たとえ男のコでも女子校に通えば「女子校生」だよね!
横浜市郊外にある私立清安女学院。
某ミカエル学園や某聖應女学院の如く、良家の子女が通い、中・高・大と10年かけて生粋のお嬢様が育成され
るという、今時珍しいほどの、いわゆる「お嬢様学校」だ。
この種の女子校の例に漏れず清女(清安女学院の略称だ)もミッションスクールであり、生徒のみならず学内の
教職員も、大学部を除くと90%以上が女性という文字通りの「女の園」だ。
また、中等部・高等部ともに制服が可愛いことでも有名で、生徒の「質」ともあいまって、(表向き父兄や親族のみにしか渡せないはずの)清女の学園祭の招待券などは、裏で目ん玉が飛び出るような金額で取引されているらしい。
そんな天国(ヘヴン)に、男なら誰だって一度は行ってみたいと願うのではないだろうか? 俺だって、そう
思ってた──自分が実際にその女子校に「生徒」として通わされるハメになるまでは。
…………
「は~い、皆さん、席について~。今日はこの2-Cに入る転校生を紹介しま~す。さ、お入りなさい、帆村さん」
「は、はい」
のんびりした、いかにも「女子校育ち」といった雰囲気の若い担任の先生(あとで聞いたところ、清女の卒業生らしい)に促されて、俺はメチャクチャ緊張しつつ、教室へと足を踏み入れた。
(だ、大丈夫かなぁ……男だってバレないかなぁ)
今の俺は、教室に座る女の子達と同様、清女中等部の制服を着ている。
この制服、セーラーカラーの白い長袖ワンピースの上から、ウエストに編み上げタイプのコルセットを着け、足元も白もしくは黒のタイツと決まっているから、肌の露出が少ないのは助かるんだけど、トータルな外見がいかにもフェミニンで恥ずかしい。
3ヵ月ばかり床屋に行くのをサボっていた髪が肩にかかるくらいに伸びてたのを、一昨日美容院で揃えられて、完全に女の子っぽいオカッパヘアの髪型になってるし、ご丁寧にも母さんに真紅のカチューシャまで着けられた。
え? 下着?
──お察し下さい(泣)
うぅ……スカートがめくれた時の用心にパンツが女物なのは仕方ないとして、ブラジャーは必要ないと思うんだけどなぁ。
(よく考えると体育の着替え時のために必須だった。納得)
ノロノロと教壇の上に上がると、心臓がバクバク言っているのがわかる。緊張のあまり足がガクガク震えそうだが、懸命にこらえた。
「あの、お…じゃなくてっ、私の名前は帆村朱実です。都内の滝ヶ原学園から転校してきました……そのぅ、よろしくお願いします」
精一杯平静を装って自己紹介し、ニッコリ愛想笑いも付け加える。
一瞬、静まりかえった教室の反応に、「まさか、もうバレた!?」とビビッていたんだけど……。
「ふわぁ……綺麗な人」
「やだ、かわいい……」
「と言うか、かっこいい?」
「うんうん、クールな凛々しさの中に、無垢な可愛らしさが同居してるって感じ?」
ガヤガヤ……
いきなり好意的な反応が返ってきたので、目が点になる。
「はいはい、皆様、ご静粛に。帆村さんも戸惑っておられますわよ」
眼鏡をかけた委員長風の女の子が立ちあがって周囲に呼びかけてくれたおかげで、たちまち騒ぎは収まった。
(た、助かった……)
「皆さーん、高良さんの言う通りですよ~。転校生をいきなり品定めするなんて、淑女失格です」
プンスカむくれる担任の先生が、ちょっと可愛いと感じたのは、多少精神余裕が出来たからかもしれない。
「さ、帆村さん。高良さんの隣の席あいてますから、そこに座ってくださいね」
「は、はい」
こうして、俺の清女転入は、とりあえず何とか無事に実現したわけだ──あんまり嬉しくないけど。
…………
そもそも、どうして性別♂(Male)であるはずの俺が、女子校に転入してるかと言うと……仔細は省くが、お袋との賭けに負けたからだ。
元々は婆ちゃんの遺言で、俺の世代の誰かをこの清女に入れるよう指示があったらしいんだけど、なにせ俺も含めてこの世代の親戚の殆どが男だ。
唯一の女であった6歳年上の従姉の美幸姉ちゃんは、あっさり入試に落ちて、別の学園に行っちゃったし。
おかげで、親戚で一番年下で、成績も比較的優秀な俺に白羽の矢が立ったワケ。
もちろん、俺は断わったんだけど、とある賭けをお袋として……まぁ、アッサリ負けちまったんだよ、これが。
一応、中学卒業したら、高校は好きなトコに行かせてもらうってことで譲歩したんだけど、やっぱり3年間も女装して女の子のまま過ごすのは無謀だよなぁ。
心の中で溜め息をつきつつ、指示された席につくと、隣席の委員長娘が話しかけてきた。
「こんにちは、帆村さん。わたくしは高良つばさと申します。このクラスの代表委員をしておりますので、何か困ったことがあったらおっしゃって下さいね♪」
「そうなんですか。こちらこそよろしく」
(うわ~、ホント絵に描いたような「お嬢様」って感じの子だぁ。それに、よく見るとスゴイ美人だし、胸もおおき……ゲフンゲフン)
「あー、委員長ずるーい」
「私も○○さんの隣になりたーい」
クラスの子達が騒いでいる。ついに俺のモテ期到来か!?
……いや、転入生が珍しいだけだよな。俺、ここでは
女なんだから。はぁ、せいぜい女らしく振る舞わないと。
…………
その後、クラスメイトからの質問とかには、注意しながら笑顔で答えて、できるだけ無難にやり過ごしてたんだけど……。
キーン、コーン、カーン、コーン……
「帆村さん、5時間目は体育ですよ」
昼休みにお袋が持たせてくれた弁当(ファンシーな絵柄のちっこいヤツ)を食べ終ったところで、一緒に雑談していた高良さんが教えてくれた。
「この学院は女子校ですので、いわゆる更衣室などは使用せずに教室で着替えるんですの。着替えたら、わたくしが体育館までご案内しますわ」
「あ、そうなんだ。よろしくお願いします」
(うぅ……まさか転校初日から最大の危機が訪れるとは)
そりゃあ、女子の生着替えが拝めるのは嬉しいけどさ。
そんな悠長なこと言ってられる状況じゃねぇ!
一応、お袋が買ってきたショーツとブラジャーは着けてるし、ブラにはパッド入れてるから、それらしくは見えると思うんだけど。
俺、身長は160センチちょいで体毛も薄いほうだし……。
毎朝ジョギングと体操してるのに全然筋肉つかないし……。
子供の頃は知らない人によく女の子に間違われてたし……
だからお袋もこんな無茶思いついたんだし……。
──うぅ、なんか涙が出ちゃう、オンナノコだもん!
(いや、本当はオトコノコだけどさ)
「でね、昨日ウチの近所でね」 スルスルッ
「えー、ほんとに~?」 ぬぎぬぎ
俺がひとり葛藤してるあいだにも、クラスメイト達は着替えを進めている。
周りが全員同性だからか、みんなメチャクチャ無防備だ。
──ピクッ!
(コラコラ、平常心、平常心だ。俺……いや、私は女、可愛い女の子、アイ・アム・ア・ガール!)
心の中でそう唱えつつ、周囲の光景に反応しそうな愚息を懸命に鎮める。
「? どうかされましたか、帆村さん? お顔の色がよろしくありませんけど」
「な、なんでもないです……」
高良さんがきづかってくれるけど、愛想笑いを返すのが精一杯だ。
「あら、そういえば、体操服を、今日は持ってらしていないのでは?」
! そうだ、確かに体操服持って来てねえ!
けど、むしろコレはチャンスだ。
「え、ええ。ですから、私、今日の体育は見学……」
「いえ、それには及びませんわ。わたくし、今日は運よく夏用の体操服と、冬用のジャージの上下を持って来ておりますので、片方お貸しします。サイズが合うかはわかりませんが……」
うッ! しまった、そうきたか。
「そ、そうですか。ありがとうございます」
俺としては笑顔でお礼を言って、手渡された白い半袖シャツと黒スパッツを受け取るしかなかった。
(これが……高良さんの体操服……)
運がいいのか悪いのか、俺と高良さんの身長と体格は大差ないし、多分着ること自体でできると思う。
けど、単なる女装じゃなくて、(洗濯してあるとは言え)目の前の美少女が普段着てる服を自分が身に着けるとなると、やっぱりどこか興奮してしまう。
(ダメだだめだ……平常心へいじょうしん……)
煩悩の昂りを抑えつつ、着替える。
(一番の問題は、ボトムだよなぁ)
ピッチリフィットする黒スパッツだから、こんなの履いてたら、万一モッコリしたら、一発でバレる!
どうせならジャージの方がいいんだけど……。
「うふふ、それ、ちょっと恥ずかしいですよね」
俺の思考を読んだかのように、高良さんが声を掛けてくる……って、ダメだ。もう着替えちゃってる。
「でも大丈夫ですよ。幸いこの学校に殿方はおられませんし」
「そ、そうだね、さ、着替えちゃお」
(ここにいるんだってばよーー!!)
心の中で叫びつつ、仕方なく、制服のスカートをまくってスパッツを履いた。
続いて、少々手間取りながら制服のワンピースを脱ぐ。
(胸はほとんどないけど、まだ中学生だし、貧乳な女の子でなんとか通るよな?)
お袋に言わせると見かけ上のサイズはAAだとか。
白地に襟元と袖口に赤の縁取りが入った体操服をかぶる。
(高良さんの体操服、いいにほい……って、カット! 今のはナシ!!)
やべぇ、なんか俺、変態っぽいぞ?
(女装してる時点で変態確定というのは勘弁な)
「可愛いブラされてますね♪」
「そ、そうかな?」
お袋が買って来たのを渋々着けてるだけなんだけど。
「あ、サイズは、へいきですか?」
「うん、ぴったり。
(胸のところだけ微妙に余ってるけど)」
高良さん、中二とは思えないくらい巨乳だもんなぁ。
「さ、早く体育館に行きましょう」
またもや悶々としかけたところで、幸い高良さんが声をかけてくれたので気が逸れた。
「え、ええ」
委員長に手を取られて(!)、体育館に向かう。
嗚呼、傍目には麗しい少女ふたりがキャッキャウフフしてるように見えるんだろうなぁ、コンチクショウ!
「あら?」
と、突然高良さんが立ち止まる。
「ど、どうしたの?」
高良さんの視線が俺の下半身に向いてるような……。
まさか、バレた!?
「いえ、その……帆村さん、スパッツが後ろ前ですわよ」
「──え!?」
あ、なんだ、違うのか。あぁ、ビビったぁ……って!
「うわっ、ほんとだ! やぁん……」
無意識に女の子っぽく身体をクネらせつつ、俺は自分の履いてるスパッツの前後を確かめる。
うぅ……慌てて着替えたせいだろうなぁ。
「ここで待っていますから、着替え直してきてくださいな」
「えっ、悪いからいいよ。先に行ってて」
俺は遠慮したんだけど……。
「でも、帆村さん、体育館の場所わかりますの?」
そう言われては返す言葉はない。
「ごめんっ。すぐ戻るから!」ッ
急いで教室へと駆け戻る俺は、だから気づいていなかった。
「…………クスッ」
高良さんの優しい微笑の下で、瞳に何やらおもしろがっているような光が踊っていたことに。
体育の時間も何とか無事にやり過ごすことはできた。
──準備運動で組んだ高良さんの身体から漂う匂いとか、やわらかくてエロい身体とかで興奮しそうになった時は、ヤバかったけど。
おかげで、ソレに比べたら、授業後の着替えなんてどうってことなかったぜ!(←ちょっと強がり)
キーンコーンカーンコーン
「……それでは、皆さーん、今日も一日お疲れさまでした。気をつけて帰りましょうね~」
帰りのHRで担任の鈴木先生がそんな風に話を締めくくる。
「小学生かい!?」と思ったけど、クラスのみんなは
「「「はーい!」」」と返事している。
流石はお嬢様学校、反応が素直だなぁ。
(ふぅ、なんとか普通の女子生徒として過ごせたか)
ようやく放課後を迎えて、俺が密かに安堵の溜め息を漏らしているところに、委員長が声を掛けてきた。
「あの、帆村さん、ちょっとよろしいかしら?」
「あ、高良さん、今日は体操服ありがとう。これ、洗って明日返すね」
「いえ、それはそんなに急がなくても構いませんわ。
それより、もしよろしければ一緒に帰りませんか?」
「え、いいの?」
巨乳美人の委員長と仲良く下校!?
嗚呼、これで俺がちゃんと男として認識されてたらどれだけ嬉しかったことか……。
それでも、こんな機会を逃す手はない。
俺は一も二もなく頷いた。
……が!
「た、高良さんって、毎日クルマで送り迎えしてもらってるんだ……?」
校門を出たところで、黒塗りの高級車(たぶんロールス・ロイス・ゴースト)が止まっていた。
「ええ、わたくしは大丈夫と申しているのですけど、父が心配性で。お恥ずかしい限りですわ」
ニッコリ笑ってそう返す高良さんは、やっぱり生粋のお嬢様なんだと思う。
ウチの家系も、一応会社持ってて、社長とか重役とかやってるけど、さすがにここまで庶民離れはしていない。
ともあれ、たぶんこんな機会でもなければ一生こんな高級車に乗る機会はないだろうし、有難く送ってもらうことにした。
<その後、車内で楽しくおしゃべりしているうちに、「アケミさん」「ツバサさん」と名前で呼び合うことに。そのまま高村邸に招待されたと思いねい>
「んんっ……あ、あれ?」
豪華な調度が見慣れぬ場所で目を覚まし、一瞬パニックになる俺。
「此処は……そうか、ツバサさんの部屋だ」
あちゃ~、もしかして俺寝ちゃったのか。
予想通りの豪邸っぷりに驚きつつ、ツバサさんの部屋(学校の教室より広かった)に通されて、おしゃべりしたり、お茶とケーキをいただいたりしてたんだ。
ただ、やっぱり「女子校生活一日目」ということで予想以上に精神的に疲労してたのか、リラックスしたら急に眠くなってきちゃったんだよね。
よく見ると、見覚えのある天蓋付きベッド(!)の上に寝かされてるし。きっと、ツバサさんが気を使ってくれたんだろうなぁ。
それにしたって、友達になったばかりの子の部屋で寝落ちするとか、失礼ってレベルじゃねーぞ。
これ以上迷惑かけないうちに、さっさとお暇しよう……って、あれ、立てない。
て言うか、身体に力が入らない!?
「あらあら、ダメですよ、アケミさん、無理をしては。まだお薬が効いてるんですから」
「ッ!」
ノロノロと声のした方を見ると、ツバサさんが私服──小花を散らした模様のゆったりしたジョーゼットのワンピースに着替えてドアの方から歩み寄ってくるところだった。
「え? 薬って……え? え??」
「ウフフ……アケミさんって本当にお綺麗ですね。それでいてどこか不思議な可愛らしさがありますし」
俺の質問には答えることなく、ツバサさんは未だ力が入らずベッドに横たわったままの俺の隣りに腰かけると、ソッと髪を撫でる。
その手の感触があまりに優しく気持ち良かったために、俺は思わずウットリした気分になりかけていたが、次の瞬間、彼女の口から出た言葉に凍りついた。
「──これで、女の子ではないなんて嘘みたいですわ」
!!
「あ……う、あ……」
「あら、バレてないとお思いでしたか? 残念ですが、わたくし直感だけは鋭いんですの♪」
「あの、あの、こここ、これには事情が……」
「ええ、そうでしょうね。何しろ殿方が神聖なる乙女の学び舎、清安女学院に性別を偽って通われる程ですもの。きっと、さぞかし深い理由があるのでしょう」
あ、あれ? もしかして、事情を話せば協力してくれるのかな。
「こ、このことは誰にも……」
「誰にも言わないで、ですか?」
「は、ハイ」
ブンブンッと精一杯の熱意を込めて首を激しく縦に振る。
「よろしいでしょう。秘密にしてさしあげますわ。その代わり……」
ツバサさんは相変わらず微笑んでいたけど、その笑みの深さが恐ろしかった。
「これからは、アケミさんには、わたくしのモノになって戴きますわよ?」
「それって……下僕とか奴隷になれってコト?」
上目遣いに尋ねると、ツバサさんはコロコロと愛らしく笑った。
「まさか。わたくしは、これでも由緒ある高良の娘です。学友にそんな非道なことは申しませんわ。そうですね……強いて例えるなら「妹」、でしょうか」
「いもうと……?」
「ええ、わたくし、昔から自分に懐いている、お人形のように上品で可愛らしい妹が欲しかったんですの。その点、アケミさんは男性である点を除けば、わたくしの理想にぴったりですし」
やべぇ、ツバサさんの目がウットリしつつ真剣(マジ)だ。マジで俺のことを「妹」にしようとしてるらしい。
「えっと……もし、断ったら……?」
おそるおそる聞いてみると、ツバサさんのアルカイックな笑みがより一層深くなる。
「……ちょっと、失礼しますね」
笑顔のまま、彼女は俺にかかっている掛け布団をめくりあげる。
「アッ!」
反射的に視線を下にやって、俺は思わず驚きの声をあげてしまう。
なぜなら、そこには先程まで着ていたはずの制服とはまるで異なる、淡いピンクのネグリジェに着替えさせられた俺の身体があったからだ。
自分で認めるのはシャクだけど、随所をフリルやリボンで彩られ、身体の線の見えにくいダボッとしたデザインのおかげで、制服の時以上に可愛らしく、より女の子っぽく見える気がする。
「やっぱり、アケミさんは、そういう可愛らしい格好がよくお似合いですわ」
その口ぶりからして、俺を着替えさせたのはツバサさんの意向なのだろう。
羞恥に顔、いや全身を真っ赤にしている俺の様子を微笑ましげに見つめながら、ツバサさんはスリッパを脱いでベッドの上に立ちあがると……。
いきなり、ストッキングを履いたその足で、仰向けになった俺の股間を踏みつけてきたのだ!
「ひあっ!」
(踏まれてる、俺のアソコがツバサさんにっ……女の子の足に踏まれてる!!)
──ぐにぐにぐに……
本当なら屈辱的な行為のはずなのに、なぜか俺のアソコは勃起し始めていた。
「まぁ……アケミさんったら、お薬で身体が動かないはずですのに、ココはお元気ですわね」
それなりに加減してくれてはいるのだろうけど、やはり足で踏まれているとあって、気持ち良さより痛いという感覚の方が強いのだが、どういうワケか、俺はそこから逃げられなかった。
「お、お願いです、ツバサさん。もっと優しく……」
あまつさえ、涙声でそんな懇願までしてしまう始末だ。
「ウフフ……アケミさんがわたくしの妹になることを了承していただければ、優しくシて差し上げますわよ?」
どうしますか?
眼鏡越しに興奮のせいかほのかに潤んだ瞳が、俺に問う。
そして俺は……頷くより他に道はなかった。
…………
そして、俺──いや、私はツバサお姉様の「妹」になった。
清女に通うこと自体は、これまで通りなのだけど、私の両親には対してどんな説明をしたのか、私はお姉様の家(より正確には、お姉様の部屋)に住むことになったのだ。
お姉様の御両親も、使用人の方々もとても良い人達で、快く私を「家族」として受け入れてくださった。
それに、普段のツバサさんは、多少過保護で世話焼きだけど、とてもいい「お姉様」だと思う。
私が慣れない女子校生活でボロを出さないようフォローしつつ、私が清女の生徒に相応しい淑女になれるよう、毎日少しずつ指導(洗脳?)してくださっているし。
おかげで、私の性別を疑う人なんて学校にいないし、クラスのみんなと楽しいガールズライフを謳歌している。
けれど……日付が変わる頃、ふたりでベッドに入った時だけは、仲良し姉妹のないしょのラブラブタイムだ。
…………
「ぁっ……ああっ!」
シルクのスリップ一枚の姿で、ベッドの上にうつ伏せになった私の身体を、お姉様のしなやかな指先が巧みに這いまわる。
「可愛い……アケミちゃん、すごく可愛いわよ」
耳、唇、うなじ、背中、乳首、お尻、太腿……。
私の体の隅々まで知り尽くしたお姉様の愛撫は、ほんの数分で私をこの上なく昂らせ、快楽に悶え狂わせてしまう。
「あっ…んんっ……ハァハァ………」
「フフッ、そうして喘いでいると、まるっきり本物の女の子みたいですわね」
自身も頬を紅色に染めつつ、お姉様は私を言葉でも弄ぶ。
最近では、私自身、ほとんどの時間で自分の本当の性別を意識していないのに、時折そんな風にからかって、私の意識から羞恥を掘り起こすのだ。
「ひうんっ! だ、だって………ん」
「だって? 何かしら?」
優しい、けれど底の見えない笑みで見つめ返されると、私はそれだけで何も言えなくなる。
「なんでもない……です」
目を伏せる私の髪をお姉様の温かい手が優しく撫でる。
「ウフフ……そうね、ごめんなさい。意地悪を言ったわ。アケミちゃんはわたくしの大事な大事な可愛い妹ですもの。女の子に決まってますよね?」
「は、はい、お姉様♪」
お姉様に迎合したからではなく、今では本心から、私は自分のことを女の子だ、女の子になりたいと思うようになっていた。
私の想いに気づいているのだろう。
お姉様は、毎朝飲むようにと、最近あるサプリを私にくださった。
そのサプリを飲むようになってから、肌がよりいっそう白く、柔らかくなってきたように感じる。
また、それと比例して胸が敏感に──そして、少しずつ大きくなってような気がするのだ。
「アケミちゃん、気持ちいい?」
「はぁ、はぁっ…………はいィ」
緩やかな曲線を描く両胸のその中央、以前の倍ほどの大きさになった乳首を、お姉様の指先が摘み上げ、捻り、こねくり回す。
それだけで、私はあられもない嬌声をあげてしまう。
「どう、続けて欲しい?」
「は…はい、お願い、しま……すゥゥゥゥゥ!!」
未成熟な蕾を唇に含まれ、コリッと噛まれただけで、軽くイッてしまう私。
荒い息をついている私の頬を、お姉様はそっと撫でてくださった。
「アケミちゃん、絶対にあなたは離さないわ……こんな愛らしい女の子、他にいないもの」
数週間前までの童顔&女顔を気にしている「俺」なら、その言葉に反発心しか抱かなかったろう。
けれど、今は真逆の感情が心の中に湧いてくる。
「ほ、ホントですか、お姉様?」
「ええ、勿論よ。あなたはとても可愛い女の子よ。自信を持ちなさい」
「う、うれしい……」
涙ぐむ私のオデコに口づけしながら、悪戯っぽく笑うお姉様。
「だってこんなに感じちゃうなんて、女の子でなければあり得ないもの」
お姉様の指先が、汗ばんだ私のお尻の谷間を這い、目的の「秘孔」を探り当てて、ゆっくり侵入し始める。
──チュプン!
「あぁン! い、いやっ、そこは………」
「おしりの穴はイヤなの? 大丈夫、わたくしに身を委ねて全身の力を抜きなさい。すぐに天国へ連れて行ってあげるから」
──クチュッ、クチュッ……
慈母のような表情のまま、お姉様の指が私の下半身にある唯一の孔を繰り返し出入りする。
最初は不思議な気持ち悪さがあったはずなのに、お姉様の指が体内へ侵入する度にその嫌悪感が薄れ、快感の種火がじりじりと燃え広がっているような気がした。
「や、やめて……お姉様ぁ」
その快楽に引き込まれたら、二度と還って来れない気がして、わたしは目に涙を浮かべつつ懇願する。
けれど、私の訴えをお姉様はとても優しい笑みを浮かべながら却下した。
「だ~め。やめてあげない♪」
──ズボッ!!
「ああぁぁァァァーーーーーーーーッッッ!」
その夜、私は自分の「処女」をお姉様に捧げることとなった。
「ヒドいです、お姉様……私、初めてだったのに……」
「フフフ……その初めてで乱れイキまくったのは誰だったかしらん」
「! し、知りません。お姉様のいぢわるッ」
~おわり~
#以上。ひさしぶりなのでエロ描写がイマイチでした。スマヌ。
最終更新:2013年06月12日 20:52