」
「捻じ曲がった『 世 界』が虚しい。」
「私は狂っているが『 捻じ曲がってはいない』つもりだ。」
「そして、なお『 死こそが 完 全』と認識しているッ!!」
レッドは歩み行く。
機、熟せし事を理解しているからだ。
「誰もが『 生まれ・・。』」
「誰もが『 死す。』」
「終着、『 死』ぞ 到 達と充たすなら・・。 『 完 全 世 界 』、其処にあり。」
ー 行こう、死せる者達よ・・・。
ー 終幕、統べしは『 陰 陽 師 』であるッッ!!!
そして、
最後の戦いが始まる。
第19話『 世界は、壊れる?それとも狂う?? 』
To
Be Continued...