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-外伝-


「ねえ、タチバナ。君ってどこの中学だった?」
「○○中でしたけど……なぜです? サトヨシ」
 放課後の美術準備室。美術室は美術部が使っているが、こちらはムトウタチバナとサトヨシの二人だけだった。
「やっぱりそうなんだ。いや、僕の父さんが……中学の教師をやっていてね」
 意外そうな表情のタチバナ。いくつか浮かんだ疑問のうち、当たり障りの無い物から口にする。
「でも君は一人暮らしでしたよね?」
「うん。実家で思い切り絵を描こうと思って、イーゼルやボードを置いたらいっぱいになってしまってね。迷惑がかかるから一人暮らしをさせてもらってるんだ。ところで」
「なんです?」
「タチバナ。ついこの前まで、僕の名前も知らない、と。そう言っていたよね?」
「ええ、あの時は失礼をしたと思っていますよ。サトヨシ」
 タチバナが、今ではちゃんと特別な存在としてその名を口にした。
「でも、それもあだ名なんだよね。うちのクラスってもう一人佐藤がいるからさ。佐藤裕(さとうひろ)。だから、向こうがサトヒロで、僕がサトヨシ。本当は佐藤ヨシヒサって言うんだけど。はは、まるで童謡みたいだね。「さっちゃんはね」って」
 驚くタチバナ。先ほど浮かんでいた疑問がさらに狭まる。
 佐藤。中学。教師。まさか。
「サトヨシ、ひょっとして……あなたのお父さんは国語の教師でしたか?」
「あ、思い出した? そうだよ。曲がった事が嫌いでね。少しの言葉遣いとかでもすぐ指摘したがるんだ」
 繋がった。まさか。あの佐藤先生とサトヨシが……!
 この美しさは血筋だったのですね……。
 これはもう親子ど……、読者の方々、失礼。

 

第9話「絶望に挿した光」

最終更新:2008年01月31日 14:01