オールラブに殴られた瞬間、裕の中にあったドス黒い感情が消えていく。
「オレは……なんて事を……」
ガクリと膝をつく裕。
正気に戻った裕は今までの行動を悔いた。
そんな裕に佐藤は優しく声をかける。
「いいんだよ……結果的には誰も傷付けなかった」
そして、優しく包み込む……。
「先生がすべて許そう」
「せ、先生ぇ……」
計り知れない佐藤の愛情にそのまま泣き崩れる裕。
いつの間にか迷路化していた居酒屋は元に戻っておりムトウを探していたコウも駆けつける。
「オヤカタァー!」
「ホットイテイインデスカイ?」
「ヤツラ『ノウリョク』ヲケストカ」
「イッテヤシタゼッ!?」
カーペンターズが立ち去ろうとするヒデエモンに聞いた。
「最初はオレっちも『悪者』だと思ったさ……でも、中を覗いてみりゃどうやら『悪者』はあっちの兄ちゃんだったみたいでな」
キシシシと笑いながらヒデエモンは続ける。
「そしたら、あの佐藤先生まで来るじゃねえか!一度学校で見かけたが、あんなにも生徒に好かれている先公はいねぇ……オレっちの出る幕じゃあねぇよ……」
「オヤカタ、シブイッ!」
「ソコニ」
「シビレルッ!」
「アコガレルッ!」
そう言うやり取りをしながらヒデエモンは居酒屋を後にした……。
「なんだ、、案外あっけなかったですね。まぁ一応、腕は元に戻しておいてあげましょう。」
そういうと、タチバナは分解された裕の腕を元に修復した。
「あ、、。」
手を、何度か動かして、両腕の感覚を確かめる
「よかったな、これでまた大好きな本が読めるぞ。」
「先生、、、!」
佐藤の暖かい言葉に裕は思わず泣きそうになった。なんて、素晴らしい人なんだろう。さっきまで、いくらスタンドの影響とはいえ、人を殺す事に快楽を覚えていた僕なのに、、!
感動し、目を熱くする生徒とその教師、、、まさに青春ドラマの1シーンのような完璧な構成だ。
が、割ってはいる影が1人
「、、、ちょっと!あんまり先生の顔をジロジロ見ないでもらいますか?」
「え?」
「確かにあなたは『オール・ラブ』で救われた。しかし、先生は私を心配して、この居酒屋にやってきたのですよ?その点を誤解してもらっては困ります。」
「え、、えーと」
「あなたは所詮、先生のスタンド攻撃を受けた一人、私の様に、『生徒』でも、ましてや『友人』でもない。思い上がりもいいところです。」
「、、、、。」
別に、そんなつもりじゃあないんだけどな、、
裕は、笑顔をひきつらせて応対するのがやっとだった。すると、佐藤は不思議な顔をしてタチバナに言った。
「何を言ってるんだ?私にとってはすべてが生徒達だぞ。」
「な、、だが、真の意味で言わしてもらえば私が、、、、、」
「、、、、。」
「、、、、、、!!」
タチバナと佐藤が『生徒』という解釈でしばしもめている間、裕はそれを呆然と見ていた。すると背後から猫の鳴き声、、。
にゃあ
いつのまにか、少し離れたから裕をみつめる1匹のブチ猫。
「、、、、、、、そうでした、ドルチ。スタンドを消し去る用事が残ってましたね。」
「 「 「 「 「!!」 」 」 」 」
「タチバナ、、この子は別に自らの意思でスタンドを利用したんじゃない、むしろ、その特殊性を何者かに利用されたんだ、なにも彼のスタンドを消す必要は、、、」
「その男の言う通りよ、タチバナ。私のワールド・ワイド・ウェブで入手した情報でも、その男にもはや敵意はないわ。むしろ怪しいのはその本を提供した奴で、、」
「スタンド、、、、、『 消 す 』って、、、、言った?」
「そりゃねぇよ!途中から首つっこんでたが、そのあんちゃんもう悪さしねぇんだろ!?スタンド消すってぇのはいただけねぇよ!あんた、『悪者』かよ!」
「オヤカタッ!」「カエルンジャ」「ナカッタノ」「カヨ!!」
「しかし、また再びこのような事にならないとも限らない、、、サトヨシに危害が加わる可能性があるなら私は、、ちょっと、、、私の肩を持たないで頂きたい、ビッチ、、、失礼。」
「だが、この通り本は没収したし、、、」
「まずは情報を手に入れるが先よ。それからこの男の始末を考えたっていいんじゃないの?下手に動いて不利な状況になるのは嫌よ、私は。」
「、、、、、、、、、現場にいた、、、猫、、、。」
「止めとけって!そいつは将来有望な若者だぜ!?大工の本でも読ませりゃ俺んトコでいい職人になれるってもんよ!」
「オヤカタ!」「ソレ」「コイツ」「リヨウシテルッ!!」
「このアバズレッッ、、、!いいかげんに、私の肩から手を、、、」
「 あ な た が ! ス タ ン ド を 消 し た の ッ ッ ッ ッ??!!!」
辺りをつんざく様な、まさに白鶴の、、もとい、鶴の一声
自分たちの騒がしい会話をも飲み込むほどの、強い力と感情がこもったその声の方を、タチバナ達は見た。
そこには、先ほどまで酔っていたとは思えない程の、しっかりとした瞳で、こちらの方を見つめるシバミの姿があった。
ナァー
猫は、彼らの事など気にもせず耳をかいていた。
******
「シルビアに何をしたぁ!」
激情に任せシバミはシバミティアでムトウに殴りかかる。
しかしシバミティアの拳はブルース・ドライブ・モンスターに易々と掴まれ地面に押さえ込まれた、片手でだ!?
スタンドの馬力、本体の戦闘力共に圧倒的な差があった。
「近距離型スタンドの割に平凡なパワーですね。水分を変質させる力も触れさせなければどうということもない、強敵をマグレで倒したくらいで思い上がらないでいただこう」
ムトウがシバミを冷たく見下す。
「うあああああっ!!」
瞬間シバミが叫ぶ、シバミティアがブルース・ドライブ・モンスターを振り切りムトウの腕を掴む!「なんだとっ!?」そのパワーとスピードにムトウは驚愕する。
自分の血液をアルコールに変える禁じ手を使ったのだ!後はヤツを倒した必殺の手で…「!?」
しかし、掴んだつもりの手は空を切る。あるハズの右腕はそこには無く!?ムトウの左手に握られていた。
「早トチルなっ!このボンクラがっ!!」
ムトウは左手で持った『切り離した自分の右腕』を鞭のように使い、2m先のシバミの横っ面をブチ殴り飛ばす!
「タチバナ!」佐藤が吹き飛ばされたシバミを空中で受け止め、クッションになった。
「相手は女の子なのよっ!」コウが咎めるが、ムトウが「差別はしない」と睨みつけ、戦慄させる。
ムトウ「ドルチ、アナタですね、先生を此処に呼んでしまったのは…」
ーーーにゃゃあぉ。
ムトウ「このムトウタチバナ、今この場の全員を同時に敵に回したとて、近距離戦闘により圧倒、殲滅し、能力を奪うことができる」
ゴゴゴゴゴ…。
ムトウ「しかし優しく説得してあげましょう、私は狂人ではないのだから」
佐藤、コウ(変態だけどな…)シバミ(ホモめ)ヒデエモン(てやんでぇ!)
ムトウ「私たちがスタンドを消す2つの理由。一つ、とても常人には解決できないような事件再発の危険を防ぐ為」
裕(もうしないよ…)佐藤(キミが一番危険なんだが…)ヒデエモン(てーやんでぇ!)
ムトウ「一つ、人為的に与えられた不自然な才能であること。それが先天的な物であれば個人の才能として黙認しよう、しかしこの青年のように読んだだけで何もかもを身につけられる能力、そんなものが誰かの意図により不自然に増え続ければ生態系のバランスは狂ってしまう」
コウ(ホモで生態系を乱してるくせに)シバミ(ホモめ!)ヒデエモン(てやんでぇ!てやんでぇ!)
ムトウ「そしてもっとも重要な一つ」
佐藤、コウ、ヒデエモン(3つ言った!?)シバミ(ホモめ…)裕(……あ、3つ目だ!?)
ムトウ「この一連の事件の首謀者の目的は『スタンド使いを増やす』こと、そしてその『スタンド使いを殺し合わせる』ことと推測できる」
コウ「あっ!?」
佐藤「スタンド使いはどういう訳か引かれ合う…スタンド能力を持っている限り命を危険に晒され続けるというわけか!?」
ムトウ「御明察です先生」
佐藤「この先、凶悪な敵を迎え撃つ覚悟と力量の無い者は、スタンド能力を手放して日常に帰るべきだ」
佐藤は最近心を通わせた二人の生徒のことを考えていた。あの殺人鬼にしてもサシでやっていたら勝てたか怪しかった、それくらい強敵だったのだカンベエは。もしそれ以上の敵に遭遇した場合とても助かるものではない。あの二人も説得する必要がある、愛する生徒を命の危険にさらしてはおけない。
ムトウはコウを振り返る「そこのビッチ…失礼、アナタも心配していた身の危険から解放されます」
コウ「……」
ムトウ「いつもだれかが助けてくれるとは限らない、私の見立てではこの先自分の責任で身を守る胆力を持っているのは佐藤先生くらいのものですが?本来ならさっさと消してしまう処ですがね、今回に限り先生の顔を立てて個人の意志を尊重しましょう」
ムトウは考えていた、サトヨシは「人を危険に巻き込みたくない」と言っている、ムトウは自分だけがサトヨシの助けになりたいと思う、しかしこれから方々で起きるであろうスタンド使いによる事件を鎮圧するのに二人と一匹では手が足りないのもたしか、佐藤先生には協力を頼みたい。
今回の件に先生の能力は向いている気がするし、何よりドルチが連れてきたという事は資格があるということだ。
『スタンド使いを殺す』ことが何者かの目的たるならば、一人でも多く『死なせてはならない』ムトウはそう考える。
「能力を手放して日常に戻り、当初の夢や目的の為に生きるのか?あるいは能力を持つ以上は納得いく回答を聞かせていただきたい」
ムトウは全員に選択を迫る。
シバミ、佐藤、コウ、裕、ヒデエモン、それぞれの未来を決断する時だ。
******
シバミの脳裏にはナガセと、彼女の仲間達、そしてザキの顔が浮かんだ。
『彼らは、首謀者のせいで命を落とした……ナガセに至っては私が殺した。そして私だけが生きのこった……』
だが……断る
シバミは沈黙を破った。全員がシバミの方を向く。
「私は……平穏なんて望まない。首謀者がいる限り、私も、ザキにも、ナガセや、その仲間にも、平穏なんて無い。だから……」
シバミは一息溜めて、言い放った。覚悟の言葉を……
「私は首謀者を倒す!!」
強い光が彼女を支配していた。それを表現するとしたら、これしか無い。
黄金の精神
「私は絶対に砕けない。ムトウ、どうするの?私のスタンドを消すの?」
ムトウは表情を作らない。じっとシバミを見ている。
「てやんでい!ここでシバミの姉御だけを行かせるなんざ、大工の恥じの恥じよぉ!」
「オヤカタカッコイイー!」
「あっしは着いて行くぜ、シバミの姉御!」
ヒデエモンの発言にカーペンターズは賞賛を送る。
また1つ、覚悟が生まれた。
「コウ、祐、貴方達はどうします?」
感情を感じさせない、金属のような声。祐はその声に震えてしまった。
「ぼ……僕は本を読めればいい!いいんだ!」
祐は思った。【もう、嫌だ】。それが彼の出した結論だった。
「私は命令されるのが嫌いなの。特に、男にはね」
コツコツとコウはシバミに向かって歩いて行く。
「だったら、女のリーダーの方が良いわ。これが決断よ」
シバミ、ヒデエモン、コウ、この3人に覚悟と、精神が生まれた。
「先生は……聞くだけ野暮ですね。貴方はどうせ、生徒を守るためにスタンドを残すのでしょう?」
ムトウは少し残念そうな顔をして、言い放った。
「私はもう貴方達には構いません。死ぬなり何なりと勝手にしてください。行きますよ。先生」
ムトウは足早に立ち去った。
『以前のムトウは、私にでさえスタンドを消しにかかったただろう。まさか……ムトウの中で何かが変わっているのか?』
『それを見守るのも教師である私の仕事だ』佐藤先生は小走りにムトウの下へと走って行った。
「シバミの姉御!どうしやす?」
「私のWWWなら情報を掴めるかも……」
「まあ待って」
シバミは二人を制す
「まずは親睦を深めるために飲み会よ!もちろん て つ や ♪」
2人は早くも後悔し始めた。
第3話『始まりのワルツ』
To Be Continued... ・外伝『after koh』