力がなくなったかのように膝から―ストン、とシバミは落ちる
シバミ「あ~、効くわぁ…」
これほど酔うのは初めての事だった
普通の人間ならば“酔う”では済まされないレベルだが
シバミ「あ~、すごいぃ…死んだ人が見える」
ザキ「…………それ俺の事スよね」
右腕を吹き飛ばされ、血を失った青白い顔の男が立っていた
ザキ「…ひどいんしゃないすかぁ?勝手に殺さないで………って酒くせぇっすよ!」
シバミ「…ほっといてよぉ、もう死ぬ~」
シバミは話した
自分の能力の事
就職難で困ってる事
今の私は幸せだと言う事
ザキ「…水を酒にできるんなら、酒から水もつくれるんじゃないすか?」
シバミ「やぁだぁ私はこのまま死ぬの、幸せなの~」
ザキ「…………今度新しい酒でますよ」
シバミ「…………シバミティア……」
ザキ「どっすか?」
シバミ「戻りましたよ……」
ザキ「良かった…ってなんで泣いてるんすか」
シバミ「…お酒もったいなくて……」
ザキ「また飲めばいいじゃないですか」
シバミ「あ、それもそうね」
ザキ「じゃ、俺は病院に…って離してくださいよ」
シバミ「…飲みに行く約束でしょ」
辺りの暗さと静かな場所から騒がしい音が聞こえていた
今男が折れたようだ…
シバミ「…永久就職かぁ」
ザキ「何か言いました?」
猫は二人を見ていた
魂(スタンド)・・・・か。
直面した危機を『勇気』で持って立ち向かう者達。
そして、勇気ある者達はおそらく・・・。
「ニャァァァァウ・・・。」
それは置いてけぼりは『嫌』だよ・・・。
と、言わんばかりの鳴き声であった。
そう。
それは『誰か』の気持ちを、代弁するかのように・・・。
二人は鳴き声の先を見つめた。
それは見たザキは、ハッっとして。
「怪我人の俺が説明するのは、少しばかりキツイけど。」
「薄々気付いてるとは、思いますが・・・。」
「あそこに居る子は・・・。」
「貴方を。」
ザキが言い終える前に、
シバミは『その子』に駆け寄った。
その子は『誰か』であった。
誰かは『シルビア』であった。
少し離れたトコロで。
身の安全を確保したその時。
迫り来るナガセの恐怖が、思い出され・・・。
全てを飲み込んで、そして消してくれる『海』と言う言葉を、
ブツブツと呟いて、力無く座り込んでいる女性。
シバミは、そんなシルビアに語りかけた。
「アンタ酔っ払いでしょ~~?
かなり痛飲したみたいね、解るわ~~~。それ。
『全てを飲み込んで、消しさってしまいたい時』ってあるのよねぇ。」
ピクリ。
シルビアは、その言葉に我を取り戻した。
全てを飲み込んで、消しさってしまいたいって・・。
え!ち・ちょっと、貴方は!!!?
シルビアが深く考える前に、シバミは言い放つ。
「でも、今は『人助け』。
酔い醒まし変わりに『救急車』でも呼んでくれないかな?
ほら、あそこに居る人、片腕を失けてる。
私、笑い上戸の泣き上戸だし、この場所どの辺かちょっと解らないから、
上手く伝えられる自信無い。
どうかな?お願いして良いかしら・・・?」
・・・・。
ちょっと・・。
頭オカシイの・・・?
だって、私を貴方をだし。
貴方だって・・・。
シルビアはそう思った。
だがそれ以上に、シルビアは受け止めていた。
その視線は『同情や見下したもの』では無かったのだ。
切なる願い・・・。
そして、シルビアは理解ができていた。
『 片 腕 を失った父親の辛さ』を。
・・・。
やっぱり良い仕事が見当たらない・・・。
今日のオカズは、これだけなの・・・。
知ってらっしゃる?あそこの父親は。
可哀想・・。
口ではそう言うのよね。
シルビア、貴方だけは幸せを掴むのよ。
忘れたい。忘れたい。
でも、忘れちゃいけない・・・。
だって、私のお父さんとお母さんなのだから。
だから海・・。
海は生命の源。お父さんとお母さんみたいなの。
海は全てを・・・。
・・・。
感情が湧き上がる。
考えるよりも早くに口が出た。
「私、酔ってなんかいません。」
あれれぇぇ~?
困った顔をするシバミ。
シルビアは『口を止められなかった。』
「でも、して欲しい事は理解できました。」
「待ってて、今連絡を入れます。」
シバミは微笑んだ。
その笑顔には『全てを飲み込んで、そして消してくれる感覚』があった。
シルビアは悪い気がしなかった。
「記憶が飛ぶ程、酔っていた?」
「いや。野暮で無粋か。」
「俺がチキンで、トラブルを背負い込みたくなかったって事で良い。」
「あぁー、痛ッ、早く救急車来ないかなぁ~。」
一人言を言うのもキツイので、ザキはこのまま気絶した。
「ニャァァウ。」
ドルチはその場を後にした。
第1話「俺は馬鹿と出会った。」
To be continued...