雨が降り続く中、膝を付き虚ろな瞳で自分の腕を見ている。
苦笑い、ニヤケ顔、泣き顔、真面目な顔、一人で百面相をしている男がいた。
(あー・・・、最強の腕っていったって、この腕はないだろ。
バランス崩しすぎだぜ・・・?)
男の腕は肘から下が、土色に変わっていた。
(秀丸・・・、ちゃんと連れて逃げてくれただろうか・・・。
俺の腕、どこにいっちまったかな・・・。
・・・あいつのスタンド能力が聞かない相手か・・・。)
自分の腕、戦ってる相手に最初に吹き飛ばされた。
戦っている相手、死んだスタンド使いを呼び出すスタンド使い。
考えていることがぐるぐるとまわる。
(あー・・・そういえば、なんであいつは・・・そんなことを知ってるんだ?
・・・それにあいつのアニキはどうなったんだ?)
空気が変わる。
(きた、か)
仮面ライダーそのものが土から這い出し、奇声をあげながら男へ向かってくる。
「JITTERIN’JINN ALTERATION・・・」
男の両腕が輝く黄金へと変化する。
二人が激突した瞬間、爆風と爆音と壮絶な叫び声があたりを支配する。
ライダーキックで吹き飛ばされて、壁にたたきつけられ、男はそれでも生きていた。
壁にもたれかかり、男は自分の腕を見ている。
(この腕、どうなってるんだろうか。
スタンドの力をこめた瞬間黄金に光り、全てのものを砂に変える。
物を作る能力の反対・・・?それに明らかに近距離パワー型のスタンド以上のッ)
「ガハッ・・・」
造ってもらった両腕以外には深い傷、浅い傷多様な傷がついていて、それらから流れ出た血はもう、生命活動を停止させるまでに至っていた。
(死ぬわけには・・・、いかない。
あいつに作ったチョコケーキの感想もまだきいてねえ・・・。
誕生日。おめでとう、も・・・まだ言ってねえ・・・。)
男の意識が闇に堕ちていく。
最後の瞬間犬の鳴き声が聞こえたような気がした。
『アン!!』
【シン: JITTERIN’JINN ALTERATION
出血多量により再起不能(リタイア)】
雨の中、呼び出されたライダーが敵を探している。
(ライダーの辺りに人はいない、か。)
最後のライダーとのぶつかり合いで消滅したのだろう、レッドはそう考えた。
何度も何度も、レッドの呼び出したライダーを消滅させ続けたシンには敬意を表したい気分ではあったが。
(あのスタンドは弱すぎた、特殊な状況下であった先ほどならいざしらず・・・通常の戦いでは役にたたん。
もう少し成長して殺すのが一番よかったのだが。
生きていたとしても、あの失血量だ。脳に傷害が残るだろうよ)
携帯を取り出し、連絡を取る。
「あぁ、私だ。――――そうだ始末はつけた。
肉片一つ、いや最初に吹き飛ばした腕の肉片以外はのこっておらんよ。
――――わかった、あとはモティをよびだせばいいんだな?
わかっているよ、いつも通りだ。
それにしても先ほどお前を襲った連中は・・・。
――――まぁ、いいでは私もマンションに戻る。」
(我が弟ながら、ほしい女の男を殺すとは、まさに外道だな。
それにまたいつ捨てるやら。前の女を捨ててそんなにたっていないだろう。
しかし、こいつもまたいずれ私の能力の一つになる・・・。だから成長させて殺す。
こう考える私も種が同じ外道の親から生まれたということ、か。
性格に腹の違いは関係ないようだな)
レッドは笑いながら夢の扉を開き、消えていった。
ぬれた髪の毛をタオルで拭きながら話す男がいる。
「はい。それであいつはどうなりましたか?
――――きちんと確認したんでしょうね。ああ、腕は仕方ないでしょう、あれが吹き飛ぶのはこの子も見ていますから。」
ソファに寝ている、女を見ながら男は言う。
「ええ、モティさんさえいれば、私の能力を増幅させることができますからね。
――――うまくいきますよ、支えを失った人間は脆い。そこを少し支えてやるだけでいい。
さらに能力で補強すれば、まぁ明日の夜には私の腕の中で寝ていますよ兄さん。
能力が切れてもその頃には私のことを思う気持ちが生まれていますよ。
剛司さんが先に運んでくれたお陰でこの子はまだおきてませんよ。
怪我一つありません。
ジョーイとなんていいましたっけね・・・、もう一人は興味がないので覚えていません好きに考えてください。
それでは。」
時間は今16時過ぎ、モティは遅くとも18時には来るだろう。
(兄さん、あなたがどういう考えで私の手伝いをするのかもちろん分っていますよ。
だから私もあなたのチームを利用させてもらう。)
女を見る。
笑顔で眠っている。
これから自分が何をされるかも分らずに。
「おいで、あかまたー」
背後から蛇がぬるりと出てくる。
「この子の記憶からシンという単語とつながっているものの3割をボクの名前とつなげなさい。」
シャーと、蛇らしい声で鳴くとあかまたーは女の首に巻きつく。
男の方は少し女を見ていたが、何かを思い出したのだろう苦々しい顔をしながら女の顔を撫で、下顎を押さえ口を半開きにさせると
口に口を重ねた。
キスと呼べる優しいものではない。
一分程の間、男は女の口を犯し、寸前に自分の唾液を女の口に注ぎ込み微笑んだ。
「君が今まで誰と一緒にいたとしても、わすれてあげるよ。
これから君はもうボクしか見えないんだから。
昨日初めて君を見たときに思ったんだ、あぁ、君はボクのものだってね
デュカ」
秀丸はほんの数時間前のことを思い出していた。
そう、デュカとシンが手をつないで自分の前に現れた時の事を。
【秀丸:suite Yoshitsune(組曲義経)
怪奇現象とされている現象を起こすことが出来る。
あかまたー:蛇の一種であるアカマタが、女性の心を騙す】
夜が明けて。僕『秀丸』と『デュカりん』との生活が始まった。
僕の目的は、レッド兄さんと共に『 互いを利用し合い、数多のスタンド使いを都合良く利用する事』だ。
何故そんな事をするかって?まだ秘密さ。
取り合えず、僕と言う人間を、
『 誰かが互いを愛し合っていても、片方を 僕 の モ ノ にしてしまう人間 』。
と。受け取って貰えれば良い。
僕はね。『 この世は 略 奪 を す る 事で成り立っている』と思っているんだ。
其処に、主義主張の違いがあるのだろうけど、
これからも、そうやって生きていければ良いなと思っている。
まぁ。
チョコレートでも食べながら、見ていておくれ。
僕とデュカりんとの、『甘い生活をね 』。
もう名前も忘れちゃったけれど・・・。
出血多量になった彼にも、『見 せ て や れ れ ば 』良かったのになぁああ あ あ あ ー 。
現状、それだけを残念に感じている。
デュカと彼とが、手をつないで自分の前に現れた時の事を、思い出す度にね。
・・・・・・
「デュカりん。」
「お願いがあるんだ。」
「そう。
その、じわじわと湧き出る『熱い液体』を、
『 僕 に 振 り 掛 け て 欲 し い 』んだ。」
「怖がらなくて良いよ。
誰だって始めはそうだし、『恥かしさだって覚える』モノだ。」
「『 快 楽 』を感じているンだろう? 身を任せれば怖くはない・・・。」
秀丸の言う液体とは、デュカが持つ、『ロウソクのロウ』の事である。
デュカは困惑する。こんな事、楽しくなんてないわ・・・。
でも、私。 秀丸さんの事が好きだし、ロウを振りかけてあげなきゃ・・・。
デュカは、ロウを振りまける。
ジュ・・・・ッ!!
その瞬間、秀丸は激昂(げきこう)した。
「こぉおおおおの!
ク サ レ ア バ ズ レ がぁああああああ あ あ あ あ あ あ ! ! 」
秀丸は、半裸のまま立ち上がったッ!!
「誰が『 顔 に 振 り 掛 け ろ 』と言ったァーッ?
メスガキめ! 今の行為は『 愛が消え失せた 』証拠だよなァアア ア ア ア ! ! 」
デュカは怯え、震えている。
秀丸は続ける。
「お仕置きが必要だな!
まだ『未開発な肉体』に『 テ コ 入 れ 』をしてやらなければならない!」
お仕置き。未開発な肉体。テコ入れ。
単語を聞き取る度に、デュカの震えは酷くなるッ!
秀丸が、にじり寄るッッ!!
「可愛らしいメスだなぁ、逅歌 望(ぐか のぞみ)。
逅歌のつづりを間違えて、『デュカ』か。ますます持って可愛らしいぞ、『デュカりん!!』」
歪めた顔で 言 い 放 つ ッ ッ ! !
「絶望ォオオ オ オ オ ー に、怯えた面(つら)している淑女に対してッ!
長い時間をかけ、『 たっぷりとお仕置き 』をしてやる時程、喜ばしい事は無いぞォッッ!!」
秀丸が、『お仕置き』を始めようとした瞬間ッッ!!
Trrrrrrrrrr!
Trrrrrrrrrr!
着信音が鳴り響くッ
秀丸は渋々と・・・。
携帯に出た。
「・・・。僕だ。」
「トモロヲが死んで、レッド兄さんが戦うハメにね。
良いさ。互いがどうなろうと、全て互いの手の内なのだからね。
不幸があったら、線香でも立ててやる。」
「それで?今、立て込んでいるんだ。
ほう・・・。あの日(シンが出血多量になった日)、『 僕を襲った連中 』がねぇ・・・。
二人とも向かって来ている?なるほど。『殺(や)り合うしかない』か。
あれほどの腕前だ・・。
僕等が今後、何をするにしても、此処で決着をつけなければ、抜き差しならない状況に陥るだろう。」
秀丸は命令を下した。
「よし、剛司。
『お前。顔に ア ザ を 作 れ 。』
そして、眠り続けているジョーイを、起き掛けに『迫り来る二人に会わせな。』」
後は解るね。その間に僕も行く。
あの凄腕が相手なら、僕も行かざるを得まい。」
「ま、帰ったら楽しい時間を過ごそうよ。
剛司も一緒に入れてやる。『女は芸の肥やしだろ?』。
大丈夫。夢は適えてやる。家系上、その方面に顔が広いのだからね。
それじゃ。上手くやるんだよ。
『チョコレートは、お前の分も用意しておく。』」
プツ。
秀丸は服を着ると、何も言わずに家を出て行った。
施錠の音が鳴り響く。
その音共に、デュカは泣き崩れた。
これから、自分は『どうなってしまうのだろう?』
何で私は、秀丸さんの事が好きなの・・・?
誰か・・・!誰かァ・・・・!!
「 シ ン ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ! ! 」
デュカは、この言葉の意味を理解できなかった・・・・。
・秀丸・剛司 (・ジョーイ)
秀丸達を狙う二人組を迎え撃つ。
・モティ
レッドに会った後、彼は・・・?
窓にカーテンが掛けられた薄暗い部屋の中、薄く煙るロウソクの光に照らされて、一人の少女が泣き崩れていた。
私は秀丸さんが好き。
疑いようのない事実。
でもなぜ?
私はいつあの人に会ったの?
何で秀丸さんを好きになったの?
それに。
「シ……ン……」
さっき私の口からこぼれた言葉。
何のことかわからないのに。
全然わからないのに!
何でこんなにも心が温かくなるの?
何で張り裂けそうなほど切なくなるの?
何でなの……!
もうわかんない。全然わかんない。
死にたい……。壊れそうだよ……。
『ダメ』
心の中に響いた声。
誰の声かもわからないのに、すごく懐かしいような、それでいて熱く自分の中から何かが湧き上がるような声。
『アナタハヒトリジャナイ。ワタシハ、イツデモアナタノソバニイル。ダカラ……アキラメナイデ』
「誰……?」
『ワタシハ、『キャラメル・ミルク』。アナタガシタイノハ、トロケルヨウナ、アマイコイデショウ? ダカラ……』
デュカは静かにうなずく。
『ワタシニメイレイシテクダサイ。スベテヲトカシテゴランニイレマス』
「わかった! 『キャラメル・ミルク』!」
ドアノブをつかみ、同化。部屋の外に出る。
私はデュカ。私はしたいことだけできればいいの。秀丸さんにだって邪魔はさせない。
だから、会って確かめるんだ。
こんなところでぐずぐずしてられないんだ!
秀丸は剛司たちのもとへとバイクを走らせる
その頭の中は、これから起こるであろう戦いのことよりも、デュカのことで占められていた
(さぁーて早く終わらせて、『お仕置き』の続きをしなきゃあな・・・)
だがそこに、また別の思考も入り混じる
(僕は…捻じ曲がっているんだろうな・・・
レッド兄さんと同じくらい・・・いいやそれ以上か・・・
女を『略奪』し、『支配』することで高まるこの興奮・・・
フフ・・・ド変態だな僕は・・・)
別に、女を支配することに罪悪感は無い
ただ、この『性格』・・・というよりむしろ『性癖』は、秀丸の生い立ちに関係があると秀丸自身は理解していた
レッドと秀丸は兄弟であるが、母親が違う
父はひどい男であった
ヤクザまがいのことにいくつも手を出しており、また女性を『モノ』としか見ていなかった
二人が物心ついたときにはそれぞれの母親はいなかったが、
父の横にはいつも違う女がいた
もしかすると、レッドと秀丸の他にも兄弟はいるのかもしれない
二人は父の元で育てられたが、それが『愛情』によるものではないことを二人はわかっていた
その頃から既に発現しはじめていた二人の『不思議な能力』――
父はそれを利用し、わが子らを幾度と無く犯罪に加担させた
そしていつの間にか、二人の心は捻じ曲がってしまったのだろう
秀丸の女性への極端な支配欲は、単に父親譲りのものなのか、あるいは見たことの無い母親への愛情が歪んだものなのかもしれない
秀丸はわかっていた
どんなに鍵をかけてデュカを閉じ込めても、彼女の能力ならいとも簡単に抜け出せてしまうということを
無論、その『意志』さえあれば、の話であるが
とはいえ、洗脳がまだ完璧ではない今なら、その可能性は充分にある
ならば何故その対応策を用意しておかなかったのか?
監視役をつける等、なんとでもできたはずだ
その時間が無かったというわけでもない
その理由は、秀丸にも理解はできなかった
あるいは『支配欲』とは違う感情がわずかに存在し、それが唯一の逃げ道を作った・・・のかもしれない
「そろそろか
今は目の前の戦いに集中しなければな・・・」
そして秀丸は戦場に到着した
シンは自身の体に降り注ぐ雨粒を一粒一粒感じていた。
自分はもう死ぬ…それだけが決まっている。
―そう思っていた。
突然雨がやんだ。違う…誰かがシンに傘を差し出していた。
(ああ…誰か来たな…止めでも刺しに来たのか。)
―声が聞こえる。
「こ…つも…ンド使い…?」
シンは聞き取ることができず、そのまま意識を失った。
――――――――――――
―「生きているか?」 「かろうじて…生きてますわ。」
1人は男。黒ずくめで背が高く中性的な顔立ちだった。
1人は少女というには大人びていて、女性というには若い。
そんな印象だった。
男の手にはたくさんの氷と『シンの腕』が入ったビニール袋が握られていた。
「応急処置はできるか?―『リンゴ』?」 「もちろん、淑女の嗜みですわ。」
『道祖土 林檎/スタンド名:アブソルート・ドメイン』
男は何かを言いかけて口をつぐむ。
「…ここからなら『闇医者』が近いな…まっすぐ行けばつく…ちょうどいい、『これ』を使うか。」
男はポケットからキーケースを取り出し、鍵束の中から『釘』を抜き取った。
その『釘』には『闇医者』というラベルが張ってあった。
「そそそ…それを使うんですの?」
リンゴは力の限り手を振り拒絶のサインを出した。
それを無視して男はシンのポケットから学生証を取り出し、放り投げた。
「めんどい事とよぉ…アブネェ事は好きくねぇんだよぉ…。やると決めたら『一直線』だ!!!」
「わかりましたわ…」リンゴは深いため息をついた。
男は腰に袋をぶら下げシンを腕で抱きかかえた。
「ちょ…ちょっと!!普通そこはワタクシじゃあなくて!?」
―無視。
リンゴは頬をプクッと膨らませ背中におぶさり首に腕を回した。
「面(おもて)を上げなさい…シン。」するとシンの体が浮き上がった。もちろん2人も。
「さあ行くぜ…。『釘』よ、元にもどれっ!!!」そう言うと男は『釘』を口にくわえた。
すると『釘』が激しく揺れ吹っ飛んだ!!!もちろん2人も。
それはとてつもない速度で道を行く人々には見えないほどだった。
1km先の場所まで数秒で移動すると『釘』は雑居ビルの壁に刺さっていた『釘』にぶつかった。
するとその『釘』は『1つ』になり地面に落ちた。
その『釘』は先ほどの倍の大きさになっていた。
男はそれを拾いキーケースにしまった。
――――――――――――
そのビルの中には汚い身なりの老人がいた。
「よう、ワケありかい?」 「ああ、完璧につなげてくれ。」
男はシンをベッドに寝かせ、袋を放り投げた。
「あいよ。」老人はベッドを引っ張り奥の部屋へ消えていった。
奥の部屋はこの外見とはほど遠く清潔で最新の医療機器であふれていた。
リンゴはイスに座り足をぶらぶらさせ、男は部屋の冷蔵庫からコーラを取り出し飲み始めた。
「どうせまたツケなんだろ?」老人はドアから顔をのぞかせ悪態をついた。
「ああ、ここにツケといてくれ。」
―BAR『Bulls・Eye 』オーナー―
「どっちにだい?」
―兼―
「もちろん、裏に…さ。」
―掃除屋 バーレル―
やれやれ、といった雰囲気で老人は奥に戻っていった。
「でも、どういうワケですの?」
小首を傾げながら林檎は聞く
「あん?」
「だってバーレル様が雨の中を出かけるなんて面倒な事を無意味にするとは思えませんわ。」
バーレルは立ち上がり窓から外を眺める。
雨が降り続いていた。
バーレルがなにか言おうとしたその時、奥の部屋から物が倒れる音が響いた。
「バーレル様ッ!」
声が聞こえるより早くバーレルは扉を開け中に入る。
「おい、なにしてやがる」
血走った目をバーレルに向けシンは黄金に光る腕を降り――――――
『平伏しなさい、シン』
林檎の口からでたその一言には妙な色気があった。何故だか知らないが、この方に“名前”を呼ばれたら平伏しなければいけない。
そう考えさせられる強制力がその声にはあった。
意識を委ね、自分から額を床に付け―――地面に引っ張られるようにシンの体は床にたたき付けられていた。
(委ねるなッ!これはスタンド攻撃ッ!)
「林檎の声を聞いてもまだその目でいられるか…大した精神力だが」
(お、俺がもう一人いるだァッ!?)
「お前の頭脳と体を二つに分けた、半分の体に一人分のスタンド攻撃には耐えられまい。
あいかわらずいい相性だ」
林檎は頬を赤らめ
「もう少し強めますか?バーレル様」
「いや十分だ、もう顔もあがってねぇ。
これ以上面倒かけさせるな、折角助けてやったんだからな」
助ける、その言葉にシンは反応した
「助け…そうた、助けるんだ」
「…何を言ってるんですの」
小さ声だった
魂を込めた小さく大きな声だ
ドドドドドドドドドド
「そうだ、俺はデュカを助ける!助けるんだッ!」
ド ド ド ド ド ド
「こんなッ…ところでッ!寝てなんかいられないんだッ!!」
「まさか、こいつッッ!動けるのかッ、この状況でッ!」
林檎が青ざめた顔で
「近付きますわッ!」「やめろ林檎“近付くなッ”!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「俺のスタンドッ!新しい名前の通りにッ、進化した力で突破して見せろぉぉぉーーーーッッ!!」
「「「やめんかッ!!」」」
黄金に輝く腕を支えに立ち上がったシン
更に近づこうとした林檎
それを止めようとしたバーレル
それらを止めたのは老人の一括だった
「ワシの病院を壊す気かッ!」
老人は轟々と叫ぶ
「拾った命を大切にせんカァッ!!」
「誰も助けてくれなんか----」
「嬢の見事な応急手当がなければ、坊は死んどったんだぞ!
礼も言わずに殴りかかろうとするとは何事かッ!」
ずかずかとシンの前に
「嬢!バーレル!わからん力をやめいッ!」
「あの、でも」
「でもも、なにもないッ!」
『林檎』、一言バーレルは声をかけスタンドを解除すると口にする。林檎も同じように口にした。
「坊ッ!いう事はないのか?」
「え?」
「礼も言わんのかと聞いておるッ!」
爺さんの気迫に押され
「あー…、ありがとうございました」
「…淑女の嗜みですわ」
「うむ。
坊よ、ワシらは別に坊を取って食おうというわけではない。
そこの男に頼まれて坊の腕を繋げてやろうとしただけなのだ。
しかし坊には立派な腕がついておる、じゃから起こして話を聞こうとしたところ」
「暴れた、と」
バーレルが一言付け加えた
「…俺は、このままでいいんだ」
「いいんじゃな?その腕で。、あぁ見たところ特に傷もないし…メスも通らん」
「大切なんだ」
「その大切な腕とやらで、誰かを助けに行くつもりか?」
なにもいわず、シンはうなずいた
「認めん」
「え?」
「坊、お前の体は多量の出血による仮死状態におちいっとる。
血圧、心拍全て異常じゃ。命を無駄にすることもあるまい」
「護らなきゃいけないんだッ」
「その誰かを護る為に、坊が死んだらそいつは悲しむんじゃないのかッ」
「それはッ…」
「じゃったら休め!」
バーレル、林檎を部屋から追い出し爺がなにやらシンとしゃべっている。
****
「どうなった爺さん」
「バーレル、秀丸とやらと一緒にいるデュカという子の事を調べて来い
秀丸と一緒にいるなら安心できるそうなんじゃ、それだけでも確認して来い」
「…それは」
「ツケをチャラにしてやる!いって来いッ!」
めんどくせえ、一言つぶやきバーレルは林檎をつれて出て行った。
廃マンションがあった場所、現在は砂漠のようなところに人の姿があった。
「キャラメル・ミルクこれがシンって人?」
「ソウデスヨ デュカ」
何度シンを思い出そうとしても、秀丸の顔が思い浮かんでしまう。
だから、キャラメル・ミルクに作らせた等身大の人形で確認した、だが
「どうして両手ないの?」
「サァ?ワタシノサイゴノキオクダトコウデスヨ」
ふ~ん…、そういいながらデュカの目はまるで宝物を見つけた子供のような輝きをしていた。
(なんか、ハグ、したいな)
「スレバイイジャナイデスカ」
「えっ…」
すこし逡巡し
ぎゅっ、と抱きしめた
なつかしいような、さみしいような
そんな感触
ふと見上げたところに
「…秀丸さんともキスまではしてるし、いいよね」
二人とも好きだなんて、最低だとは思うけど
この、シンって人の形をみていると
“キス”をしたい。
一瞬くっつき、そして離れた
(そろそろ、秀丸さんの所に戻ろう。
嫌なことは嫌って言おう。
どうして秀丸さんを好きになったのかもう一度考えてみよう。
だから、もっと話をしてみたい。)
秀丸の家を出るときよりも晴れ晴れとした顔でデュカは歩き出す。
不思議なことに、人形のシンを思い出しても秀丸の顔は出てこなかった。
・外伝『7話外伝、2』
アタクシは『 剛 司 』と申します。
前座の落語家。 三十路男でございます。
この度、『レッド様、秀丸様』にくっついて、『 色々な悪事 』を行っております。
ここでのお話は、その『 悪 事 』。我ながら悪い事をしているなと思います。
ですが、勤勉な努力家故、レッド様、秀丸様から『 信 頼 』を得る立場になる事ができました。
さて、今回のお話でございます。
秀丸様が『 戦 場 』へと到着致しました。
そこで出迎えておりますのは、アタクシ『 剛 司 』でございます。
どうか、事の成り行きを、見守り下さいまし。
・・・・・・
「失敗したようだね、剛司。」
秀丸は、剛司に話しかける。
剛司は、俯(うつむ)いて、気を落としている。
剛司の顔にアザがある。
どうやら、『重力波を展開するスタンド使い』と『触れた物を二つに「分ける」スタンド使い』は、
ジョーイをぶつける策を見破り、難を退けたようだ。
だが、『策は 一 つ で は 無 い 』。
「レッド兄さんの居所は教えたのだろう?
トモロヲは『 惨劇を起こすスタンド』。彼等が見つける事も容易いだろう。」
剛司は答える。
「御意にございます。
『ジョーイくんは、息巻いて向かいました。』
上空を見上げると、『D・M・Q嬢』も確認致しました。
ジョーイくんを、追って行ったようです。」
「しばらくして、レッド様がいらっしゃいます方向で『 激しい爆発 』が起こりました。
どのような結果になったか計り知れません。
しかし、この両名。
『風を操るスタンド』に『箱に閉じ込めるスタンド』にてございます。
何らかの。『 想定外(死人が減ったりとか)』が起こりうる可能性が高いと思われますなァ。」
「報告は以上でございます・・・。」
「さて、秀丸様。」
「『一つ お 話 』がございます。」
秀丸は、少し怪訝に・・・。
「どうした。 剛司?」
と、問いかけた。
剛司は話を続ける。
「この度のお話。アタクシは『 悪事 』を行っております。」
秀丸は遮(さえぎ)るように。
「お前の仕事振りは見事。今回の失敗など、物の数ではないよ。
スタンドも使い勝手が良い。これからも、『役に立ってもらうからね。 』」
剛司は更に続ける。
「いえいえいえいえ。
『そう言った事じゃあ、ございません。』」
秀丸右眉は『ピクリ』と痙攣させ。
「君ねぇ・・・ッ。」
不愉快に言い捨てる。
そんな秀丸を、嘲笑うように。
剛司は『 ニ コ ヤ カ 』に言い放った。
「レッド様ッ!秀 丸 様 御 一 行 ッ ッ!
『 壊 滅 の 回 』で、ご ざ い ま す ッ ッ ! ! 」
「ご納得して、頂きたいのですが『 構 い ま せ ん ね ッ ッ ! ! 』」
秀丸は
「君ねぇ・・・。」
激怒を覚え、
「剛司ィィイ・・・ッ。」
そして『 言い放っ た ッ ッ ! 』
「僕 は ァ ア ア ア ー ッ ッ ッ ! !
裏切られるのが『 大 嫌 い な ん だ ァ ア ア ア ア ア ッ ッ ! ! ! 』」
剛司は変わらずニコヤカに答える。
「裏切りでは、ござい ま せ ん ッ ッ ! !
『全 て は ッ ッ ! !
ぐ ん ま け ん の 真 理 が 故 に ッ ッ ! ! 』」
・・・・・・
少し離れた場所で、静観をする男が一人。
「(土星さん。
アンタの策略は、ホントに見事だったぜぇ。)」
俺と剛司さんに言い渡した、
数年に渡る、レッド、秀丸一味へのスパイ指示。
昨日の掃除屋(バーレル、林檎)への連絡。
脅威的な掃除屋への対抗の為に、
俺は昨日、今回の『 トモロヲ作戦』をレッドに進言した。
だが、それは、土星さんの!
『レッド一味を討たんが為のッ!
長 年 に 渡 る 大 策 略 ! !』だったのさッ!!
全ては土星さんの手の平なのさ!
掃除屋は『 此処へは来ないッ!』
秀丸を『 この場で始末する為』に呼び出したのよ・・・ッ!
秀丸さんよォ。
凄腕の二人ってのはなァ・・・。
「『 俺 達 二 人 の 事 な ん だ よ ・ ・ ・ ッ ッ ! ! 』」
「君にとって。『 愛とは何だと思う? 秀丸?? 』」
静観をする男。
『MOTTY(モティ) 』は、静かに言い捨てた。
・『本体:剛司/スタンド名:サンドマン 能力:相手を眠らせる。』
・『本体:MOTTY(モティ)/スタンド名:True Rommance 能力:相手の能力を倍増させる。』
「愛、だって……? フンッ、何を今更。今まで僕を見てきた君達ならわかるだろ? 愛なんて所詮飾り。奪い、利用し、飽きたら捨てる。それだけじゃあないか」
「ンッン~ッ! わかってない、わかってないね~、秀丸く~ん?
どれだけ飽きても手に入れようとするのはな~ぜかな~?」
顔の前で立てた人差し指を、左右に振りながらニヤけた顔で言うMOTTY。突如真顔になり、続ける。
「『渇く』、からさ」
馬鹿にしたようなMOTTYの仕草に、再度激昂する秀丸。
「戯言はいいんだよォォッ!! そんなに渇くならお前たちの血だまりでビチョビチョのベチョベチョにしてやるぜェェッッ!!」
叫んで懐から板チョコを取り出し、思いきりかぶりつく。板チョコの割れる音とともに、秀丸の姿が掻き消える。
「どうだァァッ!? これからジワリジワリとお前らをいたぶってやるからなァァッ!! 僕を裏切った罰を存ッッ分に受けてもらうぜェェェ!!」
秀丸の声が、後ろからと思えば、前から。左からと思えば右から聞こえる。
神隠しで自らを消した後、幻聴で相手をかく乱。
さらに幻覚と鬼火で方向感覚を狂わせる。
「死ィィねェェェッッ!!」
秀丸のスタンド、鎧武者の姿をしたSuite YoshituneがMOTTYに、再び現れた秀丸が剛司に、同時攻撃を仕掛ける。
「サンドマンッッ!!」
「True Romance!!」
剛司のスタンド、サンドマンが鎧武者の前に現れる。鎧武者の刀は、サンドマンの持っていた袋に当たり、「砂」をぶちまけた。そこにミルク色の霧が立ち込める。剛司のTrue
Romanceの能力によって「砂」が倍増。秀丸のスタンドだけでなく、本体の秀丸自身も「砂」の標的になる。
「さぁてスタンド共々『砂』を浴びた秀丸。『秀丸壊滅の回』、そろそろ幕引きとさせていただきましょうかッ!!」
「……いや、鬼火がまだ消えていない。秀丸は恐らくまだ眠っていない」
MOTTYの言うとおり、まだ辺りには鬼火が漂っていた。
――――――
少し前。デュカは迷っていた。
「でも、秀丸さんどこに行ったのかな……。行き先も言わずに行っちゃったし……」
廃マンション付近から離れ、少し歩いたところで、途方に暮れ、立ち止まるデュカ。
「どうしようかなぁ……」
ガードレールにもたれながら、見るでもなく空を見上げる。
不意に、少し離れた所から、爆発音が響いてきた。
「……秀丸さん?」
「言っただろォォッ? 裏切った罰を味わってもらうってなァァッ!!」
神隠しから現れたと見えたのは、秀丸のドッペルゲンガーだった。
スタンドを一旦解除し、現れた秀丸はSuite Yosituneを再度発動、必殺の居合を放ち、剛司をとらえた。
「予告通り、罰は味わってもらったよ、剛司」
「いや、それにはちょいと時間がございます」
切られたはずの剛司の姿がかき消えた。
「鬼火が残っていましたんでね。今切ったのは、MOTTYさんのTrue Romanceで増幅したドッペルゲンガーにございます」
剛司の言葉を聞き、チョコレートをかじる秀丸。
「全く困ったものだよ剛司、MOTTY。僕は一度仲間と認めた相手は、困った時にはどうにかしてやる、と決めているんだ。
……わかるかい? こういう『困った』奴らは絶対に『どうにかしてやる』んだ」
すーわーまーいーあーがれー♪
場違いな曲が戦場に流れた。
秀丸の携帯だ。メールの発信相手は「逅歌 望(ぐか のぞみ)」。
見ている暇はない。すぐに携帯をしまう。
「オアツイねえ、秀丸。でも安心したまえ。アンタを倒した後は、俺がタ~ップリユ~ックリ楽しんでやるからよォォォ」
「黙れMOTTY。僕が罰を与えてやる」
秀丸の言葉に、取り出した扇子で太ももを叩いた剛司が言葉を継ぐ。
「お話の興が覚めてしまうじゃないですか。そろそろ落ちをつけさせてもらいますッッ!!」
突きのラッシュを放つサンドマンと剛司。
サンドマンは本来パワー型ではないが、MOTTYのTrue Romanceがパンチを『増幅』。
増幅された連打が向かった先は。
「デュカ!! 何で君がいるんだッッ!!」
「え、何ッ!?」
「先に邪魔者を排除させていただきますッッ!!」
爆発の方向に向かう途中で秀丸の声を聞いたデュカが、メールの返信がないので心配して近づいて来たのだが、先に気付いていたのは剛司だった。剛司のラッシュがデュカを襲う。
「グァアァァァッッ!!」
殴られたのは、秀丸のスタンドだった。思いきり吹っ飛ぶ重傷の秀丸。
「愛なんて……飾りなんだけどね。飾るからには……綺麗に飾りたい。……そう、思うよナァ……?」
満身創痍で、デュカに向けて秀丸は必死に微笑む。
「昔から病弱な僕に、こういうのはガラじゃないんですけど……、これで、少しは本当に心が奪えたか……な……?」
「秀丸……さん……。何で……? 私のこと、いじめて、閉じ込めて、何でこんな人好きになったんだろ、って思ったのに……。秀丸さん……何でッッ!!」
悲痛な叫びが響き渡る。
「今度こそ、『秀丸壊滅の回』、終了でございます」
デュカには、何が起こっているのかわからなかった
秀丸は傷だらけである
そして目の前には、秀丸の仲間であるはずの剛司が対峙している
秀丸はゆっくりと立ち上がりながら、考える
(デュカはこう思っている…
『現状を理解はできないが、重要なのは「愛する」秀丸さんが襲われ、傷を負っているということ
そして自分は秀丸のために戦わなければならない』
…と。)
そしてその考え通り、デュカは泣きそうな顔で戦闘態勢をとる
しかし秀丸は言い放つ
「君はこの場から去りなさい」
「で…でも秀丸さんッ大好きなあなたがこんなにも傷ついているのにッッ」
秀丸はデュカの頭にそっと手を置く
そして少し寂しそうな目をして、言った
「さよならだ」
簡単なことだ
洗脳を解けばデュカはシンを思い出す
同時に、ひどい仕打ちをした僕を憎むだろう
そんな僕を助ける義理などないのだから、安全な場所へ逃げてくれればいい
ズキュゥゥゥン
デュカの中に、シンとの思い出が甦る
「あああああッッ…
こ…
これはッッ!!」
「僕は…君の心を操っていたに過ぎないんだ、デュカ…」
「私…そんな…」
デュカが次に言葉を繋げようとした瞬間
「御喋りはその辺で終わらせて下さいますかッッ」
剛司が二人に殴りかかる
「早く逃げろッ!」
秀丸はデュカをかばい、またも攻撃をその身に喰らう
ドグッシャァァッ!
「うぐああああッッ!」
「秀丸さんッ!」
「…何をしている?早く…逃げるんだ…」
「どちらも逃がしませんよッ」
サンドマンの拳がデュカを狙う
「くそッ組曲義経!!」
神隠しにより、デュカは一瞬でその場から姿を消した
気が付くとデュカは、はじめに秀丸と出会った廃マンションにいた
横には秀丸がいる
「秀丸さんッ?わ…私ッ」
「デュカ…君の心には僕への恋心の欠片が残っているかもしれない
だがそれは単なる作られたものだ
君は僕を憎んで当然なんだよ…」
でも!あなたは私を守ってくれた!!
その言葉を告げる前に、ドッペルゲンガーだったのだろう、秀丸の姿は消えた
「余計なことをしてくれて…」とMOTTYが呟く
「あなたを殺した後!あの娘も殺してさしあげますよッ!!」
秀丸は二人を睨み付ける
「お前達がデュカに会うことはない!
ここで死ぬからだッ!!」
「そのボロボロの体で何ができるんでござんすかねェェェッッ!?」
歪んでいるんだ
僕は歪んでいる
妬ましかったのかもしれないね
シンとデュカの真っ直ぐな愛情が
僕の歪んだ愛情は
シンを殺して
デュカを支配しようとするものだった
デュカの洗脳を解いた今
もう会わせる顔は無いよなァ
だから
最後は
最後だけは
貫き通そうと思うんだ
この真っ直ぐな気持ちを
デュカを守りたいという気持ちをッッ!!
「そのためなら僕は喜んでこの命を捨てよう!!」
秀丸の周りを、数え切れない程の鬼火が取り囲む
ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「組曲義経…」
「死になさいッッ!これで『終幕』でございますッッ!!」
True Romanceの能力により倍になった剛司の拳のラッシュが秀丸を襲う
「『組曲義経-来世邂逅-』」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「うぐゥッ!?」
その拳が秀丸に届くことはなかった
その足には無数の針が突き刺さっていた
「足元を見ろよ…そんな針山に踏み込めるのかい?」
気が付けば、秀丸と剛司、そしてMOTTYの三人はこの世のものでは無い光景に包まれていた
地獄である
「こ…これはッ!?」
驚く剛司とは対照的に、MOTTYは言う
「剛司…慌てるな、幻覚に過ぎない…隕鉄との戦いでも見せていた」
「幻覚…?
違うねッ!」
ガシッ
MOTTYの足が何者かに掴まれる
「何ッ!?」
その腕は、地面から生えるように伸びていた
そしてさらに無数の腕が地面から現れる
「こっこれはッッ!?
く…剛司ッ!サンドマンで奴を眠らせろッ!!」
「無駄だよ…
僕を眠らせたところでもう遅い
この数え切れない腕は、僕のスタンドじゃあないし
まして、生き物ですらないんだから…」
腕は体中を掴んでくる
「く・・・くそッ・・・引きずり込まれるッ!!!!」
「この地は昔合戦場だったらしい
彼らが
君たちを呼んでいるのさ…
もっとも
僕もその例外ではないのだけどね…」
三人の体が見る見る地面に引きずり込まれていく
「ちくしょおおおッッッ」
「アタクシにはまだ…夢がッ…」
「夢か…『来世』でかなえるといい
ま、そんなものがあればだがね」
『来世』があるなら
その時は最初から、真っ直ぐな僕で
デュカ…君とまた巡り会いたい
剛司・MOTTY・秀丸:死亡
誰もいなくなった戦場―
けたたましく携帯の着信音がなり始めた。
「もしもし…ハイ。…今確認しました。」
「7人です。といっても爆発に巻き込まれた2人の死亡を確認することはできませんでした。」
「…ハイ。…まだ私たちの出る幕ではありませんよ。」
「あなたの出番はまだまだ先の事です。」
「…今『掃除屋』が『廃マンション』の方へ向かっていきますが、始末しますか…?」
「…ハイ。わかりました。放っておきます。」
「ところで『シン』とかいう小僧…スタンドが『進化』しています。『成長』というレベルじゃあありません。」
「『ナガセ』の時とは違い精神も安定してます。」
「…彼を射りましたね?」
「その『進化したウィルス』を宿した『矢』で…」
「皆が血眼で探すわけですね…。」
「『進化したスタンド』。欲しくない者はいないでしょう。」
「…ハイ。そうですね。私たちはまた潜みましょう…。」
「ではすぐ戻ります…。――――。」
上空を飛ぶ飛行機の轟音が声をかき消した。
携帯をしまい雑踏の中へ消えていった。
今年の誕生日は土曜日だった。
家に帰ったのは月曜の早朝で、お父さんもお母さんもすごく心配してくれていた。
そう、あの後私は秀丸さんの家に行き自分の荷物を持ち、廃マンションへ向かった。
でもそこにはなにもなく全てが砂になっていた。
シンが望んだ、最高の腕。
何があっても壊れない、全てを砂に変えてしまう
全てを砂に変え、バラバラにする――。
「シン~……ッ!!」
まるで世界の終わりを自分がつくったようなそんな、悲しい場所だった。
だけど、それはシンの最後の場所だった。
キャラメル・ミルクではなく、自分の記憶でシンを作る。
シンを作る。
シンを作る。
……………
狂ってしまいたかった、狂うことさえできなかった
気持ちを操作されていたとはいえ
シンが死んだと伝えられた時も
シンが私といない、もう“会 え な い”と悟った今も
涙が流れない
「今日は学校休みなさい」
両親に甘えて私は、一人で二人のことを考えていた
もう、会えない二人
好きだった…二人
例え理由がなんであれ、喪失感には変わりはなかった
ピーンポーン
呼び出し音が響く
――出たくない
ピーンポーン
デュカちゃ~ん
聞きなれた声
シンのお父さんだった
どうしたんだい?その顔
よほど酷かったんだろう、だから休ませてくれたのかもしれない
体調悪かったかな?ごめんね
おじさまは謝りながら、あるものを渡した
手紙と
簡素な包みに入った
ブラウニーケーキ
シン、事故にあったらしくてさ
それを代わりに渡してくれって今朝頼まれてね
……今朝
意味を理解するのに
時間が要った
おじさまッ、今なんて言いましたッッ!
シンは生きてるんですかッ!
ん?あぁ?動けないけど命に別状は…デュカちゃん?
ぼろぼろと、なみだがあふれる
ぼろぼろと、なみだがこぼれる
会いたい
会えるんだ、シン
会いたいよッ!!シン!!
私の涙は止まらなかった
第七話『I want to meet you.』
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