「どうだろう?ソマ。
君が望むのならば……いや、本当は僕はそうしたいんだ」
僕は思い切って、ソマに聞いてみた。
タチバナ…の体…も、横で聞いてくれている。
僕が間違っているのなら、きっとタチバナが
止めてくれるだろう。
でも、ソマは笑って首を振った。
「貴方はもう私にくれたでしょう。
かけがえのない、『光』を…」
-外伝『遠い日の幻想』-
僕は時々、夢を見る。
始まりはいつも、悲しい夢だ。
「だから私は……世界をジャックするッ!
この世界の、全ての『光』を奪うためにッ!」
叫んでいるのは、ソマだ。
「美しくない……事を……」
「黙れッ!!」
倒れたタチバナを、ソマが踏み付ける。
ソマの手には杖はなく、
ソマの傍らにマニエルはいない。
だって、ソマにはそんなもの、必要がないから。
「ぐんま…けん……」
「無駄だ。君がいくら『天才』であろうと……
視覚を完全に乱されては、私だけを狙うことは不可能だ。
私のすぐ近くには、大事な友達がいるんだぞ?土星……」
「……っっ」
サターン・バーレーが動きを止める。
「何をためらう……土星ッ!
私ごときの犠牲で世界が救われる……
それが私の『天命』ならばッ!
喜んでそれを受け入れようッ!」
「ふむ……タチバナくんはそう言っているが……
どうする?土星……決めるのは、君だ……」
「土星ッ!」
「でき……ません……」
浮かんでいた球体が、消滅した。
「土星ッ!!」
土星は、涙を流しながら、首を振る。
「そうだ、それでいい……
私は何も、君達を殺すわけじゃあない……
ただちょっと、私と同じ『光のない世界』に招待するだけさ。
今までどおり、仲良く生きていけば良いだろう?」
言いながら、ソマはもう一度タチバナを強く、踏みつけた。
嫌な音がして、タチバナが一度痙攣する。
「さあ……どうします?サトヨシ……」
ソマは、僕に顔を向ける。
閉じられた瞳が、冷徹に僕を射抜く。
「さっき自分で言っていたよね。
世界から光を奪えば……君は死んでしまうんだろう?」
「そうです」
あっさりと、ソマはうなずいた。
「だが、それが何だと言うのか……
私のこの絶望を世界に等しく振舞えるのであればッ!
死などッ! 私は後悔などしないッ!!」
「じゃあ……君を、後悔させてみよう、ソマ」
僕は、スタンドを発現させる。
僕のスタンド。
この世界で最強の力を持った、僕のスタンド。
この世界を壊す力を持った、僕のスタンド。
BUMP OF CHICKEN…。
「後悔はしないと言ったッ!」
「いいや、君は後悔する。
きっと、涙を流して、謝罪するさ……」
使おう。
この悲しい想いを救えるのであれば。
きっと、こういう時のために、僕の能力はあるのだから。
「BUMP OF CHICKEN……その曲げる力で、
私と戦うのですか?
お友達を犠牲にして私を倒し、世界を救いますか?」
「いいや。僕は戦わない…
僕は誰も犠牲になんか、させやしない。
ソマ。君に『見せよう』。
僕のBUMP OF CHICKENの、本当の力を……」
ソマの過去を捻じ曲げる事まではできない。
時の改ざんは、この世界を大きく歪めてしまうから。
だから、僕は今、ほんの少しだけ事実を曲げる。
ソマの眼が見えないなんて……
嘘だ。
「……終わったよ、ソマ。
気分は、どうだい?」
「何をバカな事をッ!
何も変わりはしないッ!
そして私に敵対するという貴方の行動は……
このタチバナの命を持ってッ」
「違うよ、ソマ。
ナイト・ビジョンの視界じゃない。
君の目を、開くんだ」
「……………ッッッ!!!!」
「サトヨシ……
また きみの こころが」
「いいんだよ、土星。
僕は、何とかしてみせる」
そう。
何もできない事はないんだ、この能力があれば。
全ての人を幸せにできるだろう。
ゆがめてしまった自分を、また曲げなおして、
真っ直ぐにだってきっとできる。
僕は信じている。
この能力が、世界のために存在するという事を。
終わりはいつも、幸せな夢だ。
僕は達成感に包まれて……
そして眼が覚めて、罪悪感に包まれる。
ソマ。
僕の新しい友人。
僕の能力は、ソマに光を与える事ができる。
知り合った直後から、それに僕は気づいていた。
でも、僕はそれをしなかった。
僕がまた曲がり、歪んでしまうのが、怖いから。
でも、どうしようもなくなって……
だから聞いたんだ。
「ソマ。
僕のBUMP OF CHICKENの能力ならば、
君に光を与える事ができる」