フ…
場に蝶が舞った…
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド…
大怪我をした男に腹を貫かれた男…
その表情は狂気に満ちており、自分の腹が貫かれたことに驚いているようだった。
また、その男と向かい合う男は何が起きたのかわからずに一歩退いた。
死体はどういうわけか漆黒の鎌を持っており、顔は青ざめ呼吸もなさそうだ。
揚蝶「どう…なっている?」
狂気の男は驚きの顔を急に戻し、無心のような顔つきになった。
そして自分の腹を貫いていた鎌を取る。
カンベエ「…cut…」
ボソっと口からこぼすと自分と向かい合っていた男に切りかかった。
佐藤「ッ!!!」
向かい合っていた男はただならぬ殺気を感じギリギリでかわす。
オレは何がなんだかわからなかった…がいままでもこんなことばかりだった。慣れた。
やたら蝶が多い…そう思ったくらいだ。
カンベエ「cut・・・cut・・・cut・・・cut・・・cut・・・!」
狂気の男は鎌を振り回す。
オレはそんな状況を見ていて自分でも驚いた。
『一歩踏み出した』のだ。
…ありえない…
狂気の男の殺気を感じ取ったのか・・・?
それとも向かい合う男を救わなきゃと思ったのか・・・?
否
何か…そう…『無造作にッ』一歩踏み出したのだ。
場の空気が…変わった。
******
佐藤(なんだ?今の一瞬の出来事はなんなんだ?
私の『オール・ラブ』が拳を叩き込んだと思った刹那……
鎌の刃が私の腹から飛び出していた
ここまでは…ここまでは理解できないことはない…
ナイフで刺され死んだはずの男は実は死んでおらず、鎌を持って私を襲った…
何故、彼が私を襲ったのかはわからないが…『事実』としてそういうことも起こり得るだろう
だが…
次の瞬間
その鎌は私に傷を与えず、今まで私と戦っていた、奴のドテッ腹に突き刺さっていたッッ!!)
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
佐藤の頭にふと、一つの言葉がよぎった
『量子トンネル効果』
量子トンネル効果とは、量子力学の分野において通常ではエネルギー的に乗り越えられるはずのない障壁を、ある一定の確率で粒子が通り抜けてしまう現象である。
さらに噛み砕いて言えば、壁に向かって投げたボールがその壁を破壊することなく通り抜けてしまう可能性があるということだ。
佐藤(例えば、『量子トンネル効果』によって鎌が私の体をすり抜けたとしたら…
だが…実際にそんなことが起こり得るのか?
普通に考えたとしたら有り得ないよな…
しかし…『可能性』が…存在するのなら…?)
佐藤は気づいていなかった。彼の周りに舞う一羽の蝶に。
そして佐藤の思考はそこで中断された
カンベエを鎌で突き刺した男の体は再び崩れるように倒れ…
カンベエ「cut!cut!cut!」
カンベエがその鎌を振り回し暴れ始めたのだ
その眼に宿る闇はカンベエのそれとは違っていた
佐藤「こいつ…さっきまでとは雰囲気が違うッ
これは…能力だ…『スタンド能力』ッッ
まだ…潜んでいるのかッ…他の『スタンド使い』がッッ」
カンベエの振り下ろす鎌を佐藤がギリギリでかわした瞬間だった
辺りが無数の輝く蝶に包まれる
ハッとした二人の動きが一瞬止まった
そしてその輝く蝶の群れの中から…
一人の少年が現れた
******
揚蝶「どう…なっている?」
「偶然」通りかかった暗がりの路地。
揚蝶は恐ろしい光景を目撃した。
目と鼻の先で「何者」かが争っていた。
刃物で殺された(ように見える)死体。
傷を負ったスーツ姿のサラリーマン風の男。
こちらに気づいたらしくその男が揚蝶に向かって何かを叫んでいた。
その男の近くで腹部からおびただしい血を流した男が、
虚ろな瞳で何かを呟きながら手に持った巨大な漆黒の鎌を振り上げてゆっくりと向かってきた。
その鎌にべっとりと塗られた血は月の光に照らされて妖しく輝いていた。
揚蝶「ウ … ウ ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ーーーーッッ!!!」
揚蝶は物凄いスピードで走り出した。
揚蝶「目の前で 殺 人 が起きた!!!早く安全な所へ!!!」
「あいつら…一体何なんだ!?あのそばにいた幽霊みたいなものは…!?」
「もしや…俺のまわりに現れる『蝶』と何か関係があるのか?」
「この『蝶』は一体…」
「 何 な ん だ !?」
揚蝶は一種のパニックに陥っていた。
彼が走っていった通りは…
民家の少ない郊外へと向かうものだった。
佐藤「マズい…… 早く追わなければ…… あの少年も…… 殺されてしまう……!」
佐藤は壁を支えにしながら2人を追った。
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(4)へ…