『瀬野家の人々』 回想


 ──『あれ』は確か、俺が10歳のときのことだったと思う。
 実の親父が事業に失敗して蒸発して、借金返済のために家含めて色んなものを売り払って、今までの俺の子供部屋より狭いワンルームのアパートで引っ越してしばらくたった頃の話。
 専業主婦だったお袋も働きに出て、気苦労から白髪も目立ち始めたことが記憶にある。

 転校不要だったことに喜んでいたのも短い間で、環境が激変した俺は見事にクラスの「いじめられっ子」に転落していた。
 それまで友だちだった子もいじめる側に回って、遊ぶ相手もいない。そんな日々。

 『その日』は夕方から雨がぱらついていていた。
 持ってきた傘を広げて帰ろうとしたとき、「すまん、今日これ貸してな」って言って、その傘が横から奪い取られた。
 いじめられっ子だった俺はどうしようもなく、そのまま雨の中を駆け出した。
 小雨だから大丈夫と思ってたら、雨がどんどん強くなって、下着までびしょ濡れで。

 ようやく家にたどり着いたと思ったら、悪いことは重なるもので、鍵をどこかに失くしてたんだ。濡れて気持ち悪くて寒いのに、お袋が帰るまで家に入ることすらできない。
 惨めな自分に、いつの間にか俺はわんわんと家の前に座って泣き出していた。

 そんな時2つ隣の家のドアが開いて、『その人』──実はもう名前を忘れてしまったから、ここでは『春美さん』って呼ぶね──が出てきて、泣いてる俺を部屋に招きいれてくれた。
 春美さんは髪が長くて、胸が大きくて、大人しい感じの綺麗な人だった。

 その人の部屋に入って驚いたのが、部屋じゅうに所狭しと置かれた人形の存在だった。
 特に一番大きな人形は当時の俺より少し背が高いくらいで、最初生きてる女の子が床に座っているのかと思うくらい精巧だった。
 狭いアパートにはあまりに似合わない存在は当時から疑問に思ってたけど、確か事情や由来は結局聞けずじまいだったように思う。

 風呂場の中でバスタオルで体を拭いて、着る服がないことに気付く。
 風呂の中からそのことを言うと、春美さんはしばらくためらっていたようだけど、女の子の服を取り出してきた。
 きれいな大人の女性の前で、バスタオル1枚の裸でいるか、少女の服を着るか究極の選択。

 高校時代から背が伸び始めて今は172cmあるけど、小学校時代の俺はいつも学年で1、2を争うくらい背が低くて、この頃は130cmあるかないかくらいだったのかな。
 とても嫌だったけど結局身につけたこの時の服は、ほとんどぴったり身体にフィットした。

「アキちゃんの服、ぴったりだったみたいね。良かった」
「……“アキちゃん”って、誰?」
「その子よ」
 春美さんは笑いながら、一番大きな人形を手で示す。……不思議なことに、この件で俺の記憶に明確に残っているのはその人形の名前と、その人形を呼ぶ春美さんの声の響きだけ。

 ただ、『その日』はそれ以上のこともなく、お袋が帰ってくるまで春美さんの部屋で、お嬢様のような白いフリルつきブラウスと、同じくフリル付きの黒いスカートの姿で過ごして終わっただけだった、と思う。

 ──え? 女装は似合ってたかって? それを含めて、これから話すね。

 それからしばらく、学校から帰ったあと毎日のように春美さんの部屋を通う日々が続いた。
 ……今なら分かるけど春美さんは水商売の人で、夕方6時くらいが出勤時間で。
 俺の相手をすることで負担がかかっていたのは当時の自分でも理解していて、でも孤独だった俺は、好意に甘えててお邪魔することをずるずると続けてた。
『僕の出来ることならなんでもするから』。贖罪意識から春美さんにはそんなことを言って。

 確か1ヵ月後くらいかな? 春美さんが、俺に「お願い」って言ってきたのは。
 何でも“アキちゃん”の新しい服を買いたいから、買出しに同行して欲しいとの話。
(荷物運びかな?)と思ってOKしたら、“アキちゃん”の服一式に着替えさせられたんだ。

 嫌とは思ったけど、『なんでもする』と言ってた以上断りきれなくてね。
 下着から完全に女物で、白と黒のゴスロリ衣装を身に着けて、お尻より長い黒髪姫カットのカツラをつけて、付けマツゲとかできっちりお化粧までさせられて。

 ──今の俺から想像つかないと思うけど、小学校卒業くらいまでの俺はお袋似の女顔で、背も小さかったし結構女の子に間違われることも多かったんだ。
 中学以降はまあ、そんなこともなくなったけど。

 それでも一番最初の日にお人形の服を着たときは、普通に『男の子が女の子の服を着てる』感じだったけど、その日仕上がってみると、本当に『生きて動き出した少女のお人形』そのもので、それが自分であることが信じられない気分だった。
 ──まあ、随分前の話だし、記憶の中で美化が進んでるのかもしれないけどね。

 春美さんはごく自然に俺に対して“アキちゃん”と呼びかけるし、いつの間にか俺もその呼び方に馴染んでいってしまっているし。
 まあ偶然俺がマサ“アキ”だから慣れやすかった、という理由もあるだろうけど。

 その日は春美さんと一緒に電車に乗って街にでかけて、ロリ系の子ども服中心に色々試着して回ったっけ。俺と人形の服のサイズが同じくらいだから、これでぴったりな服が着せてあげられられるって、大喜びだったと思う。
 最初は恥ずかしかったけど、店員さんとかに完全に女の子として扱われるのが新鮮で気持ちよくて、誰も俺のことを俺と扱わないのが嬉しくて、最後は割に楽しんでた記憶がある。

 ──女装趣味じゃなくて、変身願望かな。
 あの頃は本当に、俺が俺であることに嫌気がさしてたから、別人になることが嬉しかった。
 だからまあ、正直に言えば俊也が悠里のふりをするのを見てて、今でも羨ましいって思う気分もどこかにあるんだ。もう、俺には無理だろうからね。

 まあ、それはともかく。
 その日以降、大きく変わったのが春美さんの家での俺の扱いだった。
 それまでは普通に男の子として扱われてたのが、春美さんの家に行くたびに服を脱がされて、動く着せ替え人形であるかのように、可愛らしい女の子向けのドレスを着せられて。

 ──それが本気で嫌だったら、もう二度と行かなくなって、それでお終いだったよ。
 でも結構長い間その関係が続いたはずだから、俺はやっぱりそれが嬉しかったんだと思う。

 ──この話にはあともう一人、登場人物が出てくる。
 この人も名前は思い出せないから、仮に──そう、『冬子さん』って呼ぶね。
 冬子さんは背が高い人で、髪は肩あたりで綺麗に切りそろえた感じで、ややきつい面差しの美人な人だった。クールビューティって感じかな。

 春美さんと冬子さんは友人で、冬子さんが春美さんの家に来ている日は俺は家に上がらせてもらえないのが、分かっていても寂しかった。
 春美さんと冬子さんが部屋で何をしているのか知りたい気持ち、一緒に遊んでもらいたい気持ちが段々募ってきて、……それで俺は、あんなことをやったんだ。

 細かい経緯までは思い出せないけど、冬子さんが来る日、春美さんが留守をしている間に家にこっそり上がりこんで、俺はお人形のほうの“アキちゃん”の衣装を一式脱がせて自分の体に身に着けていった。
 春美さんがいつ戻ってくるか分からないから大急ぎで。

 “アキちゃん”と、俺の着ていた服を押入れに押し込んで、人形がつけていたピンクと白の、甘ロリっていうのかな? そんな服に着替えて、金髪巻き毛のカツラと大きな布製の帽子……ボンネットっていうの? まあ、それを頭にかぶって。
 そこまで終わったところで、春美さんが帰ってきたのでその人形みたいに床に座って。
 ──今考えれば、俺が押入れに入ればよかったのかな? それとも何か事情で無理だったのかな? よく思い出せないや。

 幸運なことに、春美さんは俺の『入れ替わり』には気づかないようだった。
 お人形の真似事をして春美さんと一緒にいるのはもう何度もやってきたことだけど、春美さんが俺のことを人形だと思い込んでいる状態は初めてのことで。
 首を動かして見るわけにもいかないし、春美さんの独り言や服を脱ぐ衣擦れの音、シャワーの音に、心臓がおかしいくらいにバクバクしっぱなしになっていた。

 春美さんがシャワーを浴びている最中に冬子さんがやってきて、部屋に上がってきた。
 見れないから分からないけど、人形のふりでじっとしている自分を見つめている気がする。
 太腿辺りがやけに痒い。やっぱり無理だったのかな、そんな不安を感じつつ、でもピクリとも動けない苦役に耐えているとき、風呂場から春美さんが出てくる音がした。

「んじゃ春美、始めるか」
「あら? 今日はやけに性急なのね」
「たまにはそんな日もあるんだ」
 それだけの会話のあと、たぶん冬子さんが服を脱ぎだした音がした。

 当時俺はまだ、『セックス』という言葉も概念も知らない子どもだった。
 ──10歳でそれって、今時おくて過ぎるかな? そうかもしれない。
 まあ、だから、それから始められた『行為』のことは、当時の俺には凄いびっくりするようなことだった。

「ああっ、いやっ、やめて!」
 夕暮れのアパートに響く春美さんの声。
 当時の俺にはさっぱり分からない叫びにびっくりして顔をつい二人のほうに向けてしまう。
 狭い部屋の半分を占めるベッドの上で、冬子さんがこちらを見てニヤリと笑った。

 ──そのとき、よく驚きの声をあげなかったものだと思う。
 だけど、びっくりのオンパレードは、むしろこれからが始まりだった。
 頭が真っ白になって対応を思いつかないでいるうちに、春美さんがひときわ大きな声をあげてくたっとなってしまう。

 慌てた俺が立ち上がるのと、冬子さんが起き上がるのがほとんど同時だった。
 今までベッドと春美さんの体で見えなかった、冬子さんの身体が見える。
 細くて色白で脛毛とか一切なかったけど、胸と股間のものが完全に男性だった。
 それなのに、綺麗に化粧された顔はやっぱり冬子さんの、女性のもので。俺は混乱する。

「おい、春美。こいつは一体ナニモノなんだ?」
「えっ、嘘……アキちゃん?」
 冬子さんが、まだベッドに横たわってぜいぜい言ってる春美さんの頭を手でこちらに向けさせて質問すると、春美さんは驚いた声で言った。

「“アキちゃん”って確か、お前の持ってる人形の名前だよな。でもこいつ、生きてるぜ?」
「いや、そっちのアキちゃんじゃなくて……この部屋の、2つ隣の男の子」
「雅明だっけ? 前紹介してた。って、へぇ! やっぱりこいつも男だったのか。面白いな」
 そう言ってけらけら笑う冬子さん。
 ──まあ、会話の内容まで覚えてないけど、大体こんな感じだったということで。

「なあアキ、お前も混じりたいのか?」
「……混じる、ってなんのことですか?」
「男3人で3Pしないか、ってことだよ」
「さん……ぴー?」
 知らない単語に混乱する俺。そのせいで、重要な単語をうっかり聞き流してしまう。

「うは。お前今何歳だ? ひょっとして、精通もオナニーもまだ?」
「じゅ、10歳ですけど……せいつう? おなにい?」
「あはは。こりゃいいや。春美、どうせだから化粧して綺麗にしてやってよ」
「え……でも……そっか……ん……分かった。アキちゃん、こっちにどうぞ」

 混乱するまま、春美さんに手招きされるままに、化粧台の前に座る。
 鏡の中に、ふわりと膨らんだピンクのドレス姿、縦ロールの金髪ロングの『お姫様』のような自分の姿が映ってドキリとしてしまう。
 そういえば、今の自分はそんな姿だったんだ。

 そして目を上げて……初めて見る春美さんの全裸にぎょっとする。
 豊満な美乳に、くびれたウエスト。柔らかそうなすべすべの肌。どこをどう見ても、綺麗な女性の体。それなのに、股間には俺と一緒のモノがぶらさがっていた。

「え……あ……春美さん? それ……」混乱のままに聞いてみる。
「お前、知らなかったのか? 春美も男だよ。オレやお前と同じな」言葉を一旦切って、

「手術で豊胸して、女ホルも打って……って言ってもお前にはまだ分からないか。
 ……お前、こんな体になってみたいと思わないか? 今からホルモン始めれば、お前ならきっと、オレや春美なんて目じゃないくらいの美女になれるぜ」

 ──もしここで俺が頷いていたら、どんなことになっていたんだろう。
 でも当時の俺は、呆然と座ってるだけで、首を縦にも横にも振ることができなかった。
「まあ、すぐには決心つかないか。お前がいいと思うなら、いつでも言ってきてくれ」

 ──その日以降に分かったことも含めて、この日この部屋にいた人のまとめをするね。

 春美さん。本人曰くメンタルは普通の男性。でもホモセクシャルで、昔交際していた、惚れた男のために豊胸手術や女性ホルモンの投与まで受けて、その人と別れたあとも普段は女性として生活していという話。外見は、普通の女性以上に女性な人だった。

 冬子さん。女装趣味の男性。女装すれば美女にしか見えなかったけど、普段は男性として生活していて、体は特にいじってない。バイセクシャルだと本人は言ってたと思う。

 最後に“アキちゃん”こと当時の俺。事情があって少女人形の服を着ていたけれども、女装趣味でもホモでもバイでもない人間。……いや、本当だってば。

 春美さんに綺麗に化粧をしてもらって、帽子を外して代わりにピンク色の大きなリボンを頭につけてもらった俺は、いや、“動く等身大リアルドールのアキちゃん”になった自分は、(これから何が起きるんだろう……)と不安に思いながらベッドに座っていた。

「じゃあまず春美、フェラチオの見本をみせてやれ。アキ、今からお前もするわけだから、ちゃんと見ておくんだぞ」
 そう冬子さんが言うと、春美さんは少しためらったあと、屈んで冬子さんのモノを咥えた。
 ──あれ。この流れだと、アナルセックス直後にフェラチオしたことになるな。記憶がごっちゃになってるのか、それとも本当にやったのか。ごめん、どっちか分かんないや。

 まあそれはともかく、春美さんにフェラチオされながら、冬子さんは俺に向かってこと細かにやりかたとかを説明した。最後、春美さんが、美味しそうに白い液体を飲み干す。
 促されるまま、俺は続いて春美さんの股間のモノを口に咥える。
 どこからどう見ても、春美さんの身体は『その箇所』以外は女性そのもので。その中に唯一存在する“男の象徴”を自分の口の中に隠してしまうのは凄く変な感じだった。

 『フェラチオ』の概念自体、さっき知ったばかり。多分、それは凄く下手なものだった筈。
 でも、春美さんは『お人形のアキちゃんが動き出して、お姫様姿で自分のモノに奉仕してくれている』というシチュエーションに凄く興奮して、白いおしっこを俺の口に出したんだ。
 春美さんは美味しそうにしてたのに、それはとても苦くてまずくて。
 冬子さんに命じられるままに飲み込むのは、とても大変だった。

「あはは。こいつ、言われたくらいで男のモノ咥えて精液飲み干して変態じゃね?……ウソウソ、お前は偉いよ。いい奴だ」
 そう言って金髪のカツラの上から頭を撫でる。
「……じゃあ、ご褒美に、今からオレがお前を『女』にしてやるよ」

「えっ? 僕は男だよ」
「ボクっ娘ってのもいいけど、そこはあたし……いや名前で呼ぶのが良さそうだな。『アキは淫乱な、エッチなことで喜んでしまう、いけない女の子なんです』って言ってみな」
「あ、アキはインラン?な、エッチなことで喜んでしまう、い、いけない女の子なんですぅ」

「よし。よく言えた。春美、これからコイツになんて言えばいいのか教えてやってくれ」
「……え? うん、分かった、と思う。『冬子さん、アキの初めてをもらってください』」
「ふ……冬子さん、あ、アキの初めてをもらってください!」

 ──『アキ』という言葉が自分の口から出る度に、自分は『雅明という男の子』ではなく、『アキという名の、自意識を持たない人形』なのだ、という感覚が強まっていく。
 普通なら抵抗するはずなのに、まるで催眠術がかかったかのように、言われるがままに言葉を繰り返し、そして仰向けになり、両脚を持ち上げてお尻を浮かせる自分がいた。

 下着をずり上げ、お尻を丸出しにした状態。美女そのままの顔で冬子さんがにっこり微笑んで、“アキ”のお尻の穴を指をあて、絶妙なタッチでマッサージし始める。
 下半身を中心に何かむずむずするような、熱いような、とても変な感覚が広がってくる。

「冬子さん? そ、そんな汚いですよ!」
「『冬子さんの中指が、アキの処女のおマンコに入ってきます』」
「え?」
「『冬子さんの中指が、アキの処女のおマンコに入ってきます』」

「……ふ、冬子さんのな、中指が、アキの、処女のお、おまんこ?に入ってきますぅ!」
「アキ処女なのに、冬子さんの指をすっかり飲み込んでますぅ。らめ、処女膜は破かないで」
「ああっ! 冬子さんの指が、アキのじ、じーすぽっと? をグリグリなでまわしてますぅ」
「ら、らめぇ! くり、くりとりす?は責めないでぇ! きもち、気持ちいいのぉ!」

 お尻に感じる異物感とヘンな感覚と、当時知らなかった単語のオンパレードでそれどころじゃないのに、音声繰り返し機能しか持たない人形のように、俺は機械的に繰り返していた。
 自分の意思とはまったく関係なしに腰がビクンビクンと動き出す。
 身体の中で何か熱いものが発生して、渦巻いて、そして飛び散りそうな感じがした瞬間、お尻にいれていた指がすっとひき抜かれてしまう。
 ほっとするような、もっとして欲しいような、奇妙な感覚。

「さて、オレも流石に10歳とヤッたことないから、どうなるかな」
「さ、さてオレもさすがにじゅっさいと……」
「アキ、繰り返しストップな。しっかし、実況放送プレイって楽しいな。春美、GJ」
「ふふっ、アキちゃん可愛すぎ。まさか、こんな素質がある子とは思わなかった」
「そうだな。じゃあ、始めるか。アキ、また繰り返しスタートで」
 そう言って冬子さんは、今度は俺のお尻の穴に、指ではなくアレを押し込み始めたんだ。

「……アキの処女おマンコに、冬子さんのごくぶとおちんちんがはいってきますぅ」
「アキの、しょ、処女膜がやぶれましたぁ。赤い血が伝わってきますぅ」
「か、かりくび?が、アキのにくへき?をごりっ、ごりってこすってますぅぅ!」
「熱くて、ドクドクして、とっても気持ちいいのぉ。もっと奥に! もっと奥に!」

「アキ、処女なのに、気持ちがよくて腰の動きが止まらないのぉ」
「処女なのに、処女なのに、冬子さんのおちんちん、根元まで飲み込んじゃったのぉ」
「処女なのに、処女なのに、アキ、おちんちん入れられて感じちゃってますぅ」
「アキの子宮に、ドピュドピュ熱いせいえき?を注いでくださいぃ!」
「ら、らめぇ! アキ、アキ、10歳なのに妊娠しちゃうぅぅ────!」

 ──ゴメン、俺、勢いで脚色しすぎたかも。

 まあそんな感じで、当時10歳だった俺に対して冬子さんは何度も精液注ぎ込んでさ──今考えると、俺は一度には3回くらいでもう限界に近いから尊敬するわ──
 冬子さんはプロとして一時期生計を立ててたそうで、『逆アナルプレイ』も客相手にやってて、そのテクをフル活用して、俺の身体に快感を刻み込んでいったんだ。
 精通もまだだった俺は、ドライオーガズム状態で何度も何度もイかされてしまって、半分以上意識が飛んで失神したようになってしまっていた。

『少し女顔だけど普通の10歳の、人間の男の子、雅明』から、
『縦巻きロールの金髪に、ピンクのお姫様のようなドレス姿の、言われた通りに動き、言われた言葉を繰り返す、自意思を持たない精巧な少女人形のアキ』に。そして、
『格好は同じだけど、ほとんど反応を返さない、超リアルダッチワイフのアキ』
 に俺の存在自体が次々と上書きされてしまった感じで。

 そしてラスト。
 もうお尻も口もぽかんと開きっぱなしの状態で、両方とも精液で溢れて垂れ流しみたいになって、身体に力が入らずだらりとしたダッチワイフそのままの“アキ”を挟んで、尻には冬子さんが、口には春美さんがペニスを突っ込んで。

 頭も視界もとっくに真っ白で、そんな状態でも俺の肉体は入れられることに快感を感じて。
 脳内で快感はとっくに処理不能になっていて、『熱の波紋』としか認識できなくなったその快楽を求めて、口とお尻の肉がペニスをぎゅっと包みあげて。
 そして最後の瞬間2人同時に身体からペニスを抜いて、盛大に俺の顔と身体とドレスとを、白濁した熱い液体でべとべとに汚したんだ。



 ──というところで、その日のプレイと、この話はおしまい。

 春美さんと冬子さんとは、そのあとも何度も会ってるはずなんだけど、その後プレイしたかどうかも含めて、綺麗さっぱり記憶から抜けていて思い出せないんだ。
 ごめんね。

 『その日』があってから、なんだか学校のいじめがたわいのない可愛らしいものに思えてきて、それでくじけたり惨めに思ったりすることがなくなって。
 徐々にだけど普通に友だちを作って遊べるようになって、『友だちの代替行為としての春美さんの家』が必要なくなってきたこともあるんだと思う。

 俺の身長が伸びて、身体も大きくなって、“アキ”の服が入らなくなった、代わりができなくなったから、という理由も、たぶんきっとあるんじゃないかな。

 ある日、気づいたら予告も何もなしに春美さんはアパートから引っ越してしまっていて、それ以来あの二人とは二度と連絡をつけることもできなかった。
 どん底だった時期に相手してくれて、俺が立ち直るきっかけになってくれた、ある意味では恩人な2人には、もう一度あって色々言いたいけど、たぶんもう二度と会えない気もする。

 ──というところで、今度こそ本当に、この話はおしまい。

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最終更新:2013年04月28日 01:02