アットウィキロゴ

『マズい』……

『彼』は、焦りを感じていた。

『スタンド』同士の戦い。特殊な能力を持つものとの戦いは、これが
初めてではない。

今まで何度か戦いを潜り抜けてきたし、その中で「強敵」と感じる相手と
戦ったこともある。

しかし! 今、この状況は!
今まで経験したことのない、未曾有の『マズい』事態だッ!

一体、何が起こっているんだ!?

前を走る背中を追いかけながら、彼は胸中で叫んだ。

『 一 体 こ れ は 何 な ん だ ッ ! ? 』

『スレイヤー』は絶叫した。

「宿主」は腹部から血を失っているというのに!
体温はどんどん上昇し、身体中にボツボツと発疹が出来ている。
身体の操作が次第に鈍り、全身が鉛のように重くなっていく。
自分自身が痛みを感じるわけではないが、『感覚』として、スレイヤーは
それを感じていた。

スレイヤーは、『スタンド』を支配する『スタンド』だ。
本体である神城 静夜に、『スタンド使いを近づけさせず、平穏な暮らしをさせる』
ただその為だけに存在している。
隙をつけば、今支配しているカンベエのようにスタンド使いであろうとも
支配できるし、「スタンド使い」と「スタンド」の『絆』を断ち切って
スタンドを刈り取ることも出来る。
それが故に、「スタンド攻撃」への感覚の鋭敏さは、人間の持つそれとは
段違いに鋭い。

そして、スレイヤーの『感覚』は、この「宿主の不調」を……

『 ス タ ン ド 攻 撃 に よ る も の で は な い !』

と感じ取っていた。

(とにかく……このままではマズい! 『宿主』を変えなければッ!)

『理解不可能』な『宿主の不調』……それが、スレイヤーを焦らせた。

「cut! cut! cuuuuuuuut!」

カンベエの手を離れ、スレイヤーは強引に揚蝶 純との距離を詰めると、
その刃を一気に振り下ろした。 

******

「ウワァァァァァッ……!?」

身体を刃が駆ける感触に、揚蝶は思わず悲鳴を上げた。
しかし、「刃が通り抜ける感覚」はしたにもかかわらず、痛みは全くない。

「また…… 妙な事が……?」

何かにぶつかったはずなのに、怪我は無い。
……今まで、そういうことは何度かあった。
のっていた車や電車が事故に遭って、自分だけが無傷で生き残ることも。

そんな時、決まって周りにこの蝶がいた気がする……

ふと、揚蝶が周りの蝶に目を向けた瞬間。

『全ての蝶が崩れ落ち、目の前に浮かぶ鎌に吸い込まれるようにして消えた』

途端、揚蝶の背中を、ぞくりとしたものが駆け抜けた。
先程までは、異常な事態に驚きつつも、どこか恐怖心はなかった。
根拠は無いが、『自分だけは助かるんじゃあないか』
そんな思いが、心のどこかにあった。

しかし! 今、揚蝶の心は完全に『恐怖』が支配している!
何か『頼るべきもの』が! 失われてしまったような『感覚』!

時間が、いやにゆっくりと感じられる。
まるで水の中にいるような動きで、目の前の鎌がもう一度その身をもたげ、
一気に揚蝶に向かって振り下ろされ……そして、両断した。





「……『運命の女神』ってヨォ~~~~。言うじゃねえか」

低い声が、辺りに響くのを、揚蝶は耳にした。

「『運命』……言い換えればそれは、『必然』だとか……
 あるいは、『偶然』とも言うのかも知れねぇ。
 だが、どっちにしろ……もしそんなものを、操れる『力』があるとしたら!
 ……それは、『神』と呼ばれるものなんじゃあねぇのかぁ~~~~!?
 さっき『偶然』! アンタの能力に気付いちまった。
 操られてても意識はあったからなぁ~~!
 『ヘヴィー・クライ』! 『他人』も『素通り』させられるとは、
 『偶然』だったぜ!
 何せ今まで、他人を守ろうなんて考えたこともなかったからなぁぁぁ!」

揚蝶の目の前には、振り下ろされた鎌。そして、鎌を睨みつける
カンベエの姿があった。

「この『鎌』……どこのどいつのスタンドかはしらねえが、
 俺の手から離れたのは失敗だったな……
 それにしても、ひでぇ体調だ……こりゃあ『はしか』か?
 『偶然』病気にかかった、って、そう言う事か?
 しかし、それが結果、アンタを助ける事になったわけだ、『神様』よ」

カンベエは揚蝶ににやりと笑いかけた。

『スレイヤー』の誤算。それは、スタンドであるがゆえに、
「人間の病気」というものを知らない、という事だった。
『たまたま眠っていたウィルスを偶然活性化させる』のは『攻撃』ではないし、
病気によって引き起こされる諸症状も、『スタンド攻撃』ではない。
しかし、その『理解不可能』な事態が、宿主から離れるという致命的な『ミス』を
スレイヤーに発生させた。

「c……cut! cu……」

「二度も同じ手を食うか! 『ヘヴィー・クライ』ッ!!
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
 オラァァァァァ~~~~~~ッッ!」

凄まじい威力の拳が、凄まじいスピードでスレイヤーに叩き込まれる。
一瞬にしてスレイヤーは粉々になり、消え去った。
消え去るスレイヤーを見送り、カンベエはいつもの言葉を口にする。

「……てめぇも神じゃあなかったようだな」 

******

カンベエはいつも考えていた。
この世に『信じられるもの』はあるのか?と。

俺は今までまるでハキダメのような生き方をしてきた。生きるためならなんでもやった。「自分以外を信じない」「法を破る」それが生きることだった。

産まれてこの方親なんて「物」を見たことがない。仲間?そんな「物」あるとも思わない。信じられるものなんてありゃしなかった。そんな存在を信じてなかった。ただ……ただ、一番欲しいものだったのかもしれないが。。。

そんな人生に絶望しきっていた二十二歳の時(現在から八年前)。カンベエにある奇跡が起きる。。。

いつものようにカンベエは獲物の目星をつけた。目星を付けたのは金持ち風でヒョロイ体格のスーツの男だった。半殺しにでもして金を分取ってやろう。そんなことを軽く考え近づいた・・・
が、目を付けた相手が悪かったようだ。相手はヤクザだったのだ。初めは一人だけだったがカンベエが男に殴りかかるとすぐに周りには仲間がズラリってわけだ。
おいおい、そんな男ばっかで何する気だい?
そんな皮肉を言う暇もなく男達にボコボコにされる。

あぁ、死ぬな。。。

カンベエは思った。死ぬのも悪くない。ヤクザにボコられて死ぬのも俺らしい。そう思った・・・と、次の瞬間。何かにささったのか右手に鋭い激痛が走る。殴られ、蹴られ続けているのにその痛みはさらに強烈だった。

「オマエ シヌキカイ?シンジラレル モノ モ ナイママ」

******

頭に声が響く

幻聴か?そう思った。思った瞬間、さらにありないことが起る

スカッ!

俺を殴りつづけていた男の蹴りが空を切る。
次の男も、さらに次も、、、男たちは気味悪がりカンベエから距離をおく。
そのすきにヨロヨロと立ち上がるとカンベエの横には見たこともない奴が立っていた。
カンベエにも何者かわからない。わからないが、ある種の確信はあった。

あぁ、こいつなら少しは「信じられる」と

数分後、カンベエの周りには肉塊が横たわっていた。
ことが終わり、カンベエはいきなり現れたものを見る。これが噂に聞いてた「神」ってやつか?・・・いや、違う。それはわかっていた。だがこれは「神」に与えられた力なのだろう。神に選ばれた俺につかえる「天使」なんだろう。

「神」ってのはこいつよりすげ~んだろうな。会ってみて~な。「神」なら、、、神なら心のそこから「信じられる」のでは?

神に会いたい!

このときからカンベエの暴走は続く・・・揚蝶に出会うまで。

――――――――――――――――――

「へへ、やっと出会えたぜ。『神様』よ~。あんたに会うために俺は今まで生きてきたんだ。あんたに会うために『罪』を犯してきたんだ。あぁ、うれしいね~。
ただ、、、脇腹の傷のせいかな?はしかもあるしな、体がすげ~だるいんだ。目も、、見えにくくなってやがる。だがよ~そんなのはどうでもいいんだぜ。なんたって俺は『神様』であえたんだからよぉぉぉ。」

揚蝶は目の前の男の状況を見て思う。この人の状況はヤバイ、と。

「ぼ、僕は神なんかではありません。「普通の」学生です
それにあなたは『偶然』という言葉を使いすぎです。もし神がいるなら偶然なんてものは、、、」

揚蝶が言い終わるのを待たずカンベエの意識はすでになかった。。。

カンベエ リタイア! 

******

   (5)へ…
最終更新:2008年06月18日 23:05