-外伝-
「たッだいま~」
おう、お帰りィ!威勢のいい声が聞こえてくる。
親父だ。
俺は親父が結構苦手、いや嫌いとかそういうわけじゃない。
あー…、なんというか思春期真っ盛りというべきなのか。
自分で言ってもなんともしまりがつかないが、まぁそんな感じだ。
なんだよ、今日はまた遅かったな。
「いや、別に普段より早いぐらいだろ?」
時計を見ると7時を少し回ったぐらいだ。
ちゃ~んとデュカちゃんを家に送ってきたんだろうなァ?
「…ど~でもい~だろ、んなことは」
ど~でもよくねえッての!あの子がいなきゃうちの家系は途絶えるんだからな。
それにパティシエールになりたいだなんて、なぁ…。
「なんで俺がんな未来の事まで考えなきゃいけねえんだよ!」
うちの親父は菓子職人、っーか今風にいわなくてもパティシエだ。
結構な腕らしく、朝から客が何人かいるしケーキが残ることはあまりない。
デュカはそんな親父のケーキが…まぁ、すきなんだろうよ。
あー…、変なこと思い出しちまった。
なんだよ、変な顔しやがって。
「いや、別になんでもねーよ」
親父も変な顔でこちらをみていたが、顔は血筋だ。
居間を通り過ぎ自分の部屋に上がる。
おっと、母さんに手をあわせるのを忘れるところだった。
急いで居間に下りたら親父はもういなかった。
手をあわせていたら
『シン!あんた顔は悪くないんだから、もっとお洒落な格好しなさい!』
『シン!あんたまた、そんなもんかってきてェ!』
『シン!…ってデュカちゃんいらっしゃい。今日は何買うの?
………えぇえぇぇぇぇえ!?シンと付き合うことにした!?』
母さんのことを思い出していた。
…親父のケーキ好きだったなぁ、母さんも。
明日はあいつの誕生日だし、俺もケーキ作ってみるかなぁ。
台所(つっても家のじゃない、店側の)にいくと親父がなにやら考え事をしていた。
「親父何してんだ?」
あー…、新作をつくってんだが…お前こそなにしてんだ。
手を洗ったか!靴は変えたか!髪は束ねてるな!
「んなことわかってるよ」
適当に材料を探す、チョコレートはあった。
「なぁ、親父」
ん?
「チョコケーキの作り方教えてくれ」
さて、それから地獄が始まった。
軽く1時間、長い話を聞き。
(お菓子作りに必要なのは心だ!とかそういう奴)
チョコとバターの溶かし方が違うと2度もやり直しをし、分量がさらに違うと言われ。
まぁ、オーブンにいれるまでに至ったわけだが。
出来上がったものはチョコケーキじゃなく、ブラウニーケーキだったという落ちだった。
「親父ィィィィィ!!!どういうことだ!!」
っていうかまぁ、親父にいわれるまでブラウニーケーキだとは気づかなかったわけだが。
持ち運びやすい奴を教えてやったんだよ、どうせ明日デュカちゃんと食うんだろ。
あんまり危険なことはすんじゃねーぞ、それから子供もまだ作るんじゃねぇ。
「ッ!ば、ばっか!!プラトニックなんだよ!!」
何を言ってんだあの親父は。
すさまじく恥ずかしくなり俺は部屋へと走った。
部屋に戻りブラウニーを少しだけ味見した。
初めてにしてはうまくできたと思う。
親父の奴に言わせたら心をこめた結果なのだろうか。
(いや、そりゃ親父が指導したからってのは俺もわかってるけどな)