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外伝『世界の終わりに』

ジョーイの神砂嵐が吹き荒れる数瞬前

世界は崩壊と再生の流れに入っていた
サトヨシの意図に因るものではなく
捻れたゴムが元の姿に戻ろうとする
当たり前の事
世界はそういったものなのだ


世界を憎み
世界を恨み
世界を愛し
世界を欲し
世界を見失い
世界を見つけ

崩壊に脅える
二人の少年

『クツケイ』

頭を撫でてくれるシルビアはいない

世界の崩壊が始まったのだ

分かつた其の身で理解する

『ああ――始まってしまった
また世界は終焉まで進まない』
一度でも死んだ事のある人間は
崩壊に伴い消えていく
そして再生に入る


だが今回はッ

違ったッ!!


黄金の風が吹き荒れ 世界を埋め尽す

サトヨシに捻られ ヒビの入った世界に

黄金が入り込んでいく

そして

世界は修復される

消えたシルビアが顕れる

生きているモノがイキル世界に
今回死んだモノは蘇らない

何故だか
実感がある
初めてなのに
初めてではない
崩壊へのカウンター


可能性は
“完全世界”
世界はそちらにも向かっている


クツクイにはわからない
同じ世界を繰り返した男の瞳は
他の可能性には気付けない
『レッドッ!』



いつかの世界で

並び 戦った 男


レッド
『N・A』

『ザ・シャイニングワールド』
『レ・ミオ・ロメン』


死者は蘇る
使者となり蘇る

世界崩壊への使者へ
世界完全世界への使者へ


闘いは始まった 

そう、それは視える者(スタンド能力者)ならば視えただろう。


継ぎ接ぎのような世界が
黄金の光によって包まれる
その幻想的な光景を


夜闇と虚無を彩るように
星々よりも尚輝いて
破滅から世界を守ろうとする
空の天蓋に吹き荒すぶ、黄金の神砂風を


それは、誰も知らざる夜の闘いの軌跡だった。



それでも、世界はまだあらゆる危機を脱したわけではいない。


生まれくる黄金と再生の朝に対抗するかの如く。
死んでいく虚無と寂滅の夜は未だ顕在だ。


世界中に今、生と死がその狭間を巡り廻る。
時が、針を刻もうと動くのは。

未来か、過去か。
それとも、永劫の静止(死)か。




死を以て完全な世界を望むかの男は、音にならない嘯詛を紡ぐ。

本来ならば、喚魂のスタンド『LA'rcーenーciel』が冥府より喚び出せる死者は三体。

しかし、レッドは死に触れた屍生人。

一度の死を越え、死を根本から理解したことで。

彼の能力は、更なる死者をも喚び寄せる……!



(オン・マユ・ラ・キランデイ)
『拝聴せよ、呼応せよ』

マユリの真言が発声域に入る。
スタンド能力の限界を越えるために、敢えて意味を持つ詞にて自己暗示する。

そして、冥府より死者を喚び寄せる狼が。


(ソワカ)
『來たれ、よ!』


レッドと同時に吠えた。

死者が、列び立つ。


千変の魔弾、金。
ザキ。

光速の地奔、土。
ジャンケルビッチ。

流動の色彩、水。
藤宮茜。

そして、新たに呼ばれし二名。


もう一人の、世界維持(ユグドラシル)に近き力を持つ、正義の男。


螺旋の徒花、木。
隕鉄。



そして。
運 命 の 皮 肉 。


溢れるばかりの愛と幸福を抱き。
無惨な最期に散った少女。


繰命の雷鳥、火。
杏子。


この五人を以て、
『完全世界』を創世する、
五行宿曜の使者と為す!




終わりは、すぐ其処まで迫っている。

黄金が歪みを破壊し、世界崩壊を防ぐ間に、新たな世界を再構築するのが先か。

死者が生者を凌駕し、その結果、完全世界がもたらされるのが先か。

それとも何もかも間に合わず、世界の崩壊を迎えてしまうのが先か。


その、何れにせよ。

立ち上がれ、今ここに。
立ち向かえ、畏れるな。

刻限は最早短く。
猶予はとうに無くとも。

全ては、この闘いの為に。全ては、皆が望む未来の為に。


あらゆる万難と悲劇、不条理と確執を乗り越えよ。



そう。

夜明けも、静寂も、崩壊も。
手に届く、すぐ傍まで迫っているのだから……!!







そのとき猫は、全てを知ったかのように走っていた。

……奇跡という名の、最後の鍵をその身に宿して。

神砂嵐。

もはや究極に近い破壊のエネルギー。

目の前の瓦礫の山を見て満身創痍のジョーイ。

横に立つタチバナ・ハイネ・バーレル・シバミ。

倒れる赤倉とヒデエモン。

「二人を探しましょう…。死体を確認するまでは決して終わりません。」



タチバナの一言で6人は瓦礫の山を掘り返し始める。

ガラガラ・・・

程なく意識のないのサトヨシが見つかった。傷だらけの体だったが、拳だけはしっかりと握りしめて。

…止めは…私が刺します。

言葉を発するまでもなく全員が理解していた。

ドギャァ!

瓦礫から飛び出す『スウィッチ』。瑠獅覇は生きていた。

「うははははッ!サトヨシは俺が守るんだッ!お前らなんかにはやらせねェよォォォッ!」

スウィッチの拳はタチバナのこめかみを打ち抜…かずにすり抜ける。

「…え?」

―瑠獅覇…もういいんだ。お前は私との約束を守り続けてくれた…。もう子供である必要はないよ。おいで。キミともう一度話がしたい。

忘れてしまったはずの…消えてしまったはずの『佐藤』の言葉が…永久の子供の頭に流れ込んだ。

「う…あぁ…佐藤…ッ!佐藤…ッ!」

忘れてしまったはずの…消えてしまったはずの『涙』があふれる。

永久の子供は今、救われたのだろうか。

それは誰にも知るところではない。

墳上 瑠獅覇―――――佐藤と共に

墳上 瑠獅覇/死亡:リタイア

―――――――

「待って。」

シバミがタチバナを制止する。

「要は『スタンド』を使えなくすればいいんじゃない。殺す必要なんてないし…もう人が死ぬのは…嫌だよ。」

ジョーイがサトヨシを背負った。

「ってことはよォ…『ドルチ』かッ!『神城』かッ!ってことだな…」

サトヨシのスタンドを封じてしまえば…もう世界を歪めるものはない…

「おっさんとヒデエモンは置いて行くぜ…。シバミ。着いててやれよ。」

こくん、とシバミが頷くと残りの4人はその場を去る。サトヨシを連れて。

ド ド ド ド ド ド ド 。

いつから・・・いた?

いや…『どうしている』?

――――『金』

「……ザ…キ…」

「まさか初めに会うのがシバミ…お前からとは…やってらんねーッスよ…。」 

「本当に、やってらんないわよね……
あの時みたいに……一緒にお酒でも飲まないとさぁ……」

 対峙する、シバミとザキ。

「何で、こうなっちゃうんスかねー。こんなことがしたくて、助けたわけじゃなかったんスけど……」

 言って、N・Aを構え、コルク弾を込めるザキ。

「あの時はありがとね、ザキ。格好良かったよ。
……今でも嫌いじゃないよ、ザキのこと」

 視界が涙でぼんやりにじむ。それでも、シバミティアを出すシバミ。

「ありがとう。でも、アンももういねーし、正直こんな戦いはしたくないんスけど……したくないって思ってんのにッ!!」

 構えたN・Aから、コルク弾を発射する。
 弾は実弾に変化する。そこには幻覚効果が付与されている。

 当たれば死、かすめても悪夢が待つ必殺の弾。

「やめようよザキッ! したくないならもう止めてよッ! 何で、何でなのよォォッ!!」

 こぼれる涙をアルコールに変えて飲み干すシバミ。
 流れるような動きでザキの弾をくぐりぬけ、接敵する。

「攻撃したくないとッ! 守りたいと思うほどッ! 手が勝手に動くんスよッ!! 嫌なんスよッ! 殺して欲しいッスよシバミィィィィッ!!」

 再度コルク弾を装填するザキ。
 だが、すでにシバミはザキの前に立っている。

「ザキごめん、お願いだから死なないでッ!
シバミティアッッ!!」

 ザキの血中アルコールを爆発的に増やすため、殴打を放つシバミティア。

「ツイスタァァァァッッ!!」

 間一髪、シバミが飛びのいた地面が『捩じ切られている』。
 N・Aを準備し終え、ザキがつぶやく。

「隕鉄……」

「かつての親友をこんな形で助けることになるとはな……。修羅道に堕ちてまで……これも因果か」

 現れたのは「木」の気によって黄泉路より二度舞い戻った破壊の鬼――――隕鉄。

「世界は……やはり崩壊を望んでいるのかもしれんな、ザキ。
所詮この世は諸行無常。だが、繰り返す世界がこんな悲しい宿命ならば……やはりこの手で『捩じ切る』が我が使命……

 シバミッッ!!

 それでもこの歪んだ現世を救う覚悟があるのならッッ!!


 我が身を三度屍と化して乗り越えて見せよッッ!!!」

「関係ないわよ……。ザキと戦うなんて嫌。友達の貴方と戦うのも嫌。私はね、普通に大学生活を終えて、面倒臭いけど就職して、おいしいお酒を飲みながら普通に暮らしたかった」

 一呼吸。
 黄金と灰色の混じり合った空を見上げ、シバミは言葉を吐き出す。

「それでも、やらなきゃならないんでしょ? いいわよ……、だったらやってやるわよ。もう疲れたの。世界がどうとか、スタンドがどうとか。みんなのために必死で戦ってきたけど、結局みんな死んじゃったじゃないッ! コウもッ! ザキもッ! ヒデエモンだって大怪我してるしッ! 人殺しなんてしたくないのにナガセだってッ!」

「シバミの馬鹿ァァァァッッ!!!!」

 突然。
 その場の空気をひっくり返すような叫び声が響いた。

「……シルビア……!」

「シバミお姉ちゃんの馬鹿ッ! だったらあの時何で私を助けてくれたのッ!? 私だって頑張ったんだよッ!? スタンドだってもう出ないし、クツケイはちっちゃくなっちゃったし、嫌なことだっていっぱいあったのにッ!

 それでもッ!

 私をッ!

 この私を救ってくれたのはッ!

 あなたでしょシバミッッ!!

 あなたが諦めたら全部終わりなんだよッ!!

 私が頑張ってきたのもッ!!

 コウさんやヒデエモンさんやッ!

 今戦ってるザキさんだってッ!!

 みんなあなたに思いを託して来たのにッッ!!!


 みんなの思いが全部終わっちゃうんだよッッ!?」



 唖然として、シルビアを見るシバミ。
 気がつけば、また涙が溢れていた。

 涙に濡れた瞳で、隕鉄を、そしてザキを見た。

 しっかりと見据えた。

「ありがとう、シルビア。あなたは私が守る。世界がどうとか、そんなことまで考えらんないけど、私にとって大切なものを守るために頑張るよ。ザキ、ごめんね。あなただって苦しいんだよね。

 だから、もう迷わないんだ。
 私は戦うよ」

「私達は……ですよ、姐さん」

 ゆっくりと、ゆっくりと立ち上がるヒデエモン。

「それに……隕鉄。あっしもあの男には借りがある。
 ザキの旦那ともども、あっしら以外に誰が止められるんですか」

 そう言って、ヒデエモンは力なく笑った。
 微笑んでうなずくシバミ。

「ごめんねヒデエモン。ありがとう。何でまた泣いてんだろ私。おかしいよね。泣き上戸だからってことにしといて。

 ザキ、負けないよ。あなた達がもう一度、安心して眠れるように……


 絶 対 に 負 け な い か ら」
対峙する シバミとザキ ヒデエモンと隕鉄
そして、その様子を見逃すまいと、涙をためた瞳でみつめるシルビア


彼らを繋ぐものは何だったのか

共に過ごした記憶が止め処なく脳裏に浮かぶ





始めて出会ったあの日 酔いつぶれの毎日

あの日、私のボトルを貫いて ザキは私を退屈な人生から連れ出した

沢山の大切なものが出来た 酒だって断てると思えるくらい大切なみんなに

毎日が最高の日々だったわ 共に泣いて 共に笑いあえる変な仲間達

連れてきてくれたのは ザキ 貴方のショット

ここで終わりにはさせない 私はここでは終わらない 


そうだよね? ザキ




子供の頃からなんでもほっとけないタチで 絶対首つっこんじまう性格

隕鉄とはよく一緒に馬鹿をした その隕鉄を捜して、またおかしな事に首つっこんじまった

あの日助けた女は、随分酒癖が悪くて俺を困らせた ついでに信念も驚くほど強かった いつも、輝いて見える程に

きっとそれは、今でも変わらない 

俺が仕留めた中で 最高の人 最高の笑顔


シバミ やっぱ、お前はいい女だ




俺っちはこんな性格だ 曲がった事もでぇ嫌いだし 常に人の為になりてぇと思ってる

良い建築物をたくさん建てまくって人の為に! なーんて思ってたところであの居酒屋だ

出会っちまったんだよ 人生賭けてついて行こうって思える人間に

コウの姉貴 俺っちはシバミを守るぜ あんたもきっと同じ気持ちだろ?

全部キチっと終わったら、みんなが笑って暮らせる家を建てるぜ


その為には 最後までトコトンやらなきゃなぁ なぁ、カーペンターズよ!




この隕鉄 何巡もの世界を経験した 

常に感じる絶望 消えていく仲間 残される孤独

しかし尚、世界に正義を見いだすが為に 絶望は絶えない

己が中に『正義』の二文字がある限り 『絶望』はこの俺を強く掴み離はしないのだッ!

だからこそ、今まで味わってきた絶望を決して忘れはしない

俺は信じている 『正義は勝つ』と言う事を たとえ幾千万の絶望に身を焦がれようと 


それは絶対なのだとッッ!!! 




わからない 世界がどうなるかとか 何が正しいのかなんて

この世界を呪った事もある 全てを海で飲み込んで 消してしまいたいって本気で思ってた

私がしてきた事は許されない事 私が感じた事は決して忘れてはいけない事

でも、不思議ね もう過去から逃げたいとは思わない

そう思える様になったのは シバミ 貴方がいたから

そしてもう一人 いつも私の為に必死になってくれる 不思議なあの人


クツケイ… 貴方のおかげなのかしらね





それぞれの想いが交差する
そこにあるのは悲しみ? 後悔?


そうではない


黄金の風が世界を覆う 空が崩壊へとむかって崩れていく
大木は折れ 地面はその身を引き裂いていく
けれど荒れ野には尚 花が咲き誇る 

軸をなくし、ねじ曲がる世界 
崩壊と再生 生と死が 共にある

けれどその花は、咲き誇る 
この混乱した世界の中で、己が命を燃やし続ける 



残った者はその胸に秘める想いは
悲しみや後悔ではない

そこに咲き誇るのは、確固たる『信念』と強い『希望』 



今、戦いは始まる


「はぁ、はぁ!」

「急げ!崩壊が進んでる!!早くドルチか神城を捜すんだッ!」

ジョーイが声を荒げる
続くは ハイネ バーレル タチバナ 
そして、ジョーイに背負われた サトヨシ

「くそぅ、今、目を覚ますんじゃねぇぞ。神城…ッッ!何処行ったんだよ!」


『サトヨシのスタンドを消す』

はたしてそれで解決出来るのか? それでこの崩壊が止まるとは思えない
この崩壊はもうサトヨシの手を離れている
だったら、どうすれば どうすれば世界を救える!?

それに、ドルチのスタンドではサトヨシのスタンドを消せなかったんだ
今回も消せる保証は無い。 もちろん、スレイヤーでも、刈れるかどうか…

「くそッ!」

ジョーイ達は走る しかしそのあては無い
ただ闇雲に 世界の崩壊を食い止める為に


「……。」

ジョーイの後方を走りながら、タチバナは考えていた


( サトヨシのスタンドを消す…
けれどそれでも、もうこの崩壊は止められない
私にできるのは、世界が再生する力にあわせて元の世界を再構築する事のみ
新たな世界 二度と繰り返さない世界 存在を消された者達を有るべき所に戻し、世界を歪みの輪廻から解き放つ

だが

そこにサトヨシは? 彼の存在はどうなる??
同じ過ちを繰り返したりはしないか

世界は、彼を許すだろうか


あのスタンドが何故彼に発現したのか
何故サトヨシがこうなってしまったか
どこかで使い方をまちがえたのか

スタンドは精神を表すもの
ではあのスタンドはサトヨシの精神そのもの

再生した世界でも それは変わらない



世界はサトヨシの再構築を許すか

私は、サトヨシを救えるのか


どうすれば、彼の魂を 

どうすれば、私はサトヨシを守ってやれるのだろう






…杏子)





瓦礫を進む 目の前に小さな丘が現れた
その頂上の小屋の近くでたたずむ2人の影


「僕、戻ってきちゃったよ。ハイネちゃん。」

「ジョーイ、、分かるぜ。お前は今も輝いてる。」


ハイネとジョーイが固まる


「あ、茜……?」
「…ッ!ジャンケルッッ!?どうしてお前がッ!!」

茜が空を見上げる

「キラキラだぁ。空が金色に光ってる。」

ハイネの目に涙が浮かぶ

「…。」
「ねぇ、ハイネちゃん、僕、戦わなきゃ。」


黄金の空から光り輝く火花がハイネ達に降り注ぐ


「『レ・ミオ・ロメン』。綺麗なお星さまだね。」
「何故だ!?どうして!??」


「どうしてだ!?ジャンケル!!」
「仕方ないのさ、こればかりは。俺は死んだ。死後の摂理には逆らえない。」

高速でジョーイ達を翻弄するジャンケルビッチ
上空からは黄金の彗星が降り注ぎダメージを与えていく

「でも、ジョーイ。俺は信じてるぜ。俺は死んだが、お前に確かに俺から受け取った。そうだろ?」


ジョーイはうつむく 涙が頬を伝う
だが、胸にはあの想い


「ああ、安心してくれジャンケル。『ミエナイチカラ』…。確かに俺の中に生きてるぜ。」

その瞳は空の光が反射するのか 黄金に輝いている


「バーレル!タチバナ!!先に行け!この坊主を頼む!!」

そう言ってサトヨシをタチバナに任せる


「…わかりました。ジョーイ、ハイネ。後で、会いましょう。…気を付けて。」

「ヘッ!心配にゃおよばねぇよ!バーレルもしゃきっと気張ってけよッ!!」

「…ああ。」


タチバナとバーレルは駆ける
その背中を見送ってジョーイはハイネと向き合う

「…覚悟できてるか?」
「…嫌でも、しなきゃならないんだろうな。しかし、私がやらなければならない事は理解しているッ!」

ハイネは涙をぬぐう

そして茜を見る



茜は、そんなハイネを見て、嬉しそうに笑った

「ありがとう、ハイネちゃん。」

****

御神酒、神様を迎えるお酒。少なくとも神道ではそうだったはず。

でも、貴方達に使うのは邪気を祓う意味でのお酒……


今から“ザキ”“隕鉄”貴方達を安らかな地面に眠れるよう、御盆意外に起こされないように清めてあげる。


「シュタインベルガー……」

「すまない、俺は酒に詳しくないんだ」

ザキの放つ弾丸をシバミは回避する。狙いは良いのだが


酔挙の特徴である『虚』の動き――に惑わされるザキ



「ドイツ生まれ鋼鉄の撃墜王“フーバー・キッペンベルク”が愛したワインよ、ザキにぴったり――」

シバミが急接近する。弾込めを終えていないザキはシバミの拳を転がって避ける。

「鋼鉄か……なるほど。今の俺にぴったりだ」



『鋼鉄のように色(感情)が無い』



「ワインの意味は“石の山”、鋼鉄より色が無いわね」

「そりゃあどうも」

「でもね、一番薦めたいのはそんな高級ワインなんかじゃないの」



――2つのボトル



「“ムッタース・グルトフォラー”言いにくいけど、そんなボトルがあるの」

コルクの補充が完了し、ザキが立ち上がる。

「どんなのなんだ?シバミのことだから、また強い酒なんだろ?」

「いいえ、16度の低いアルコールよ」


シバミの拳とザキのN.Aが同じに動く。


弾丸はシバミの頬を掠めるが、シバミの拳はザキの肩を捉えた。


「ボトルはザキのスタンドみたい。真っ直ぐ長く伸びた口、黒光りするガラスの容器……」

シバミがそのまま肩を掴み、ザキを背負い投げる。地面に叩きつけられたザキは苦痛の表情を浮かべた。

N.Aのついている腕を押さえ込み、シバミティアの拳をザキに構える。

「ボトルはもう1つ有るんだろ?」

「ええ……そうよ」





「ツイスター!!」

「させないッ、カーペンターズ!」

病院が崩壊していく……螺切られ、形を変えられ、歪んでいく。

「あっしらは2人を救うんでぃ。ばってん、ザキはシバミの姉御しか、救うことはできねぇッ」

螺切られた物を更にカーペンターズで作り変える。ここにきて、今まで無いスピードで……

「あっしらに有るのはライバル意識だが、2人には違う何かがあるんでぃッ」

「それがどうした、この隕鉄に有るのは“信念”という正義だ!」

とうとう天井の一部が欠落し、落ちてくる。しかし、双方動こうとはしない。

「ツイスターRR!螺曲げろォォオオオオ」

空間を隕鉄が螺曲げ、欠落した一部をヒデエモンに向かい、飛ばす。

「カーペンターズ!」

『空間が螺曲げられた、相殺による防御は使えねえッ』


隕鉄は勝利を確信した。コンクリートはヒデエモンの目と鼻の先。


「何のために俺っちは“螺切られた物”をまた作り変え、再利用したと思う?」

螺られる。つまり形状は螺旋(らせん)、それがまた螺られる。更にまた、また、またツイスター同じ方向に螺られる。

結果的に最終的な形状はどうなるだろう。


こたえ――ドリルのように全体に螺旋を描いた兵器が完成する。

「屋根さえ有ればそこは“建造物”床も全て形を変えれる!」

隕鉄の足下から現れる巨大なドリル、カーペンターズが総員で押し上げる。


ヒデエモンは防御を捨てていた――


「「ウオオオオオオオォォォォォォ」」

ドリルが隕鉄を貫き、コンクリートがヒデエモンを押し潰す。




「……ヒデエモン!」

シバミが気をとられた一瞬、ザキが片腕でシバミの腹に一撃を加える。

「ァァッツ」

「シバミ、ごめん。俺は本当にやりたく無いんだ」

マウントポジションから脱出する。

「でも止めることができない……縛られた魂は逆らうことができない」

コルク弾をセットする。シバミとの距離は3m、外す距離では無い。

「シバミ、さようなら……だ」



ダーン


突然ザキは膝から崩れ落ち、その場に倒れ伏す。弾丸は逸れ、シバミに傷はつかなかった。

「……シバミティアは液体をアルコールにすることができる……」

「だから逆の発想で、アルコールを水にできるの」

本当に僅かな時間、ザキを押さえつけた時に血液を目一杯アルコールにした。

「その後は血中のアルコールを水にしたの」

徐々に水になりアルコールは消えていくため、急性中毒にならず、倒れることはない。


しかし血中の赤血球、特にヘモグロビンが減り、酸素が運ばれなくなる。


「貧血よ、重度のね」

「シバミ……」

それでもザキは弾の入っていないN.Aを構える。悲しきかな、それは意思では無く、与えられた役目のせいで――。

「シバミ、俺を殺してくれ」

「貧血で死ぬより、俺は……愛した人の手で死ぬほうが良い」

「……」

「早くしないと、弾を込める時間を与えることになるぞ」

ザキの震える片腕は、既にコルクを握っていた。

「――分かった」

シバミがザキの手を握る。今度は逆に血中の水分を徐々にアルコールにする。

「ナガセの時は急速だったけど、今度は徐々にアルコールを増やしていく――。」

苦しまない死に方、次第にザキの目が虚ろになっていく。

「な…あシバミ」


――もう1つのボトル、何なんだったんだ?


「ムッタース・グルトフォラーのもう1つのボトルはね……」


――ペアボトルって言うのかな。綺麗なオレンジ色をしてて、口の所にラッピングされてるの。


「それが“花嫁のヴェール”みたいで……ね」

「そうか……俺に薦めた黒い方のボトルは……“タキシード”って訳か……」

ザキが初めて笑う。創られた笑顔では無く、人の見せる本当の顔。

「シバミ、またいつか……な。飲みに」

「うん…ザキ。“さよなら”は言わない。また一緒に飲みに行くから」



ムッタース・グルトフォラーはオレンジのリキュール。

それを互いの唇から感じたような気がした。


光の塊となり、ザキの体が消滅する。シバミはそれを見つめていた。

「飲もう……ね」

ザキがいた場所にシバミはお酒を注ぐ……辺りに甘酸っぱい匂いが広がった





「うぐあああああああああああ」

隕鉄が立ち上がる。体に刺さるドリルを力で抜き、放り投げた。

「ヒデエモン、生きてるんだろォ!」

「ッたりめぇディ隕鉄!!!」

片足が根本から潰れている。それでも立ち上がるヒデエモン。

「ツイスターァァァァアアアアア」

「カーペンターズゥゥウウウウ」

壁が、床が、空間が、全てが形を変える。まるで生物の“進化”、変わらない時など無いように。

「ヒデエモン、無駄だァッ!お前の“操る”能力はこの隕鉄の前では無力だ」

「てやんでい!例え無茶でもやりきる、それが俺ッちでい」


隕鉄、おまえが正義を追い求めるように、俺っちも“立ち向かう”生き方は変えることはない!


「組上がれィ!!」


造り出される巨人、この世にいない仲間からの贈り物。

「マキナァァァァァアアアアアアアア」

人型となった瓦礫、隕鉄に“鉄槌”となり、振り下ろされる。

「ツイスター!」

どんどん螺曲げられていく巨人、それと同時に隕鉄の傷も開いていく。


「隕鉄ゥ!」


その間にヒデエモンが接近し、隕鉄をぶん殴る。しかし隕鉄は踏み堪える。

「ラアアァァァ」

逆にヒデエモンを殴り飛ばす。右足が機能を果たしていないヒデエモンはその場に倒れる。

「てやんでぃ!江戸っ子はヘコタレねえ」

立ち上がり、また隕鉄を殴る。殴られる、殴る、殴られる――

「倒れろォ!」

「そんなヘナチョコじゃあ、無駄だァ」

決着はつくのだろうか?漢(おとこ)の殴り合いに……

「焼き付けておくんでィィ、隕鉄よォ」


この痛みを、燃えたぎる血潮を、肉の感触を!!お前はこの世から消え、また天国へ行くんでぃ!!


「2度と俺っち達に面を見せるんじゃあねえッ」

ヒデエモンの一撃が隕鉄の顔面に決まり、そのまま空中に弧を描くように隕鉄が舞う。

「次に会うならば、お前が生まれ変わった時でィ」

隕鉄が光となって消え始める。腹にパックリと空いた傷の部分から消滅し、やがて全身が消えた。

「カーペンターズ……作るんでィ」




隕鉄が消えた後には、小さな墓標が立てられていた―― 

「どうした?タチバナ」

サトヨシを背負うバーレルが、立ち止まったタチバナを振り返る。

空全体に蜃気楼のように逆さまの街が映っている。

いや、今自分がいる場所こそが
空に映る大地における蜃気楼なのかもしれない…。

「もう、無駄に走るのはやめましょう」

どの道、世界は歪みすぎて、此処が何処であるかも判らないのだ。
移動する意味はない。

結論は、一刻も早く歪みの源泉(サトヨシ)を世界から取り除き、
歪まなくなった世界を再構築して正常に戻すことだ。


覚悟が……!?


そして、この非常時に暗躍する世界の癌。
自分たちに宛うように、蘇る死者たち。

「悪趣味の極みだ!出て来いレッド!!」

タチバナの呼び掛けに答えるように、目の前に姿を現すレッド。

「貴様にはお見通しだな、ムトウタチバナ!」

レッドの能力の効果範囲を考えれば、
いつかと同じように近くに潜んで、様子を見ていることは必然。

「容易ですよ、こんな悪趣味な趣向を思いつく下種を特定するのは」

陰陽師のくせにバンパイアとは節操のない、美意識を疑う。

「世界はもうアナタがいた頃とは事情が違う、
空気の読めない部外者はさっさと成仏してください」

「いいや、私はこう見えて事情通なのだ。
だからこそ、この以前より私に都合のよい世界を、
貴様を殺してその力で再構築する!」

W・W・Wか…。
レッドは蘇ると同時にコウのスタンドで情報を収集し、
B・D・Mの有用性を知り、
そしてそれを手に入れる為に必要な、兵隊を揃えられた。

そして、タチバナへの刺客。
杏子が、その手にナイフを携えて、レッドの横に立つ。

「タチバナさん…アタシ…アタシ…!?」

杏子がナイフをタチバナに向けて構える。

これまでの流れを見ればこうなることは予測できた。

「…杏子…解っている、全て、解っていますよ」

タチバナは杏子に微笑みかける。
そして、懐に招き入れるように両手を広げる。

「いやあああああああッ!?」

体は杏子の意思を裏切る。
足が地面を蹴り、ナイフをタチバナの胸に突き立てる!?

ナイフがタチバナの体に触れると同時に、
分解され空気中に溶けて消えた…。

杏子の体を左腕で抱きかかえるタチバナ。
両腕をガッチリと捕まれた杏子は身じろぎ一つできない。

「何の心配もいりません、私は強い」

杏子は自分の手でタチバナを傷つけなかったこと、
そしてその温もりに安堵した…。

「タチバナさん会いたかった…アタシ、もう一度、会いたかった」

「できなかった『別れのやり直し』をしましょう…」

目を閉じて、タチバナの胸に顔を埋める杏子。
涙があふれ出る。

二人はやり直しなんて出来ないことを、
二人の未来など無いことを理解していた。

「アナタは、出会ったときは
もう本当にどうしようもない娘で…」


ムトウさん…素敵な名前…。私、杏子っていいます!

もぉきめた。既成事実を作ってでもあなたを私のものにする!

そうですねぇ~お礼はデートでいいですよぉ~?


「タチバナさんだって、どうしようもない堅物だったじゃん…」


そうですか…目的の為ならば殺人も犯すと…
一番危険なタイプだ…そして、一番嫌いなタイプですよビッチ…!

落ち着きなさい、この騒がしい雌が!

いいですかビッチ、
私は今はそれどころでは無い、と言っているのですよ。


「アタシね…精一杯生きたよ…」


あの人の代わりにはなれないだろうけど、
見て見ぬフリはしないことに決めた。
あの人を見習って一分一秒をちゃんと生きる!
…努力はする……多分する。


「…ええ、及第点をあげましょう」


タチバナさんが完全に戻ったら、腕を組んでデートがしたい。
そしてクラスの皆に自慢するの!
どう、アタシの彼って超イケてるでしょ!
何だってできる完璧超人!スーパーマンなんだから!って。


「夢も、叶った…!」

タチバナが深く呼吸をする、
杏子の存在した証を自らに刻み付けるように、
情けない自分を鼓舞するように。

「杏子…決心が着きました。
私は、世界を救います。『アナタのいない』世界を」

杏子は「うん」と頷いた。

レッドを睨み付けるタチバナ。

「杏子では私を倒すには非力ですよ、
早々に回収して、自分の使えるストックを増やすのが得策です」

レッドは舌打ちし、杏子の魂を開放する。
杏子の体が空気中に溶けていく。

「そして世界が救われた時、それを成したのは私じゃない、
私を後押しした全て、そして…杏子、それはアナタが救った世界です」

全てが終わったら、アナタの夢見た絵を描こう。

最後に杏子は笑って見せる。

「繰り返すよ、アタシはタチバナさんが超!超!好きっ!」

「ええ、私はアナタを愛している」

杏子は「へへ」と笑い、手を振るとその存在を消した。


杏子がいるよ。

まだ未来はあるよ、幸せな将来を目指そう?

ね、想像してみて!


レッドと対峙するタチバナ。

「感謝しますよ下郎、お陰で私たちは救われました。
そして、やることが決まった以上、アナタの負けは確定です」

完全世界か…志の低い、下らない野望だ。
そんな美意識の腐れた野望は私が砕く。

「茶番だな、やはり貴様だけは私が直に手を下す必要がある」

今、三人の魂が開放された。
そして、最後には五つの力がレッドに終結する。

「見るがいいぃぃ!!新たなネオ・ユニバースの力をぉぉぉぉぉぉ!!」

・・・・・



「派手にッ!派手にィッ!

『 ど 派 手』に行くぜぇーッ ッ ! ! 」

ジョーイが、背ッ!
巻き起こり起こるは、『 黄 金 の 風 ッ ッ ! ! 』

『 ジ ャンケル ビィィィィィイイイイ イ イ イ イ イ ー  チ ッ ッ ! ! ! 』」




「やるからには全力だッ!

 光速を超えた 魂(ソウル)の鼓動(ビート)を受け取ってもら う ぞ ッ! ! 」

ジャンケルが速度ッ!
イカレるビッチよりも激しく、『 ザ シャイニング ワ ー ル ド ッ ッ ! ! 』
 
『 ジョォオオオ オ オ オ イ  ・ ジョバァァァアア ア ア ナ ァ ー ッ ッ ! ! 』




ジョーイッ!
黄金の風背に受けてッ

今ぞ突進ッ!進み行くは直進ッ!!

そしてその腕には、『 コークスクリュー・波紋疾走 ッ ッ ! ! 』



「何で、『 その名ァ 、知ってンだ・・・よぉおお お お ー! ! 」




 ギュルルルルルルルル ル ル ル  ル


  ド ド ワォオオオオオオオオ オ オ オ オ オ オ ! ! ! 





黄金の風!
ジョーイがその拳に『 波紋ッ!』

捻れんばかりの『 回転ッ!』

即ち『 歯車的 小宇宙ゥウ ウ ウ ウ ー ! ! 』







ジャンケルッ!

「 知るよりも、感じるが鼓動(ビート)!!

   黄金の風が、ミエナイチカラ! お前がジョバァーナである事、

     届いた、魂(ソウル)、オン ザ H I T ッ ッ ! ! ! 」



イカレんばかりに『光速(シャイン)ッ!』

光速それ即ち『 別世界(ワァールド)ッ!!』




 ー そして、生まれ出でる『 その世界は・・・ ッ ッ! ! 』





「 『 ザ ・ シ ャ イニ ン グ ・ ワァア ア ア ア ア ル ド ッ ッ ! ! 』 」

 



『 光速が鼓動(ビート)!!

  時 よ、 止 ま らんが程に 衝撃(ショォォォオ オ オ オ ク ッ ッ ! ! )』





  ドド ド ド ッ ッ ッ



    ギィィィイイ イ ヤ ァ アア ア ア~~~~~~~~~ンンンン!!!!






 ー 光の速さを超えたその時ッ!

 ー 時をも止める『 魂(ソウル)が、灼熱(ヒート!!)』





「止まっているぜ、『 ジ ョ ー イ ! ! 』

 悲しい程に、『 ジ ョ バ ァ ー ナ ! ! ! 』」





 ー 光速が拳(ナック!)

 ー ジョーイが頭(ヘッド)!

 ー 激烈(ハード)な衝突(クラッシュッッ!!)



 ー 『ジョ』ーイ・『ジョ』バァーナの奇妙な冒険、

 ー これにて、バイバイ『 最悪終結(バット な エェーンドッツ!!)』





ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 




 ジョーイは既に『 叫んでいた。』


 否ッ! 『 叫び続けていたッッ!!』



 何時だってその『 巻 き 起 こ る 風 は ッ ッ ! ! 』






ジャンケルッ!!
「拳(ナック)から衝撃(ショック!!)」

「ジョーイから風(ウインド)!!」


「止まっていても『 賛歌(ソォオオ オ オ ン グ ! ! ? )』 」






ジョーイッ!

「 『 俺達は 、

    ス タ ン ド (立ち上がる者)だァアアアア ア ア ア ア ! ! ! 』 」





 ー 風は、何時だって『 人 間 賛 歌 』を歌い挙げていた!

 ー 風音は、音色ッ! 吹き荒ぶは賛歌(メロディー)ッッ!!

 ー 時止まろうと風、今ぞ『 波 紋 と 神 砂 』!


 ー 激しいまでの賛歌(ソング)に触れた『 ジャンケルビッチ』は・・ッ!!





「 『 やっぱりお前ぇは『 最高(グレート)』だったぜ・・ッ! 』」



「 『  グッ バイ JOJOォオオオオオ オ オ オ オ オ オ ! ! ! ! 』 」


 


  バッ ッ ッ ッ



     ギョォオオオオオオ オ オ オ オ オ オ オ ン ン ! ! ! !





 か き 消 え た ッ ッ ! ! 









「 へ・・・。

  ジャンケル・・・。」


「『 ア バ ヨ。

   風が叫べって、ウルサイんでな・・・・ッ ッ ! ! 」




「そして、このスタンドは、レッド。
 確か、『 剛司』が言ってたヤツだぜ。」


 ー へ・・・ッ!

 ー 気に食わねぇー 真 似 しやがってッッ!!



「『 決着(ケリ)つけてやるぜ『 陰 陽 師 ッ ッ ! ! 』 」




そして、
ジョーイは歩み進んだ。 

「…………」
棒立ちのまま、足元に横たわる青年に凍りつくような冷たい視線をおくる、黒衣の男。

バーレル。

その手には、鈍い輝きを放つ一振りのナイフが握られている。
「……既に手遅れかもしれんが……俺は『依頼』は完遂しないと気が済まないんだ……悪く思うなよ。」

歪んだ世界は、悪戯に姿を変えていく。
先刻まで一緒だった筈のタチバナは、どうやら別の空間に移動してしまったらしい。

そして、現在はサトヨシと二人きり。
しかも、相手は意識が無い。

絶 好 の チ ャ ン ス

「意識の無い標的に手を下すのは、俺の主義に反するが……そうも言ってられん。せめて、二度と目覚めぬよう……一瞬で終わらせてやる!!」

一閃。

銀色の輝跡が、弧を描いた。





「ハイネちゃん」
耳鳴りの様に、声が響く。
身体が重い。全身に深く刻まれた傷が酷く痛む。

こと、戦闘に於ける柔軟性の高さでは、茜のほうがハイネよりも数段上だった。
それはタチバナとの訓練を積み、より高みへと成長した現在でも変わらないらしい。
「ゴメンね、ハイネちゃん……ボク、ホントはこんなことしたくないのに……」
止めどなく溢れる涙を流しながらも、茜は新たな攻撃を繰り出す態勢に入る。

(先刻は一瞬の事で、理解どころか反応すら出来なかったが……そういう仕組みか……)
ボロボロになりながらも、頭の冴えは変わらぬハイネ。
何も出来ぬまま、地に臥すことになった攻撃の『仕組み』を、しっかりとその瞳に捉えていた。

『金属片』。
すっかり空間が歪んで原型を留めてはいなかったが、恐らく現在居る場所は元々ゴミ処理場だったのだろう……そして、茜は周囲に舞っている『金属片』から『鋭利な刃物』を造り出した。

「ッ……、茜……」
振り絞るように、ハイネが茜の名を呼ぶ。
「私は……お前が『キライ』だった……」
口の端から血を垂らしつつも、悪態をつく。

「うん……知ってたよ。」
ゆっくりと、近づいてくる茜。

知っている。
昔からそうだった。
悪態は、好意の裏返し。

「知ってたよ……ハイネちゃん……!!」
流れ落ちる涙の粒が、ポタッ、と地面に零れる。
同時に、空気中に漂う金属片が、極小の刃物へと姿を変えた。
「ゴメンね……ゴメンね!!」
涙で顔をグシャグシャにした茜は、その意思とは裏腹に、無数の刃物をハイネに向けて放つ!!


ザクザクザクザクザクッ!!
満身創痍の身体に、深々と突き刺さる刃物達。

ブシュウゥゥゥゥゥッ!!
傷口から、鮮血が飛び散る。

「……そんな泣くな……お前、顔は悪くないんだから……台無しだぞ……?」
もはや、意識を失ってもおかしくない程に血を流しながらも、優しく微笑みかけるハイネ。
「お前の涙は……もうみたくない……だから、」
つぅっ……と、頬を伝う熱い滴。
「だから、もう一度眠りにつかせてあげるよ……茜ッ!!」
渾身の力を込めて『ソリッド・カラーズ』を発現。

「……!?」
驚きの表情を浮かべる茜。
その視線の先には、ソリッド・カラーズ。

「茜……これは私の純粋な想いが……お前への想いが産み出した『力』……。」
もはや立つ事もままならない筈の身体を、奮い立たせるように立ち上がらせ、ゆっくりと、だが確かな足取りで茜に向かっていく。
「汚れない、純粋な想いの色……ソリッド・カラーズ『ホワイト・ハート』。」

「ハイネちゃん……」
再び攻撃を繰り出さんとする茜の屍体。
ハイネは、それをしっかりと抱き締めた。

「……ずっと忘れない。だから……ゆっくり、休んでくれ。」
抱き締める腕にギュッ、と少し力を込める。

茜の鼓動を感じる。
茜の温もりを感じる。
茜の想いを感じる。

これでいい。
この感覚を、私は決して忘れない。
「……茜、『好き』だったよ。」
最後に、心からの言葉を込めて。

「ありがとう、ハイネちゃん……ボクも、好きだったよ……。」
微笑みを浮かべ、抱き締め返す茜。

瞳を閉じる。
それが合図になったかのように、ホワイト・ハートは茜を優しく包み込むように拡がって……

雪のように、降り注いだ。
降り注ぐホワイト・ハートに触れる度、茜の屍体が光の粒子となって消えていく。

苦痛は無い。
茜は、安らいだ表情を浮かべたまま、少しずつ、光に融けていった。
「ありがとう、ハイネちゃん……もう一度逢えて、嬉しかっ……た……よ……」

ホワイト・ハートの雪が止むと共に、茜は完全に消失した。

「R.I.P……おやすみ、茜……」
天を仰ぐ。
ドス黒く濁った雲の切れ目から、一筋の光が漏れている。

ハイネは、差し込んだ光の中に、天に昇っていく茜の姿を見た。

ヒラリ。

振り降ろさんとしたナイフに、黄金色の輝きが反射される。
「……………?」
いぶかしむバーレルの周囲には、いつの間にか無数の蝶の群れが。

「これは……揚蝶、生きていたか。てっきり、歪みに飲み込まれて消えたと思ってたぞ。」
蝶の群れに向かって声をかける。

「飲み込まれましたよ……でも、時間と空間の狭間を漂ってた静夜と『偶然』出会えて、なんとか戻ってこれた。」
ヒラヒラと舞う蝶が、まるで『十戒』の如くサァ……ッと割れる。

そして、現れる揚蝶 純。
「バーレルさん……悪いけど、サトヨシさんを殺させるわけにはいかない。彼は……この世界を『再構築』する為に必要なんだ。」

「どういう事だ?コイツが居れば、再び世界は歪んでいくのだろう?」
バーレルの問いに頷きつつも、否定する揚蝶。
「確かに。でも……俺達は『視て』きたんだ……この世界が向かう『可能性』を!!」
黄金の蝶が、揚蝶の掌に留まる。

「『可能性』……?」再度、頷く。
「そう、『可能性』……この世界が、『総てあるべき姿に戻る』という『可能性』を、俺と静夜は視てきました……何度も繰り返されてきた世界も、同時に。」
目を伏せ、視てきた凄惨な光景を振り払うように首を振る。

「その『可能性』ある世界を構築するために、サトヨシさんの力が必要なんだ……だから、あんたに殺させはしない!」
ジャリッ。
身構える揚蝶。

フッ、と嘲るように笑みを浮かべるバーレル。
「お前が?俺を止めるとでも?……死に急ぐなよ、小僧ッ!!」
瞬間、揚蝶に向かって拳を打ち放つブルズアイ!!

しかし、拳は虚空を切った。
驚愕の表情を浮かべるバーレル。

「無駄だよ。」
背後から突然聞こえてきた声。
バーレルは、瞬時にナイフを投擲しつつ振り向く。
「だから、無駄ですって……静夜の『スレイヤー:アグレッシヴ・パーフェクター』で、俺の身体能力のリミッターを『刈り取って』もらったからね。」
ナイフを右手の小指と薬指で挟んで受け止めていた揚蝶は、左手に留まる黄金蝶にキスをする。

「さぁ、出番だよ……バタフライ・キッス『パピヨン・ハート』……この世界の『可能性』を護る為に!!」
左手を高々と天に向けて突き出す。
同時に、黄金蝶を中心にバタフライ・キッスが一つのカタチをとる。

ヒトのカタチ。
バタフライ・キッスの真の姿。

「繰り返されてきた世界で、あんたも随分と歪んできたみたいだ……だから、その歪みは正さなければならないんだ。」
揚蝶の瞳には、確固たる信念の炎が燃えている。
それをみたバーレルは、満足そうに冷酷な笑みを浮かべて新たなナイフを取り出す。
「そうか……俺は歪んでるか。だが、俺の邪魔はさせん!貴様もこの手で葬ってやるッ!!」

そして、二人は激突する ― !!





(『アグレッシヴ・パーフェクター』の効果は五分……大丈夫だと良いんだけど……)
空間の狭間を漂いながら、神城 静夜は親友の事を心配していた。

(いや、余計な心配かな。……なんたって、今の揚蝶さんにはパピヨン・ハートが居るから)
進化した、揚蝶のスタンド。
その力は、計り知れない。
ただ一つ、解っているのは……『パピヨン・ハート』が、この世界のあらゆる『可能性』に干渉する事の出来る能力を持っていると言うことだ。

(世界を正常に戻す為には、レッドが用いた『五行』の力、タチバナさんの『再構築』する力、揚蝶さんの『可能性』を操作する力。そして……)

これまで視てきた繰り返しの世界の中、一つだけ、たった一つだけ、揺るぎ無いものがあった。
それを思い出す度、胸に熱い想いが込み上げる。
「先生……『佐藤先生』ッ!!」

ゆるぎないものひとつ ― それは、『愛』。

『愛』は、総てを変える究極の力。
皆の中に宿る、誰かを想う『愛』があれば、世界は変わる。

例え歪もうとも。

例え過ちを繰り返そうとも。

そこには、確かに『愛』があった。
そして、『愛』からは『希望』が生まれる!!


「お祖父ちゃんが言ってた……『この世界に完全なものはない』って。」
瞳を閉じて、静夜は祖父の教えを思い出していた。
祖父・朝陽もまた、繰り返されてきた世界で闘っていた。
『愛』の為。
愛する者達の住まう、この世界を護る為。

しかし、世界は歪み続けた。
「それを止めるのが、僕達の……遺された者達の、使命だ。」

静夜は、揚蝶と共に世界の様々な可能性を視た。
その中にあった、一つの『可能性』。
皆が互いを支え、愛を育む世界を造り上げる『未来』。

『希望ある未来』。

『黄金に輝く未来』。


空間を漂う静夜は、徐にスタンドを出した。
「『デザイア』。」
一閃。
空間を斬り割き、皆の元へ向かう。

「不完全でもいい……光輝く希望に溢れる、『黄金の未来』を掴む為に!!」 

切り裂かれた空間。
姿を現す、神城 静夜。

「…何だ?

私とタチバナの邪魔をするな…
完全世界を成し遂げる前に、私は敵をとらねばならない。
絶対にして崇高なる私自身を、
こんな男に殺されたという事実の敵をッ!!」

高速で飛び掛るネオ・ユニバースを、
スレイヤーの柄が受け止める。

「タチバナさん…僕の事は佐藤先生から聞いていますよね?
神城 静夜です。

細かい事を説明している時間は無い。
この道を通って、行って下さい。
サトヨシさんの、所へ…」

『佐藤先生』。
それが誰かは解らなかったが、
確かに神城という名前を聞いた事はある。
そして、何故か…信頼できると、タチバナは悟った。
無言で静夜を見る。

「貴方にしかできない。
世界の可能性…
世界を救う可能性が、この道の先にッ!」

タチバナは、レッドと静夜を、見比べる。

「タチバナさんッ!貴方は知っている筈だ!
この男程度が、世界の危機とは成り得ないとッ!!」

静夜の言葉に、レッドの動きが止まる。

「…貴様今何と言った?
この私を…?

貴様、この私を、『この男程度』と言ったのかァーッ!!」

激昂するレッド。
タチバナは頷かず、何も言わず、
静夜が切り出した『空間の道』を、歩み始める。

「待てッ タチバナァッ!」

レッドの呼びかけに答えず、タチバナは姿を消した。

「あとは貴方だレッド。
僕のスレイヤーで、貴方の『五行』を狩る」

「…貴様等…

私を何だと思っている?

私の式神の元にしかならんカスどもがァーッ!!」

ネオ・ユニバースが、再び、動く!

身体機能のリミッターを「刈る」…。
それによって、揚蝶は超人的な能力を得た。

超人的な…

「素人だな、戦いの」

バーレルはプロだ。
スーツタイプのスタンドとも、何度も闘ってきた。
1対多の戦いも、幾度と無く切り抜けた。

動体視力がどれだけあろうとも、
パワーとスピードがどれだけ増そうとも、
揚蝶には経験が無い。
生身の戦いの経験も、
スタンドを操り闘う経験、それすらも。

「く…っ、なんて、人だ…ッ!」

能力の全てが上回っている事を、揚蝶は実感している。
だが、バーレルは、スタンドと本体の連携を得意とする。
本体のフェイントに惑わされ、ブルズアイの蹴りを受ける。
スタンドに気を取られ、危うく目をナイフに貫かれそうになる。

「お前じゃ俺は満足できない…
足りないんだよ、旨味がな」

歪まされた憎しみ。
歪んだ自分への怒り。
失った悲しみ。

全てを込めて、バーレルはサトヨシを見ている。
揚蝶は、眼中にない。

「でも、俺だって…俺だって!

スタンド使いなんだ!!」

超人の拳が、ブルズアイを捉えた。
間髪入れず、バタフライキッスによって、
バーレルのスタンドは地に抑え付けられる。

「…ハッ!!」

「ガキが…だから旨味が無いと言う」

己のスタンドすら囮として、サトヨシへと向かうバーレル。

「死ね……、そうだ、お前が!
お前が死ねェェェッ!!」

振り下ろされる、ナイフ。

「いけない、バーレルさんっ!」


ドグシャァァァッ!!


「やれやれ…ギリギリまでゆっくり休みたかったんだけど、なあ」

BUMP OF CHICKEN。
その拳が、バーレルの体を、貫いていた。





ドグシャァァァッ!!

吹き飛ばされる、ネオ・ユニバース。
虹色を残し、引き戻される拳。

「コイツを消せ、レッド。
人は、お前の式神なんかじゃあない」

完全世界という可能性に、気付かなかった筈の男。

「…誰かと思えば…久しいな。
何度繰り返しても世界を救えぬ、
雑魚の英雄……

クツケイッ!」

可能性を与えられた男は、静夜と並び、立つ。

絶望を飽食した男。
希望と接触した少年。
共に世界を救う為、並び立つ。

「貧弱だなクツケイ…
最強のスタンドを持つ私。
全てを刈り取る神城。

貴様のスタンドは何だっけ?
引っ込んでいろ、クツケイ。
塗り絵なら愛しのシルビアと一緒に、
家で楽しんでいるのが貴様に似合いだぞッ!」

クツケイは、ただ静かに繰り返す。

「コイツを消すんだ。
人は、死んでからも人。
レッド、お前の式神なんかじゃあないぜ…」




完全とは、即ち可能性の無い事。
繰り返しとは、可能性を迎えない事。

明日を持つ為の可能性が、
二つの世界に、立ち向かう。

 

最終回へ!   外伝『世界』

最終更新:2008年02月01日 23:06