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カンベエの最後の攻撃で「スレイヤー」は破壊された…

また揚蝶の周りには蝶が舞いはじめた。

揚蝶「この蝶…『何かが起こるとき』ッ!そう…『何かが起こるとき』にはいつもいたような・・・『気がする』ッ…なのになぜか…何故か確信を持って言える…!兄さんが死んだときも父さんや母さんが死んだ時も…
あの時も!あの時も!あの時も!あの時も!あの時も!」

ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ! ! !

佐藤「・・・ッ!」

ようやく佐藤は追いついたがカンベエは既に生き絶え、そしてその遺体の前で蝶を見つめ息を荒げる揚蝶がいた。

揚蝶「おれ以外には見えない『蝶』ッ!小さな頃から…「珍しい蝶がいる」って捕まえようとしても絶対に捕まらず、兄さんに言っても見えていないようだった…」

佐藤「・・・精神の像(ヴィジョン)・スタンドという…」

佐藤は揚蝶の独り言を遮るように口を開いた。

揚蝶「スタ・・ンド…」

揚蝶はようやく佐藤に気付く。先ほどの「向かい合っていた男」だ、と。

佐藤「私の『オールラブ』…そしてこの殺人鬼の『ヘヴィー・クライ』といっていたもの…先ほどの『鎌』…。それが『スタンド』だ。」

揚蝶はうん、うん、とうなずくでもなく黙って聞いている…

程なく先ほどの場にいた青年がそこを通りかかった。

神城「・・・」

『スタンド』・・その概念が彼の心の中をかき回すようにぐるぐる
回った…

ギョンッ!!

ぐるぐる回ったと思ったら先ほどの『漆黒の鎌』が再び現れたのだ。

神城は驚きしりもちをついた。

佐藤は気付いた「『鎌』の本体はこの青年である」と。

そしてこの青年もまた、「無意識のスタンド使い」であると。

鎌は佐藤に向かって切りかかろうとした。が・・・

がしィッ!

神城が鎌を掴んだのだ。これは鎌でさえ…神城でさえも予想だにしなかっただろう。

「特に意味は無い行動」を人は取ることがある。

神城の今の行動意識は「その程度のレベル」であった。

鎌は神城を宿主にしてしまう。

神城の表情は変わり、怯えや恐怖・不安といった表情が薄れていく。

神城「これは僕の『スタンド』。そういうものなんだろう?『スレイヤー』。昔からそんな名だったんじゃないかな。『絆』を切り裂く、スタンドだ。」

神城は確かな愛を与えられいた。本人もそれを認めていたし周りから見ても明らかであった。しかしこの『絆』を切り裂くスタンドは神城の何処から生まれたものであろうか…。

二面性・・・神城の陰陽の如く別れた二面性からである。
「愛と正義」の心を持った神城静夜が「出来心から勝手に入った」祖父の書斎。その「出来心」は神城の中では小さいが「確かな悪」でありそれは『スレイヤー』として神城と共に成長し、今では神城の「愛と正義」の心と対を成すまでに大きくなっていた。

神城「『こっち側』に出てきたのは初めてだよ。フフっ…今までは『この男』を守るための存在だったけど…もう『自分』を守るために闘えるんだね。」

佐藤と揚蝶は身構えた。目の前の男が発する殺気は、殺人鬼のそれと近しいものになっていた。

蝶が舞う。

揚蝶「『バタフライ・キッス』僕が付けたんじゃァない。この蝶達が伝えてきた。全ての蝶には『自我』があるようだ。しかし『別々のこと』を考える事はない。全てが同じ目標を見据えて行動する。」

佐藤は考えた。この少年は『正義と悪』の『両極』を持っている。自分のスタンドで更正させる事ができない。と。

再起不能にできるのか・・・・自分に若者の未来を摘み取れと言うのか…

揚蝶という青年。神城という青年。間違い無くどちらかの未来が摘み取られてしまう。

佐藤が悩む間に神城は動いた。

神城「ハッハァーー!『スタンド使いが僕だけになれば』間違い無く僕は安全だよねェェェェェ!!!?」

佐藤に切りかかる神城。

佐藤「くそッ!『オールラブ』ッ!『チョーク・ブレッド(チョーク弾)』ッ!!」

ガガガガガガガガガガガガガ!!!

チョークで足止めし、距離を取る佐藤。

揚蝶「この『バタフライ・キッス』…自分で操作ができないッ…?」

揚蝶がスタンドに自分の精神力を削れば削るほど蝶が増えつづける、良く見ると妖精の様でもある。

動き回る佐藤と神城にそれは次々に触れる。

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! ! !

天気の良くなかった空から雷鳴が鳴り響く。

ガァァァァァオォォォォォン!!!

神城「ぐああああああああああああああああ!?」

雷が神城に落ちた。

神城「ぐ…お・・・お・・・。」

生きている・・雷が落ちたこともそうならば、生き残ったこともまた『バタフライ・キッス』の能力。

バタフライ・キッスは「何者にも味方しない」気まぐれなスタンドあった。 

******

倒れている神城の傍に、生徒手帳が落ちていた。
佐藤をそれを拾い、目をやる。

佐藤「神城 静夜…大人びて見えるが、まだ中二か…何より一番の驚き…私の学校の生徒じゃあないか…」

神城「ああ…僕はあんたのこと知ってるぜ佐藤先生…」
そう言いつつ、神城は再び立ち上がろうとする。

佐藤「やめろ。雷の直撃を受けたんだ…今それだけの元気があるだけでも奇跡的だ」

神城はその言葉を聞かず、スレイヤーを握り立ち上がった

神城「うるさい…殺してやる…」

佐藤に切りかかる
反射的に佐藤は一歩退いてかわす

佐藤「聞き分けの無い生徒だ…
ところで…そこの君、名前は?」
神城を見据えつつ、佐藤は揚蝶に話しかける

揚蝶「え…俺ですか…揚蝶 純ですが…」

佐藤「ふむ…なら純と呼ばせてもらおう…
純、君のスタンドを何とかしてくれないか?どうも…先ほどから起こる『有り得そうもない』出来事は、このスタンドの能力としか思えないのだが…
このままでは何が起こるかわかったもんじゃあない」

佐藤はさらに切りかかってくる神城をいなす

揚蝶「佐藤先生…だっけ?
このスタンド…『バタフライ・キッス』はおれにもどうしようもないんだ…制御できないんだッ!」

佐藤「やれやれ…未熟な生徒が多いな…」

揚蝶「み…未熟?生徒?」

佐藤は険しい顔の中に少しだけ笑みを浮かべた

佐藤「お前学生だろ?私の目に映る全ての学生は私の生徒なのさ…フフ…」

神城「死ねッ」
落雷のダメージが残る体で、さらに神城は切りかかる
だがそれまでのようなスピードはもはや無い
佐藤はなんなく避ける

佐藤「スタンドは精神エネルギー…
そのスタンドを操れなかったり、逆に操られたりするってのは、
まだまだ精神が『未熟』ってことだ…

純…神城…二人とも
もっと『成長』しなきゃあな…」

辺りを舞うバタフライ・キッスを眺めて揚蝶はつぶやく
揚蝶「『成長』…?」

その時だった

大型トラックが三人のいる場所に突っ込んできたのだ

佐藤「なッ…!!」

揚蝶は思った
こんな道に大型トラックが突っ込んでくるなんて普通は有り得ない…が、それもこの『バタフライ・キッス』の能力のせいなんだろう
そして自分はここで死ぬのだろう…

目の前が真っ暗になった


しかし、再び揚蝶が目を開けると、目の前にさきほど自分達の場所に突っ込んできたはずのトラックが煙をあげて停止していた

横には自分と同じように呆けた顔で尻餅をついている神城がいる
揚蝶は気づいた
トラックが三人を轢く寸前、佐藤が神城と揚蝶を突き飛ばしたのだ

そして、トラックのすぐ傍に佐藤は倒れていた
地面を真っ赤に染めて

佐藤「私の生徒を死なせるわけには…いかないからな…ハハ…」
弱りきった佐藤が力なくつぶやいた

神城「そんな…そんな…僕を…助けるなんてッ…」

神城は泣いていた
本来持っていた正義の心が、涙を流していた

神城の握る『スレイヤー』は漆黒から銀白へ、その色を変えていた

揚蝶「佐藤先生…俺のせいだ…俺の…」

佐藤「純…良いんだ…お前はまだ生きなきゃあならない…
お前のその能力は必ずお前の力となる…『成長』しろ…そして幸せな人生を歩…め…

そして神城…お前も…闇に飲まれちゃあいけない…正義の心を持っ…て……」

最後の言葉を語る前に、佐藤の眼が静かに閉じた

揚蝶「うあ…
うああああああああッッッ

だめだッ佐藤先生!死なないでくれッ!

死んじゃだめだァァァーーーーーーーッッ!!!」

揚蝶が叫んだ瞬間、あたりを自由に飛びまわっていた『バタフライ・キッス』が揚蝶の元に集まりだした

揚蝶「バタフライ・キッスが低い確率の事象を起こすというのなら!
『佐藤先生が助かる確率』だって少しはあるはずだッッ!
『バタフライ・キッス』よ!佐藤先生を助けてくれェェェーーーーッッッ!!!!!」

『バタフライ・キッス』は佐藤を取り囲み、輝きを放つ。

数十秒…いや、数分経っただろうか
あるいは何秒かほどだったのかもしれない

バタフライ・キッスが姿を消し
ゆっくりと佐藤は眼を開いた

神城「はッ!先生ッッ!」
揚蝶「佐藤先生ッッッ!!!」

佐藤「お前達…事故車両からはできるだけ離れたほうがいいぞ…火災の危険があるからな…」
佐藤は二人に笑みを見せた


『バタフライ・キッス』は極めて確率の低い事象を現実のものにするが、その事象の決定は揚蝶の意志には関係なくアトランダムである
だが、『偶然』に本人の意志とその『事象』が一致する確率は、極めて低いながらも存在していた


しばらくして救急車やパトカーが通報を受けて事故現場に到着した
そしてそこには、泣きながらも笑いあう二人の生徒と、一人の教師がいた。


第2話『神と鎌』

To Be Continued...   外伝『月影蝶夢』

 
最終更新:2008年06月18日 22:58