「…ほんと、ガラじゃないよね」
手にした一枚の紙片。
奇しくも、彼女が例えた橙色の紙片。
奇しくも、彼女が例えた、漆黒の筆跡で。
【外伝/Letters:2 from far away】
死んだ人間は何も語らない。
語ったとしても、生きている私達には届かない。聞こえない。
でも、この一瞬だけ、私は信じたい。
死んだ人間は語る。
その言葉も、思いも。
届く。聞こえる。
『―ガラじゃないよな(笑)』
そんな声が。
所々塗りつぶしてある文面。
端々から感じる、思いも。
戻らない彼が語る言葉や思いだと。
「マスター、ありがとう」
マスターは何も言わない。
何も言わずに、二杯の酒を出す。
「…飲みたかったな、アンタと」
かなわぬ願い。
『本当に、俺は■■■お前■が、好きでした』
『全部終わったら、――』
「…ズルいなぁ、もう」
低い天井を見上げる。
「私だって」
ほてった頬を、熱い液体が濡らす。
アナタに引っ張りあげられてからの日々。
もう戻らない、愛しき温もり。
もう二度と会えない、愛しい―
「――バカ」
女を泣かせるなんて、最低だ。
―それでも
「――泣くなよ、台無しだぜ?」
そんな声が聞こえた気がして。
「…ばか、泣いてないよ」
感じる温もり。
どん底から引っ張りあげてくれた、その掌の、胸の温かさ。
「―ごめん、もう少し、待っててね」
今度は、ちゃんとアンタの口から聞きたいから。
ちゃんと、私の口から言いたいから。
また会える、その日まで。
―私の愛する人に。
―この思いが、届きますように。