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記述式問題
DNAにはアデニン・グアニン・シトシン・チミンの4つが、RNAにはアデニン・グアニン・シトシン・ウラシルの4つがあり、アデニンとグアニンはプリン骨格で、シトシンとチミン(ウラシル)はピリミジン骨格である。
- プリンヌクレオチド(ATP・GTP)とピリミジンヌクレオチド(UTP・CTP)のde novo合成について述べなさい(その出発合成原料と合成経路(化合物の名称でよい)を含める)。
【プリンヌクレオチドのde novo合成】
5-ホスホリポジル1-二リン酸からイノシン一リン酸が合成され、ここで経路が分かれる。一方はイノシン一リン酸からアデニロコハク酸を経てアデノシン一リン酸、二リン酸、三リン酸と進んで行き、もう一方はキサントシン一リン酸を経てグアノシン一リン酸、二リン酸、三リン酸と合成されていく。
【ピリミジンヌクレオチロのde novo合成】
ピリミジンヌクレオチドのde novo合成は多段階の反応を経て、まずオロト酸が合成される。そこからオロチジン一リン酸が合成され、ウリジン一リン酸、二リン酸、三リン酸の過程を経てシチジン三リン酸が合成される。
- デオキシリボヌクレオチドのde novo合成について述べなさい。
デオキシリボヌクレオチドのde novoの経路ではリボヌクレオチド二リン酸が還元される事により生成する。したがってADP・GDP・CDP・UDPより、dADP・dGDP・dCDP・dUDPが生成され、これらのうちdUDP以外はさらにリン酸化されdATP・dGTP・dCTPとなり、DNA合成の基質として利用される。一方、dUDPは分解されてdUMPになり、dUMPからdTMPが合成され、2回のリン酸化によりdTTPが生成される。
- ヌクレオチドの再利用経路(サルベージ経路)について、例を示しなさい。
プリン塩基の場合、アデニンはAMP、ヒポキサンチンはIMP、グアニンはGMPへそれぞれ変化される。ピリミジンヌクレオシドはウリジンがUMP、シチジンがCMP、チミジンがdTMPへ、それぞれ変換される。ピリミジン塩基はそのままではほとんど再利用されない。
- DNAとRNAを構成するヌクレオチド(ヌクレオシド一リン酸)の構成成分を示しなさい。また、両核酸の構成ヌクレオチドについても述べなさい。
DNAは塩基、デオキシリボース、リン酸から成るデオキシリボヌクレオチドを基本単位として、デオキリシボースとリン酸がホスホジエステル結合で重合した高分子化合物である。
RNAは塩基、リボース、リン酸からなるリボヌクレオチドを基本単位として、リボースとリン酸がホスホジエステル結合で重合した高分子化合物である。塩基はDNAがアデニン・グアニン・シトシン・チミンなのに対し、RNAはチミンがウラシルに代わっている。
- DNAとRNAでみられる塩基対(水素結合を介する)について述べなさい。
DNAの塩基はアデニン・グアニン・シトシン・チミンで、RNAの塩基はアデニン・グアニン・シトシン・ウラシルであり、それぞれ、アデニンはチミン(ウラシル)と、グアニンはシトシンと水素結合により塩基対を成す。この水素結合は弱い結合で切れやすい。
- DNAの構造について、概略図を示し簡潔に説明しなさい。またDNAの機能についても述べなさい。
DNAの二重らせんは右巻きでB型である。DNAの2本鎖は塩基間の水素結合を介して逆平行に結合している。DNAは遺伝情報分子であり、形質転換を担っている。
- RNAの種類を示し、それらの機能について述べなさい。
RNAにはtRNA・mRNA・rRNA・snRNAがある。tRNAはmRNAのコドンに対応するアンチコドンを含むアンチコドンアームをもち、アミノ酸システムを形成している。mRNAは3つの塩基配列であるコドンにより、さまざまなアミノ酸をコードしている。rRNAはリボゾームを構成するRNAである。snRNAはタンパク質と複合体を形成することによりmRNAのスプライシングなどに関与している。
- tRNAの構造の概略図を示し、その構造と機能の特徴を述べなさい。
tRNAはアンチコドンアームを含む3つのアーム、およびアミノ酸システムを形成しており、アームを形成していない塩基が塩基対を成し、L字構造をしている。mRNAに含まれる情報をタンパク質に翻訳する際のアダプターとして働く。
- 原核生物と真核生物のmRNAの基本的構造の概略図を示しなさい。また、両mRNAの構造の違いについても述べなさい。
原核生物は隣接する複数の遺伝子が一つのmRNAとして転写される。
真核生物のmRNAは一つのタンパク質合成の鋳型となり、キャップ構造、ポリ(A)鎖が存在する。
- 原核生物のrRNAの構造と機能について述べなさい。また、真核生物との違いについても述べなさい。
rRNAはリボソームの主成分であり、リボソームはタンパク質合成の場である。真核生物のリボソームは40Sと60Sの80Sから成るが、原核生物のリボソームは30Sと50Sの70Sから成る。
中には酵素的触媒活性を持つものがあり、リボザイムと呼ばれる。
DNAに保存された遺伝情報がDNA複製により正確にコピーされ、同時にRNAに写し取られ、そのRNAも逆転写によりDNAを合成したり、RNA複製によりRNAを合成する。そしてDNAを写し取ったRNAの塩基配列はアミノ酸の配列に置き換えられる。そして多数のアミノ酸からタンパク質ができる。この流れをセントラルドグマという。
染色体はまず、DNAが塩基性タンパクのヒストンに絡みつき、ヌクレオソームを形成し、それが小さく絡まって集合したものである。染色体はH型になっていて、真ん中の部分をセントロメア、端の部分をテロメアという。
- 真核生物と原核生物の遺伝子のプロモーターと転写装置について述べなさい。
プロモーターとは転写を行うために必要な領域で、原核生物ではRNAオリメラーゼが認識・結合する部位であり、-10領域や-35領域、それにUPエレメントが存在する。-10領域は転写開始点の約10塩基上流に存在し、-35領域は約35塩基上流に存在する。UPエレメントはRNAポリメラーゼのαサブユニットにより認識され転写活性を増強させる。真核生物ではTATA結合タンパクが認識する部位である。RNAポリメラーゼⅡはこのTATA結合タンパクや他の転写因子と複合体を形成する。共通してTATAボックスやイニシエーター配列を持つ、もしくは双方を持たない。
プロモーターにRNAポリメラーゼのαサブユニットが結合。次いでコアRNAポリメラーゼが結合。コアRNAポリメラーゼはDNA上の+1に位置し、NusAタンパク質がαサブユニットと交換し、コアRNAポリメラーゼに結合することで転写が開始する。
原核生物の遺伝子の多くは、共通のプロモーターから1本の連続したmRNAとして転写されたのち、各々のタンパク質に翻訳される。このような転写の制御単位をオペロンという。典型的なオペロンはプロモーターや転写される構造遺伝子領域のほかに、転写調節領域としてリプレッサー結合部位であるオペレーターやアクチベーター結合部位を含んでいる。
- ラクトースオペロンを例にとり、転写調節について述べなさい。
- 真核細胞の核内受容体を介する転写調節について述べなさい。
- 真核細胞におけるRNAのプロセシングについて述べなさい(エキソンとイントロンの説明を含める)。
RNAからタンパク質が合成される翻訳の過程で、一つのアミノ酸を指定する3つの塩基の配列をコドンという。4種類の塩基が3つの組み合わせでコドンができているため、43=64種類のコドンが可能。一方、アミノ酸は20種なので多くのアミノ酸は複数のコドンで指定される。
タンパク質を合成するには、合成の開始(開始コドン)と終結(終止コドン)を規定する必要がある。
- 翻訳(タンパク質合成)における真核生物と原核生物の開始アミノ酸はそれぞれ何か。
開始コドンは共通してAUGで、真核生物はメチオニンが、原核生物はホルメチオニンが指定される。
まずアミノ酸の活性化としてアミノアシルtRNAが合成される。mRNAにリボソームと開始tRNA が結合し、開始複合体を形成(翻訳の開始)。アンチコドンを持つtRNAがAサイトに結合しコドンに従ってペプチド鎖が伸びる(ペプチド鎖の伸長)。終止コドンによりペプチド鎖合成が終了(タンパク質合成の終了)
DNAの二重らせんを形成するヌクレオチドの水素結合が切れ、それぞれ一本鎖になり、それが鋳型となって相補鎖の合成の指令を出し、鋳型DNAと新しく合成されたDNAから成る二本鎖DNAができる。このような複製機構を半保存的複製という。
- DNA複製に関係する主な酵素群を示し、それぞれの機能について簡潔に述べなさい。
DNA複製に関与する酵素はDNAヘリカーゼ、DNAプライマーゼ、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼがあり、DNAヘリカーゼは開裂した一本鎖に結合し、一本鎖部分を拡張する。DNAプライマーゼはその一本鎖に結合し、プライマーを合成する。DNAポリメラーゼはプライマーを用いてDNAを合成する。DNAリガーゼは岡崎フラグメント(短鎖RNA)を結合する。
大腸菌では一箇所の複製開始点から複製が開始し、両方向へ進行する。
複製開始点に開始タンパクが結合し、二重らせんが部分的に開裂される。一本鎖部分にDNAヘリカーゼが結合し、二重らせんをほどき、プライマーゼと結合。プライマーゼによりプライマーRNAが合成され、そのプライマーを使ってDNAポリメラーゼがDNA鎖を合成することにより複製が開始する。さらにDNA鎖を伸長する(3'→5’方向のみ)。DNAリガーゼは岡崎フラグメント(短鎖RNA)を結合する。
- 複製フォークのリーディング鎖とラギング鎖について説明しなさい。
DNA鎖の伸長の際、2本鎖DNAは互いに逆方向性を示しているので、DNA鎖の複製のためにはそれぞれ逆向きに伸長しなければならない。しかしDNAポリメラーゼは3’→5’方向に伸長することはできないので、5’→3’方向に短いDNA鎖を合成し、この短鎖DNAをつなぎ合わせて複製を進行する。この短鎖DNAは岡崎フラグメントと呼ばれ、DNAリガーゼによりつなぎ合わされる。このような複製の様式を不連続複製といい、5’→3’方向に連続的に合成されるDNA鎖をリーディング鎖、不連続に合成されるDNA鎖をラギング鎖という。
- 点突然変異とフレームシフト変異とその影響について述べなさい。
点突然変異は1個から数個の局所的な塩基配列の変化で、DNAヌクレオチドの一つが他のヌクレオチドに置き換わる塩基置換変異と、少数のスクレオチドが挿入されたり欠失したりする変異がある。
塩基置換変異が起こり、コードするアミノ酸がかわる変異をミスセンス変異といい、終止コドンになる場合をナンセンス変異という。上記の変異が重要なアミノ酸をコードする部分に起これば、タンパク質の機能を失われたり、その機能に変調をきたすことになる。
挿入や欠失が起こる場合、3の倍数の以外のヌクレオチドが挿入または欠失したりすると読み桁がずれるフレームシフト変異を生じる。これが起こると途中からアミノ酸配列が大きく変わったタンパク質や終止コドンの出現により短いタンパク質が作られることになる。
- チミンダイマーとは何か。またその修復について述べなさい。
DNAが紫外線に当たると隣り合ったピリミジンの間で環ができピリミジン二量体が形成される。ピリミジン二量体のなかでは特にチミン二量体が形成されやすい。
光回復酵素はピリミジン二量体修復酵素であり、350~500nmの光を吸収し、そのエネルギーを利用してピリミジン二量体を開裂する。
ピリミジン二量体を含め、DNAの構造が大きく歪むような大きな置換基が付加する傷害は、ヌクレオチド除去修復系により修復される。
- 異原物質(亜硝酸・アルキル化剤・活性酸素)による変異とそれによるDNAの構造変化について述べなさい。
亜硝酸は酸化的脱アミノ反応によりシトシンをウラシルに変化させる。
アルキル化剤はアデニンやグアニンをアルキル化させる。グアニン→O6アルキルグアニンになり、チミンと塩基対を形成できることから、GCであった塩基対がATに変わることになる。
活性酸素はグアニンを8ヒドロキシグアニンにし、これはアデニンとも対合できるので、最終的にGCがATに変わってしまう。
・塩基が挿入や欠失しているもの。
・塩基の繰り返し配列の、繰り返し回数の多型。マイクロサテライト多型→2~4塩基単位の配列の繰り返し多型をいう。
・1つの塩基が他の塩基に置き換わっているもの。(一塩基多型=SNP)
- SNP(一塩基多型)が機能に及ぼす影響について述べなさい。
SNPはゲノム全体に存在し、機能に影響を及ぼすSNPがある。rSNPは転写調節に関わるエンハンサーやプロモーター領域のSNPで、mRNAの転写量が変化することが予想され、その結果、合成されるタンパク質の量が減少または増加する可能性がある。タンパク質の情報をコードする領域のcSNPは、アミノ酸の置換や終始コドンの出現を起こす可能性があり、機能の変化したたんぱく質や機能をもたないタンパク質が産生される可能性がある。イントロン部分のiSNPや、非翻訳領域のuSNPもmRNAの転写量やその安定性に影響を与える可能性がある。
- テーラーメイド医療(個別化医療)と遺伝子多型について述べなさい。
遺伝子多型などの利用により疾患関連遺伝子が同定されれば、病因の解明が進み、また創薬のための標的が明確になる。さらに遺伝子診断により、どの遺伝子の欠損により病気になったか病因に関する情報が得られ、適切な治療法の選択が可能になる。さらにSNPの解析により個人の薬物に対する代謝の特性を知ることができれば、適正な薬物を適正な量投与することが可能になり、それぞれの個人に最適化したテーラーメイド医療が可能になる。
最終更新:2007年02月21日 01:28