ムトウタチバナが死んだ
この衝撃の事実は驚くべき早さで、その日のうちに生き残った土星と杏子からサトヨシ達へと伝えられた。
土星、、彼はサトヨシの古くからの友人であり、またよき相談相手でもあった。
一連のスタンド能力者異常大量発生にともない、サトヨシはドルチと共にスタンド使いの能力を消し去ってくれないかと、ムトウに話を持ち掛けた。
サトヨシには、自らが動けない理由があったのだ。
前々からサトヨシに好意を抱いていたムトウには、断る理由などなかった。
だが、ムトウの自分に対する純粋なその愛が、サトヨシは心配だった。
愛する者の為なら、愛おしい者の為になら、ムトウは自らの命を盾にしてでもその者を守るだろう。
それがわかっているだけに、サトヨシはムトウを一人いかせるの心配だった。だがムトウはそういった心遣いを良しとはしない。
だから、サトヨシは土星にムトウの事を相談した。
そして、ムトウがピンチになった時、助けてやってくれ、と頼んでいたのだ。
「サトヨシ…」
「いや、いいんだ土星。 …ありがとう。」
「……ぽえーん。」
サトヨシのアトリエ、隣の部屋では杏子が泣きじゃくっている。
側には佐藤がいて、彼女を慰めているが、彼もまた愛する生徒、、いや、それ以上に信頼できる友人だった彼の死を信じられずにいた。
静かだ…
こんな時、どうしようもできない自分の無力さが嫌になる。
いつだったか、、前にも、こんな事があったような…
佐藤は目の前にいる杏子を見ているうちに、奇妙な感覚を覚えた。
デ ジャブ
そうだ、、、確か、あれは俺が学校に赴任したての頃だった…。
あの時も、俺は泣いているあいつに何もしてやれなかった。
あいつは、立ち直れただろうか。
それとも、今も俺を憎んでいるのか。
『隕鉄…』
___________________
その頃、とある病室では…まだ、ムトウの死を知らないシバミが、ザキを見舞いに来ていた
「、、、どういう事っスか?」
「ここ数日、誰かがこの町でスタンド使いを増やしてるって言ってたでしょ?ザキの友達もその頃に姿が見えなくなった。だから、この事件の犯人を追えば、自然にザキの友達の情報も入ってくる。そう思うのよ。」
「確かに、、。で、何か有力な情報は?」
「うーん、それが、まだ今のところは…。今わかっているのは『スタンド使いを増やしている何者か』の存在と『スタンド能力を消し回っているホモ達』と、、」
(ホモ達、、?)
「あと、、『スタンド使いをターゲットにして殺し回ってる奴ら』の存在。」
「、、、。」
ザキは自分達を襲ったスタンド使いを思い出していた。
彼は仲間の復讐をする為に戦っていたのだと、後で知った。一連の事件の犯人。そいつにたどりつく為にスタンド使いをターゲットに殺し回っていたのだと。
「復讐…か。」
ザキの脳裏によぎったのは、この町に異変が起きてから、自分の前から突然姿を消した、友人の顔
「とりあえず、私はコウ達ともう少し調べてみるわ。」
「ええ。俺も最近はリハビリもかねて少し町を散歩してるから(無許可で)退院するまで俺も別口で探してみますよ。」
「だね。じゃ、ザキ、また来るね! あ!そうそう!!そこの水筒の水、ブランデーに変えといたから♪」
「ッッッ!!!!!!」
驚いて文句を言う前にシバミは出て行ってしまった。
(はぁ、これで見つかったら俺が院長に怒られるよ、、)
「シバミさん、ありがとう。
俺も…とりあえず行動するか。」
そういうとザキは病室の窓からN・Aを使って病院の中庭にゴム弾を撃ち込んだ。
ポーーン
地面にあたりゴム弾は大きく跳ね返り、そして、、、
キャッチッッ!!
跳ねたゴム弾はもう一度地面にふれる事なく、側の芝生からとびだしてきた犬の口にくわえられた。
「よう、アン!元気か? 今日はちょっと隣町まで散歩といこうぜ。」
アンと呼ばれたその黒い犬はザキが降りてくるのをしっぽを振って庭で待っている。
ザキが入院中にちょくちょく抜け出しているうちに知り合った、野良とは思えない美しいまでに漆黒で艶やかな毛並みの犬。
本体名:アン(闇 全身真っ黒な犬
スタンド名:フル・フラット(完全なる平面 )
「今日はまだ時間があるし、少しばかり遠出だ。お前に手伝ってもらう為に、何かあいつの品を探さなきゃな。
あいつ、、『 隕 鉄 』の、、。」
地に伏した少年の体。
この世界から、また一人、スタンド使いが居なくなった。
少年を始末した男は、煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を吸う。
舞い上る煙が… ゆるやかに「捩れる」。
この能力は…自分の「心」そのものだ。
男は自嘲する。
捩れているのは自分の方…。
なのに、それを周囲に押し付ける。
結果、相手を傷付けて… 全てをダメにしてしまう。
今までずっとそうやって生きてきた。
だから…この力を手にしてしまうという形で、ツケが来たのだろう。
この呪われた能力。
人を不幸にする力。
『スタンド能力』。
「…殺ったのか…」
不意にかけられた声。
「…煙草を吸ってる時は、俺に声を掛けるなと、
何時も言っている筈だよな…?
え…? 『ウェイ』…」
【本体名:ウェイ
スタンド名:スイートリベンジ
能力:人形遣いのスタンドが本体を操り超人的能力で戦う】
「あー、いやいやスマン。
忘れちゃってたってわけじゃあねーのよ。
たださあ…」
軽い口調、明るい声。
だが、捻じれた死体を眺める表情は、重い。
「たださあ…」
「これも何時も言っている。
嫌になったのなら、何時でも抜けて構わない、とな」
吸い切った煙草を、放り投げる。
空中で煙草が、ズタズタに捻じ切れた。
「いやいやいや、いやいや何言っちゃってんだよお前。
俺がそんなハンパな信念で動いちゃってるように見えるワケ?
俺がおめーと一緒に動いてんのはさー、
そりゃ確かに俺の目的っちゅーのと被るってのもあるよ?
たださあ…
俺もお前の考えには、やっぱ賛成なんだよ」
スタンド使いは死ぬべきだ。
それが、「彼ら」の共通認識。
望まぬ能力を与えられた者達。
異能が引き起こす惨劇をイヤと言うほど味わってきた。
常人が持たない能力を振りかざし、
他人を不幸にする人間を、何度も見て来た。
スタンド使いによって、自分の命が危険に晒された者も居る。
友を、恋人を、失わされた者も居る。
「やっぱさ、要らないじゃんこんなの。
いずれゼッテー不幸になるっちゅーの?
あるいは誰かを不幸にしちゃったりするっちゅーの?
道具が悪いんじゃない、道具を悪く使う人が悪い、とか、
『キレイゴト』いうヤツ多いけどさあ…
結局、なっちゃうものはなっちゃうんだよね…
どうあがいてもさあ…」
軽い口調。
硬く握り締められた、拳。
「フン…どうだかな。お前の内心は解らねえ…」
「あー、ひっでえの。俺様信用ないなー。
やっぱこの素晴らしく良すぎるノリがダメ子ちゃんなのかなあ…
そういや『アイツ』から聞いた隕鉄?
なんでもさ、スタンド『無くせる』ヤツが居るらしーのよ。
でもさ、結局それって『選民思考』?
僕は使えるからいいけど、アンタ未熟だからダメね、みたいな…
っておい、どこ行っちゃってんだよ人の話の途中でさあ」
「もう仕事は終わった」
背を向け、その場を離れる隕鉄。
『スタンド』を無くす『スタンド』?
隕鉄には、いや、彼らには、笑いの対象でしかない。
しょせんスタンドとは人の心が生み出すもの…。
不安定なのだ。常に。
封印したからといって、それが完璧なのか?
そしてもう一つひっかかる。
ウェイが言った通り…。
『本当にそれが、自分の為でない行動なのか』?
「ま。どちらにしても…殺すがな」
去り際に、己が殺した少年の死体を一瞥する隕鉄。
今まで彼が殺してきた者に、共通する外傷…『捻じられ』た死体。
やがて連続殺人事件として、この事実は報道されるだろう。
そうすれば…あいつらは俺だと、解るに違いない。
自分の心の中に、まだ『甘さ』があるのを隕鉄は感じていた。
銀紙を噛んだように、不快であり、尾を長く引く『甘さ』…。
自分の能力が『不完全』なのが、それがある証拠だ。
これからもスタンド使いを殺し続けるのであれば、
その『甘さ』は命取りになる。
「『あのふたり』を殺せば…
俺の『甘さ』は無くなるのか…?」
「え~?何か言った?」
「…いや。なんでもない」
唯一打ち解けられた、親友と呼んだ男。
そして、我が人生の、恩師。
隕鉄は、その二人を殺さねばならない。
(そう言えば…)
隕鉄は携帯電話を取り出す。
相手に繋がり次第、挨拶も抜きで質問した。
「ナガセを殺した奴の正体は、掴めたのか?」
ざっきとアンが病院を抜け出す少し前…
天気の良い、昼下がりの病院の屋上。
「キャァッ!先生何するんですかぁ!?」
若いナースのお尻をサラリ撫でまわす、やさおとこ風の医者。
『まぁまぁ、減るもんじゃな……』
バアシィィィン!!
そう言いかけた瞬間、男に強烈なビンタが炸裂する。
『ッ痛ィィ!! 』
スナップの利いたそのビンタは男の頬に真っ赤なもみじをつくった。
「今度やったら訴えますよッ!」
『はぁ~い、それより今晩一緒に食事でもど…』
言い切る前にそそくさとナースは仕事場に戻った。
『なんだァ、連れないなぁ…』
反省の色を全く感じさせない。
この男の名は「Dr.ER」。
普段はヘラヘラしているが、腕のたつ救命救急医だ。
『最近、妙な患者が多いな…、先日運ばれたきた彼といい、やはりこの街で何かあるな。
俺のこの能力と関係あるのかもしれない。
少し、探りをいれて見るか…』
そう言うと彼は右手をグッと深くおさえ、
その場を後にした。
「でね…やっぱり最近のシバミさんは犯人探しも就職活動をしないことを自分に納得させる為の口実にしているとしか思えないんだ」
アンは「同感だ」とでも言いたげにワン!相槌を打った、嗅覚が優れるアンに、あの強烈なアルコール臭は耐え難いものがある。
「あの人は社会人としても主婦としても完全に欠落してるからなぁ…結婚する人は大変だよ。病院で酔っ払ってるってどいうモラルな訳?」
ザキは左右の重量が極端に違う為、フラフラと蛇行しながら歩いてしまう。
骨折だって完治するのに一月を要するのに、肩口から切断された傷口や神経が一週間やそこらで馴染むハズもなく、神経が圧迫されるような、骨が擦れるような痛みの波に、歩けばすぐに滝のように汗が流れ、息が上がってしまう。
「ゴメン、眩暈が…ちょっと休憩」ザキは酸欠に頭を抱えて座り込んで呼吸を整えようとし、アンは心配そうに傍らに寄り添う。
射撃の名手と猟犬、二人は強い信頼関係にある。
いや、冷静で賢いアンは信頼の重要性を理解し、知性でそれをコントロールしているのだ。
「こんな大怪我してる人間が外出するのに、だねっとか簡単に言ってくれてさ…止めてくれてもいいじゃんよ…」
ザキは人前で明るく気さくに振舞っているが、歩く振動すら耐えがたいほどの怪我に少々ナーバスになっている。
しかしそんな傷を抱えてまでも親友の身が案じられて仕方がない、人任せではいられないのだ。
そんな優しいザキが唯一自分にはグチをこぼして弱みを見せてくれるのだ、アンの使命感は強固なものになった。
「え~っ、これマジっすか?せっかく見つけたのにアイツ電話出ないじゃん?また煙草か?頼むよぉ~隕鉄さんよぉ」
声の方を振り返ると、ザキを横目で見ながら携帯を操作する男がいた、ウェイだ。
ザキはウェイに隕鉄のことを尋ねようとするが、「あの人ってほら、スタンド能力は恐ろしいけど思考回路が直線じゃない?純粋一直線?で最近連敗しちゃってっからさ」と話に割って入られてしまう。
「でね、それ以来キレにキレまくってんのよ。野生の本能に目覚めたって言うか?マジキレてんだわ」
何だかわからないが「強い力を持つスタンド使いの隕鉄」ザキの親友に違いなかった。無事で良かった、ザキは安堵する。
ウェイは目の前のザキに構わず、別の対象に電話をする。
「調子どお?……いやさ、隕鉄の友達見つけたんだけど、繋がんねぇからさぁ…マジで?そっちも今ロックオンしちゃった?大漁じゃん!マジキレてんね!…うん、コイツ殺っちゃっていいかな?…あーそれはそうだわ、じゃあ、競争ね。罰ゲーム考えといて…ハイハーイ、お疲れちゃ~ん」携帯をしまい詰め寄って来る「そう言う訳だから」
警戒するザキ「オマエらか?スタンド能力を奪って回ってるホモ達って…」
「なんでホモだよ!ちょーウケんなぁ。でも、そんな胡散臭い連中と一緒にされるのって心外よ、俺も我慢できないわ、それだけはよ」
ウェイのスタンド『スウィートリベンジ』が発現する。頭上に現れたそれは、本体を操る人形遣いのような像。
「くっ」接近戦は不利だ、ザキはすかざずN.Aでゴム弾を発射、効果的な弾や作戦を考えてる余裕はない!「畜生っ!?」重心が左にズレていて照準合わせが今まで通りにできない!?弾丸は大きく左に反れた。照準の補正を頭と体に叩き込まなければ戦闘では使えない!
弾込め…敵は?いない!?アンが吼える!敵は…背後だ!?殴り飛ばされるザキ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっ」
ザキは転がり、右肩から走る激痛にのた打ち回る(ヤベェ!これはヤベェ!意識が切れそうだ!)。
「俺の能力って、スタンドに操作されて限界を超えた動きができる。ちっとショボイような感じするじゃん?でもよ、ナガセじゃねぇけど、本体が強いってのは正直そうとう強力じゃん?」
トドメを刺そうとするウェイの前にアンが立ち塞がる。臭いは覚えた。
___________________
「姐さぁぁぁぁぁんっ!!」
コウの悲鳴が響き、ヒデエモンが叫ぶ!しかしヒデエモンは満身創痍で身動きが取れない、敵は突然襲い掛かってきた。
屋外では百%力を発揮することはできないが、ヒデエモンは周囲の建物の壁やあらゆる手段を使い応戦した、しかしまったく通用しない!全て捩じ切られ破壊された。
そして敵はコウの腕を掴んで吊るし上げると、その腕をバキバキと捻り折ったのだ。
「もっと詳しく聞かせてくれよな。オマエらはナガセを倒した奴の仲間なんだろ?」隕鉄は意識を失ったコウを地面に叩き付ける。
「今日がおまえら仲良しグループの命日だ」
人間は愚かだ。個々の“主義・主張”が違いすぎる。犬のように真面目で、仲間意識が高かったら、世界は平和になるのによ。
ウェイを一瞥し、アンは思った。そして、こうも考えた。
一種の本能かもな。本来の、野蛮な人間のする姿。
だが、ザキは違う。アル中(シバミ)をカバって、大怪我をした。
犬でも中々できることじゃないぜ。多分、俺だってできるか分からない……。
だから、ザキ、お前の行動に敬意を表するぜ。
俺 は ザ キ を 守 る
アンはウェイとザキの間に割って入った。
「何だこの犬は?黒くて不吉じゃん?てかめっちゃ邪魔じゃん?」
『や……やめろアン……くそっ。上手く声を出せない……』
影。古来から陰とされ、怪物だと思ったものが、単なる犬の影が恐怖心から怪物に見えたという話がある。外国では、自分とそっくりな影をドッペルゲンガーと呼び、不吉の象徴としている。
アンの能力……それは
『フル・フラット!』
突然アンと酷似した犬が影からウェイに飛びかかり、片腕を食い千切った。
影。アンは自分の影を操る。
『まずはザキと同じ痛みを与えてやる……』
「な……なんじゃこりゃゃゃああああああ!!」
飛ばされた片腕を見て、ウェイは絶叫した。それにアンは一瞥をくれると、ザキに“行け”という合図を送る。
「アン……お前…」
『仲間の元へ行け。ここは俺で充分だ。』
ザキにアンの心が伝わって来るような気がした。誇り高い犬の精神が……。
自分を思う、アンの気持ちが。
「分かった」
「ワンッ!」
ザキは覚束ない足取りで、その場を離れた。そして、ウェイとアンが残された。
「この糞犬……殺してやる…… 殺 す 」
『ふん……』
ザキが見えなくなったことを確認し、アンは戦闘の構えをとった……
「正直に言いな、そうすりゃ命だけは、、、いや、駄目だな。 どのみち、殺す。」
隕鉄は気を失ったコウに更に蹴りをいれた
「ッッう!!」
コウの表情が歪む。
「、、、、てんめぇぇッッッl!姐さんにこれ以上触れてみやがれぇッッ!」
「、、、、。 触れたぞ。 さぁ、どうするんだ?」
隕鉄はわざとらしくコウの首もとに手をあてる。
「このまま、、 首をねじ切ってやろうか、、、?」
「カーペンタァーーズッッッッッ!!」
ヒデエモンは背後の建物の壁を操った。無数のコンクリートのラッシュが隕鉄を狙う
「ふん、馬鹿か? さっきと同じだ。俺にこんなもんは通用せん。 ツイスター!!」
コンクリートは隕鉄にあたる前に、全て捩じ切れ、地面へと崩れ落ちた
「ましてや、お前のスタンドは屋内でしかその威力を発揮できないんだろう? 屋外からでも壁を操ったのには驚いたが、、スタンドの成長か。 だが、所詮この程度。さぁ、、お前も捩じ切ってやる。」
「、、ハァ、、ッハァ、、、ッッ。」
ヒデエモンは後ろの壁にもたれて息を荒げている
だがしかし、その目は死んでいない。ヒデエモンは、凛として隕鉄を睨み返す。
「、、ん?」
ヒデエモンに近づいた隕鉄は何かに気づいた。
辺りが暗い。さっきまで晴れていたのだが、、雲が、太陽を隠したのか。
少し違和感を覚えたが、すぐに隕鉄は頭の中でそう納得し、更にヒデエモンに近づく
「成長、、確かにてめぇが突然襲ってきたせいで、、成長できたみてぇだ、、。前は屋外では能力を使う事なんて出来なかったもんなぁ。」
ヒデエモンは壁にもたれながらふらふらと立ち上がる
ツイスターの射程距離まで、、あと3m。
「感謝しとくぜ、、。今までは建築中、外側で感じた違和感を修正するのに、また中に入って直さなきゃいけなかったもんでよ。」
あと2m。
「いつも思ったもんだ、、『あぁ、、あそこの壁を、こう、、もうちょっと右に引っ込めたら、、最高のバランスなのによぉ。』 その度に、こいつら『オヤカタ、ムリダァ!』『ナカダ!ナカニハインナイトヨォォ』ってよ、、。」
あと1m
「だから、、すげぇ感謝してる。俺は気になったらとことやってしまうタイプだからよ、、。」
「、、だから、なんだと言うんだ。お前は今から死ぬ。気になっても、もう『とことん出来ない』んだ。 ツイスター!お前を射程距離内に捉えた!喰らえッッ!!」
「、、お前、何か勘違いしてないか、、、? 例えば、この暗さ、、。 少しだけ、、暗くなってる まさか、、、太陽が雲に入ったとか、、、思ってんじゃないよなぁ?」
「!?」
な、、違うのか!? 隕鉄は先ほどの違和感が一気に蘇り、一瞬ひるむ。だが、その隙をヒデエモンは見逃さなかった。
「カァァァペンタァァ------ズッッッッ!!!!」
『ッッッシャァア!』
『オヤカタッ!』『マカセトケ!!』
『モウ、俺タチノ[リョウイキ]ダッ!!』
隕鉄の足下の床がいきなり大きく反り返り、彼をはじき返す!
「ッッッッな!!」
「もう、、ここは『屋内』なんだぜ、、。気付かなかったな、、いや、勘違いしたんだよなぁ、、雲と。 おかげで助かったってもんよ。」
ヒデエモンの背後の高い壁、その一番上の部分からまるで自分たちを太陽から守るかのようにひさしがでている、、
「ひさしは建物の一部、よくあるよな、、喫茶店のオープンテラスとかでよ。そして、、その下の範囲は、、、あくまでも『建築物内』、、。」
ガッシャーーーンッッ!
隕鉄は隣の廃ビルの窓を突き破ってそのまま落下した。
「そして、、てめぇが吹っ飛んでいった所も、、『屋内』だ! もう、、逃がさねぇ!どんなに捩じ切ろうっつてもよ!姐さんの安全を確保するまでとことこん修復、リフォーム再生してやるぜぃ!!」
(押している。このままならば、十分ほどで俺の勝ちだ)
アンは冷静に考える。
確かにアン本体がスイートリベンジを食らえば、それで終わりだ。
だがしかし、そもそもが2対1の戦い。
加えてフル・フラットは、常にウェイの死角に回り込み、
攻撃を仕掛ける事が出来る…。
確かにスイートリベンジは強力なスタンドなのだろう。
だがしかし、スタンドが本体を操作していては、
本体をスタンドが守れない…。
ウェイの傷は、見る間に増えていく。
(理解しているのだろう?人間。殺そうとする、という事は、
即ち殺し合いをする、という事だ!)
来る。
来てしまう。
このままでは、来てしまう。
ウェイの一番嫌いな、アレが。
アレが…。
アレが近づいてくる。
アレは…嫌だ。
アレは、嫌いだ。
アレが………
来る。
「うわああああああああああッ!!!」
突然の絶叫。そして、そう、まるで糸の切れた人形の様に、
ウェイの体がぐったりと沈んだ。
糸は、確かに繋がったままなのに。
(何だ…?)
アンは油断をしない。
ゆっくりと、相手の動きを観察する。
だが、ウェイは動かない…。
(壊れたか。脆いものだ…
だが、止めは刺す…!)
食い込んだ。
最初にちぎり飛ばした、ウェイの左腕が、アンの喉笛に。
(なんだ…ッ!?)
驚愕はすれども、躊躇はしない。
身を守るよりも、相手に止めを。
フル・フラットが背後から、ウェイに飛び掛り…
そしてウェイは、それを回避した。
まるで上から引っ張られたような、不自然な動きで。
広げられた腕。
力なく垂れ下がった、指先。
かくん、と頭が上がり、虚ろな瞳が、アンを眺める。
喉を締め付ける指の力が、よりいっそう強まった。
(こ、い、つ、は……
……
ザ、キ……
す、ま、な)
鈍い、音。
ウェイが気がついた時には、
引き裂かれた黒犬の肉片が、散らばっていた。
「また、かよ……」
ウェイは自分の能力が、嫌いだ。
恐怖が極限まで達した時…
スイートリベンジは本体である筈の彼を操り、敵を破壊する。
「つまるところ…
俺には、敵とまともに戦えるだけの度胸すらない、っつーワケなんだよね…」
ウェイは自分の心の弱さが、嫌いだ。
だからこそ…自分の心を信じ、正義とは決して言えぬ立場で、
正義を掲げ戦える隕鉄の事を、敬愛している。
「…だからさあ…
どんなことがあってもさあ、隕鉄さんにさあ、
親友とか殺して欲しくないワケなんだよね…」
痛む体を無理やり引き起こし、ウェイは歩き出す。
引き裂かれた腕は、スタンドの糸により縫合されていた。
なに、いつもの事だ。
「隕鉄さんの親友はさあ…
何があっても、俺がぶっ殺すよ。自分の意思で…」
隕鉄は荒れ狂うだろう。
怒りに任せ、自分の事を遠慮なく攻撃するだろう。
あの人の事だ。多分、20回…いや、25回はぶっ殺すって言うだろうな。
だが…隕鉄は、自分の事を殺さない。
殺されても構わない。
だが、彼にはきっと、殺せない。
「隕鉄さんがさあ…
そんな、親友とか恩師とか、平気でブッ殺しちゃうような奴に…
…、なっちゃうのさあ… やなんだよね、俺様ってば…」
荒い息。ベンチに身を預け、携帯電話を取り出す。
「…あー。そっちはどう?
え、もう終わった?マジ?ガンマジ?きっついなあ…
で、どうなってんの?今は服従してる?何それ?
…へえ…スタンドで一発?
さっすが…怖いねえ、お前のスタンド。
敵が強ければ強いほど、自分のスタンドの不意打ちは致命的になる…
頼んだよ、ツチノコ・スター…
その、捕まえた、サトウセンセイとやらをさ、隕鉄さんに会わせる前に…」
銃声。
携帯を取り落とす、ウェイ。
涙を流しながら、ゆっくりとスタンドを消す、ザキの姿。
それが、ウェイが最後に見た光景だった。
【ウェイ:スイートリベンジ
アン:フル・フラット
再起不能(リタイア)】
「アン……ッ!!
すまない…アン……
アンーーーーーッ!!!!」
友の頭を抱いて泣くザキの腕の傷口に、
死んだ筈の影が伸びて、ゆっくりとその中に入っていった。
その意味を知るものは、まだ誰もいない。
泣き崩れるざき…。
彼はひしひしと感じていた。
アンの、彼の誇り高きその精神を。
そして
あまりにも自分が無力だということ。
彼を救えなかった自分自身に吐き気をもよおすほどの後悔を感じていた。
「ゴメンよォォ!!アン!!俺が…俺がァァ!!」
ざきは、出会って間もないアンに、家族以上の深い絆があったという事に気付いてしまった。
「ゥゥッ………」
止めどなく溢れ、込み上げる涙。
静かに雨が降り出す。
。。。
―――――――――――ぎょろォん
不自然にアンの眼球が動き出す。
しかしざきは気付いていない。
いや気付く事が出来なかった。
『ふぅむ…
確かこの男はざき…
だったかな。
むこうにぶったおれてるのは…
あぁァ、ウェイか。
このアンとかいう犬も生命反応を感じないな。』
すこし離れた狭い路地裏で一部始終を見ていた男が一人。
そして傍らには白い犬が一匹。
『ふぅむ…
少し流れが変わったみたいだな。』
そう言うと男はすっと立ち上がり、そばにおいてあった白い杖を握るとゆっくりと歩み始める。
『もう少し傍観者を楽しませてもらうとするかね。
まだまだフィナーレに早過ぎるから、ね…。
クックックッ……
さぁて行こうか。
マニエル。』
【ソマ・バンガルデフ】
スタンド名:ナイト・ヴィジョン
――アンを弔うかのように降り続ける雨の中、痛みと疲労でざきは意識を失った…。
目が覚めるとそこは病院の中、見慣れたベッドの上だった。
『ったく無茶しやがってェ、あんたはまだ外出許可でてないんだぞ…!!』
横たわるざきにDr.ERが語りかける。
「スイマセン先生…
あの…アンは!
黒い犬は……!」
『あぁ…あのワンコか。勝手ですまないが病院の庭のところに埋めさせてもらったよ。
…それより教えてくれ
一体なにがあったんだ。』
そしてざきは話した。今までの事、
そしてあの戦いの事を…。
『なるほどね、そういう事だったか…
それにしても、この能力、「スタンド」というのか…』
Drはおもむろに右手を出し、ざきに見せた。
ドクン…ドクン…
静かに脈うつその右手には血が滴り、黒い十字が刻まれていた。
「まさかッ!?
先生もッ!!
スタンド使い!?」
そう思った瞬間、ざっきの脳裏に不安がよぎる。
「あの!
あそこにもうひとり誰かいませんでしたか!?」
『イヤァ、誰もいなかったぜ…
俺がたまたま通りかかった時には君とワンコしかいなかったが…
誰一人として見てないよ。
そんな事より君はまだ安静にしてなさい。
傷口がまた開く。』
「ハイ、すみません」
『すこし落ち着いたらあとで中庭にいって、あの犬に線香でも立ててあげよう。
俺も手伝うよ。』
「ありがとう…ございます…」
バタン。
そう言うとDrはニコッと笑い、部屋を出て行った。
外をみると雨が上がっている。
晴れて青空にアンに良く似た
真っ白な雲が浮かんでいた。
通り雨が過ぎていった。
ヒデエモンは力の限りを尽くしていた。
迷宮を作り、扉のない部屋に隔離し、天井を落とし、
今までにない力の手ごたえを感じている。
俺のスタンド能力はいま最高に充実した、自由自在、無敵だ。
この獣野郎を、俺が退治してやる!
そう思っていた…なのに、なのに!
「てやんでぇ、なんなんだよぉ!この化け物はよぉ!!」
ヒデエモンの能力は隕鉄とやりあうには相性が悪すぎた。
何故なら相手は建築物を破壊する重機!
ブルドーザー!
もっと言えば巨大ドリル!!
どんどんと壁を掘り進む。
カーペンターズの修繕速度が足りない。
「オヤカタ、モウムリダ!」
「シュウゼンガオイツカネェ!」
隕鉄を自分のフィールドに追い込んだまでは良かった。
しかし、直しては壊し、直しては壊し、
相手は単純作業だがこっちは繊細な工程と計算が必要なのだ、
精神力の磨り減り方が桁違いだ。
「きばれっ!カーペンタァァァァァズ!!」
自分はここを離れられない、
しかしコウは目を覚まさない。
「姐さん!姐さん!」
ヒデエモンの集中力は限界を迎えていた、
「くそっ」膝が崩れる。
「キタ!キタヨォ!!」
「ヒィィィィィィィィアァァァ!!」
正面の壁が弾けとび瓦礫が舞う。
『ツイスター・レボリューショナリー・レボリューション』
その力を隕鉄は完全にコントロールできるようになっていた。
どんな権力も、知性も、人生も、
身に降りかかってしまった圧倒的な暴力の前では無力。
「諸行無常だな…」隕鉄はヒデエモンに迫る、
それはまさに破壊の権化。
「話は、一人残せば聞けるよなぁ?
選ばせてやるよ、先に死ぬか、
女が細切れになった後に話して死ぬか」
ヒデエモンに力は残ってなかった、
「てやんでぇ…俺っちから殺しやがれ…」
自分の無力が嘆かわしかった。
犬死にか……。
通り雨が過ぎていった。
ヒデエモンは力の限りを尽くしていた。
迷宮を作り、扉のない部屋に隔離し、天井を落とし、
今までにない力の手ごたえを感じている。
俺のスタンド能力はいま最高に充実した、自由自在、無敵だ。
この獣野郎を、俺が退治してやる!
そう思っていた…なのに、なのに!
「てやんでぇ、なんなんだよぉ!この化け物はよぉ!!」
ヒデエモンの能力は隕鉄とやりあうには相性が悪すぎた。
何故なら相手は建築物を破壊する重機!
ブルドーザー!
もっと言えば巨大ドリル!!
どんどんと壁を掘り進む。
カーペンターズの修繕速度が足りない。
「オヤカタ、モウムリダ!」
「シュウゼンガオイツカネェ!」
隕鉄を自分のフィールドに追い込んだまでは良かった。
しかし、直しては壊し、直しては壊し、
相手は単純作業だがこっちは繊細な工程と計算が必要なのだ、
精神力の磨り減り方が桁違いだ。
「きばれっ!カーペンタァァァァァズ!!」
自分はここを離れられない、
しかしコウは目を覚まさない。
「姐さん!姐さん!」
ヒデエモンの集中力は限界を迎えていた、
「くそっ」膝が崩れる。
「キタ!キタヨォ!!」
「ヒィィィィィィィィアァァァ!!」
正面の壁が弾けとび瓦礫が舞う。
『ツイスター・レボリューショナリー・レボリューション』
その力を隕鉄は完全にコントロールできるようになっていた。
どんな権力も、知性も、人生も、
身に降りかかってしまった圧倒的な暴力の前では無力。
「諸行無常だな…」隕鉄はヒデエモンに迫る、
それはまさに破壊の権化。
「話は、一人残せば聞けるよなぁ?
選ばせてやるよ、先に死ぬか、
女が細切れになった後に話して死ぬか」
ヒデエモンに力は残ってなかった、
「てやんでぇ…俺っちから殺しやがれ…」
自分の無力が嘆かわしかった。
犬死にか……。
通り雨が過ぎていった。
ヒデエモンは力の限りを尽くしていた。
迷宮を作り、扉のない部屋に隔離し、天井を落とし、
今までにない力の手ごたえを感じている。
俺のスタンド能力はいま最高に充実した、自由自在、無敵だ。
この獣野郎を、俺が退治してやる!
そう思っていた…なのに、なのに!
「てやんでぇ、なんなんだよぉ!この化け物はよぉ!!」
ヒデエモンの能力は隕鉄とやりあうには相性が悪すぎた。
何故なら相手は建築物を破壊する重機!
ブルドーザー!
もっと言えば巨大ドリル!!
どんどんと壁を掘り進む。
カーペンターズの修繕速度が足りない。
「オヤカタ、モウムリダ!」
「シュウゼンガオイツカネェ!」
隕鉄を自分のフィールドに追い込んだまでは良かった。
しかし、直しては壊し、直しては壊し、
相手は単純作業だがこっちは繊細な工程と計算が必要なのだ、
精神力の磨り減り方が桁違いだ。
「きばれっ!カーペンタァァァァァズ!!」
自分はここを離れられない、
しかしコウは目を覚まさない。
「姐さん!姐さん!」
ヒデエモンの集中力は限界を迎えていた、
「くそっ」膝が崩れる。
「キタ!キタヨォ!!」
「ヒィィィィィィィィアァァァ!!」
正面の壁が弾けとび瓦礫が舞う。
『ツイスター・レボリューショナリー・レボリューション』
その力を隕鉄は完全にコントロールできるようになっていた。
どんな権力も、知性も、人生も、
身に降りかかってしまった圧倒的な暴力の前では無力。
「諸行無常だな…」隕鉄はヒデエモンに迫る、
それはまさに破壊の権化。
「話は、一人残せば聞けるよなぁ?
選ばせてやるよ、先に死ぬか、
女が細切れになった後に話して死ぬか」
ヒデエモンに力は残ってなかった、
「てやんでぇ…俺っちから殺しやがれ…」
自分の無力が嘆かわしかった。
犬死にか……。
「待って!!」
シバミの声がヒデエモンに届く。
コウが戦闘中にWWWの力で携帯に触れずに、
シバミに助けを求めていたのだ。
シバミがヒデエモンの傍らに駆けつける、
崩れ落ちるヒデエモン。
「アンタ、よく踏ん張っててくれた」
「オマエか、ナガセを倒したスタンド使いってのは?」
「そうよ、アンタよくも好き放題やってくれたわね」
隕鉄をまっこうから睨み付けるシバミ。
「駄目だ姉御!そいつは次元が違う、
俺っちたちの手に負えねぇ!
佐藤先生かホモの兄ちゃんに助けを求めるんだ!」
「ホモに助けを求めるぅ…ごめんだね!」
この敵は強いのだろう、しかし、
助けを呼んで間に合う訳もなく、
二人を置いて逃げる訳にもいかない。
「なまっちょろいなぁ、オマエのチームは」
よほど戦いに慣れていなければ、とても隕鉄には敵わない。
しかし皮肉なことにタチバナはもういない、
そして佐藤は敵の手に落ちた、
そのことをシバミたちは知らない。
隕鉄の携帯が震える、表示は……ウェイ?
シバミたちを意識しながら隕鉄はその電話に出る。
「いま取り込み中だ……ふはっ、よお!」
「……隕鉄か?」
「そうだよ、親友」
携帯の先から聞こえるのはザキの声だ。
ウェイを撃って直後、
手掛かりにとしっかり携帯だけは回収しておいた。
直前にかけた履歴にこの番号が残っているのだから。
「オマエ、何やってるんだよ!
オマエがスタンド使いを殺して回ってる
犯人だとでも言うのか!」
ザキはそれを言葉にしても、
その明確なハズの答えを信じてはいなかった。
しかし、「そうさ、オレだよ」隕鉄は挑発する。
「なあザキ、どうやらオレにはオマエが必要だぜ。
今夜会おう、今夜だ、あの場所で待っていろ、
分かるな?殺し合いをしようぜ」
「待て、話を聞かせてくれ!隕鉄!隕て……」
隕鉄は携帯の電源を切る
シバミと対峙する隕鉄。
「ザキ、土産に仲間の死体を三つ持っていくぜ…」
夏の雨。それはいい加減で、降るタイミング、止むタイミングを掴めない。
晴れたと思った雨は、また大地を濡らしていた。
「シバミさんとやらよぉ……あんたはザキのこれか?」
隕鉄は小指をシバミに立てて見せた。
「……だからどうしたの?」
「やっぱりよ。普通の仲間を殺されるより、恋人を殺される方が絶望は大きいだろ?」
「……」
「まあ殺されるお前には関係無いか。構えな。無駄な努力だがな」
シバミは一向に構えを見せない。戦意を喪失しているようにも見える。
「ツイスター!捻り殺せ!」
しかし、その拳はシバミに当たる寸前に回避された。2打目、3打目、4打目も同じように空を切る。
「くそっ!くそっ!」
「酔えば酔うほど……私は強くなる」
シバミが隙をつき、隕鉄の顔面にカウンターを叩き込んだ。
プーツン
「死に方を選ばせてやる……捻られて死ぬか、それとも……」
ツイスターRR。物体のみならず、空間さえも捻る強力なスタンド。
「やっぱり捻られて死ぬか……だ」
空間が捻られて、シバミは隕鉄に対して背中を向ける恰好になる。
「いくら酔拳の達人でも、背後から超スピードで迫る者は避けれないよなぁ?」
隕鉄は背後で吠えた。既に突撃の構えを見せている。
「貴方は……自分で詰んだのよ。私の能力を知っておいて、私に準備させる時間を与えた。」
シバミの能力。水分を酒にする。
「シバミディア。雨を酒にして……」
シバミと隕鉄の間に降る雨は、全て酒になる。
スピリタス。ナガセと戦った時に使った酒。
「ちぃ!だからどうした?」
「こうするのよ」
シバミが持っていた物、それはライター。どこにでもある、100円のライター。
「隕石のように……燃え尽きろ」
「ツイスター!上を捻じ曲げろ!」
隕鉄はライターを投げて来るのかと思った。
それは大きな誤算だった。
カッ
足元の水溜まりが次々と火の海になる。
隕鉄はその海の中にいた。
「あああああああああああ」
隕鉄の絶叫が辺りに響玉した。
「ヒデエモン、コウを運ぶの……手伝って……」
「……わかりやした」
途中、ヒデエモンは気が付いた。
後ろに……気配がある。
そこには大火傷をした隕鉄が立っていた。
まだ隕鉄の命は燃え尽きていなかった……
「あ、、シバミの姉御!!」
「!!」
振り返ると、そこには身体を焼かれながらも、二人に迫る隕鉄の姿があった。
「て、、てめぇ、、、逃がすか、よ。」
なんという、、執念!
何だ? いったい、何が奴をここまで動かすんだ?
「ツイスタァーー!俺の周囲の空気を、、、捩じきれッ!!」
グシュウシュァァア!!
ツイスターRRによって、隕鉄の周囲の空気が捩れ、渦を作り炎が隕鉄から分離する!!
「グゥッッ!!」
しかし、螺旋状に立ち上ったいくつもの炎は、その回転力ゆえに、隕鉄自身に容赦なく炎の爪痕を残す
「き、、きついぜ。 はぁ、、はぁ、、少々手荒だが、、。 だが、これで、俺の身体からやっかいな炎は離れた、、。 そして、、この炎の渦を、、逆に利用してやる!喰らえぇぇッッ!」
シバミ達と隕鉄の間に、、大きな空気の渦を発生させる
渦とは空気の回転。シバミ達の周りにある空気を隕鉄側に回転させれば、、、隕鉄の周囲の空気は当然、、、
「焼け死にやがれ!」
「なッッ!」「うわぁ!!」
大量の炎の渦が猛スピードでシバミ達に襲いかかる!
そして、、彼女らを飲み込もうとした、その瞬間!!
[右斜め、下側の空間にラッシュを!]
「、、、え!?」
シバミの耳に、、直接声が響いた
(声、、?いったい、、)
「シバミッッッ!早く!! あの、渦と渦の隙間を打ちまくるのよッッッ!!『見える』はずよ!!」
「ハッ!」
「ディアアァァァァアァァーーーーーーッッッ!!」
シバミの目に、確かにそれは『見えた』。
自分の打つべきポイントが、くっきりと色が変わって差別化されている。
「無駄だ! そんなラッシュで炎を防げる訳、、、!!
ッッ!?何ィ!!!」
炎が、、シバミ達をすり抜ける
いや、すり抜けたのではない。 避けて通ったのだ
「どうなっている、、。」
「どんなに希望がないように見えても、、見えないだけ。 それは確かにある、、。 空気と空気がぶつかり合う、、『狭間』がね。 そこをシバミディアのラッシュで無理矢理こじ開けた。 ほんと、、危なかったわ。 でも、よかった、気がついたのね、、コウ。」
「私の能力は、、情報を入手する能力。 力の流れを計算し、、その死角を見つけ出す。 とっさにあなたの脳に直接W・W・Wで情報を流し込んだんだけど、、問題は無いみたいね、、。」
コウは、、傷だらけの身体で、、シバミに微笑んだ。
隕鉄は苛ついている。
あのシバミとかいう女が出て来たあたりから… 何かがおかしい。
様子見に回った、前回の戦いはともかく、だ。
何故俺が、殺す気で戦って、この程度の奴らを殺せない?
隕鉄は苛つき、舌打ちしながら、ガードレールを捻り切る。
『らしくないねえ、隕鉄さんってば』
…。
『大振りの攻撃ばっかり振り回しちゃって』
ああ…。そうか。お前か。
お前が、理由か。
『え、ナニナニ?
俺が死んじゃって、そんなに動揺しちゃった?』
何時も…。俺を苛つかせる男だ。
ヘラヘラして。
時々、解ったような口を聞く。
命を懸けられる程の度胸も無い癖に…
俺に命を預けやがった。
『いい加減さあ~、しゃんとしなって。
俺なんて隕鉄さんにとっちゃ、どうでも良いしょ?』
ふ ざ け る な ッ !
隕鉄の雰囲気が、一瞬で変わったのは…シバミ達にも伝わった。
無言でゆっくりと、三人に歩み寄る隕鉄。
隕鉄の背後で、ゆっくりと、ガードレールが捻れて行く。
「…え?
…駄目…シバ、ミ…ッ。逃げて…」
コウの言葉よりも、歩み寄る隕鉄に何故か気圧されながら、
シバミは強く首を振る。
「今離脱したらヤバいのよ…
各個撃破されたら、あんた達じゃ絶対相手にならない!
力が合わせられる今…アイツをブッ叩く!」
「無理…私達じゃ勝てない…
そう、タチバナさん、を…」
「あんなホモッ!!!それに居ないしあのホモッ!!!
ってわけでぇ、サポート頼むわよ、コウッ!」
叫び、前に立つシバミ。
その顔が、更に加えられた酒気により赤くなる。
「…未熟」
「ハぁア?それが負けてる側の言うセリフぅ?」
「ああ。俺の…未熟」
現れる、ツイスターRR。
「仲間を失ったこの感情を抑えられず…
しかし認められもしない…
未熟の極み…アマ過ぎる」
近まる、距離。
「な~にぃ、今更謝りたいってぇ?
許さないわよぉ!あんたこそ私の仲間、こんなにしといて!」
「謝罪はしよう、この腑抜けた戦いに。
だから…一瞬で決めてくれるッ!」
振るわれるツイスターの拳。
五連のラッシュを、シバミは超人的スピードで、
全て回避してみせる。
ツイスターの恐ろしさは、その一撃必殺の攻撃力…
故に、回避してしまえば、しょせん無意味…
[…じゃ、ない…ッ!]
「え…?」
ツイスターが最後に拳を繰り出した右足元の空気が、
ゆっくりと捻れだした。
「クッ!」
慌てて逆に飛ぶシバミ。
そして…最初にツイスターが拳を振るった、左肩…
今まさにシバミが飛んだ空間が、突然急激に捻れる!
「か…ハッ!」
体に直接食らったわけではない。致命傷にはならない。
しかしモロに捻れに巻き込まれ、動きが止まるのは避けられない。
そこを…
ツイスターの右拳が、吹き飛ばした。
ツイスターは本来、単純な力押しのスタンドではない。
時間差の空間の捻れ。
場所不定。
攻撃パターンは無限大。
近距離限定ではあるが、ツイスターに拳を振るわせれば…
当たろうが当たるまいが、そいつは既に敗北している。
「姐御ぉっっ!!!」
[ウソ…シバミィィィィッ!]
冷ややかな視線を送る、隕鉄。
しばしの沈黙…。
「…ツイスターの能力は、使っていない」
「[!!]」
「当たり前だ…このザマで…相手を殺せば、勝利だとでも?」
ボロボロの己の胸に、強く爪を立てる隕鉄。
「その酔っ払いに伝言しておけ…
次は最初から全壊で、殺すとな…ッ!!」
「まち…やがれい…っ!」
去ろうとする隕鉄に、弱々しくヒデエモンが声をかける。
「…もう、今日は貴様等に用事はない。
捻りきった後の、微塵のひとつまみ程にもな」
「名乗れねえお嬢と姉御に変わって言ってやらあ…
俺っちはヒデエモン!こっちはコウ!
そして!この人の名は、シバミ姐さんよ!」
しばしの沈黙。
「俺は…隕鉄」
ただそれだけを残し、男は去って行く。
【ヒデエモン:カーペンターズ
コウ:W・W・W
シバミ:シバミディア
隕鉄:ツイスター
全員 生存…】
――――病室からガヤガヤと騒がしい声が聞こえる。
「いやぁ、何とか助かったわねェ~~
…ヒック」
「姉御ォォ!!それはいーんですが、病室で酒はやめた方がイィとあっしは思うんすが…」
「ひっく、ウッサイわねぇ…命の水らのよォォ~」
「シバミさん……知らないっスよぉ、僕前回のこともあって、先生とか看護師にかなり目つけられてんですから……」
「らによォォ、ザキのくせにィィ…!!」
「……(ハァ、駄目だこの人。)」
あの戦いの後、
そのまま3人は病院に運ばれたのだった。
しかも、なんの因果かザキが入院している病院に…。
「はれぇ……そーいやコゥはァァ~!?」
「お嬢ならまだ眠ってやすよ」
「そっかァァ、なら仕方らいわねぇ~~
(あとでお酒もっていこ~っと♪)」
コツコツコツ…
ゆっくりと足音が聞こえる。
「ったく不良患者どもが……ちょっとはおとなしく出来ないのかよ。
ッて、あ!
アンタらみんなツレかよ。。。」
頭をかきむしりながらDr.ERが回診にあらわれる。
「そんな事よりさぁ…先生もいっしょに飲みませしょうよぉぉ~」
「(…まぁまぁイイ女だ)駄目だ。
今は仕事中、
………
でも、もしよかったら今晩にでもぉ~~」
そう言うおうと瞬間
、おもいっきりはたかられるDr。
スパァァ―ん!!
「ィ痛いィィ!」
「先生、何患者さん口説こうとしてるんですか。…院長に直訴しますよ。
そんな事より次の患者さんが待ってますよ。」
「はァァ~い、行きますよ、行きゃいいんでしょ。」
かけつけた看護師そう言われると、
ふて腐れながらもせっせと準備するDr。
「おっと。言い忘れるところだった。
もしまた何かあったら教えてくれ。俺も協力するよ。
なんだかこの町は気になる事が多過ぎるんでな。
ま、そーいうわけだ。じゃなっ!」
そう言うと
Dr.ERは病室をさっていった。
ぶっちゃけ私って、普通の女子高生じゃない?
私は学校に戻って来た。
ウチのガッコはスポーツ弱いから、この時間に活動してる部活なんてない、静かなものだ。
もっとも私は帰宅部で、学校すら頻繁に休むけど。
誰もいない校庭には、ただ一人高跳びの練習をしてる田中の姿があった。
陸上部なんて弱すぎて大会もろくに出ないのにね。
私はしきりに陸上はダサいとか、無駄な努力が暑苦しいとか言ってた、
陸上とかマラソンとか、特にキツそうなのにゲームの要素もないようなスポーツは、
めんどくがりの私から言わせたら拷問以外のなんでもないから。
でも何でだろう?無性に応援したくなる。
「おーい!がんばれよーっ!」
エールを送ると「なんだよ気持ち悪ぃなぁ!」とヤツは爽やかに笑う。
ちょっとキュンとした。
スタンド能力を持っているとどうしても戦いに巻き込まれてしまうから、能力を無くす。
という説明をサトヨシさんから受けた。
エレチュンとの別れを惜しむ私にサトヨシさんは猶予をくれて、
私は空が近くて広い、よく授業をサボって昼寝した屋上で、エレチュンと最後の時間を過ごすことにした。
エレチュンは頭上を飛び回る。
好きな人が死んだ……。
なんて言うと少女漫画みたいだけど、正直あの人のこと何もしらないしね。
私、妄想癖あるからすぐ舞い上がっちゃうのよ、
でも妄想って自分に都合がいいから、後でガッカリするのはもうなれた。
戦いだって、現実味が無かった。
現場に戻って驚いたもの、敵の死骸がスプラッタ映画のゾンビよりグチャグチャで…。
そう、あの人の死体なんて……欠片も残ってな…。
冷や汗が溢れ出た、鳥肌が立って体がガタガタ震えた。
ムリムリムリ!
だって私は缶蹴りしただけだもの!
どうやって倒されたかも覚えていないもの!
あの人はそんな戦いを1人でずっとしていたとか、
サトヨシさんと出会った時の話とかも聞いた、
凄い人だったんだ、私とは別世界の人。
ぶっちゃけ私、ただの女子高生じゃない?
あーあ、エレチュンと別れるのは悲しいな…。
でも私、死にたくないもの。「さようならだね」
「おーい、アンコ!」
「殺すよ!」
帰りがけ、1人で片付けをしていた田中を手伝う。
「つきあわないか?」
わあ!?突然切り出されたもんで驚いた。
驚いた…けど、嫌じゃない。
それはなんか自然な気がした、なんの抵抗もない。
同級生の恋人ができて、普通の女子高生らしく過ごす。
オッケー、付き合いましょう、良いことあるじゃーん。
でも返事を返す前に田中が「大丈夫か?」と聞いてきて、
私は自分の目からボロボロ涙が流れ落ちていることに気がついた。
だって、だってさ、今まで私は、
「何ができるか?」とか「何になりたいか?」とか考えないで生きてきた。
「楽しい」「めんどくさい」判断の基準がそれしかなかった。
あの人はあんなに!命だって投げ出せるのに!私は情けないよっ!
田中は慰めてくれて、「好きな人いるの?」とそれだけ聞いてきた。
私は「うん」と答えた。
あの優しい佐藤先生や、あの人が大好きなサトヨシさんが命の危険にさらされてるのに、
私は今までみたいにダラダラ昼寝して、携帯いじって、スナック菓子食べて、カラオケなんて言ってられない。
田中はいつもみたいに笑って見送ってくれた。
私、アンタをちょっと尊敬するよ。
あー、泣いちまった、恥ずかしい、死にたい。
私は佐藤先生が迎えに来てくれる予定の場所に行くと、変わりに土星さんが来ていた。
「私、やっぱりそっち側に行くよ」
あの人の代わりにはなれないだろうけど、見て見ぬフリはしないことに決めた。
あの人を見習って一分一秒をちゃんと生きる!…努力はする……多分する。
「ぽえ~ん」
土星さんは少し悲しそうな顔をした。
さて、ここで僕、土星さんからの問題。
これまでの流れから、レッドとは別にスタンド使いを皆殺しにしたい人物がいます。
当然、強すぎるレッドは邪魔なので、死ぬように手引きしたことでしょう。
誰もが知ってる訳じゃないシバミ達の情報を隕鉄にリークした人物がいます。
同じく佐藤先生の情報もツチノコスターにリークした人物がいます。
それができた人物は誰でしょう?
結果、最強のスタンド使いレッドとその部下を一網打尽にした上に、、邪魔者タチバナまでも始末できた。嬉しい悲鳴だね。
今回シバミ達の壊滅を目的のように見せて、メインのサトヨシを孤立させる作戦は完了してるんだよね。
「土星さん電話?」
可愛そうな杏子さん、可愛そうな杏子さんは、僕が携帯を持っていることが意外そうだ。
僕は電話に出る、表示はツチノコスター。
「こんぷりーと もどって せいかん」
結果は上々、あとは我が強くて作戦に組み込み難い隕鉄と、それに依存しすぎのウェイは、
シバミ達も含めてできるだけ多く潰しあってくれたら最高。
だから僕らはしばらく隠れて様子見に徹しようじゃないか。
さあ、隕鉄、ハデに暴れるんだね。全員死んだらベストなんだから。
第6話『螺旋花』
To Be Continued... ・外伝『不光の世界』