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外伝『模倣人』

『それ』は夜の草むらをひた走っていた。

ざざざざ、と音を立て、『目標』に飛び掛る。

その横を、たまたま女性が通りかかった。

「ん~? 猫かなあ?」

しゃがみ込み、草むらを覗くその顔は赤く、呂律も回っていない。
飲み会の帰りといったところだろう。

しかし、すぐにその顔は真っ青になった。

「きゃああああああ!」

彼女は悲鳴を上げる。
草むらから出てきたのは、猫ではなく……

『人間の手首』だったッ!

しかも、手首だけだというのに……『動いている』ッ!

器用にその親指で大きな蛙を捕らえ、残りの指で地面を這うように
移動すると、『手首』は気絶する女性を気にもせず、すぐ近くの
橋の下へと向かった。

そこにあったのは、『口』だった。
正確には、人の頭の『下半分』というところだろうか。

『手首』が『口』に蛙を放り込むと、バキバキと音を立てて
『口』は蛙を咀嚼する。

< モ ド ラ ナ ケ レ バ >

『手首』や『口』に、人間らしい思考能力は殆ど無い。
あるのは生きる為の『食欲』と、たった一つのシンプルな意思。

< モ ド ラ ナ ケ レ バ >

そして、一つの、名前。

< サ  ト  ヨ  シ  … … >

人間であった頃の『それ』の名前を、『ムトウタチバナ』という。


「『分解する能力』か……大したものだ」

コツ……

白い杖が、地面に触れる。
その杖を持つ男は、何も映さない瞳を『ムトウ』に向けた。

「爆発の瞬間、自分を粉々に『分解』し……
 その衝撃を分散することで和らげた、ということか。
 もっとも、ばらばらになりすぎて、自我すら殆ど失われているようだが」

男は傍らの犬を撫で、くいと顎で促した。
その合図に、犬はくわえていたものを地面に置く。
それは『肘』だった。『手首』は自分の一部があることを悟り、『肘』に
近づくと、一体化して『腕』となった。

「爆風で街中にばらばらに吹き飛んだ状態から、よくもまあそこまで
 自力で一つになったものだ。
 ……だが、そんな調子じゃあ元に戻るのに何年かかるやら」

カッ、と男……ソマは、見えない目を見開いた。
しかし、そこには常人にはけしてみることの出来ない程の『景色』が
うつっている。

「私なら……お前を一つに出来る。
 この私のスタンド、『ナイト・ヴィジョン』ならね」

ソマは『ムトウ』の『口』を拾い上げると、ゆっくりと歩き出した。
次の『ムトウの欠片』のある場所へと。
その後ろを、愛犬マニエルが『腕』を咥えついていく。

「さあ、いこう、マニエル。
 ……この世から、すべての光を奪い去りに」
「え…?」

ああ、この「スタンド」のせいか…。

目の前に『人の脚』がズルズルと動いてどこかへ移動している。

このスタンド…『バタフライ・キッス』はまだ自分の手に余る。

揚蝶 純はスタンド能力を昇華させたが未だにそれを考えていた。

事実、以前ほどではないが勝手にスタンドが発現してしまうこともある。

『目の前の脚』もその影響だろう。『脚』は揚蝶の前で動きを止めた。

本能で『自分の恩師の匂い』を感じ取ったのだろうか。

揚羽は『脚』を鞄にしまった。血も出ていない。まだ『脚』は生きている。

「この『脚』の目的を叶えるのが『先生』ッ…。あなたの為になる…ッ!そう僕は考えます。理由とかそういったものは皆無だけど…何故か唐突にそう、思うのですッ」

そう考えた揚蝶は歩き始めた…

―――――――

同時刻…

「…先生。コレは一体なんでしょうか。」

ごろごろ転がる『下腹部』を眼に虚ろな眼で問う男。それを聞かれた男はいう。

「さあね。なんらかのスタンドの影響でしょうが、今は一刻も早くキミを土星さんの所に連れていくことが私の任務なんですよ。わかります?そんなものに興味を持って暇はないんです。いいですね?」

「わかりました…先生」

2人は歩き始めた…

―――――――

同時刻…

「この病院には『スタンド使いを集める』能力でもあるのか…?まったく…治療はしよう。それが医者の勤めだからね。ただね…『余計な事までかぎまわって欲しくは無い』んだよ。『これ』を見られるわけにはいかないからねェ…」

病院の地下室でなにか薬剤につけられた『ムトウタチバナの頭』。『口』と『左眼』はない…

「まァこの部屋は患者どころか院長でさえ知らない。始めは『隠れ家』だったが…『この男』が転がり込んでからは私の『興味を解き明かす部屋』になった…。なァ?『シルビア』…?」

彼女はニコリと笑うと。

「ええ。ER…」

と答えた。

「では私は行こう。回診の時間なんでね。キミの友人には会わなくて良いのかな?」

彼女は表情を変えずに首を横に振った。

「そうか…ならば私は何も聞かないよ。ではこの部屋を頼む。」

と残すと彼は『隠し部屋』を出た。部屋から出たとたんに、

「おッ!キミィ…けしからん尻をしとるねッ!」

等と冗談を吐きながら…

彼は歩き始めた… 

その瞬間、杏子は全身の毛が逆立つのを感じた。

「この腕…ッッ!」

見間違うことなどあろうか。
「間違いないわッ!『私』のムトウさんの腕!」

講義をサボってぶらぶらしていた時に、偶然、彼女のスタンド、エレ・チュンが発見したのだ。

しかも、腕しかないはずであるのに、血色・艶ともにまるで生きているようだ。

「『生きている』ッ!『私の愛する人』が生きているッッ!!」


『あの日』以来濁っていた杏子の瞳が、爛と炎を宿す。





…かつっ
ジャリジャリ
…かつかつっ

「はてさて、他のパーツがどこにあるか分かったかい?マニエル。」

グル

既にパーツを咥えているため、唸るだけのマニエル。

「はは、そう急かすな、私もしっかり探しているよ。」

それだけのやり取りで、白い杖を持った盲目の男…ソマには、マニエルの言わんとすることが伝わったらしい。
曰く、『サボるな』と。


「…ふむ」

不意にソマが息をつく。
見つけたか、とでも言うように見上げるマニエル。

「近いじゃないか?」

ソマに見える風景は、今彼のいる場所からさほど遠くない『大学の近く』。

「もう『片腕』…」

ナイト・ヴィジョンを介して見える、『肩に鳥を乗せ』た、『女』ッ!

「…行こう、マニエル。彼女も、パーツを集めているようだ」

「ナイト・ヴィジョンにも限界はある。誰かの手を借りるのも、『悪くはない』…そうだろ?」


グル

…ソマ曰く『だね、ソマ』らしい。

迷うことなく、二人(一人と一匹)は、足を進めた。




「『腕』があると言うことは!『他の部位』もある!と言うこと!」

人目はばからず大声をあげる杏子。
口許には笑みがこぼれる。

「ただ…私一人で愛しのムトウさんを元に戻すのは『不可能』に近いッッ…!」

思い立ち、鞄から携帯(エレチュン着き)を取り出す。

アドレス帳……『土星』

…澱みない動作で、杏子は通話ボタンを押した…

数日前、酔って帰る途中にある物を拾った。
最初は良く出来たマネキンだと思った。

翌日、起きて騒然とした……
マネキンの一部だと思った『物』はどうやら本物らしい?
……恥かしい話だけど、厚い胸板に『男らしさ』を感じて少し……ほんの少し!抱きついてみたのだけど……

鳥肌が立っている!

気のせいかと思いじっくり観察する…
寒さと温度で変化している訳ではなさそうだ…
色々、実験して見た結果……。

私が触れると鳥肌が……。

な、何か失礼じゃない?
ムカついた私は訳を聞こうと思った。
そう、私の『能力』で

そして、それが失敗だった……



ベンチで一人呟く女性……
「ああ、なんで私は頼まれ事を断れないかな……」

一人の筈だが何処からか返事が聞こえる……

「イマハびっち……シツレイ、アナタニシカタヨレナイノデス……」
「解ってる、私も抱きついて鳥肌立てられちゃあ黙ってられないからね」

女性は鞄に話しかけていた、
いや、正確には鞄の中に入っているムトウの上半身に……

「戻った際にはニ・三発ぶん殴らせてもらうから!」

(本体:アルジス スタンド:ラブトーク 能力:物体にキスをすることによって意志を持たせる事が出来る。)

アルジスはムトウの上半身に導かれ『他の部分』のある場所へ向かう……。

「、、、だーかーらー!ムトウさんは生きてるんだって!ここに腕があるの!私の言ってる事ちゃんと伝わってるッ!?土星さん!」

『ぽえーん』

「もぉーーー!  ぽえーん  じゃ、わかんないっての!あのね、、!」


『サトウ むかう』


「え?佐藤先生??、、、、あ!!ちょ、、!」


ツー  ツー ツー

電話はそこで途絶えた

「はぁぁ、土星さん理解してくれたのかなぁ。あの人、頼りになるんだか、ならないんだか。ってか、ちゃんとしゃべれっつのー。、、はぁ。」

ダルい、、杏子はそう思った。相手と意思疎通ができているのか気にしながら話すのがこんなに疲れるとは。
だけど、、


「あなたには、、伝わってるよね。 ムトウさん、、。」

そう言って杏子はムトウの腕を抱きいた。すこし暖かい。確かに、この腕は生きている。 生きてるんだ!


「 私、あきらめないわ。 絶対、他の部分も探して、元に戻してみせるッ! 」



    カツ カツ
   ジャリ ジャリ



そこへ、歩み寄る一人の男と一匹の犬



「ふふ、そんでもってムトウさんは私に、、『ありがとうございます、助かりました。ビッ、、。、、いえ、これからは杏子と呼ばせてもらいます。いいですよね? 杏子、、。』なんて言ったりして、で、で、二人の仲は一気にッ、、!!!」


「盛り上がっている所、すまないが、、。」

ソマは杏子の背後から、静かに声をかけた。エレチュンがソマの存在に気づき、杏子に知らせる



が、、

「最初のデートは、やっぱネズミーランドかなぁ。あ、いやでも、、あそこはカップルが初めてのデートでいったら別れるっていう噂だし、、、。」


「、、、、コホン。」

   チュン!


「やっぱ映画館かな。ムトウさんどんな映画好きなんだろう。アクションって感じじゃないよね。サスペンス?純愛ラブストーリー??、、うん!きっとそう!最初のデートは恋愛ものの映画に決まりね!」


   チュン! チュン!

   グルルルルーー

   コホン コホン


「それから、それから、、ん?ムトウさんの腕、、なんか鳥肌たってない?どうしたんだろ。ねぇ、エレチュン、どう思、、。あれ?」

杏子はやっとその男の存在に気づいた。

「あなた、、誰?」

「、、私の名は、、ソマ。君の持っているその腕、その対となる部分を持っている男だ。」

「、、、、ッッ!!! まさかッ! 敵!?」

そう思った杏子の反応は驚くほど早かった。

「エレチュンッッッ!!!ムトウさんの腕を持って逃げて!」

(一度に操る事ができるのは2人、こいつと犬だけなら、可能だけど、、相手の能力もまだわからないし、、。とにかく今は、、!この腕を守るのが何よりも優先!!なんとしてでも、、私が守らなきゃ!!!)


「やれやれ、、せっかちな人だ。協力しにきたというのに、、なぁ、マニエル。」 

(『どうして』……!?)

ソマに背を向け、杏子は全力で走る。杏子のスタンドは、戦闘向きではない。
が、『逃げる』事に専念するなら、これほど向いている能力も他に無いだろう。
近づいた相手の足を止め、捕らえようとする腕をそらし、やりたくは無いが、
疲れ果てても自分を強制的に『動かし』て走る事だって出来る。

だからこそ、『逃亡』を選んだ。
『自分』ではなく、ムトウを確実に『守る』為に。

だと、言うのに。

「どうしてあんたが目の前にいるのよぉ~~~!?」

何度逃げ出しても、目の前にソマが現れるのだ。

「だから、落ち着いて話を聞いてくれと言っているだろう?
 君を害するつもりは無い。協力して欲しいだけなんだ」

「嘘よっ! そんな悪役顔の人が敵じゃないわけないわッ!」

「あ、悪役顔……?」

生まれて初めて聞く悪口に、流石のソマも若干呆然とする。

(……何度背を向けても、目の前に現れる……
 でも、超スピードだとか、時を止めてるとか、そんな大層な
 能力じゃあない……あいつの背後の景色が変わらないもの。
 じゃあ、どうしてどっちに逃げてもあいつがいるの?
 わからない……ッ! わからない、けどッ!)

再び杏子はソマに背を向けて逃げ出す。
ソマはやれやれとため息をつくと、再び『ナイト・ヴィジョン』を
発動させた。

人間は、その情報の80%以上を視覚に頼っている。
つまり、視覚が封じられれば、能力は1/5以下になるということだ。
しかし、単純に視覚を奪うよりも、『ナイト・ヴィジョン』には
もっといい使い方がある。
それが、『視界を操る』能力だ。

逃げる杏子の視界を操作し、彼女の目に残った『残像』から
ソマの姿を映し出す。すると、彼女には、逃げた方向にソマが
いるように見え、足を止めて距離をとる。
『距離をとった』その先に、ソマ本体がいることに気付かず。

しかし、今回は違った。杏子は足を止めることなく、真っ直ぐに走り続ける。

(どういうことだ? 彼女には、今『私に近づいている』ように
 見えているはず。戦う覚悟をしたということか? ならば……)

パチン。ソマは指を鳴らす。それで、杏子の視界は『オフ』になる。
突然視覚を防がれれば、どんなに人間だろうが、足を止める。

……そのソマの思惑とは裏腹に、杏子は走り続けた。

(急に目の前が真っ暗に!? ……何と無く、わかった気がする……
 こいつの能力……『視覚』を操作するって事ね。

 今、私はどこを走っているんだろ。何も見えない……
 だけど、怖くなんて無い。
 どんな友達より! 親より……『自分自身』よりもッ!!
 『信頼』出来る子が、私の身体を『アイツから逃げるように』
 動かしてるんだから……
 そうよね、エレチュン!)

その、上空。エレクトロ・チューンが杏子の両足を動かしていた。

「……仕方無いな……」

ソマは呟き、杖を掲げると、『ナイト・ヴィジョン』の姿を発現した。
『ナイト・ヴィジョン』は足元のそれを掴むと、『エレクトロ・チューン』に
向かって投げ放つ。

(石を投げて攻撃した!? よけて、エレチュン!)

『ナイト・ヴィジョン』によって投げられたそれを、エレクトロ・チューンは
かろうじて避けた。

「『良かった』……」

ソマが、ゆっくりと呟く。

「良かった、あたらなくて……手荒な事は好きじゃあないんだ。
 『平和主義』ってわけじゃあない。
 『闇』は人を『光』みたいに傷つけたりはしないものだからだ。
 しかし、『蛙』は助からないだろうな。悪いことをした」

「『闇』?『蛙』? 何の事をいって…… きゃぁっ!」

突然、杏子の足がもつれ、その場に転ぶ。しかし、その瞬間、マニエルが
杏子と地面の間に割って入り、彼女を助ける。

「『ナイト・ヴィジョン』……射程は30mだが、視界をジャックした生き物の
 付近からスタンドを出すことも出来る。
 ジャックした『蛙』を投げて、君のスタンドの『視界』をジャックさせてもらった。
 君が視界を失って尚真っ直ぐ走れるのは、スタンドの能力だと思ったからね。
 『生き物の身体の一部を操る』……そんなところかな? 君の能力は。
 すばらしい能力だ。私の能力をわからないなりに対処する『柔軟さ』もいい。
 後は、落ち着いて話を聞いてさえくれれば、もっといいのだがね、お嬢さん?」

ソマはマニエルに支えられた杏子を抱き起こしながら、そう声をかけた。
その紳士的なしぐさに、思わず杏子は赤くなる。

「こ、この人……よく見たら渋くて格好いいかも。
 いわゆるチョイ悪って奴? それにもしかして、私に気が……?
 ああ、駄目、私にはムトウさんという人がッ!
 でもでも、もし告られちゃったりしたらどうしよう!?」

「……? 言ってることが良くわからないな……
 ともかく、話をわかってくれたのなら早急に移動したいのだが」

ソマは、視線を空に向けた。街中にある『監視カメラ』の映像が、
彼に警告を発している。

「厄介な男が、こちらに近づいているのでね」

「厄介な男…?」

ムトウの『パーツ』が暴れ始める…それを静止し、顔を上げた杏子の視線の先には見慣れた男。

「佐藤…先生…?」

ド ド ド ド ド ド ド !

「『先生』…?『先生』とは?私は『生徒』ですよ…。ね?『先生』…」

その傍らには見知らぬ小柄な男。―ツチノコスター―

「ええ。間違いありませんよねェ。佐藤君。キミは『私の生徒』、私は『キミの先生』ですよね。」

佐藤はニコっと笑うと杏子の方をみる。

「そうですよ。訳のわからないことを言わないで下さい。『お嬢さん』。」

佐藤は『人格・記憶』までも作りかえられていた…『更正』…。その言葉通りに…
ツチノコスターはソマ方を見た。

「ほう…キミは『初めて見る顔』だねェ…そしてその『パーツ』を見る限り…『ムトウアキラが再生している』というのは本当のようだねェ…。あの時拾っておけば…とも思うがね…まァ『命令の優先順位』としては間違ってはいないだろうねェ。一つ叩き壊せば復活の阻止は容易いね。」

杏子は少し驚いて考える。

(どういう事…?この人は『初めて見る顔』…?私だってアンタなんか知らないわよッ…!いるんだわ…『レッドとの闘いを見ていた
者』が…そしてそいつらは『組織を組んで情報をリークしている』ッ!そして『佐藤先生を何らかの方法で味方につけている』ッ!)

「大体わかっていると思うけどね…私は話をするために来たわけじゃあないんだよねェ…。行くよ…『佐藤君』ッ!」

佐藤はうん、とうなづくと『オールラブ』を発現させた。

そしてツチノコスターも丸いスタンドを発現する。そしてそれは真っ黒な『オールラブ』に姿を変えた。

「こりゃまた幸運。『確率は1/3だったがね。君達のスタンドは全く能力がわからないからねェ…」

杏子は再び驚く…

「ちょッ…!なんで『佐藤先生のスタンド』が2体もッ」

杏子が言いきる前にソマが遮った。

「どうやら…やらねばならんようだな…。『私にも私の目的があるのでね』…ッ!マニエル、行くぞ。『彼等の光を奪う』…ッ!」

ド ド ド ド ド ド ド !

「アハハハハッ!おもしろい事を言うねェ!この『オールラブ』の実力を知らんようだねェッ!」

「しっているさ…オールラブ…
能力は殴った相手を生徒の気分にさせる。
先生には逆らえず『更生』させ、一生その考え方で生き抜く。
左手人差し指からチョーク弾を発射する。
強い破壊力・速いスピード
射程距離は半径20メートル
持続力は通常程度
高い精密動作性を持つ… これが『オールラブ』…『見ていたからな』…それが『2体』はっきり言って単純な戦闘力では私の『ナイト・ヴィジョン』では太刀打ちできないだろう。」

ツチノコスターは少し驚いたふうだったが笑みを浮かべる。

「そこまで『見ていた』ならばわかるね?今自分で『負ける理由』を読み上げたことがねェ…ッ!」

ソマは余裕の笑みを浮かべる。

「ああ…『単純な戦闘力ではな』ッ!!!」

佐藤はそれを聞くまでもなく向かう。そして佐藤のオールラブは拳を振り上げて殴りかかる。が…

ばしィ!!

『佐藤の体から』ナイト・ヴィジョンが発現し、拳を押さえる。

「こういう事だ…今この場において私がここにいる必要はない。『ナイト・ヴィジョン』ッ!『視界を操作する』ッ!」

ぐいん!っとソマ達から眼を背けられるツチノコスター達。それを確認する前にソマとマニエルは走り出した。

「おいッ!おいていくぞ!こいつ等より先に『ムトウタチバナのパーツ』を揃えなければならないッ…!」

杏子はハッとしてソマについて走り出した。

「なんか走ってばかりいるような気がするわ…ッ!何かしら…『書き手の陰謀』かしら…でも『書き手』ってだれかしら…私って馬鹿かしら…」

2人が走り去った後、小柄なツチノコスターは佐藤の胸倉を掴んだ。。

「このウスノロがねェェェッ!てめェのせいで逃げられちまったじゃねェかねェェ…ッ!」

「ご…ごめんなさい…ッ!先せ…が…ァァァ!?『サ…サト…ヨ』…ッ」

バキィッ!黒いオールラブの拳が佐藤を殴りつける。

「ふゥ…『また解けかかっている』ようだねェ…なんという精神力なのかねェ…この男…。私が傍についていなければならないとは…さ、追いましょうかねェ。佐藤君。」

「はい。先生。」

ダッ!

『追う2人』は『逃げた二人』を追いかける。

「はあッ…はあッ…」

路地裏に短い息が響く。

「ふぅーーッッ」

「…落ち着いたかい?」

―ばう。

佐藤とツチノコスターから逃走し、少し横道に入った路地裏に身を隠す、怠惰女子高生、盲人。そして犬。
怪しいことこの上ない面子である。


「ここに近寄った『生物』の視界から、私達を認識できないように、『ジャック』した。見つかることはないだろう。」


「どこに行きやがったんですかねェッ、マヌケどもがねェェェッッ!?」

「あんまり怒ると体に良くないですよ、『先生』」


罵声を吐きつつ、ツチノコスター達が駆け抜けてゆく。

本当にこちらには気付いていないようだ。

「行っちゃった…よね?」

杏子が安堵の息を漏らす。
ソマはおろか、マニエルさえもそんなような顔を浮かべている。

「正面から向かっていって勝てる相手じゃないからね。」

杏子もソマも、直接的な戦闘には向かないスタンド使い。
上手く逃げおおせただけでもよしとすべきだろう。

「あ、ケータイ。」

ぴろぴろと、杏子の携帯が鳴く。

「もしもし?」

「え?だから、ぽえ~んじゃ分かんないよ!とにかく、敵に襲われたの!すぐ来てよ!」

携帯を切ると、杏子は溜め息を漏らした。
なんで今日はこんなに疲れるんだろう?

「…ッ!」

不意にソマが身構えた。
見えない瞳が相手を捕らえる。


「ぐんまけん」

「ど、土星さんッ!?近くに居るなら居るって……」

助けを求めていた相手に安堵したのか無警戒に近付く杏子。
だが、ソマが行く手を遮る。
慌ててソマに説明をする杏子。

「彼は私の……」

しかし、それさえもソマに遮られる。

「少し、質問をしてもいいかな?どうして『ここに居る事が解った?』」

警戒を解かないソマに誤解だとでも言いたげな顔で土星は答える。

「みる ない きく どせいさんです」
(訳:見る事が出来ないから、杏子さんの着信音を聞いて来たんです。)

抽象的な言葉だが理解は出来たとばかりに杏子は成る程と唸る。
しかし、ソマは警戒を解く所かさらに顔を強張らせる。

「ふむ、挨拶が遅れたけど僕はソマ……ソマ・バンガルデフ!『初めまして』土星さん?」
「ぽえーん」

ソマの強調する言葉に小さな疑心がつのる杏子。

「しかし、初めて会うのに良く私の能力に気が付きましたね?」
「ぽえーん」
「まぁ、気が付くと言うより『見つけ難い』事が解っていたと言ったほうが良いですか?」
「ぽえーん」
「まさか『視覚』出来ないから『聴覚』で見つけられるとは思いませんでしたよ」
「ぽえーん」
「……さて、誰から私の能力を聞いたのですか?」

先ほどまで「ぽえーん」と言っていた土星が沈黙する……。

「……私は言ってない……よ?」

ソマの質問により杏子の疑心は確信へと変化する。

「彼女も理解したようですね?さぁ、先ほどの言葉の続きを聞かせて頂きますか?」

スッと杏子の前に出されていた手が下げられる。

さっきの言葉……

「彼は私の……」

『仲間』
さっき、杏子はそう言うつもりだった……。

しかし、ソマの質問により理解『不』能だった物が理解『可』能になった今!!
土星に向けて放つ『言葉』は『仲間』では無く……ッ!

「彼は私の……『敵』だわッ!!」

杏子が叫ぶと同時に土星が静かに殺気を放つ……。

「ぷー ぐんまけん」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


「まさか、、あなたが、『敵』だったなんて…!佐藤先生がああなったのも、土星さん、いえ土星ッ!あなたの策略!!」

「ぽえーん」


(ありえない、ありえないっつの!いまどきこんなべたなサスペンスミステリーみたいな展開ッ!!
でも、呑気にしてる場合じゃない!こいつのスタンドの恐さはあの時しかと見てたんだから…!

そう、

あの時…


……ッ!!ムトウさんッッ!!)



「許さないッ!あんただけは許さないわッッ!エレチュンッッ!!!」

エレチュンが空高く舞い上がる

杏子の目に、うっすらと涙が滲んでいた。この男、この男が、自分達を騙し、ましてやムトウにトドメの一撃を喰らわせた、張本人!
そしてなによりも、ムトウは彼を最後まで信用して、サターン・バーレーを喰らったのだ。
だからこそ、杏子の怒りは止まらない。


「……。」

土星は沈黙を破らない。
彼はサターン・バーレーを使い、すでにガス球を数発撃ってきているのだろうか
しかしそれは見えない
表情を変えず、しかし鋭い目付きで杏子とソマを見ている



「ここで正面から戦うのは得策ではない、杏子…だったな。今は静まるんだ。」

ワゥ!

ソマとマニエルが杏子に警告する
怒りに身を任せては、、!だが、マニエルの視界を通じて見える杏子の姿を見て、それは杞憂だとわかった


「わかったてるわ!私だって馬鹿じゃないんだから!!今は、この場にいるべきじゃあないッッ!走るわよ!」

アォン! 

その瞬間ソマ達は一斉に走りだした。
背後で草木がシュウと音をたてて干からびる

「ッ!危なかった!!」

(あと、1秒遅かったら、ミイラになる所だったわ!!)

「やれやれ、走ってばかりだな。盲目の体にはつらい所だ。」

ワウワウ!(どこがだよ、ソマ)

「まぁ、そう言うなマニエル。ナイト・ビジョンがあってもつらい事には変わりはないのさ。さて、この状況、どうするか」

「……。」

杏子は黙っている。何かに集中しているようだ。

(たしか、近くに脚を拾った少年がいたな。彼は、佐藤…サトヨシ側だったか。彼に協力を求めるか。
もう、傍観者を決め込んではいられないしな。)


「…あったわ!」
「??」

突然、杏子がソマにむかってそう言った

「あった、とは?」
「ため池よ!この辺りにあるって聞いてたの。ちっさい頃に事故があって以来、封鎖されてたんだけど。このまま…南西に400メートル!そこの坂を降りるわ!」

杏子は前方の坂を降っていく

「なるほど、たしかサターン・バーレーは水分を吸収すれば遅くなるんだったな。そして、周りに水があれば、潜って攻撃を回避する事が出来る。ミイラにはなりたくないしな。
さっきはそのためにスタンドを飛ばしたのか。」

「まぁね、池なら生物も沢山いるわ。あなまも私も、『利用』しやすい。もし、爆発でもさせようってんなら、何がなんでもあいつの身体操つって、ムトウさんの苦しみを味あわせてやるッ!」

(多少、粗い作戦だが、確かに無意味に逃げるよりかは良さそうだ。そこで、戦うか。)

「マニエル、お前は潜れるかい?」

グルルー(馬鹿にするな!)

「冗談だよ。では、私はナイト・ビジョンで助けを呼ぶとしよう。近くに、『ジャック』した少年がいるようだしね。」

二人と一匹の犬の足は止まらない。
しかし、その足に迷いはなかった。 

考えられる作戦は、至極シンプルなものだった。
水場の水で、サターン・バーレーの攻撃を防御。
『エレクトロ・チューン』で土星を操って、動きを止めたところを、
『ナイト・ヴィジョン』で止めを刺す。

最も危惧されるのは、佐藤とツチノコ・スターの増援だが、その動向も
『ナイト・ヴィジョン』でしっかりと監視している。

そして……

「水を跳ね上げろ! 『ナイト・ヴィジョン』!」

『ナイト・ヴィジョン』の拳が、巨大な水柱を作る。
それを吸い取り、ソマ達の頭上に浮かんでいた巨大なガス球は
消え去った。

「い、いつの間に!?」

驚き頭上を見上げる杏子を尻目に、ソマは杖を前方に突きつけた。

「『ぐんまけん』……とかいったかな、この技は。
 既に君の視界はジャックしている。奇襲は一切通じないと思っていただこう」

ゆっくりと、杖で指し示した先から土星が姿を現す。

「ぽえ~ん」

土星はガス球を複数宙に浮かべると、それをソマに向けて放ち、
自身も突っ込んできた。

「甘い……ッ! 『ナイト・ヴィジョン』!
 水を弾き飛ば……」

その瞬間。

どしゃぁっ!

突如、ソマの立っていた地面が崩れ、陥没した。

「な……!? これは!?」

「けいさんは いいです」
(訳:計算どおり……あなた達がこの池に逃げ込むこともね。
 この池はただのため池ではなく、地下を流れている……
 そこの水を『サターン・バーレー』で吸い上げ、局所的な
 地盤沈下を起こしました)

ソマは完全に体制を崩し、サターン・バーレーを避けるどころか、
池の中へ退避することさえ出来ない。

「……『隙』……」

だが、その状況下においてさえ、ソマは冷静さを全く失っていなかった。

「だと……思っているんだろう? 足場を崩し、『隙』が出来たと。
 だがそれは間違いだ。『隙』を見せたのは君の方さ。
 君は天才だ。常人には不可能な思考を持つ。……だがね、だからこそ
 常人を取るに足らぬ存在と見下す。
 しかし、そこに絶対的な『心理の隙』が出来るのさ。

 私を先に潰そうとするのはわかっていた。こちらで攻撃力を持つのは
 私だけだからね。『だからこそ』!
 『ナイト・ヴィジョン』で……君の『視界』を少々操らせてもらったよ」

ソマの隣でおろおろしていた杏子の姿が、掻き消える。
それは、土星だけが見ていた幻の姿だった。

「水の中に……突っ込めッ!」

本物は、土星の背後。息を潜め、気配を殺して隠れていた。
『エレクトロ・チューン』が土星の背中に体当たりし、吹き飛ばす。
それは致命傷どころか、傷を与えることさえ出来ない。
が、それで十分だった。

土星の両足の『制御権』を奪った杏子は、そのまま彼を池の中に突き落とす。
池は、それほど深いわけではない。足はつかないだろうが、大人なら
溺れることはないだろう。
しかし、それも、両足が自由に動くなら、の話だ。

「浮かんで来なければそれで良し、浮かんでくれば……」

『ナイト・ヴィジョン』が、拳を構える。

池の表面に波紋が広がり、『それ』はゆっくりと姿を現した。


1960年、ニューヨークで18パウンド(約8kg)もある魚を釣り上げた男が、
その魚の腹の中からZIPPOライターを見つけた、という話がある。
そして、それは一発で着火したという。
それほど、ZIPPOライターは水に強い。

……それと同種のものを手にしながら、土星は浮かび上がってきた。


『 無 数 の 風 船 』 と一緒に!

ソマの脳裏を、一瞬にして言葉が駆け巡る。

(風船
                    水
   多い                 遮断
 
          殴る
           壊す           爆発
                            誘爆
      無理             奴は?
                   水の中 
 視界
                           私も
駄目だ                   杏子  否

間に合……)

思考を纏める時間さえ無く。ライターは、風船に向かって投げ放たれた。

「ぽえ~ん」

土星は勝利を確信した。

風船にまっすぐに向かったライター。もはや命中は免れない。

――――――

―死ぬ前の瞬間―

「時間が止まったように」恐ろしく考えがまわる。

(ああ、私は死ぬんだわ。まだムトウさんとまともに喋ったこともないのに・・・『この知らない人』と一緒に・・・。まだ駅前の新しいお店のチョコレートパフェも食べてないし、嫌いだったニンジンも克服してない。ああ、もっとお母さんやお父さんと話しておけば良かったわ・・・ごめんなさい。私、死にます。あ、そういえば今週の『ピンクダークの少年』はどうなるのかしら。でも今週は休載らしいわね・・・)

杏子は死を前に涙した。

杏子は自分の死の運命を呪った。

―――――――

(…)

無心。ソマは自分の死から眼をそむけなかった。マニエルと一緒に両親の下へ逝くんだ。自分にとって『死』とはそういったものであった。

ソマは見えない目を開いた。

ソマは自分の死の運命を受け入れた。

―――――――

ボッ…!

ドッガァァァァァァァァァァァァン!

「ぽえ~ん」

土星は『この2人に勝利した』。

ド ド ド ド ド ド ド !

土星は生まれて初めて冷や汗をかいた。

2人は原型をとどめており、軽い火傷や打撲はあるものの。「生きている」。しかしながら意識はないようだ。

そして一人の人影。

土星は驚愕した。その男に。

土星は恐怖した。その眼光に。

土星は震撼した。その怒りに。

「僕はすべてわかっていたよ。『君が考えていたこと』を。でも『どこかで信じていたんだ』。君のことを。」

現れた男は続ける。

「でも…。『君は僕の友人を裏切った』。そして『恩師を傷つけた』。それは僕を裏切り、そして僕の心を傷つけた事と同じ…許すことはできない。」

男は鋭い眼光で睨む。

「君はここから逃げることはできない。僕は君を許すことは出来ないからね。」

土星は震える声で言った。










「…サトヨシ…」

ド ド ド ド ド ド ド !

「僕のスタンド能力で「爆発が届く空間」を曲げて2人を守った。しかしながら気を失ってくれて助かった。『今僕がここに立っていること』を見られることはないからね。幸運だ。そしていいかい?君のスタンドにとって僕のスタンドは天敵だ。君の『風船』は僕に届くことは無い。君は僕によって倒される。」

「ぽえ~ん。」

土星は生まれて初めて冷や汗をかいた。

ゴゴゴゴゴ・・・・・・


ゆらゆら・・・


サトヨシの姿が『歪む』。

急激な歪みではないが、連続して、密集して起こっている。



「・・・・見えるかい?」


気がつくと、『歪み』は消え、(サトヨシがいないことを除いては)以前と変わらない風景が土星さんの眼前に広がっている。


「…ぽえ~ん…りかい『ふ』のう…」


微動だにしていないが、明らかに土星さんは混乱している。

恐怖で、混乱で、焦燥で。

あらゆる原因で、頭が働かない。


「…ぐんまけん…」



「理解できていないのかい?君ほどの頭脳を持つ男が・・・」

右耳の傍から声が聞こえる。

「本当に、理解できていないのかい?」

正面から。

「仕方ない、ネタ晴らしをしようか。」

後ろから。

「僕に届く『光』つまり、『君が僕を認識するための光』を」

左から。

「わがスタンド、『BUMP OF CHICKEN』で『空間を曲げる』ことで」



バギィッッ!!


唐突に鼻っ柱を殴り飛ばされ、吹っ飛ばされる。


「『逸らせた』のさ。・・・理解しても、どうにもならないけどね。」


「ぽ・・・ぽえ~ん・・・・」


「暴力はあまり好きではないのだけれど・・・・仕方ないね。」
「死んでもらうよ、土星さん」


鼻血をたらしつつ。

土星さんは。

またしても生まれて始めて、絶望を覚えた。 

「死んでもらうよ、土星さん」

土星はその言葉を聞き逃さなかった。
その言葉を聞いた時に昔の会話を思い出す。

『僕は戦いたくはないんだ……』
『戦えば……能力を使えばきっと僕は暴走してしまう』
『強い力と言うのはそれだけ魅力的なんだよ?』

初めて聞いた時は理解できなかった。
しかし、ある時サトヨシの戦いを見て土星は理解した。
いや、アレは戦いではなかったのかもしれない……
その強さに土星は恐怖したが、同時に魅了された。

(自分の物にしたい……!)

その為に計画を練りここまで来た。

後、一歩なのだッ!

その時、少し離れたところで声がする!

「右後方から殴ろうとしてるみたいだねェッ!」
「ハイ、先生……あそこですね?」

同時に何もない空間にチョークが飛ぶ。
が、チョークは途中で方向を急激に変える。

「ピンチみたいだったねェ!土星さんッ!?」

ツチノコスターはソマのナイト・ヴィジョンでサトヨシの視界をジャックし攻撃方向を伝える。

「佐藤先生ッ!」

サトヨシはBUMP OF CHICKENを解除し姿を見せようとしたが……

「左……いや、逆だから右かねェ?見えたらオールラブで『ぶん殴る』んだよねェ!?」
「解りました先生……」

ナイト・ヴィジョンにより補足され姿を現せないッ!

「クッ!」
「ぷー だいどんでんがえし」

サトヨシは佐藤との戦闘に動揺を隠せない……


その後方……植え込みの隙間から覗く人物が一人……

「何か激しく戦ってるみたいなんだけど……」
「ビッチ……シツレイ、ドーノコーノ言ッテル暇ハナインデスッ!」
「わかった!わかったって!とにかくあの『佐藤先生』を正気に戻せばいいのね?」

いや、正確には二人と言ったところか。

「ソウデスびっち……シツレイ、貴女ノ『能力』ナラ『可能』ダト……」
「あーホントに良い性格してるわ私って……」

しぶしぶと立ち上がりアルジスはサトヨシ達の方へと向かう!

「そこまでよッ!」

アルジスは颯爽と躍り出ると、土星にビシっと指を突きつけた。
その場の全員の視線が、アルジスに注がれる。

「……で、この後どうしたらいいワケ?」

「ナ、何ノ作戦モ考エズニ飛ビ出シタノデスカッ!?」

「あなたが考えてると思ってたんじゃない!」

いいあいを始めるアルジスとムトウ(の胸)。

「お取り込み中、申し訳ないんですがねェ」

そこに、ツチノコ・スターが割って入る。

「アンタの持ってるそれ……『ムトウ』の『上半身』だよねェ?
 つまり……それを『破壊』すればッ!
 他の『パーツ』なんか関係なく、ムトウは死ぬってことだよねェーッ!」

土星がガス球を生み出し、佐藤が『オール・ラブ』を発現する。
サトヨシは、ツチノコ・スターが視界を操っているので思うように動けない。

二つの脅威が、アルジスに向かい……



そして、吹き飛ばされた。


「まずは……こんな感じかしら?」

彼女を守るように立ちはだかるのは……無色透明の、巨人。
『池の水』に命を与えたものだった。

「オオオオオオォォォォォ」

雄叫びのような声を上げながら、『水の巨人』はその太い腕を振り回す。
バシュウッ、と音を立て、一瞬でガス球は消え去り、『オール・ラブ』を
壁に叩きつける。それを見て、ツチノコ・スターは焦りを覚えた。

(この『パワー』! ただ『大きい』というだけで!
 近距離パワー型のスタンドを遥かに上回る!
 しかも……)

『オール・ラブ』が、ラッシュを巨人に叩き込む。
しかし、『水面』が揺れただけで、ダメージを与えたようには見えない。

(『水』は壊れない……! 土星さんのガス球で吸い取ろうにも量が多すぎる!
 仕方ないねェ……こうなったら……!)

「で、後はあそこの三人をのしてから、あの佐藤とかいう先生を元に
 戻せばいいのよね?」

「佐藤先生モ ノシテルダロウガァー! コノビッチガァー!」

「大丈夫よ、あの人頑丈そうだしそうそう……」

のんびりと話をするアルジスとタチバナ。その会話は、突如打ち切られた。

『崩 壊 す る 巨 人』によって。

「嘘ッ!? 何で負けてるの!?」

「ククク……最高だねェ……この『力』ッ!」

巨人の腕を投げ捨て、ツチノコ・スターは哄笑した。

「『BUMP OF CHICKEN』! まさか、これほどまでの力とはねェー。
 『水は壊せない』……その、『事実』を! 『捻じ曲げた』!
 最強じゃあないか……
 サトヨシはここまで扱いきれてないようだけどねェ。
 この俺なら! その能力を100%生かしきれるねェーッ!」

「マ……マズイ……」

タチバナの声に、焦りが滲む。

「どういうこと?」

「奴ガ イッテイル通リ、『BUMP OF CHICKEN』ハ 最強ノすたんどデス。
 ソノ能力ハ、アラユルモノヲ『曲ゲル』。物質ダトカ、光ヤ音ダトカ、
 ソンナ モノハ『オマケ』ニ 過ギナイ……ソノ『真ノ能力』ハッ!
 『運命』ヤ『現実』ヲ 捻ジ曲ゲルッ!
 ツマリ、『世界ヲ従エル』能力ッ!
 
 ダガ、最モ恐ロシイノハ、ソンナコトジャア アリマセン。
 能力ヲ使ウタビニ! ソレガ強力デ アレバアルホド!
 本人ノ崇高ナ『信念』マデモガ、『捻ジ曲ガッテイク』!
 ダカラ、さとよしハ 今マデ 戦イニ 参加シナカッタノデス」

「さぁて、まずはタチバナを破壊するかねェー。
 土星! 佐藤! お前らはサトヨシの相手をしてるんだねェッ!
 殺すんじゃあないぞ……俺の能力まで消えちゃうからねェ」

ツチノコ・スターは『BUMP OF CHICKEN』の腕を振り上げ、思いっきり叩き込む。

……『自分自身』の腹に!

「おぶぁッ!?」

よろめき、体勢を崩す彼の腕が、更に彼自身の顔を殴りつける。

「ごふっ! これは、がはっ! い、一体ッ!?」

自分で自分を殴りつけているので、威力はそれほどでもないが、彼が
地面に倒れて尚、腕は動き続ける。

他人を動かす能力……ツチノコ・スターは杏子を見るが、彼女は10m以上
離れた場所で倒れたままだ。
彼女の能力が発動するのは、『杏子が触れている生き物』と、『その
生き物から3m以内の生き物2体』のはずだ。

「……『視界』が、さっきからおかしいのよ。
 片隅に、『コレを生き物にしてくれ』って書いてある。
 とりあえずは書いてある通りにしてみたけど、どうやら正解だったみたいね」

アルジスはツチノコ・スターを見下ろしながら言った。

「『地面』を生き物にしたわ。この辺り一帯の地面は、全部私の味方よ」

「そして……! 『地面』から3m以内にいる生き物は、操れるってわけ。
 ……嫌なら空でも飛んでみなさい!『エレクトロ・チューン』!
 『地面』の『口』を開いてッ!」

杏子が身体を上げ、高らかに叫ぶ。ツチノコ・スターの背後の地面が
パックリと割れ、彼を飲み込む。

「くっ……! 『BUMP OF CHICKEN』……! 曲げ……れねェーッ!?」

空間を。地面を。重力を。どの方向に曲げても、地面に飲み込まれ、
全身をガッチリと固められたツチノコ・スターには成す術がない。

「母なる大地は全てを飲み込む……
 『讃え』よッ……『土』をッ!」

ズン、と轟音を立てて。『口』は閉じた。

『ツチノコ・スター/EX-CREATIONS
 地面に潰されてリタイア』

ド ド ド ド ド ド ド !

「サト…ヨシ…さん…?どうして…」

杏子はこの場にサトヨシがいることが信じられなかった。

「この力を使えば…『世界を曲げ』れば…全て僕にしっぺ返しが来る。だから今まで…いやコレからもできる限り動きたくは無いんだ…。でも…ムトウや…先生を助ける為なら…『自分の犠牲などいとわない』ッ!」

体を引きずりながらソマも意識を取り戻したようである…

土星は震えていた。敵はサトヨシ、ソマ、杏子、そしてアルジスと『ムトウタチバナのパーツ』。

いかな天才であろうともこの場での勝利は『100%不可能』であった。

「ぽえ~ん さとう」

「・・・」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !

サトヨシは焦ったように佐藤を見る。

「さ…佐藤先生…」

「『ぽえ~ん』…とは…?そんな言葉は存在しないッ!いいか?日本語というものは『無限』の可能性を持っている…ッ!でもな、『ぽえ~ん』なんて可能性はないッ!」

ツチノコスターのスタンドが消えたことにより洗脳が解除されている。黒いオールラブの能力が不完全だったこと、そして佐藤の精神力がそれを上回っていたことで起きた事態だ。

サトヨシは土星にいう。

「君の『欲望』なんて…ココにいる者の『心』に比べたら存在しないも同然ッ!さぁ、喋ってもらおう!『スタンド使いを増やすものと殺すもの』について君が知っていることを…」

土星は風船を出した。

全員が構える。しかし「サターン・バーレー」は土星を包み込む。

水分が飛び、ミイラとなっていく土星。

「ぽえ~ん。『あい るーず こんとろーる』。」

『ムトウタチバナのパーツ』達はその言葉を聞くと震え始めた。理由はわからない。

「ぐんまけん」

シュウウウウウウウ…

土星/自らミイラ化・リタイア!

「ムトウのパーツはまとめておこう…この「上体部」は「両腕部」とくっつけて僕のアトリエで保管するよ。かならず僕が守る。他にパーツがドレだけあるのかわからないけど…かならず『ムトウタチバナ』を呼び戻すんだ。」

「本当ニ申シ訳ガタチマセン…デスガ、ソコノ売女…シツレイ…ノ『すたんど能力』でアル程度話ス事ガデキマス…。シカシナガラ『脳』ガナイタメ『思考』ハホボ機能シマセン…。美シクハアリマセンガ、さとよしニ『保管』シテイタダクノガ最善デショウ…」

「私、頑張って探しちゃいますからッ!タチバナさん、見ててくださいねっ!」

(コ…コノけつめど野郎ガァァァァァ…)

(どうせ断れない性格なんだし…私もやることが無いしなぁ~…)

「私からも生徒達に頼んでおこう。しばらく会っていないしな…」

(彼等が…「私の目的」の障害になるか…見極める…)

それぞれが『ムトウタチバナの復活』に向けて動き出した…

第8話『友と、恩師と、土星の輪』
To Be Continued...   外伝『無題』

                               外伝『あのあと…』

                                                                                   外伝『8話外伝』

最終更新:2008年07月09日 22:26