『弟はお姉ちゃん』シチュエーション2


「で、裕則。お前が一番重要な役目になる」
 次の『作戦』の指示を皆に下したあと、最後にお兄ちゃんがボクに指を突きつけて言った。
 今まで名前が出なかったから、『今回はお役なしかー』と呑気に考えていた自分のウカツさがイヤだ。

「今回お前には『お姉ちゃん』になってもらう」
「……ボク男だよ?お姉ちゃんになるって何のこと?」
「大丈夫大丈夫、お前なら立派に女になれるって!弟は兄の命令に従うもんだ」

(略)

「いやフツーに可愛くね?」「こんな子彼女にしてぇ」「いっそこれなら男でも…」
 結局押し切られて、女装状態で皆の前に出るなり、どよめきがあがった。
 小柄な大学生である姉の持ち物の、茶色のブレザーにピンクのワンピースは少し大きくて、色々なところ(肩とかウエストとか)が余った感じがするけどおおむね大丈夫そう。カツラも被らされて、靴も女物。
(どれだけ用意周到なのかと)
 膝丈のスカートがスースーして、脚が丸見えなのがなんだかとても恥ずかしい。

「俺の見立ては間違ってなかったな。背筋はちゃんと伸ばして、内股になるように気をつけて。今日から作戦達成までの間、ここでは慣れるためにずっとこの格好で『女になる特訓』をしてもうらうか。他の皆はこいつを『裕美』って呼ぶよーに」
「それで『お姉ちゃん』になる、ってどういうこと?顔とか全然似てないし、マネしろって言っても無理だよ」
「うん、姉貴には悪いけど『裕美』のほうが何倍も可愛いな。あれはそういう意味じゃなくって……」

(略)

『トックン』は意外に長く続いた。動作やら表情やら言葉遣いやら、色々指摘されてめげそうだ。でも、まあ、
「なんで俺がそんなこと……」
「弟は姉の命令に従うもんでしょ」
 初めてやってきたゲコクジョーの機会がとても快感で、回りがちやほやする感覚が新鮮で、癖になってしまいそう。

(略)

 いよいよ決行の日。
 ボクは水色のカーディガン、白いブラウスに同じ白のミニのチュールスカートって格好で街角に一人立っていた。顔には化粧までさせられて、無事「大学生くらいの女の人」に見えてるんだろうか。
 それともさっきから結構いる、ボクにちらちらと視線を走らせる人たち(主に男性)はボクが男ということはバレバレなんだろうか。
 心臓がバクバクしてちっとも落ち着かない。近くで見守ってるというお兄ちゃんたちは、ちゃんといるのだろうか。

 そうこうして待つこと15分(その間にナンパされること2回)、ようやく写真で見た、ターゲットの男の人の姿を発見。
「あ、あの」
 ここを逃したら、色んな努力が無駄になる。そう思いながら、必死の思いで声をかけた。

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最終更新:2013年04月28日 00:42