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 シルビアは迷った。
 先ほど邪魔をしたあの男を、今消すべきか否か。
 だが、あいつは私の能力を戦いの外から見ていた。
 つまり、幻覚だということを見破られる。
 いくら『恐怖』さえ与えれば仕留められるといっても、最初から幻覚だとバレているのは流石に分が悪い。
 さらに、もう一人の怪人。
 ヒーロー気取りの馬鹿である可能性もあるが、正面切って出てきたことと、漂わせている殺気から、かなりの腕であることは間違いない。
 ここは引いた方が得策ね…。
 そう思い、退散しようとするシルビア。

 そして、それを見つめるドルチ。

 ドルチは思った。
 人間とは馬鹿しかいないんじゃないか、と。
 だが、ドルチは思う。
 それでも、いい馬鹿と悪い馬鹿ってのはいるものだ、と。
 サトヨシがスタンドと呼んでいた、心の中の宝石。
 それを、怪人と対峙している男は見せた。
 そして、あの男は、今は眠っている女を助け、今は色々間違ってはいるが、また女を助けようと命を張って怪人と戦う覚悟を決めている。

 …だが、眠っている女を最初に襲ったあの女は、この機を逃すまいと逃げ出そうとしている。
 ドルチは動いた。
 世の中の人間が「いい馬鹿」達であってほしいと。だから今は、あの女を逃がすわけにはいかない。

「ニャァァァァウ」
 鳴き声に、ナガセとザキは首は動かさずドルチを見た。そして、その視界の端で逃げようとしていたシルビアの姿を。
 三人の視線が交錯する。

ザキ「あ、てめえ逃げる気か!?」
ナガセ「…お前もスタンド使いか?」

 仕方ない、といった素振りのシルビア。
シルビア「質問は順番にしてもらえますかぁ~? でも、答える必要は多分ないですねぇ~。海はすべてを消してくれますから…」 


ナガセ、ムーンライダーは動く、「宣言する、皆殺しだ」
シルビアは身構えた、二人が同時にスタンドの射程に入る必要がある。
ザキは身震いしていた。
(確かにオレにはコブラみたいにシブく女の子を助けたい願望はあった、だがそんなことで突然戦いに巻き込まれたわけじゃねぇ。ここ連日のスタンド使いの行方不明事件で友人が姿を眩ませたからだ。そしてその裏にスタンド使いの敵がいることを直感して調査していた時に、スタンド使いが女の子を襲撃していた、どうやら辿り着いたな、どっちだ?一連の事件の犯人は?)

ナガセはまず、ザキを狙う。
「くっ!?」
(N.Aは一発づつ弾を込め直さなきゃいけない欠点があるが、弾丸を自由に変形させ打ち出す万能のスタンドだ。そして射撃じゃ誰にも負けねぇ。
しかし、コイツはマズイぜ!相手は超人の身体能力と反射神経を持ち合わせていて、すでに近距離にいるのだ、奴が三歩踏み込んでオレを殴る前に、弾を込めて、銃口を向けて、発砲するスリーアクションができるか?いや、できない!断言する!)

ザキはすぐ近くの物陰に駆け込む、追いかけられたら絶対に追いつかれる。しかし、奴は追ってこない。
「もう一人に気を取られたのか?とにかく今のうちに弾を込め…!?」
瞬間、ザキの体を激しい衝撃が遅いザキは空中に投げ出された。バイクに跳ねられたのだ、それも無人の。
「オレのムーンサイクロンは、遠隔操作できる。時速300キロで走り、スタンド使いを見つけ出すレーダーがついている。ムーンライダーから逃げ出すことは、無意味、無意味、無意味ぃぃぃぃぃぃっ!!」
そしてムーンライダーは跳躍した、それは周囲のビルよりも高く、しなやかで美しい軌跡を描く。
「ラ・イ・ダァァァァァァァァァ…」
「やべぇ!?」(ちくしょう、コイツは想像してたよりずっとずっと邪悪な、危険なやつだ!生かしておけば犠牲者は増え続ける!だが、敵わねぇ!!)ザキは慌てて逃げようとしたが、足が重い。
いつの間にか回りは海だ!?水が腰まで来ていて動きを束縛していた。シルビアのスタンド攻撃だ。
幻覚だと解っていたハズなのに、焦りや恐怖に支配されてる部分をつかれた!?
ザキは叫ぶ、ナガセは急降下してザキに迫る。「ちくしょぉーっ!」ザキはN.Aに込めた最後の弾丸を放つがそれはナガセを捉えず、あらぬ方向へ飛んでいく。
「キィィィィィィィィィィィック!!」
ライダーキックがザキを貫き、ムーンライダーの着地地点は衝撃で捲り返り、ザキの姿は跡形もなくなっていた。
そこには飛び散った血液で咲く花が残る。

『ザキ リタイア』 



シルビアは驚愕した、彼女がスタンドで攻撃したのはザキではなかった、範囲内のこの恐ろしい怪物を捉え始末するつもりだったのだ。しかし、奴は平気でコチラへ近づいてくる、効いてない!?
マンガニーズ・ブルーノーバは相手の恐怖に応じて水位の上がる海の幻覚を見せるスタンド、しかし、ムーンライダーには恐怖は無い、よってスタンド能力は発動しない!?無力!!
アタシはこの怪物に殺される。「ああああっ」怪物が近づいてくる恐怖でシルビアは腰が抜けてしまった。ナガセはシルビアを見下ろす。
「おい、テメェのせいで拳銃使いが死んだぜ、テメェは悪だな?」ナガセは言った。
「殺したのはオマエじゃないか!」と反論しようとしたが、恐怖で声がでない。ナガセはシルビアの腕に噛み付く。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」すると、シルビアは跳ね上がるように直立し、まるで空に引っ張られるように手をバンザイし、体の自由を奪われる。
「オレの牙に噛まれたものは、血液を月に吸い上げられる!つまり、立ったままの逆立ち状態さ!すぐに血が逆流して脳に溜まり、頭が水風船みたいに破裂するぜぇ!」
ァオォォォォォォン!!ナガセは絶頂だ。

「おい」
背後からの意外な呼びかけにムーンライダーは振り向く、快楽に身悶えするナガセの顔面をシバミティアが殴りつけ、ナガセは転倒した。
ザキの最後の弾丸は、自分の身を守るものではなく、「逃げろ」という思いを込めてシバミを狙った覚醒弾だった。
ザキの意思は逃げることや戦うことより、彼女の無事を願ったのだ。
「理解したわ、アンタたちは私と同じような特殊能力の持ち主、そして私に危害を加える敵」
ナガセは起き上がりシバミに襲い掛かる、シバミティアはシバミとナガセの間に入り込むが、ナガセはそれを弾き飛ばしシバミに噛み付いた。
「はっはーっ調子にのりやがって!無意味、無意味、無意味ぃぃぃっ!ァオォォォォォォン!! ドンガメのケツメド野郎が!オレがこのチビガキに気を取られてる間に逃げるべきだったぜ、オマエはなぁ!もっとも、逃げてもこのサイクロンで追い付いてぶっ殺すまでだがなぁ!」
シバミの血液はナガセの能力で上に引っ張り上げられる。
「すぐにオマエの頭は破裂する!」
しかし、そうはならなかった。シバミの姿に変化は起こらない。そしてシバミのスタンドが先程と比べ物にならないスピードでナガセを殴りつけ、その圧倒的なパワーで吹き飛ばす。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。

「何故だっ!?なぜ平然と立っていられる!?」ナガセは困惑し、シルビアを縛っていた能力が開放される。
シバミは答える「逆流する血を酒に変えて内臓に吸収した、上級者の私だからこそできる最低の技だ。そしてワタシのシバミティアは飲めば飲むほど強くなる!」
今、シバミは人生で摂取したことのない量の酒を吸収している、シバミティアの能力は限界まで引き上げられた。
「そして殴ると同時にオマエの血液をスピリタスに変えてやったわ!」
ナガセの視界が突然ブラックアウトする。アルコールで目が潰れたのだ!その上ライダーの足腰はもう立つことができなくなっていた。
(でも貧血と酔いで私も、もう意識が……はぁ…限界だわ、もう禁酒、生きて帰れたら…二度と飲まない…)
「さあ、エセヒーロー、テメェはぶっ殺す!そしてそっちのガキんちょには私を襲った理由やこの能力のこと、知ってること全部吐いてもらうからな!」

まだだ、まだここで死ぬ訳にはいかない、ライダーは叫ぶ。
「サイクローン!サイクローン!ァオォォォォォォン!! 」

バイクが唸りを上げ、主人の下へと駆けつける。

『まだ死ねない……私は殺すの!スタンド使いを殺すの!!』

バイクにしがみつき、窮地を脱しようとした。しかし、ナガセは気づいていない。

「スピリタスのアルコール度数は96℃。もう完全に燃料ね。マキロンの代わりにもなるわ」

「……」

「酒は麻酔が無い時代は飲ませてから手術したそうよ(うらやましい)」

「……」

「それを血管から、直でやったらどうなると思う?(私でさえ今キツい!)」



ドゥッ



ナガセは倒れる。



血中にアルコールが約0,50%以上あれば人間は昏睡し、最悪死を迎えるという。シバミはそれを利用した。


「貴方に捧げる酒は……“クルレフスカ”。
スピリタスより56℃も低いけど、ラベルにある教会にでも祈りなさい。」


ナガセ/ムーンライダリタイア


「あとは……あの憎たらしいガキ……!?」
そこにシルビアの姿は無かった……が!?



シルビア「…頭の痛みが引いていく」
(あの女がアイツをヤッたんだな)

シルビアは戦いのあった場所に歩む

シルビア「あの女なら、楽に逝ける…憂いの種は取り除かなければ…………ん?」

猫がいた、場に合わない服を着た猫が

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

シルビア「猫は猫でも…ただの猫じゃないといいたげだね

でもね、どんな生き物にも恐怖はある。
野生に近ければ近いほど恐怖の種は多くなるものよ………」


ドルチ「んニゃぁぁ~ぉ」


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最終更新:2008年06月18日 22:40