-外伝-
「ハァッ!ハァッ!」
シルビアはひた走る。「構築者」の「ピース」を持って。
(『頭部』は『サトヨシ』に渡すはずだった…渡せって…あの人が…あの人って?…わからないけど…もうコレをサトヨシには渡せない…あのヒトの『本性』が露わになったから・・・)
シルビアは目的をなくしてしまい迷っている…
それは想像を絶する不安と恐怖。
(先生…シバミ…)
いつ『構築者』を狙うものが現れるのかわからない。
スタンドを失ったシルビアにはそれが何より恐ろしい。
「もしもし、お嬢さん。そんなに急いでどちらへ?」
シルビアはビクっとして振り返る。
そこには男。
「私の名前は『クツケイ』という」
シルビアは恐怖で胸が張り裂けそうになっていた。
「あなた…『頭部』を狙っているのッ!?」
シルビアはクツケイを蔑視する。
「キミは『シルビア』…ッ!?この世界では『まだ生きている』のか・・・?」
クツケイは意外そうにシルビアを見る。
シルビアは冷静さを失っている。腰が抜け、這うようにクツケイから逃れようとする。
「ひッ…ィィ…来な…いで…」
クツケイはハッとして目に宿していた殺気を消した。
シルビアはそれに気づくと少し落ち着いたようだ。
抜けた腰を地につけたまま手に持ったケースをギュッと握り問う。
「あなたの目的は?」
クツケイはシルビアの眼をしっかりと見据えて言う。
「『イレギュラー』の芽を探していたが…ここで『イレギュラーの大輪の華』を見つけたようだ。まさか…『前の世界』で死んだ君が生きているッ!そしてこの世界で私と君が初対面した日が『今日』ッ!間違いない…。サトヨシはこの世界において『 未 だ 万 能 で は な い 』ッ!」
シルビアはそれで悟る。
―この人は『サトヨシ』の敵である―
「だからといって、敵の敵が私の味方とは限らないわ。」
シルビアはクツケイの話を遮るように言う。
「そうだな…なら、何を持って『信用』とすればいい?」
クツケイはスタンドを発現させる。
髪はツンっと逆立ち、瞳は熱いモノが込み上げるように。
シルビアは腰をついたまま後ずさりする。
「何を持って『信用』とするのか?」
クツケイはシルビアにすり寄る。
「それ…は・・・っ!?」
クツケイはシルビアに口づけた。
シルビアは驚くがクツケイの唇越しに伝わる温かさ、そして伝わる愛情に自分の中にも何故だか安らぎが湧くのを感じ、目を閉じた。
しばらく時がとまったように唇を重ねる二人。
そして時が動き出す。唇を話、自分の気持ちが理解できずあたふたしているシルビアにクツケイは感情を込めていう。
「会いたかった…。シルビア…。前の世界で君が死んだときから…君の事を忘れるなんて…私にはできなかったんだ…ッ!」
シルビアはきょとん、とクツケイをみる。
クツケイはハッとしてスタンドをさげ、顔をうつむかせた。
「す・・・済まない。私は・・・」
クツケイが言葉を言い切る前にシルビアはクツケイを抱きしめた。
「わからないけど、こうしたらいいと思う。」
クツケイは涙を流した。
「ありがとう…」
二人は『構築者』のピースの元へと足を進めた。