-外伝『職人魂』-
彼の家は古くからの大工職についており、
共に働く人たちはみな昔気質の良い職人ばかりだった。
物心ついた頃から、
材木を削る鉋の音、
ノミ・釘を打つトンカチ、
輝く鋸の刃、
それらを聞いて、見て育った。
彼は
頭で理解っていなくとも、本能的に理解っていた。
『これが自分のやるべき事だと。』
やがて月日は経ち、
彼はどんどんと逞しく成長した。
祖父・父、そしてまわりの職人たちより『大工のイロハ』を叩きこまれ、母より『製図や設計』を学んだ。
彼が一人前となった頃
人としても、家族としても、そして職人としても最も尊敬する
彼の祖父が亡くなった。
別れ際、彼に最後の言葉を託して。
「いいか、ヒデエモン。
よぉ…く、聞く…んだ。本物の、職…人ッてェのはな、
家だろうが、なんだろうが…よ、
つくる前にもうできてん…だ。
心ン中に『ソイツ』がよぉ、
いいか。
で…『ソイツ』に自分の魂全力…で吹き込んで…やるンだ…
オメーもよぉ…儂の孫なら…
いや、漢、なら……
ドン と 生き様 みせて みやがれッッ てんだい ッッ」
必死で頷き、涙は我慢した。
「職人に…湿っぽい涙は粋じゃねェぜ、てやんでいッ!」
そう言って彼は
家を飛び出した。
祖父の言葉にこたえるために、
本当の職人になるために、
何より、
幼き頃より温めていた『夢』のために。
「俺ぁ誰にも負けねえ家つくってやるッッ!雨にも風にも、嵐や地震にだって負けねえ世界一の家をッ!」
それから旅を続けて数年後、彼は一つの街に腰を降ろした。
街にも慣れ、
仕事もなんとか落ち着ついていった。
そして……
「ん?なんでぃこりゃ……
『石の破片』みたいだな?
まァいぃや、
なんか良い事かもなッ!貰っとくとするぜィッ!」
その時
彼はまだ知らなかった、
ここから
彼の『本当の物語』が始まる事を……。