男は『 火傷』を負っていた。
進めるその歩は、『 緩やか』であり。
滲み出る『 脂汗』は、その傷の深さを伺わせる。
フイに、男は立ち止まる。
「耳障りだな。」
「何が悲しい?」
「何故(なにゆえ)に、涙を流す?」
「この『 隕鉄』に何の用があり、後を尾行(つ)けるのだ?」
隕鉄は振り返る。
振り返ると・・・。
涙を流す男が、其処に立ちすくんで居た。
「お前は・・ッ隕鉄・・・ッ!
『隕 鉄』と言うのか・・・・ッッ!!」
男は『 泣きながら答えるッ。』
「俺は今願うッ。
アンタがこの上無く強い『 雄(おとこ)』である事をッ。」
「そして、俺は『 アンタに、願うッ』」
「アンタが俺と・・・・ッッ!」
「『 レ イ ル ロ ー ド ・ デ ス マ ッ チ ッ ッ ! ! 』」
「『 死 合わ ん 事 』をッ!
切に願うのだァアア ア ア ア ア ー ッ ッ ! !」
隕鉄は言い放つッ!
「雄(おとこ)ッ!
『名を 名 乗れッッ!!』」
流るる涙を拭いもせずにッ、
雄(おとこ)は『 烈』に名乗りを挙げたッ!
「『グ ラ ン ド ・ フ ァ ン ク (G・F)』ッッ ッ ッ ! !」
「本日この場ァーッ!
てめぇにッ!『 レイルロード・デスマッチ』を申し込むぜぇえええ え え ええ ーっ ! !」
・・・・・
G・Fは回想する。
ガキの時分の話だ。
俺ァ、ガキ大将が憎くて仕方無かったのよ。
どいつもコイツも、アイツ(ガキ大将)にヘコヘコしていやがる。
『それでも、てめぇ等 男 か?』
男ってのはよゥ!
男ってのは暴力でモノ言わす野郎に、『ヘコヘコとして生きてて良いのか?』
ガキの時分。
おちんちんは、ちびっこかったし。
男が一人、生きていくって、意味を知らず毎日を過ごしていたけどよッ。
眠れる根っ子は『雄(おとこ)』だからよぅッ。
そいつが我慢ならなかったのさッッ!!
だから俺はガキ大将を ブ チ の め し た ッ ! !
だが・・・、其処にあったのは『 虚 し さ だった・・・ッ!!』
お前ェよぅ・・・。何で、泣きながら『許しを請うンだよ・・・?』
俺だって、泣きたい位に、痛かったンだぜ・・・。
なのに・・・。何だァ?
『その様(ざま)は、よぉお お お・・ ・ ・ ッ ッ ! !』
この国に『 雄(おとこ)を通して生きているヤツはいないのかッッ!!?』
この国の男児は『ふぬけばかりかァアア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ?』
俺は我慢ならなかった。
それ以上に・・・『悲しかったッッ!!』
・・・・・
「だがなァ・・・。『隕鉄』の。」
「俺には解るンだァ・・・。」
「アンタは『 強ぇッッ!!』」
「怪我しているアンタだが、この世の『 どんなヤツよりも強ぇ』ッッ。」
「隕鉄の。たかが『1 喧 嘩 』・・・。
然れども・・・ッ。」
「『 命 』」
「張ってくれるかぃ?」
隕鉄は・・・。
答えるッ。
「G・Fと言ったな。」
「怪我をしていると知りつつも、死 合わ ん 事を願う様。
余りに『 独 善ッ!』」
「それは正義足る事を、旨とすッ。この隕鉄にとって『許し難き大罪』ッッ!!」
「然れども『G・F(グランド・ファンク)』。」
「貴様・・・・ッ。」
「その『 心 意 気 や 良 し 』ッッ ッ!!!」
「では隕 鉄 のッッッ!!」
G・Fは狂喜するッ!
「この戦(いくさ)買うと致そう・・・ッ。
但し・・・ッ。」
「代価は『 貴様 の 命 だ 』ッッッ!!!」
○隕鉄vsG・F
・『本体:隕鉄/スタンド名:ツイスター 能力:あらゆるモノを「捻じ切る」。』
・『本体:G・F/スタンド名:レイルロード 能力:レイルロード・デスマッチ???』
ー『 今、両雄、拳、交えんと、欲すッッ!! 』ー
風が、吹いていた。
荒れ狂う風が。
その中心には渦。
ツイスター。
すべてを捩じ切る戦いの風だ。
戦い、傷つき、それでもなお己の正義のため、今また戦いに挑もうと、男・隕鉄が威風堂々と相手を見据える。
対するのは決闘を望むひとつの闘志。
自らの信じる男の生き様を貫かんがため、暴風のごとき敵を前に、瞳に燃える闘気を宿らせ、戦鬼が如くに立ちはだかる。
「その心意気に免じて、貴様の大罪、全力をもって裁く」
「怖いねァ、恐ろしいなァ。だが、今俺を震わせているのは断じて『恐怖』なんかじゃあない。
こいつは……『武者振るい』ってェヤツだぜ。
……行くぜ、隕鉄ッッ!!
レェェェェイルロォォォォォォド!!!」
怒りが、歓喜が、闘志が、魂が。
蒸気となってG・Fの体から噴き出し、赤銅色の巨人と化す。
「出したな。だが、我が正義はすべてを捩じ切るッッ!!
砕けッ、ツイスタァァァッッ!!!」
力は暴力の渦となって、レイルロードを狙う。
その拳がぶつかる刹那、隕鉄とツイスターの体がバランスを崩し、そのまま弧を描いて滑り始める。
「スタンドを見た瞬間、近距離パワー型だとわかったぜェッ!!
だからこそッ! 俺はこの決闘に身震いしたッッ!!
俺のスタンド、レイルロードの『レイル』に触れたものは、何であろうとこの戦いの輪から逃れることは断じて不可能ッ!
死が二人を分かつまでッ!! 戦いのワルツは終わらないッッ!!
それこそがこの俺の望む決闘、レイルロードデスマッチッッ!!」
隕鉄とは逆方向に滑り出すG・F。
しかし、『レイル』は円形ッ!
その軌道の交わる先は力と力、拳と拳の連結点ッッ!!
軽く静かに溜息をつく隕鉄。ひそやかに、だが決意を込めて言葉を紡ぐ。
「……やれやれ、だぜ。この私が貴様を叩き潰す。その事実は変わらない」
二人が話す間にも、その距離は近づいていく。
距離が縮まり、言葉がなくなる。
二体のスタンドが、同時に拳を振りかぶる。
接触ッ!!
ドッガァァァンッッ!!!
お互いのスタンドが、同時にパンチを繰り出した。
それぞれの魂を賭け、二つの拳がぶつかった。
「パワーは互角ッ、だが……」
言ってふらつくG・F。
「スピードは向こうが上、か。なるほどねェ。面白いじゃねェかッ!! このG・F、レイルロードデスマッチで負けたことは『皆無』ッッ!! 力比べは終わりだッ!
ここから『真 骨 頂』を見せてやるぜェッ!!」
叫び、走り出すG・F。
「昔からある言葉だ。
……『弱い犬ほどよく吠える』」
静かに、右手を握りしめる隕鉄。
握りこまれるのは、決意。
相手を叩き潰し、正義のために前へ進もうとする鋼の決意。
「せいぜい吠えろッ! この『レイル』は永遠のループッ!
どこへも向かうことはないッ!! 地獄以外には……どこへも向かわないッッ!!」
走った勢いのままジャンプするG・F。
敵を見上げ、構える隕鉄。
二度目の……接触ッ!!
「かかったなッ! 今度こそ貴様は終わりッ!! この決闘を超え、貴様を超えて俺は次なる目的地へと『レイル』を導くッッ!!」
空中のG・Fを迎え撃つべく上を見ていた隕鉄。
その足を、レイルロードが下から蹴り飛ばした。
隕鉄は転倒。そしてすでにG・Fは走り出しているッッ!!
「男ッ!
男たるものッ!!
何よりもッ! 誰よりも強くあらねばならぬッッ!!
強くあるため、勝つためならばこのG・F、あえて手段は選ばぬッッ!!」
走るG・F。上半身を起こす隕鉄。『レイル』に座ったままの姿勢で、隕鉄は言う。
「油断していた、と言っておこう。
貴様の勝利への執念、確かに見せてもらった。
だがッ!!
この隕鉄には訳があるッ!!
絶対に負けられない理由があるッ!!」
G・Fが再度飛び上がる。レイルロードは走り続ける。
空中からの蹴りと、地上からのラッシュ。
同時攻撃で、確実にとどめを狙う。
「どんな理由も関係ねェッ!! テメェを待つのは『地獄』という名の『終着駅』だぜッッ!!」
隕鉄は立ち上がる。正義の怒りを拳に込めてッ!
そして叫ぶッ!! 己のすべてを『もうひとりの己』と共にッッ!!
「戦う意義ッ! 負けられない理由ッ!!
それはひとつ、たったひとつの信念のため……
『正義は勝つッッッ!!!』」
ツイスターが『レイル』を全力で殴りつけたッ!
『レイル』は決して壊れないッ!
誰にもッ! 何者にも壊すことはできないッ!!
だが、あえてその『レイル』をッ!
隕鉄は全身全霊で『殴った』ッ!!
ズッギャァァァァーーーーンッ!!!
『レイル』は壊れないッ!
壊れないはずだったッッ!!
しかしッ!
その周りの『空間ごと』ッ!
ツイスター、いやツイスターRRは捩じ切ったッッ!!
「馬鹿なッッ!! 『レイル』は絶対に切れない戦いのリングッ!!
線路はどこまでも続くはずなのだッッ!!」
G・Fとレイルロードの同時攻撃は、『レイル』の破壊により脱線。
隕鉄は難なくかわす。そして、隕鉄は言う。
「さっき貴様が言ったはずだ。この『レイル』が向かうのはただひとつ。
『地獄』という名の『終着駅』だ」
「俺の『レイルロード・デスマッチ』がこんな形で破られるなんてな…」
G・Fは一旦レイルを解除する
「まさかこれで御仕舞いと言うのではあるまいな?貴様は先刻『命』を張れと言った…
それは勿論貴様にも相応の『覚悟』があるということ…」
「当たり前だろッ
『殺すか』『殺されるか』ッ
雄と雄がぶつかる死合いにはその二つの道しか無いッッ」
「 そ の 通 り だ ッ
捻じ切ってやるッッッ!!!!!
ツイスタァァーーーッッ!!!」
ツイスターは大きく拳を振り上げる
元より、隕鉄は、先の戦いで全身に火傷を負っている
一挙一動の度に強烈な痛みが体を襲う
だが、命の奪い合いにおいては一瞬の躊躇も許されない
「去ねいッッ!!!」
ツイスターの拳がG・Fを襲う
ゴッシャアアアアアッッ
「うぐうううあああああああ」
ベキョッミシッッ
その拳を防御した右腕が鈍い音と共に『捩じ』れ、肩からぶらさがる肉の飾りと化した
G・Fはよろめき、後ずさる
「くっ…くそッ…」
「さあ…これで終わりか?次は貴様の背骨を捻じ切ってやる…
正義は…
勝つッッ!!!」
再びツイスターは構え、G・Fに拳を打ち込まんと大きく足を踏み込む
その瞬間、G・Fの眼が鋭く光る
「隕鉄…踏み込んだな?
足を……踏み込んだよなァ~?」
「なに…?」
ドドドドドドドドドドド
隕鉄の踏み込んだ足は、いつのまにか敷かれていた新たなレイルの上にあった
そのレイルの延長線上にG・Fもいる
「この俺に向かって踏み込んだことで、アンタの『進行方向』は決定した…
後ろに下がることはもうできないぜッッ」
G・Fに拳を向けたまま、隕鉄は言う
「それがどうした?状況は変わっていない…否、むしろ貴様にとって不利になった
ツイスターの拳が当たれば必ずその背骨を捻じ切る
貴様はそれを横に避けることもできなくなったのだぞ?」
しかし、G・Fの眼は鋭い光を失わない
「いや…これで良いンだ…この形がベストなんだぜ…」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
隕鉄は気付いた
G・Fのさらに後方に伸びるレイル…
その向こうから、何かが猛烈なスピードで迫ってくる
「隕鉄…アンタは強いッ!まともにやっていたんじゃ敵わねえみたいだ
そこでよ…一つ、『相打ち』ってやつに持ち込もうと思ってな…」
土煙を上げて迫るそれはッ『大型ダンプトラック』ッ
「丁度近くの道路に走っていたからな…このレイル上ではブレーキは効かない……
運転手には悪いが…」
「馬鹿なッ…」
(この男本気か?もしかすると、ダンプが直撃する直前にレイルを解除し飛びのけるのではないだろうか?
ならばそれと同時に…
いやッ
こいつの眼…これは『本物』…
確実にッ!道連れにしようとしているッッ
レイルを捻じ切るにも、こいつを殺してレイルを解除するにも、
時間がもう無――――)
ゴ ガ ッ ッ ギ ャ ッ シ ャ ャ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ァ
ダンプトラックは二人を直撃し、
煙をあげながら近くの廃倉庫の激突、停止した
ああ―
いくら強い者との戦を欲するといえど、ここまでするというのは狂気の沙汰ではないだろうか
もっとも、自分も言えた義理ではないが…
炎上するトラックと廃倉庫の横からゆっくりと、隕鉄は這い出た
「咄嗟に、目の前の空間に捩じれを作り直撃を防いだものの―…
これは厳しいな…体が…限界だ…
果たして、俺はやつに勝てたと言えるのだろうか…」
グランド・ファンク(G・F):死亡
「これだけの爆発なら、すぐに警察やら野次馬やらが集まってきてしまう…
なんとかこの場を離れなければ…」
「「「ブラボー、おおブラボーッ!!」」」
炎上するダンプカーから離れたところに2人の男が立っていた。
「『炬燵』よぉ…うまく撮れたか?あぁ?」
<本体 八手:スタンド名 ストレィンジ フィーリング>
「もちろんっすよ!!かなりうけますよ、『八手』さん。」
<本体 炬燵:スタンド名 メタルハイテン>
『炬燵』と呼ばれた男はビデオカメラを差し出した。
「いい…スゴクいい…。お前は名監督だ…。『マンション』の時もよぉ、お前に頼めばよかったぜ…。」
「『マンション』…だと…?」
隕鉄は背中に『何か』が走るのを感じた。
「おっ?知ってんのかぁ?じゃあ『イイコト』教えてやろうかぁ?」
八手と呼ばれた男は無防備に隕鉄のほうへ歩み寄り、近くのコンテナに腰掛けた。
「ちょっ…。何でバラすんすか?」
「こいつぁすぐ死ぬだろうしよぉ…。それに『盗聴』で聞いただろ?『俺らを探していたヤツ』は真相を聞いちまったってなぁ…」
「でもなぁ…その先に誰も知らない『もう1つの真実』があるんだよなぁ…知りたいか?」
隕鉄は瞬きひとつせずに八手を凝視していた。
「俺の能力で殺し合いをさせたのさぁ…。」
「「「!!!」」」
真相を知らない隕鉄だが『直感』で理解した。
この男!今、目の前にいるこの男が!!
『ジ ョ ー イ を 苦 し め た 元 凶 だ と い う こ と を !!』
「うぉぉぉぉーッ!!『ツイスター』!!!」
ツイスターの拳が八手の座っていたコンテナを『捩じ切った』!!
「俺は『悪』になった…住人を守るためスタンド使いを皆殺しにする…それが俺の貫く正義だ!! その正義のためここでお前たちを始末するッ!!」
(こいつ…この傷でなお心が折れてねぇ…ッ!!)
「まだ動けんのかぁ?なら相手してやるよ…ッ!!」
「八手さん!ハッキングした監視カメラにこっちに近づく人影が2人写ってるっすよーッ!!」
炬燵が大声で叫ぶ。
「警察や野次馬じゃあないようっす。…大通りから…こいつは…っと。『神城静夜』っすね。佐藤の指示か…独断か…。それと路地裏から1人…。こっちは誰かわからないっすね…。」
「そうか…。炬燵、『神城』を始末しとけ。『能力』を使ってもいいからよぉ…。もう1人が来る前によぉ…こっちは終わらせるからよぉ…。」
「終わったらメシでも行こうぜ…まずいメシはイヤだけどよぉ…。女の子の作ったもんならおいしくいただくぜぇ…」
さぁて、どう料理してやろうかねえ」
大通りの方へ走っていく炬燵の足音を聞きながら、八手は値踏みするように
隕鉄を眺めた。
満身創痍。その言葉がこれほどピッタリ来る人間も、そうはいないだろう。
着ている服はそこら中焼け焦げ、或いは擦り切れ、ボロボロだ。
それに包まれている人間はもっと酷い。
元々全身を火傷が覆っていた上に、先程の戦闘で更にそれが増え、その上
打撲に切り傷、骨折が数箇所。ズボンの右足はじんわりと赤茶に染まっている。
常人ならば死んでいても全くおかしくない。
『だと、言うのに』!
「俺を『ぶち殺してやる』……てぇ目だな。
全く諦めてない、強い『意志』を持った目だ……」
真っ直ぐに、八手を睨む隕鉄の瞳。
その眼差しは、もし、『視線』に刃がついていたなら、それだけで八手を
刺し殺せそうな程鋭かった。
「気にいらねぇなぁ……」
八手は一気に距離を詰め、『ストレィンジ フィーリング』の拳を叩き込んだ。
「怒りか? 憎しみか? 何がお前の心を燃やす?
希望か? 意地か? 何がお前の心を支える?」
隕鉄も『ツイスター・R・R』で防戦するが、全身を覆う酷い痛みで、防御は
おろか、意識を保つだけでも精一杯だ。
しかし、その瞳はやはり八手を捉え続ける。
「気にいらねえ、気にいらねぇなぁぁぁぁぁ!
その『心』! 俺の『ストレィンジ フィーリング』が叩き折ってやる!
『精神攻撃』を! 行うと『宣言』するッ!」
ヴン、と低い虫の羽音のような音を立てて、『ストレィンジ フィーリング』の
半透明の身体が淡く輝いた。
「ついでだ、教えてやろう……
この『ストレィンジ フィーリング』の能力は『感情』を植えつける事。
この能力で……『マンション』の連中をお互いに憎しみあわせ!
殺し合わせたってわけだ……」
立つ事もままならず、膝をつく隕鉄を見下ろして笑みを浮かべる八手。
その身体が、突然強力な力で『引っ張られた』。
「舐・め・る・な……!!」
隕鉄を中心に、空間が渦巻く。
海に浮かぶ渦のように。或いは、蟻地獄の巣の様に。
『渦』は八手の身体を引き込む。
「この身体が動かないというなら……!
『相手』を動かす! その周りの『空間』ごとッ!」
隕鉄は渾身の力を込め、『引き寄せ』ながら、『ツイスター・R・R』の
拳を八手に打ち込んだ。
……が。その拳は、『ストレィンジ フィーリング』によって止められる。
「残念だったな。
あんたの『情報』は、全部知ってるんだ……
その『パワー』! 『スピード』! 『能力』に『射程範囲』まで
正確になぁあ~。
そして、弱点もだ。
その直情的な性格! そして、『一度に二つ以上のものを捻れない』……
『情報』通りだな。
何も、『ストレィンジ フィーリング』の能力だけが、他人の『感情』を
操る術じゃあないんだぜ?
油断したんじゃあない。お前が怒るのを待ってたのさ!
『ストレィンジ フィーリング』ッ!
絶望の闇の中に落ちやがれええええッ!」
成す術のない隕鉄の身体を、『ストレィンジ フィーリング』の拳が蹂躙する。
それは、物理的攻撃力を全く持たない攻撃。
しかし、何よりも恐ろしい攻撃だった。
「『絶望』……を! 叩き込んでやる……文字通りなぁ。
常人だったら、三発で絶望のあまり自殺するだろうが……
俺は油断しねぇ。10発……! 20発……! 30発ッ!!」
息が切れるまで、八手は隕鉄に拳を叩き込む。
隕鉄の身体はもはやピクリとも動かず、地面に横たわった。
「……絶望のあまり、動く気さえ起きないか?
だが、死んじゃあいないはずだ。……さあ、起きろよ。
トドメを刺してやる」
『ストレィンジ フィーリング』の姿が、元の半透明に戻る。
もはや、隕鉄に反撃の意思どころか、生存の意思さえ残ってはいないはずだ。
だが、それでも油断なく八手は隕鉄の反応を待つ。
奇妙な、音がした。
「……? なんだ? この音は……」
八手は辺りを見回す。音は段々と大きくなる。
「ク、ク、ク、ク、ク……」
それは、嗤い声だった。……隕鉄が、嗤っている。
そう、八手が認識した瞬間、彼の身体は後ろに吹き飛んでいた。
「ご……はっ! ……今、の、は…… 一体……?」
「何が、俺を支えるか……そう、言ったな……」
ゆっくりと、隕鉄が、立ち上がる。八手の身体が、ガクガクと震えた。
『これ』はなんだ? 一体、何が起こっている?
『攻撃』の方法もわからないが、それ以上に『何故身体が震えるのか』。
それが、八手にはわからない。
「教えてやろう……
『 絶 望 』さ。
この世界への……そして、お前たち『スタンド使い』へのなぁぁぁぁぁ!」
隕鉄が吠える。
八手はようやく、『それ』の正体に気付いた。
自分の中から、能力を使って排除し、久しく忘れていた感覚。
『それ』は、『恐怖』だった。
「うぉおおお!?
や・やべぇええええええ~~~ッッ!!?」
八手は間合いを取った。
睨みつける隕鉄ッ!
静寂ッ!
嫌な静寂だッ。
両者 、 動けないッッ!!
悠久なる一時は、静寂ッ。
・・・・・
『 D・M・Q』ゥーッ!!
この先だなァアアアアーッ!
この先に 居 る ンだなァーッッ!!
ヤァアア ア ア ツゥァアアア ア ア ア ア ーッ ッ! !
「そうよッ!『 ジョーイ』ッッ!!」
「急いでッ!
八手は、隕鉄を狙っているッ!!」
「『これ以上ッ!犠牲を増やさない為にもッッ!!』」
「急いでッ!
「ジョーイッッ!!」
「『 ジ ョ ー イ ・ ジ ョ バ ァ ー ナ ! ! 』」
・・・・・
ジョーイ・ジョバァーナ。
この名を聞く事で『 驚きを覚える者』も多い。
イタリアに置いて、この姓は『 特別な意味を持つからだ。』
ジョーイは語らなかった。
本当の『 己の姓』を。
語る必要も無かったッ。
戸籍上、既に違う姓であるのだから。
真実を知る者は二人。
『 D・M・Q』。
そして、もう一人・・・。
『 ツェペリ家の 少 女 』。
・『本体:ジョーイ/スタンド名:ブローウィン インザ ウインド 能力:風を自在に操る。』
・『本体:D・M・Q/スタンド名:シックスセンス 能力:「箱」に閉じ込める。』
・・・・・
かつてッ!
『戦闘の天才』と呼ばれる漢(おとこ)が居たッ!
かつてッッ!!
『神や悪魔(或いは鬼)』と認識された存在が居たッ!!
その漢(おとこ)の名は『 ワ ム ウ 』ッッ!!
そして、その漢(おとこ)の名はッ、
代々ッ!『 ツェペリ家』の一族に、語り継がれて来たッッ!!。
それはッ!
『 世界の命運を賭けた 究極生物 との 決戦の記憶 ッ ッ と共にッ!! 』
「ねぇ。ジョバァーナ。」
「貴方が日本に行く餞(はなむけ)に、私達ツェペリ家にとって、とても大切な昔話を教えてあげる。」
「『 神砂嵐』を必殺とする、雄々しき宿敵(とも)・ワムウの話を。」
「私の病気は重い。 きっと大人になる前に、死んでしまうだろう不治の病。」
「だから、ジョバァーナ。 貴方には私の分まで、強く生きて欲しいの・・・。」
「きっと、貴方ならできるわ。」
「『黄金の風を纏った』貴方なら、相手が神だって『 砂と化す』。」
能力を使わないと、
無理だけれど、理屈はこう。
左腕を、関節ごとに右回転する!
右腕を、ヒジの関節ごと左回転する!
その二つの拳の間に、真空状態の『 圧倒的破壊空間』は、
まさに、歯車的『 砂嵐の小宇宙』ッッ!!
神だって、砂と化す、嵐ッ。
その時・・・ッ!その前方に『 神砂嵐』が、発生するのッッ!!
もし貴方が・・・。
『空間を捻じ切る程に、強い回転』を起こす事ができるのなら。
その時、貴方は『 神砂嵐』を起こす事ができるハズよッ。
え・・・無理?
でも、お願い。
どうしても『 これだけは守って』欲しいの。
私には解るの。
貴方が『 大切な何か』を守る時。
この力が『 必ず、 役 に 立 つ 時が来る事を。』
お願い、信じて。
ジョバァーナ・・・・。
・・・・。
私・・・忘れないからね。
貴方と過ごした、ヴェネチアの夏休み・・・。
貴方に歌ったロックのメロディ。
決して忘れないわ・・。
私の初恋の人。
私の大切な『 ジョーイ ・ ジョバァーナ』・・・。
少女は、ジョーイにキスをした。
それは二人にとって、始めてのKiss。
そして・・・。それは『 最後の別れ』を意味するモノであった。
・・・・・
神城 静夜は急いでいるッ!!
『 罠』なんだッッ!!
八手は、僕の家から『 石 仮 面』を持ち出しているッ ッ ! !
そして、八手は知っているンだッ!!
恐怖はッ!『最も恐ろしいことが出来る、 自 衛 本 能 』である事をッッ!!
僕が行かなければならないッ!
そして、取り返さなければならないッッ!!
「美少年ッス~♪ 俺、興奮しちゃうッスねぇえええええーッ ッ ! !」
ッッ!!?
「俺、美少年大好きな『 炬燵(コタツ)』さんッ!!」
「うへへ、自分で、美少年好き言ってらッ ッ! !
キャッホーイッッ!! か なり う ける w w w wwww 」
・『本体:神城 静夜/スタンド名:スレイヤー:クライスト・イリュージョン 能力:進化したハズ??』
・『本体:炬燵(コタツ)/スタンド名:メタルハイテン 能力:???』
「すみませんが、急いでいますので。通していただけますか?」
神城静夜は言う。炬燵はそれを聞き、さらにテンションをあげる。
「ちょwwwwww
マジでェェ!? この子美少年な上にツンデレェェェッ!?
『下品ですが……その……』って感じだぜェェェッ!!!」
「何を言っているのかわかりませんが、先ほども言ったように急いでいますので失礼します」
強引に横を通り過ぎようとする静夜。
「『だが、断るッ!!』ってヤツゥゥ? 八手の邪魔をさせるのは、お兄さんちょおォォォッと困っちゃうんだよねェェェ」
八手。その名前が炬燵の口から出た瞬間、静夜の表情が変わる。
「そう、ですか。ならば仕方ありません……。無理矢理『切り抜ける』ことにさせていただきます」
そう言った静夜の右手には鎌が握られていた。スタンドすらも切り裂く漆黒の鎌・スレイヤー:クライスト・イリュージョンが。
――――――
(どうしたらいいんだよォ、何でコイツ、こんなボロボロなのにこんなに怖ェんだよォ……『絶望』してるはずじゃあないのか? 身を捩るほどの『絶望』じゃあないのか? だが、今『絶望』しているのは俺だ。俺の方だ……。何でだよォ。何で何だよォ……)
八手は迷っていた。このままでは埒が開かない。
だが、それでも隕鉄の視線に込められた底知れぬほどの『絶望』と『怒り』が、八手の攻撃を許さない。
「何でだよォ、何でなんだよォ……、止まらねェんだよ、震えが止まらねェんだよォォォッ!!」
半狂乱で自分の体を抱きしめ、悶える八手。
……その手にコツリと当たる感触があった。
「そうか。『恐怖』も『絶望』も全部『人間』の感情なんだよなァ……。『人間でいるから』震えが止まんねえんだよなァ……」
ゴゴゴゴゴ……
「ブローウィン・イン・ザ・ウィンド!!」
突然、ジョーイは走りながらスタンドを出す。
「隕鉄を、アイツをやらせるわけにはいかねェッ!!
D・M・Qッ! ラストスパートだぜッ!」
ジョーイは走っているッ!
人が走れば、そこには空気抵抗が必ず起きるッ!
空気の抵抗イコール『風』!
ブローウィンインザウィンドは、その『風』を操るッ!
例えば『向かい風』を操り、向きを変えればそれは『追い風』になるッ!
風の流れを自分で変えて、ジョーイはさらにスピードを上げるッ!!
そして、二人の男が目の前に現れる。
一人は満身創痍の隕鉄。
もう一人は……。
「ヤァァァァツゥゥゥゥデェェェェェェェッ!!!!!!」
一瞬でキレた。
何もかもが、ジョーイの中から吹き飛んだ。
「怖いんだよォッ!!
怖すぎるんだよォォッ!!
また『敵』が増えやがった。この俺の前に、またビチグソ野郎が現れやがった……。仕方ないよなァッ!! コイツ仕方ないよなァッ!! 『人間』を……『やめる』しかないよなァァァァッ!!!」
八手の手には、神城家から盗み出した、古びた石仮面が握られていた……。
「可愛いよ美少年可愛いよハッハッハァァァーーーーッッッッ!!!!!!」
「静夜だ…」
「ンッん~~?」
「僕の名前は神城静夜だッッッ!!!!!!」
静夜が叫ぶと同時に、漆黒から銀白へ、スレイヤーの色が変化していく
「そうか~静夜っていうのかァァッ!イ~名前だねェェェ??
でもさ
この俺に刃を向けるっていうんなら…
お兄さんも手加減できないからさァァァ~~~…
結構痛い目にあってもらうぜェェェェェッッッ
『メタルハイテン』ッッ!!!!」
炬燵のスタンド、『メタルハイテン』のビジョンが出現する
「俺ってばSってわけじゃあないからさァァ本当は、あんま痛めつけるとかしたくないんだよねェェ…
あ、でも…美少年の苦痛に歪む顔もそれはそれで興奮するみたいな~?
キャッホーーーイwwwwwwwwwwww」
炬燵の言葉は聞かずに、静夜はスレイヤーを構え、ジリジリと歩を進める
「オォ~っと!あんまり近づかないほうが良いぜェ?
いいか、これは『忠告』だ…俺に近づかないほうが良い」
静夜は気付く
(あ…熱い…)
静夜と炬燵は3メートル程離れている
だがそれでも静夜に伝わってくるのだ
炬燵のスタンドが放つ『熱』が
「静夜くんは俺好みだからさ…特別に俺の能力、教えちゃうぜェェェェッッ!!
俺のスタンド『メタルハイテン』はッッ!!
『熱』を操るスタンド!!!
そしてその熱は、俺の気持ちの昂ぶりにあわせて上昇していくッ
だからさぁ~~…静夜くんの顔をみているだけで…
どんどんどんどんどんどん熱が上がっていくんだよねェェェエェエェエエエェエッッッ!!
どうだスデにッ!!これ以上近づけない熱さになっているだろうッ!」
しかし
一瞬で静夜は炬燵のすぐそばに詰め寄った
「何ッ!?」
「僕とあなたの間にあった熱を『刈り取った』」
静夜はスレイヤーを振り下ろす
「くッッ!!!」
瞬間的に炬燵は一歩退き、その刃を避けた
「んん~~~さすがッ俺の静夜くんッ痺れちゃう~~~~ッッ」
ホモと一口に言っても、色んなホモがいるもんだな、と静夜はふと思った
「静夜くんは知っているんかな?今この街で何が起こっているか…
まあ全部とはいかないまでも、ある程度は知っているよなァァ?」
静夜は頷くでもなく、黙って炬燵の眼を見つめていた
「うはwwそんなに見つめないでよ~照れちゃうじゃんッッ」
どうも、この相手と対峙していると調子が狂う
「ああもうお兄さんたまんないッッ
静夜くんにはこれも特別に教えてあげちゃうッッッ
色々な組織が動いているように見えるかもしれないけど…
大元は結局一つなんだよねェェェ…
もっとも、そうと気付いていない者も多いわけだけど~~
良いかい、キーワードは、『未来』な――――」
炬燵がそう言いかけた途中だった
辺りに、一際大きな声が響いた
「 U UU RR R RRRY YY YY Y YY Y YYYY!!!!!!!!」
「ン…?これは八手さんの声…やけにハイテンションだねェェ~~?」
「ま…まさか…」
静夜の頭に、最悪の想像が浮かぶ
そしてそれは
現実のものであった
「一体!一体何が起こったというのだッッッ!!!」
たった今目の前で起こったことは、隕鉄の理解可能な範囲を超えていた
ジョーイが現れたと思ったら…八手は『仮面』を取り出しッそれを装着した
仮面からは幾つもの『骨針』が飛び出し、八手の頭部を突き刺さした
そして…そしてッ!!
「ははははははははァァァーーーーーッッッッ
力が漲るようだァァッ
実に!実にハレバレとしたユカイな気分だァァァァーーッッッッ!!!!!」
「八手さん…一体どうしたっていうんだァァ…?」
「奴はッ!『石仮面』を付けてしまったんだッ!!
スデに…奴は…八手は…『人間』じゃあなくなっているッッッ
『吸血鬼』なんだッッッッ!!!」
静夜の額に汗が浮かぶ
「もう…日は暮れてしまっている…大変なことになってしまった…!!!!」
「UUUUUUURRRRYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「退いて下さいッ!!」
静夜は間合いを一瞬で詰め、斬りかかったッ!!
「退けと言われて退く馬鹿はいないっすよ…。静夜君…、…もう飽きちゃったよ…。」
高熱を帯びた『メタルハイテン』の拳が静夜の体に容赦なくめり込む。
『CooooooO------ッ!!』
1発!!2発!!3発!!4発!!5発!!6発!!
静夜は体中に火傷を負い地面に平伏した。
「もっと遊びたかったけどな…始末するぜ…。」
先ほどまでのふざけていた目ではなく、鋭い目で静夜を睨み付けていた。
そして勢いよく走り出し、静夜に殴りかかった。
…しかしその拳が届く前に炬燵は突然現れた『鎖』に体を拘束された。
「動けねえ…?…な、なんだこりゃぁぁぁぁッ!?」
「スレイヤー:クライスト・イリュージョン…。鎖を操り拘束した…。僕の…勝ちだ…ッ!!」
『スレイヤー』の一閃が炬燵のスタンドを『刈り』とった。
「レイニング…ブラッド…ッ!!」
炬燵が苦悶の表情を浮かべ地面に倒れこむのを見届けると静夜は力を振り絞り歩き出した
「急がなければ…お祖父ちゃんが言ったことが本当なら…、大変なことに…ッ!!」
突然衝撃とともに頭に響く鈍い音、静夜の視界が混濁する。
静夜の背後には炬燵、そして崩れ始めた『メタルハイテン』がいた。
「もう限界だ…。殺してやるっすよォォォ―――――ッ!!」
すさまじい高熱が静夜を包み込む。
静夜の意識が沈み始める…。
すると熱が消え始めた。これが『死』なんだ…静夜はそう思った。
「ぐえっ!!」何かの叫び声が聞こえ、静夜は目を開く。
(僕は死んでいないのか?)
静夜の前に2人の『淑女』が立っていた。
「てめぇらァァァ―――ッ!!邪魔すんじゃ…ウゲェッ!!」
1人が発現したスタンドの拳が炬燵の顔面にめり込む。
彼女の名前は『林檎』。
「平伏しなさいッ!!」そう叫ぶと、衣服が地面にはりつき炬燵を拘束した。
「あなたのお名前がわかりませんので、『服』を重くさせていただきましたわ。おばあさま、後は任せましたわ。」
顔をあげた炬燵は『直感』で理解した。
歩いてくる老婆の強さを、彼女が目の前に来たとき自分は敗北するということを。
「やべえっすよッ!!早く逃げ…って『寒い』ッ!!なんだってんだ!?『メタルハイテン』、早く熱を…。」
老婆が目の前に来たとき、すでに決着はついていた。
老婆『トメ』のスタンド『ジュール&カロリー 』は周りの空気を凍結させ炬燵を完全に押さえ込んだ。
「安心なさい、死にはしませんよ。」
『本体 炬燵:スタンド メタルハイテン リタイア』
「おばあさま…『2人』を見失ってしまいましたわ。彼が復讐に走らなければよろしいのですが…」
「大丈夫ですよ、彼は復讐(過去)のためではなくこれから『八手』に奪われる命を守る(未来)ために戦っているはずです。」
トメのその言葉に林檎は深くうなずく。
「それにしても驚きですわ…『真実』がもうひとつあって、それをD・M・Qさんが知っていたなんて…。」
「一時的な『記憶喪失』…だったのでしょう。彼女自身もむごい殺され方だったと聞いています…忘れるのが当然です…。」
歩き出した林檎とトメに静夜は声をかけた。
「待ってください…僕も行きます…。あの男は『石仮面』を持っているんです…。」
『石仮面』。その言葉にトメの表情が変わった。
「…林檎、この方に肩を貸しましょう。そして急ぐのです。」
3人は歩き出す。日は沈み、闇が支配する世界が訪れていた。
『おかしい』…
トメ達は、日の落ちた裏通りをひた走っていた。
応急処置をしたとは言え、静夜の足取りは重い。
それにしても。
『何故、辿り着かない』ッ!?
吸血鬼と化した八手の咆哮は、相変わらず同じ方向から聞こえてくる。
その方向に走り、既に10分以上経過している。
だというのに、『声』は近くも遠くもならず、同じように響いている。
「……まさかッ!」
トメは足を止め、辺りを見渡した。その視線が、静夜の上で止まる。
「…あなた……『それ』は?
いつから持っているのです?」
「え…? …これはッ! いつの間にッ!?
これは、『僕のじゃあない』ッ!」
静夜のズボンのポケットから出てきたもの。
それは、『携帯電話』だった。
「『アブソルート・ドメイン』ッ!」
一瞬にして状況を理解した林檎のスタンドが、携帯電話を破壊する。
その途端、辺りに響く八手の声は消える。
「不覚…私としたことが。
この携帯電話を仕込んだのは、恐らく先程の男……」
トメは、空を見上げた。随分場所を誘導されたのだろう。
八手の声どころか、辺りには静けさがあるばかり。
「…ジョーイさん、どうぞご無事で……」
――――――
「WRRRRYYYYYYYY!!」
八手の腕が、壁を削り取りながら唸る。
ただの力任せの攻撃に、しかしジョーイは吹き飛ばされた。
「最高の気分だ…なぁ、オイ……もう、聞こえないか」
八手は左手で掴んだ隕鉄を放り投げる。その身体は、ごろりと地面に転がった。
「『恐怖』とか『絶望』とかよぉ……そんなくだんねー事に拘ってた
自分が馬鹿らしいぜ! この『パワー』!」
八手は哄笑する。
「確かに…凄まじい、力だ」
ゆらりとジョーイが立ち上がるのを見て、八手は軽く顔をしかめた。
先程の攻撃は、即死していてもおかしくないはずだ。
ジョーイの周りを、風が渦巻く。『力』が強ければ強いほど!
その周りには、強い『風』が渦巻く。それを、彼は利用していた。
『吹き飛ばされた』のではなく、自ら『吹き飛ぶ』事によってダメージを
軽減したのだ。
「だが……やりようはある」
ジョーイのスタンドは、風を『起こす』力ではない。
風を『操る』能力だ。元になる風……空気の流れがなければ、使えない。
そして今、その源はD・M・Qが作り出していた。
「『シックスセンス』……大量の『空気』を箱の中に閉じ込め!
一気に解放したわ! ジョーイッ!」
「『ブローウィン インザ ウインド』ッ!」
旋風が巻き上がり、八手の身体はまるで空中に固定されたように浮き上がった。
「それで……? こんな事をして、何になるっていうんだ?
どんなダメージを与えようと『無駄』だ…この力の前にはなぁ~!」
嘲笑う八手に、ジョーイはニヤリと笑んだ。
「どんなに『パワー』があろうが!
その『力』を伝えることが出来なければ意味は無い!
お前は! 次の『攻撃』を避けられないッ! D・M・Q!」
「『シックスセンス』! 『箱』に閉じ込めた……
『日光』を! 解放するッ!」
D・M・Qが箱を開き、辺りが山吹色の光に包まれた。
「やった……か…?」
光が収まり、ジョーイは閉じていた目を開いた。
その顔が、殴り飛ばされる。
「ジョーイッ!」
D・M・Qが悲鳴を上げた。その視線の向こうには、二つの影。
左腕を失った八手と……全身崩れかけた、グランド・ファンク。
「よくも…やってくれたなぁぁぁ。
念の為G・Fを屍生人にしておいて助かったぜ…」
八手の足元には、レイルが敷かれていた。
力強い『レイル』は、風をものともしない。
しかし、そのレイルも、屍生人と化したG・Fも、八手を庇いボロボロと
崩れ去っていく。
「……悪あがきもここまでだ」
地面に倒れ伏しながら、ジョーイは砂を掴んだ。
身体は全身酷く痛み、悲鳴をあげている。攻撃をモロに受けてしまったからだ。
しかし、それ以上に!
『恐怖』が、ジョーイの心を支配していた。圧倒的な力を持つ、八手への恐怖が。
さらり……
ジョーイが握り締めた砂が、ゆっくりと流れた。
それは渦巻き、ぐるぐると回る。
「隕……鉄……?」
ジョーイが目を上げると、そこには歯を食いしばり、腕を伸ばす隕鉄の
姿があった。その右腕を中心に、ゆっくり、ゆっくりと『渦』がまいている。
「諦める……な……」
ジョーイは風の流れを感じた。
隕鉄の作り出す渦は空気の流れを作り、風を生み出す。
その風を、ジョーイが回転させ、『逆方向』の風を作り出す。
風と風はぶつかり、更に強い『風』が生まれる。
(これは……ッ! まさか……!)
強い風は渦巻く空気とぶつかる事で更に風を作り、それをジョーイが
『逆方向』の風へと流れを変える。
二つの力が、互いに競い合うように強くなっていく。
強く、
強く、
強 く !
(この『回転』の力ッ! 『無限』に! 強くなっていくッ!
まさか、これが……! 『彼女』の言っていたッ!)
風はどんどん強くなり、竜巻のように吹き荒れながら尚も大きくなっていく。
(『神砂嵐』ッ!?)
・・・・・
男ってのは・・。
暴力でモノ言わす野郎に『 ヘコヘコして生きちゃあいけねぇ。』
例え・・・。
この身が 屍 生 人 と なろうと も ォ ー ッッ!!!
腕であったッ
腕のみであったッ
だが『 それで充分であったッ!!』
「グランド・ファンク(G・F)ッ!? 貴様ァア ア ア ー ッ ッ ! ! ?」
G・Fの腕が、八手の足を握りしめたッ!
八手は力任せに、G・Fの腕の腕を『 踏み潰すッ!!』
それは一瞬であったッ。
『 それは、決定的な 隙 であったッッ!! 』
ー G・F スタンド:レイルロード 『 灰 と化す 』 ー
・・・・・
確信をした・・ッ!
確信をしたのだ・・・ッッ!!
あの場所・・ッ!
あの場所の『捻じ切れた 破 壊』は・・ッッ!!
ザキもッ!恩師・佐藤もッッ!!
俺を疑った『 あの破壊はッッ! !』
まるで『 力 が 暴走したかのような 破 壊 は ッ ッ ッ!! 』
間違い な い ッ ッ!!
『 この仮面を 被った者が 起こした惨劇だッッ!! 』
決して、忘れはしなかったぞッ!
この 吐き気を催す『 邪悪なる信念をォーッ ッ ! ! 』
グ ォ ブ ゥ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ッ ッ ! !
隕鉄は、血を吐き出したッ!
今、スタンド能力を使うと言う事ッ!!
それは『 死 』を 意味 す るッッ ! !
ー だ が ッ ッ ! !
『 今ここに、 生 涯 最後 の 一撃 をッ ッ! ! 』
そして隕鉄、雄叫び 叫 ぶ ッッ!!
「『 正 義 は 勝ぁあああ あ あ あ あ つ っっ っ ! ! !!』」
ジョーイが両腕ッ!
『空間捻じ切れる程ッ 渦ッッ 、
風ッ 竜巻なりて 真空ッ!』
『 圧倒的 破 壊 、生まれ落ち 「 空 間 」 』
「 故に 『 歯車的 小 宇 宙 ッ ッ 』」
ニヤリ・・・・ッ!
隕鉄は笑って死んでいたッ。
ー 隕鉄 スタンド:ツイスター 『 死 亡 』 ー
・・・・・
気まずいわ。
D・M・Qは見届ける。
お別れは、言ったのよ。なのに、こうして一緒。
でも、これで良かった。
ジョーイ。貴方の勝利を祝えないのは残念。
でも、私は私が伝えるべく『 真実』を伝えた。
何度も挫折をした。
幽霊生活なんて、寂しくて仕方なかったし。
蘇った記憶は、『 本当にゾッとする事柄』だし・・。
それに・・・。
その事柄を 貴 方 に任せて成仏するのも・・・。
貴方と、また離れなくちゃいけないのも・・・。
『 嫌だわ。 とってもね。 』
でも。
『 私達は 立 ち 上が る。』
何時だって立ち上がり、そして叫び続けるの。
私は『 スタンド(立ち上がる者)』なのだから。
サヨウナラ。
ジョーイ。
D・M・Qは消えていった・・・。
ー D・M・Q スタンド:シックスセンス 『 勝利を確信しながら 成 仏 』 ー
・・・・・
「守りたいダチは、皆死んじまったッ」
「この神砂嵐・・・。出来なかったからなのかなってよォ・・・。」
「何度も何度も挫折したんだ。」
「でも『 俺達』は『 立ち上がった』ッ。」
「 俺達はッ 『 ス タ ン ド (立ち上がる者)』だァア ア ア ーッ ッ! !』」
「 何時だって『 立ち上がりッ!!』
そして『 叫び続ける』のさッ!とびっきりな『メロディー』と共にッッ!!
とびっきりの『 敬 意 』と共にィイイ イ イ イ イ イ ー ッ ッ ! ! 」
「 『 人 間 賛 歌 を 、
歌 い 続 け る ン だ ァ アアアア ア ア ア ア ! ! ! 』 」
ー「 『 神 砂 嵐 ッ ッ ! ! ! 』 」ー
・・・・・
八手は理解をした。
最早どうにもならない事を。
だがッ。
この八手ッ!
先刻、この世の全ての『 超人』を超えたのよッッ!!
「ジョオオオオーイッッ!!
俺は 敗北をせんぞぉおお お お お お ー ー ー ー ー ! ! !」
高圧にて 体液 を、
眼球より 射 出するッッ!!
「『 空 裂 眼 刺 驚 ッ ッ ! ! 』」
ー スペースリパー・スティンギー・アイズ ー
八手は『 チリ』と化し、消滅をしたッ。
だが、空裂眼刺驚だけは、消し飛ばなかった・・・ッ!
ー 八手 スタンド:ストレィンジ フィーリング 『 誇りを持って消滅 』 ー
・・・・・
ー そして、ジョーイ は・・・?
ジョーイは思わず目を閉じた。もうすぐ俺も八手やD・M・Q、そして隕鉄の所へ行くんだな、そう思った。
グボゥォンッ!
「テメェには負けたぜ、八手。お前のしたことは許せない。アイツらを殺し、隕鉄まで連れて行ったテメェを。俺は何があろうと絶対に許せはしない。
だが、お前には、そのお前の勝利への執念には敬意を払おう……、八手」
しかし、八手が目から発射した『空烈眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)』は、ジョーイを外れた。
高圧で加速された体液は、隕鉄のまだ温かい体を貫く。
『ストレンジ・フィーリングの能力で『希望』を与えた……。『絶望』を糧に生きていた男に、『希望』を与えた所で何も変わらないかもしれないが……』
風の中に。
そんな声が聞こえた気がした。
ついさっきまで八手だった灰が、その風の中に舞っていた。
その灰が八手の顔で、一瞬ほほ笑んだように見えたのは、光のいたずらだったのだろうか、それとも……。
「……八……手……? まさかな……」
そう言いつつ黄金の風を纏った男は、ライバルであり親友でもあったものの亡骸に目をやった。
「ハァッ……ハァッ……石仮面はッ! 吸血鬼はどこにッ!!」
神城静夜だ。後ろにはトメと林檎の姿も見える。
「終わったよ。全部終わっちまった……」
「……そう、ですか……。あんなところで邪魔されていなければッ! 僕がもっとしっかりしていればッ!!」
「いえ、そんなことはありません神城様。あなたは紳士としての務めを果たそうとこの場に来られたのですから」
「そうですよ、こんな体でよく頑張った。まずはそれを誇ればいいのです」
林檎とトメに励まされ、素直に受け入れる気にはなれないものの、2人をこれ以上心配させまいと、静夜は平静を装った。
「わかりました。でもまずは、そこで倒れている人の『治療』が優先ですね……」
「アァンッ? 隕鉄はもう死んじまった。わかるか……? 死んじまったヤツをどうやって治療するって言うんだよォッ!! わかるかオイッ! 戻らねェんだよッ!! もう……戻らねんだよ……」
ジョーイの言葉に、静夜は無言で首を振る。そして。
「スレイヤー:C・I、『アルター・オブ・サクリファイス』」
隕鉄の体に、白銀の鎌が静かに当てられる。
鎌は怪我も火傷も『刈り取る』。
「死んだ魂は元には戻りません。そんなスタンドも存在しません。しかし、お祖父ちゃんが言っていました。
『『希望』が死ぬ、などということもまた『存在しない』のだ』と。
僕のスタンドは、命すら刈り取る死神の鎌。しかし、タロットカードにおける『死神』の逆位置は『挫折からの復帰』、『0からの再スタート』を表すのです」
静夜の言葉に、ハッとするジョーイ。
「D・M・Q。俺は大切なものを見失うところだったぜ。俺のスタンドは『風』を操る。向かい風を追い風に。『絶望の風』を『希望の風』に変える能力。
さっき、八手の声が聞こえた気がしたんだ……。隕鉄に『希望』を与えたってな。
あとは『風』を吹かせればいい。冬を越えた種が春の暖かい風で新しく命を咲かせるみてェに、俺は神砂嵐を超えて『黄金の風』を吹かせてみせる」
ブローウィン・イン・ザ・ウィンドが静かに現れる。
決意を胸に秘め、『柱の男』さえ超えた男の『精神のエネルギー』が、その姿を黄金色に変えている。
「八手の最後の誇りが種を植え、神城が大地を与えてくれた。そして俺にできることはただ一つ。
『風』を吹かせるだけだ。頼むぜ、ブローウィン・イン・ザ・ウィンド」
右手と、左手を、逆回転。
神砂嵐の動作だ。
しかし、そこで生まれた『風』を、ジョーイは柔らかく暖かく命を育むよう「操る」。
『風』とは空気の流れ。その空気の流れを、二つの円運動で循環させる。
すると、空中には空気の波紋が広がる。
そう……、『波紋』だッ!!
『波紋』とは特殊な呼吸法によって生まれる生命のエネルギー!
呼吸とはすなわち人体が起こす『空気の流れ』!
それによって波紋を錬ることができるのであれば、ブローウィン・イン・ザ・ウィンドでも同じことができるのは『運命』だったッ!!
「やっと……わかったぜッ!! 二つの渦が空中に波紋を描くッ!!
『波紋』は太陽のエネルギー!! 『種』が『大地』に宿り、『風』が雲を払って『太陽』を導くッ!!
そしてッ! 『風』を受けて立ち上がろうとする君は美しいッ!! だから立てッ! 立てッ!!
立 っ て く れ 隕 鉄 ッ ッ ! ! !」
(まだ……世界は俺を『絶望』させようと……?
……それも面白い。ならば俺は世界を『絶望』させてやるッ!)
そこはとてもとても暗い場所
隕鉄は一人佇んでいた
ああ、俺は死ぬんだ
『黄泉の国』なんて言葉があるが
『死んだ後にあるのは無である』
俺はそう思う
この意識もやがて途絶え
この闇でさえ『無』となるのだろう
だがその闇に
一筋の光が見えた
そしてその下に男が一人
…ウェイだ
ウェイは、普段と変わらず、ケラケラと笑っていた
そうか
ウェイ、お前も…なんだな
お前には…俺達の組織から抜け、普通の生活を送ってほしいと…
心のどこかで願っていた
だが結局、こんな結末か
やはりスタンドなんて力は滅びて然るべきものだ
『スタンド使いはいずれ必ず不幸になり
あるいは誰かを不幸にする』
そんなことを、ウェイは言っていた
スタンドという存在の先にあるのは、『絶望』しかない
しかし、死を迎える俺にはもはやどうしようも無いことだ
ウェイ…俺も今そちらに行こう…
しかしウェイはおどけた表情で、隕鉄を追い払う動きをする
何故だウェイ…?
俺は
俺はッッ
隕鉄がウェイに呼びかけようとした瞬間
光が隕鉄を包む
まるで太陽のような強く暖かい光だった
既にウェイの姿は見えなくなっていた
そして
隕鉄はゆっくりと、
目を開けた
「隕鉄ゥゥーーーーッッッッ!!!!!!!」
ジョーイが叫ぶ
(俺は…
生きている……?)
ゆっくりと隕鉄は体を起こす
(痛みはあるが…傷が無くなっている…
助けられたのか…)
「俺を助けたのは…貴様か?ジョーイ…
それともそこの鎌を持つ少年か?
どちらにしろ…礼を言う」
「隕鉄…良かった…良かったッッ…」
半ば涙目になるジョーイの横で静かに隕鉄は立ち上がる
「恩に着る…が
俺は俺の信念を曲げるつもりは無い…
『スタンド使いを皆殺しにする』
これが俺の正義なのだ…」
そう言い残し、隕鉄はジョーイ達に背を向け、去ろうとする
「待てよッ隕鉄テメーッッ……」
「おやめなさい」
隕鉄を追おうとするジョーイをトメが制止した
トメはただ黙り隕鉄の背を見つめていた
そしてそれに他の者も倣い、去りいく隕鉄を何も言わずに見送った
(ジョーイよ…いつかこの借りは返そう
だがこの正義だけは…曲げられないのだ…)
ただ、隕鉄の心に引っかかるものがあった
(俺が目を覚ます瞬間、奴は…ウェイは言った…)
『どんな絶望という闇の中にだって、希望の光は存在する』
(ウェイ…
俺は
俺はッッ )
隕鉄が去った後
ジョーイ達は炬燵と静夜が戦った場所に戻ることにした
その道中、静夜はトメに何故石仮面のことを知っていたのかを聞いた
「え?それは、ねえ
もう遠い昔の話ですけれども
あなたのお祖父さんと私は恋仲でしたのよ
家の都合で結局別れてしまったのだけど
彼はとっても素敵な殿方でしたわ
男らしく、勇敢で、それでいて優しくて
そして私達はそれはそれは素晴らしい恋をしましたわ…」
トメは幸せそうな顔で話し始める
その後しばらく、静夜達はその頃の惚気話を聞かされたのだが
つまりは付き合っていた頃に、研究について色々な話を聞いたってことらしい。
ジョーイは他人の恋愛話に興味無さそうだったが、静夜は若い日の祖父の話が聞けて嬉しかった
そしてジョーイ達は目的の場所に到着した
そこには、スタンド能力を失い気絶する炬燵がいた
「さて…こちらの殿方から色々な話が聞けそうですわね」
トメの目つきは再び鋭いものとなっていた
ジョーイが『決着』をつけた場所から少し離れた建物に炬燵は運ばれた。
そこにはジョーイ・トメ・静夜・林檎…、そして駆けつけた佐藤・ドルチの姿があった。
「目覚めたようだな…。」佐藤は静かに話しかける。
炬燵は即座に状況を理解し、降伏した。
「話してもらおうか…、君の知っているすべてを。」
「あなたは…『元凶がいる』、そして『キーワードは未来』と言っていました。」静夜は核心に迫る。
その言葉に炬燵が微かに震える。
「…俺も八手さんも『ある男』の仲間だったんだ…」
「あいつは『矢』を使って『何か』を探している…。」
炬燵の歯がカチカチ鳴り始め、深く体を埋める。
「探す…。何を…? 『神の尖兵』…強いスタンド…? 何のために…、倒さなければいけない…何かを? 『未来』…守るため…? 『土星』…予言。 …『ぐんまけん』…『Armageddon』が来る…。」炬燵はブツブツと呟きだす。その形相は別人のように豹変していた。
「…うぅ…う…うあァァァァァァーーーーーッ!!」
炬燵の中の『何か』が『切れた』。
静夜とジョーイは暴れる炬燵の両脇をがっちりと捕まえた。
「限界か…」佐藤は近くのコンテナに腰掛ける。
「とりあえず医者に連れて行かなければ…」佐藤は携帯を取り出す。
「―ソノ必要ハ無イ…。モウコノ男ハ『始末』シタ。」
静夜とジョーイは後ろを振り向くと、『謎のスタンド』が炬燵を貫いていた。
「―既ニ『9発』。与エテイタ…。破壊ガ…始マル…。」
炬燵の体が砂のように崩れ始め破裂した。
全員が目を開けた時、その場に『謎のスタンド』の姿は無かった。
『本体:炬燵/スタンド:メタルハイテン 死亡』
―――――――
「…コウか…、手間をかけたな。ああ…『裏切り者』は始末したよ…。」
『何か』が建物から現れ、街の雑踏へと消えた。
第10話『愛しき人は黄金の風とともに去る』
To Be
Continued... ・外伝『恋の始まりABC』