怪人をブチノメシタあの後、シバミはどうしてもシルビアと仲良くなりたくて、熱烈アプローチを繰り返した。
ザキは片腕を失ってスタンド処か、全うに歩くこともできない体で入院しているが、そんなこともスッカリ忘れていた程だ。
シルビアは襲撃してきた時のことが嘘のように大人しかったが、襲撃の動機や、日本に来た目的など一切話してはくれなかった。
聞けたことと言えば、シルビアはあの夜にブチ猫と見知らぬ男に出会って以来、スタンド能力が失われてしまったということ…。
「シルビア、ショック受けてたな……見知らぬ男に、ブチ猫かぁ、猫はいたなぁ現場に…」
考えてもどうにもならん、ザキの怪我のことなど忘れて当然、シルビアは姿を眩ましてしまったし、むしろそっちが心配だ。
シバミは居酒屋で一人ブツブツ言いながらビールを飲んでいた、口に出さないと考えがまとまらないのだ。
「あ…忘れてたけど、行方不明になったザキの友達と関係あるのかな?」
注文していた手羽先が来たので頬張る、うまい。
ザキが「忘れてたって…任せろって言うから頼んだじゃないっスかぁ…」って男らしくないことを言ってる気がした。
「ああ、あんなお人形さんみたいな美少女と仲良くなりたいなぁ…シルビア、行く所あるのかな?」
ザキの友達のことより、とにかくそっちが心配なのだ。
スタンド能力が無くなった……。
ムトウタチバナは携帯で会話をしながら歩いていた。
「色々と見てきたけど、中には昔の恩師もいてね、及第点を付けられるのは彼くらいじゃあないかなぁ?」
電話をしながら肩に乗ったブチ猫ドルチの喉をなでる。
「解っているさ、他者を巻き込まないで済むならそれに越したことはない、キミの考えは私が一番に理解しているよ」
優雅過ぎるその歩き方は正直街には浮いてるくらいだ。
それはまるで宮殿を歩く貴族の様。
そこに正面から男が歩いて来た。
タチバナは衝突しないように避けようとしたが、ガラの悪い男が嫌がらせに道を塞ぐのを彼は感じ取る。
(「醜悪だな、私が避けてやる価値はない」)
彼はそういったゲスな精神がカンに触るタチだ。
ドン!
歩調を緩めず直進し正面から来る男の体を押す、すると男の体が両開きのドアの様に真っ二つに裂ける!?
ズバーン!!?
「ぎひぃやぁぁぁほほうっ!?」
男はその無残に裂けた自分の体を見ると、断末魔の叫び声を上げ絶命した。
……。
かのように見えたが、男の体はなんともない。
過ぎてみれば、タチバナが男の体をすり抜けたようにも見える。
だが、確かに彼の体は真っ二つに割れたように見えたのだ。
ゴゴゴゴゴ……。
そして、上げたハズの断末魔の叫び声は上がってはいない、何故なら今度は彼の下顎がゴッソリ無くなっているからだ。
「キミの汚らしい声で、小鳥のさえずりを掻き消して欲しくないんでね」
そう言ったタチバナの手の中には下顎が握られていた。
「慌てなくていい、私はキミの下顎を『分解』したが、これは破壊したのとは訳が違う、だから私の意思でまた元にもどすことができる。証拠に一度『分解』したキミの体は元に戻ってちゃんと機能しているだろう?」
あまりのことに男はすでに失神していたのだが、タチバナは男の頭を掴み、「静かにしていてくれよ」と言うと男の頭をウンウンとうなずかせた。
「よし、ならば顎を返そう、感謝したまえ」
下顎はタチバナの手を飛び出し、元どおりの位置に戻る。
そこでドルチがニャアと鳴いた。
なるほど、と言ってタチバナは携帯を取る。
「もしもし、つっかかって来る馬鹿がいたと思ったらスタンド使いだった、とは言っても知らずに片付けた後にドルチが教えてくれたんだがね」
ドルチがニャアと鳴いた。
「ろくなヤツじゃあなさそうだ、例によってコイツの能力も消してしまうよ」
タチバナが言うと、ドルチは動いた。ドルチの背後に現れたのは猫の姿をしたスタンド!
『ドルチ/スタンド名:ダイハード・ザ・キャット/能力:スタンド使いのスタンドの出し方を忘れさせる』
ドルチとタチバナはスタンド使いが不自然に増える街で、危険と思われるスタンド使いからスタンドを奪って廻っているのだ。
それを提案したのは電話の先の人物。
「今日のキミの声はとても美しいメロディーを奏でるんだね、作品の完成が近いのかい?だったら首から上をキミのアトリエに残してくれば良かった」
冗談ではなく、タチバナのはそれができる能力だ。
「え?体だけじゃあロクに動かないだろうって?いいのさ、キミの作品が見られるのならば、うん、とにかく私と小さな友人を信頼してキミは自分のことに集中していてくれよ、サトヨシ」
タチバナは通話を終え、ドルチは先行して歩き始める。
「さて友人、次は何を見せてくれるのかな?私はもう当たりを引いてくれても構わないよ、危険はサトヨシに及ぶ前に処理しておきたいからね」
タチバナはドルチを追いかけた。
スタンド使いが急増している、これは恐ろしいことが始まる前触れ。
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「おはようございまーっ!」
居酒屋のバイトが元気良くシバミの横を通り過ぎて調理場に消えた。
バイト、祐は最近一流シェフ並みの腕前を手に入れたので、どうにもバイトがくだらなく思えていた。
先輩の手際があまりに悪いので、「やります、どいてください」と言ったら止められたので「僕の方がうまいので」と正直に言ったらキレられた、なんてつまらないんだろう。
朝は痴漢をみつけたので手を捻りあげたら、サブミッションをマスターしていたので、オジサンの手がポッキリ折れてしまって、何故か警察に怒られたんだ。
人より僕の方が優れているのに怒られるなんて変だな、コイツら全員僕より劣ってるのにな。なんでだろう、僕が凄いからみんな嫉妬してんのかな?
『完全他殺マニュアル』『凶悪犯罪者の心理状態』
祐の鞄から来る途中に読み終えた二冊の本が覗いていた。これは恐ろしいことが始まる前触れ。
居酒屋は客でいっぱいだった。
「黄金時間」と呼ばれるこの時間。
帰宅途中の人や、宴会、合コンする人で溢れていた。
「王さまだ~れだ?
……ヤッタバアアアアアア」
「馬鹿……そんなに頼むな!」
「え~。久々に依頼を達成したんだから良いじゃん!」
「ケッ……」
「いい加減就職しないとなあ……」
「働いたら負けだと思っている」
なんだか聞いたことのある声が多数あるが、物語とは関係無い。
「とりあえず生一つ頂戴」
なんだか食べてる所ばかりの描写ねぇ……誤解しないでね。私は大食漢なわけじゃないから。
注文通り運ばれてきた生を飲み、コウは一息ついた。
「でもあれだわぁ~。酒はやめられない……これは神が私に与えた最大の幸福!」
シバ美は相変わらず酔っていた。今はザキのことも、シルビアのことも忘れている。
「店員さ~ん~。生 5 つ 」
「はぁ!?」
店員が驚くのも無理は無い。三時間も前からシバ美はソロで飲んでいた。
「お客様……肝臓に毒ですよ……」
「良いのよぉ……水に戻すからぁ……」
水に?今そう言ったか?
このやり取りを聞いていたのは二人。
一人は店員の「祐」そして……
「あそこにアバズレのビッチ野郎は見たことがあるな……ムーンライダーと戦っていた……シバ美……」
「にゃ~ん」
正確には一匹も聞いていた……
「丁度良い機会だ。あの野郎もシルビアみたいにしましょうか。ね?ドルチ」
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「ふむ・・・・」
シバ美を視界の端に置きつつ、ざっと店内を見渡す。
「ふふ・・・全く、何てことだ。ねぇ、ドルチ?」
―――にゃぉん。
あいずちをうつように、彼の足元で、ネコが鳴き声をあげた。
「ふふ・・・そうだね。『スタンド使いは惹かれあう』。店中、『スタンド』使いだらけじゃぁないか?・・・ふふ」
愉快そうに肩を揺らす。
―――にゃおん。
「あれ~?おにぃさん、やけに楽しそうじゃない~?」
「・・・・・む?」
声のするほうに目をやると・・・いや、というか、「それ」はタチバナによっかっかってきていたのだが。
「あははは~・・・どぉ?一緒に飲まない??」
ぴきぴき、と彼のこめかみに血管が浮き出す。
(こ・・・・このアル中のクサレビッチが・・・・!!!)
「ど~したのぉ??ほらほら、こっちこっちぃぃ~」
「・・・・・・・・・・この下品な尻軽売女が・・・失礼。」
タチバナの悪態に気づかずに、酔っ払いはカウンターへと彼を引きずってゆく。
もちろん、ドルチのことなどお構いなしである。
「いきなりごめんねぇ・・・・。私、シバ美ってのよ~」
「・・・・ムトウ、タチバナと申します。・・・・このアバズレ。・・・失礼。」
「あははは!面白い人!ほらほら、飲もうよ!」
「(しかたがないですね)・・・わかりましたよ、メスブタ。・・・失礼。」
怒りをこらえつつも、シバ美のソロに付き合うタチバナ。
その様子を、ドルチは他人事のように眺めていた。
―――にゃぉん。
「はぁい!お待たせしました!生中・・・5・・・つ・・・・?」
先ほど頼まれた生中をカウンターに運んできて、祐は声をなくした。
だって・・・
「お客様・・・「二名様」ですよね?」
「あぁ、それ全部私のよ~?」
「え!?」
驚いた視線の先には、シバ美。
そして、眉根を寄せてワインをたしなんでいる、ムトウタチバナ。べたべたとシバ美に触られたので、怒りは頂点に達している。
(この「女」は・・・!)
「あぁ・・・『水に変えれる』んでしたよね?お客様?」
「そぉよぉ・・・ほら、『シバミティア』!」
運ばれてきた生中が、ただの『水』に変化する。
「な・・・!」
思わず、タチバナは声を上げた。
(このアマ・・・!どれだけ低能なのだッ!?)
一般人に自慢げに『スタンド』を見せ付けるなど、彼からすれば狂気以外の何物でもない。
「・・・スゴいっすねぇ・・・」
気づけば、祐の表情が「凶悪犯罪者」のそれに、変わっている。
彼の『スタンド』能力。
「でもよぉ・・・・許せんよなぁ・・・」
(・・・この男・・・『スタンド』使い!)
「大事な『酒』をよぉォー・・・『水』にしちまうなんてよォ・・・」
持っていたトレイを振り上げる。
そして、それはシバ美の頭に・・・
ガシィッ!
直撃する直前。
ブルース・ドライブ・モンスターが、彼の腕を捕らえていた。
「・・・・『ブルース・ドライブ・モンスター』。・・・やめたまえ、君。美しくないな。」
「ッ・・・!はなせや!このダボがぁぁァッッ!!」
「ちょっと・・・!やめなさいよ!楽しく飲みましょうよぉ!」
急な展開に、シバ美が割って入る。
店の奥から、店長らしき人物も姿を現していた。
「酔わせて・・・眠らせるッ!『シバミ・・・』」
「こら祐ッ!やめないかッ!おとなしく俺の手羽先を食ってろ!『トップ・オ・・・』」
シバ美がタチバナの腕を掴み・・・
店長が祐を羽交い絞めに・・・・
――プッツン。
「私に・・・私に触れるなッッ!!この汚らしいアル中のクサレビッチがァァァァッ!!!」
「・・・・え?」
触れたはずのシバ美の腕が、肩から『分解』されていた。
「・・・・・・・・・取り乱してしまった。・・・・失礼。」
『分解』したシバ美の腕を持ち、ぼそり、とムトウタチバナはつぶやいた。
――――にゃぉん。
猫が鳴いた。
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