初出:「【おむつ】幼児女装小説【園児服】」スレッド020

「お、おままごとだって~!?」
 春休みもあと何日かで終わりという四月のうららかな昼下がり、井上晶の素っ頓狂な声が
遠藤美也子の部屋の中に響きわたった。
「そ、おままごと」
 呆れ顔の晶とは対照的に、平然とした表情で美也子が頷く。
「いや、でも、あの、俺ら、小学生でも幼稚園児でもないんだぜ? 高校二年にもなってなに
が悲しゅうておままごとなんてやんなきゃいけないんだよ?」
 そう。晶は高校生。この春から二年生だ。ついでに言っておくと、目の前にいる美也子も同
級生。しかも、家が隣どうしの幼なじみで、幼稚園から小学校、中学校とずっと同じクラスで、
高校も一年生の時は同じクラスだったということもあって、二人とも、二年生になっても別のク
ラスになることがなさそうな予感がしている。と、そういうふうに小さい頃からずっと一緒の二人な
わけだけど、美也子が何を思って突然「ね、晶、おままごとしようよ」と言い出したのか、さっぱ
りわからない。
「じゃ、説明してあげる。説明してあげるから、どうして私が急におままごとしよって言いだしたの
かわかったら、ちゃんとつきあうのよ。いいわね?」
 これまで晶が見たことのないような真剣な表情で美也子は言った。
「あ、ああ、いいぜ。ちゃんとした理由があるなら、おままごとでもなんでもつきあってやるよ」
 どこか思い詰めたような美也子の口振りに、思わず晶も姿勢を正して頷いてしまう。
「あのね、昨夜、うちのパパとママが話してるの聞いちゃったのよ。もう真夜中近くだったんだけど、
喉が渇いて目が覚めちゃったもんだからキッチンへ行こうとしたら、居間でパパとママが話し込ん
でる声が聞こえちゃったの。『急なことだけど』とか『ご近所へのご挨拶も』とか『いざとなったら単
身』とか、ドア越しだから途切れ途切れだったけど、これって、パパが転勤になるから引っ越しの
相談してるに決まってるよね? つまり、私と晶はもうすぐ離れ離れになっちゃうってことよ? だ
から、おままごとしなきゃいけないのよ」
 美也子はきっぱり言い切った。
「いや、あの、叔父さんと叔母さんが何を相談していたのかはわかったけど、それでどうして、お
ままごとに結びつくんだよ? 美也子、説明を端折りすぎで訳わかんねーよ」
 美也子の説明に、晶は胸の前で腕を組んで首を振った。

「まだわかんないの? んと、にっぶいわねぇ、晶ってば。あんた、小さい頃、私になんて
言ったか憶えてないの? 何があっても僕が絶対に美也子ちゃんを守ってあげる。美也
子ちゃんを泣かせるような子がいたら僕がやっつけてあげる。美也子ちゃんがお腹が空い
て悲しくなったら僕のオヤツをあげる。美也子ちゃんがどこかへ行っちゃうことになったら、
絶対に僕も一緒について行ってあげる。晶、そう言ったのよ。憶えてるでしょ?」
 美也子は真剣な表情のまま詰め寄った。
「いや、ま、それは憶えてるさ。憶えてるけど……」
 晶は四月生まれ。一方、美也子は次の年の三月生まれ。学年は同じだけれど、実は
晶は丸一年近くも早く生まれた『おにいちゃん』だった。それだもので、小さい頃はなにかと
おにいちゃんぶってみせていたのだ。で、テレビのヒーローみたいにえらそうなことを言った記
憶は晶にもある。けど、それでも、まだわからない。それがどうして、おままごとに結びつくん
だよ?
「もう私も子供じゃないんだから、大人の事情ってのもわかるようになったわよ。パパの転勤
で引っ越ししなきゃいけないんだったら、私もついてく。引っ越しはいやだって駄々はこねな
い。でもって――」
 美也子は大きな瞳で晶の顔を見つめた。
「な、なんだよ、その目は? まさか、子供の頃の約束を守って俺に一緒についてこいなん
て言うんじゃないだろうな?」
 晶は一瞬たじろいだ顔つきになった。
「まさか、そんな無茶言わないわよ。言ったでしょ、もう子供じゃないんだって? でもきしな
いことを言うような子供じゃないって」
 美也子はどこか物悲しげな表情でぽつりと言った。
「で、でも……」
 晶が気遣わしげに美也子の顔を覗き込む。
 それに対して美也子はぶるんと首を振ると、わざとのように明るい表情を浮かべて言った。
「一緒に来てちょうだいなんて言わないから、その代わり、思い出を作って欲しいの。これか
らずっと忘れることのないような、晶といたことをいつまでも憶えていられるような素敵な思い
出を作るのを手伝って欲しいのよ」

「思い出?」
「そう、思い出よ。小さい頃、近所の友達と一緒に、よく、おままごとをして遊んだじゃない? みん
なわいわい楽しそうに笑ってさ。その中でも晶、一番楽しそうな顔してたじゃない? あの時の笑顔
をもういちど見てみたいの。その笑顔を胸の中に刻み込んでおきたいの」
 美也子は拳をぎゅっと握りしめて頷いた。
 その時になって、ようやく晶も納得顔になった。
「そういうことか。うん、わかった。おままごとでもなんでもつきあってやるよ」
 晶はひょいと肩をすくめて言った。けれど、じきに困ったような顔になる。
「けど、あの時のみんなを集めるのは無理だぜ。小学校の時に引っ越しちゃった奴もいるし、春休み
の間はずっとバイトで忙しい奴もいるし、女子にしたって、すぐに集めるのは難しいんじゃないのか?」
「ううん、みんなはいいの。私は晶の笑顔を憶えていたいだけなんだから、二人だけでいいのよ」
 はにかんだような顔で美也子は応えた。
 その表情に晶の胸がどきんと高鳴る。
 晶の両親も美也子の両親も、揃って町内会が主催する日帰りバス旅行に出かけていて、今、家
にいるのは晶と美也子の二人きりだ。幼なじみで実の兄妹みたいにして育ったからどちらの両親とも
油断しているのか、あるいは、いざとなったらそうなってもいいと思っているのか、晶と美也子が互いの
部屋に遊びに行ってもまるで警戒する気配がない。それは今日も同じで、四人は揃って「じゃ、ちょっ
と行ってくるよ」と晶と美也子に向かってお気楽に言い残してバスに乗り込んでしまった。これでは若い
二人に間違いが起こっても仕方のないところなわけで。
(いや、駄目だ駄目だ。俺は美也子を守るヒーローなんだからな。ヒーローがそんなふしだらなこと考え
ちゃいけない。しっかりするんだ、俺!) 一瞬とはいえ胸の中に湧き上がってきたよからぬ思いを必死
になだめすかして晶は自分に言い聞かせた。そうして、美也子の胸の内を覚られまいとして、わざとら
しく昔のことを思い出すふうを装って言う。
「そ、そういえば、あの時は美也子が一番小さかったから妹役ばかりさせられてたよな。で、俺はパパや
兄貴の役が多かったっけ。で、向こう隣の佳美ちゃんがママの役で、どうしてかわかんないけど、和宏は
飼い犬の役をしててさ」

「うん、そうだったよねぇ。小さい頃は、そんな時間がずっと流れ続けるんだと思ってた。まさか、
みんなが別れ別れになる時が来るなんて想像もできなかったよね」
 美也子が、どこか遠くを見る目をして応じた。
「な、なんだよ。なんだよ、その切なそうな顔は。そんな顔すんじゃないよ。そんなの、美也子に
はちっとも似合わないんだよ。もっと、ほら、いつもみたいな笑顔になれよ。おままごと、すんだ
ろ? 俺の笑顔を憶えとくんだろ? だったら、美也子も楽しそうに笑えよ。笑って、おままごと
するんだよ」
 鼻の奥がつんとするのを感じて、晶はわざとぶっきらぼうに言った。
「ん、わかった。じゃ、ちょっと用意するから、このまま待っててね」
 晶に言われて、なんとも言えない表情を浮かべた美也子はいそいそと立ち上がると、造り付け
になっているクローゼットの前に歩み寄って扉を引き開けた。

 そんな美也子の後ろ姿を見ながら、晶はふっと溜息をついた。
 子供の頃はおにいちゃんぶってヒーローを気取っていた晶だが、そうしていられたのは小学校
の四年生くらいまでの間だけだった。もともと女の子の方が成長期を迎えるのが早くて、小学校
四年生の秋ごろになると、それまで晶よりもずっと小柄だった美也子の背がずんずん伸び始め
て、五年生の新学期を迎える頃には、背の高さは明らかに逆転してしまっていた。その後、普通
なら中学校に上がってしばらくすると男子も成長期に入るため背の高さは再び逆転するものだけ
れど、実際にはそうならなかった。両親の体格を受け継いだせいか、晶は成長期のピークが終わ
って高校生になった時の身長が160センチあるかないかにしか背が伸びなかったのに対して、
美也子の方は穏やかながらもずっと成長が続いて、高校に入学してすぐの健康診断での測定で
は175センチにもなっていた。しかもその後もじわじわ背が伸び続けて、今では180センチ近くに
なっているほどだった。その上、身のこなしも敏捷で、中学校から始めたバスケでもチームを県大
会の準優勝に導き、高校に入っても一年生ながらレギュラー入りするといった具合だった。対して、
一方の晶は小柄な上に体が細っこく、部活動も文芸部に入るといった調子で、今ではすっかりヒー
ローなどではなくなってしまっていた。けれど、だからこそ却って自分はヒーローでしっかりしたお
にいちゃんでいなければならないと思いこみ、わざと乱暴な言葉遣いを意識しているのかもしれな
い。

「お待たせ。晶のことだからきっと私の我儘を聞いてくれると思ってた。だから、朝から準
備してたんだ。おままごとっていっても、どうせだから本格的にしたいから。子供の時み
たいにふりをするだけじゃなくて、服装とかもそれなりに合わせてちゃんとしときたかった
から。だって、一生憶えておきたい思い出にするんだもん」
 クローゼットの前から戻ってきた美也子は、すっと腰をかがめて、大きな紙袋を晶の目
の前に置いた。
 美也子がそんな姿勢をとると、天井の蛍光灯を遮る感じになって、なんだか、覆いかぶ
さってくるんじゃないかという気がしてくる。晶は、さっきとは別の意味でどきんと胸が高鳴
るのを感じた。
「で、俺はどんな役をすればいいんだ? やっぱり、しっかり者で優しいお兄ちゃんでいい
んだろうな?」
 晶は、美也子に覆いかぶさられるんじゃないかと思って内心びびってしまったことを気づ
かれまいと、わざとぶっきらぼうな口調で言った。
「ううん。今からするのは思い出になる特別なおままごとだから、昔のままっていうのはい
やの。いつまでもずっと憶えていられるよう、役割も変えてみたいのよ」
 美也子は軽く首を振った。そうして、少しばかり遠慮がちに続ける。
「それに、ちょっと言いにくいけど、こんなに体つきが違っちゃうと、晶がお兄ちゃんっていう
のも不自然じゃない? 晶には、もっとお似合いの役があるんじゃないかしら。私、そう思っ
て用意しておいたのよ。その紙袋を開けてみて」
 美也子は蛍光灯の光を遮り、晶に覆いかぶさんばかりの姿勢のまま、床に置いた紙袋を
指差した。
「ちぇっ。ったく、痛いとこを突いてくるんだから、美也子は。へぇへぇ、背が低くてわるうござ
んしたね。そりゃ、バスケ部のヒロイン、美也子様にはかないませんよ」
 身長を逆転された当初はそれなりにショックを受けたものの、今ではすっかりそれも慣れ
っこになってしまった晶は、冗談めかした口調でそう言って紙袋の口を広げた。
「さてさて、美也子様が用意してくれたんだから、さぞかし格好いい服なんでしょうよ。背が低
くて痩せっぽちの俺なんかにはもったいないくらいセンスのいい服に決まってるんでしょうよ」
 晶は尚もわざとらしい悪態をつきながら両手を紙袋に突っ込んで、中に入っている衣類を
一枚残らず取り出し、無造作に床の上に並べていった。

 が、紙袋に入っていた衣類を並べてゆくにつけ、晶の顔には「?」マークが際限なく並んでゆく。
 そうして、最後の一枚をぽーんと床の上に投げ出すと、美也子の顔を見上げて言った。
「なんだよ、これ。俺のじゃなくて美也子の服ばっかじゃん。それも、たしか、小学校の時に着てたヤツだろ、
これって、みんな。しかも、パンツまで混ざってるし。いくら幼なじみでも、女の子が男友達にパンツを触ら
せちゃいかんだろうが。で、美也子はこれを着て子供の頃を懐かしむとして、俺はどうすればいいんだ? 
家に返って小学校の頃の洋服を取ってこなきゃいけないのか? でも、うちの母さん物持ちがいい方じゃな
いから、そんな昔の洋服なんて残してないと思うぜ」
 そう。紙袋に入っていたのは、どれも、いかにも小学生の女の子が喜んで身に着けそうな可愛らしいデザ
インの洋服ばかりだった。デニムのジャンプスカート、ヒマワリのアップリケが目立つサンドレス、ふりふりの
ワンピース、パフスリーブのワンピース、紺色の吊りスカート。そのどれもに晶は見憶えがあった。みんな、
確かに美也子が小学校の時に着ていた物だ。そうして、一度だけ悪戯でスカートめくりをした時にちらと見え
たアニメキャラのバックプリントのついたショーツも。あの時、美也子か予想外に激しく泣き出したものだか
らスカートめくりはその一度だけしかしなかったけれど、家族揃ってハイキングに出かけたり夏祭りに出かけ
たりした時にスカートの裾や浴衣の着乱れからショーツが見えることが何度かあって、そのたびに胸がどき
どきしたことを、晶はつい昨日のことのように思い出した。
「うん、そう、みんな私が着ていた物ばかりだよ。でも、晶は勘違いをしてるよ。だって、ほら」
 晶の言葉に美也子はなんだか意味ありげにくすっと笑うと、晶が床の上に置いたブラウスをつかみ上げて
自分の胸元に押し当ててみせたが、サイズがまるで合わないのが一目でわかる。ま、それもそうだろう。成長
期に入っていたとはいってもその頃の美也子の身長は160センチに満たなかったのが、今は180センチ近い
のだから。
 美也子は、そのブラウスが自分には小さすぎるということを晶に見せつけてると、もういちどくすっと笑って
晶の両手を引いた。小柄で細っこい体つきの晶に対して大柄でバスケで鍛えた美也子だから、ちょっと力を入
れて両手を引っ張ると、ベッドのフレームを背もたれの代わりにして床に座っている晶を立ち上がらせるのも
雑作ないことだ。

「な、何すんだよ、急に。肩が外れたらどうすんだよ。ったく、馬鹿力なんだから」
 不意に美也子に手を引かれてその場に立たされた晶は、美也子にというよりも、同じ学年の女子に手を
引っ張られて簡単に立たされてしまう自分の無力さに憤慨して語気を荒げた。
 けれど、美也子はそんなことにはまるでお構いなしに、両手で広げ持ったブラウスを晶の体に押し当てた。
「え……?」
 思ってもみなかった美也子の行動に晶の目が点になる。
 一方、美也子の方は、晶の体とブラウスとを何度か見比べてぱっと顔を輝かせた。
「あは、思った通りぴったりだ。私には小さいけど、晶には丁度いいサイズだよ。うん、びったりフィット」
 いかにも嬉しそうにそう言った美也子は、晶の体に押し当てていたブラウスを床の上に戻すと、その代わり
に鮮やかなブルーの生地に大きなヒマワリのアップリケをあしらったサンドレスをつかみ上げ、肩紐を持って
晶の肩に押し当てた。
「やった、これもぴったり。うん、このぶんだと、どれも晶に丁度いい筈ね」
 晶の肩口に押し当てたサンドレスを何度か上下左右に動かし、サイズを確認した美也子は、すっと目を細
めて呟いた。
「あ、あのさ、美也子……」
 いやーな不安を覚えた晶が、いかにも楽しげな表情を浮かべる美也子に向かって、おそるおそる声をかけた。
「よかったね、晶。私の見立て、ばっちりだったよ」
 どこかおどおどした様子で話しかける晶の言葉を途中で遮って、美也子は満足そうに頷いた。
「いや、あの、見立てって、その……」
 まさか――と思いながら、晶は、首をのけぞらせて茜の顔を振り仰いだ。
「小さい時は晶が私を守ってくれたよね。私が苛められてたら、相手が上級生でも立ち向かってくれたよね。
でも、それが逆になったのは中学校に入ってすぐの時からだったっけ。背が高くなった私とあまり背の伸びな
い晶が並んで歩いてると、よくからかわれたよね。晶、そのたびに相手にむしゃぶりついていって、でも、こて
んぱんにされちゃって。そんな晶のことが見ていられなくて女だてらに私が相手にとびかかったら、男の子相
手なのに意外に簡単に勝てちっゃて。その時に思ったの。体が大きいのはコンプレックスだったけど、でも、そ
れも使いようで大事な武器になるんだって。それまで私のことを守ってくれた晶のことを今度は私が守ってあ
げられるんだって。そう感じた時、私、本当に嬉しかったんだ」
 美也子は、見ている者を吸い込んでしまいそうな大きな瞳を輝かせ、晶の顔を正面から見て言った。

「だから、もういいのよ、晶。いつまでもお兄ちゃんぶるのは疲れるでしょう? 私は自分のことを守れるように
なっただけじゃなく、晶のことも守れるようになったのよ。子供の時、私のことを守ってくれて本当にありがとう。
そのお礼に、私がずっとずっと晶を守ってあげる。今度は私がお姉ちゃんになってあげる」
 美也子は真っ赤な舌で唇を湿しながら言った。
「み、美也子が……美也子がお姉ちゃんになるって、そ、それじゃ、俺は弟扱いってことかよ? へっ、冗談じゃ
ないぞ。そりゃ確かに背も低いし力も弱いよ。けど、一年近くも俺の方が先に生まれた『おにいちゃん』なんだ
ぞ。今さら、弟扱いなんてたまったもんじゃないぜ」
 即座に晶は言い返した。けれど、美也子に気圧されて虚勢を張っている感は拭えない。
「弟扱い? 違うわよ、晶。弟なんかじゃないの」
 美也子はもういちど唇を湿した。その仕種が、なんだか、舌なめずりしているように見えるのは晶の気のせい
だろうか。
「じゃ、じゃ、なんだっていうんだよ」
 金縛りにでもあったかのように身を固くして、晶は訊き返した。
「まだわからないの? ほら、晶にぴったりのお洋服をこんなにたくさん用意しておいてあげたのに」
 美也子は微かに首をかしげ、両手で捧げ持っていたサンドレスの肩紐をますます強く晶の体に押し当てた。
「……じ、冗談だろ? これって冗談だよな、美也子?」
 ついさっき感じたいやーな予感が実は何を意味していたのかようやく理解した晶は、思わず体を退いた。
「やだな、冗談なんかじゃないわよ。前から思ってたのよね。晶、小柄なだけじゃなくて体全体が華奢だし、顔も
丸っこい童顔で、それに、優しい顔つきをしてるから、絶対に可愛い女の子になれるだろうなって。私、こんなに
体が大きいじゃない? ま、それはそれで役に立つんだけど、でも、正直言うと、可愛いお洋服がちっとも似合わ
ないから寂しい時もあるのよ。うちのママも、女の子らしい格好をさせられなくて寂しがってるみたい。だから、そ
の代わりってのもなんだけど、晶に可愛いお洋服を着せてみたくて仕方なかったの。ね、いいでしょ? 私がお
姉ちゃんで、晶が可愛い妹。これでおままごとしちゃおうよ」
 体を退く晶の手首を握りしめ、穏やかなくせに、どこか、きっぱり決めつけるような口調で美也子は言った。

「って、なーに無茶苦茶なこと言ってんだよ、美也子ってば。春眠暁を覚えずって言うけど、まだ寝ぼけてんじゃな
いのか!?」
 晶は冗談めかした口調で言って美也子の手を振り払おうとした。
 けれど、腕力で美也子に勝てるわけがない。それに、美也子が寝ぼけてなどいないことは、らんらんと輝くその
瞳を見れば明らかだ。
「あれ? 晶、言ったよね? 私の思い出作りのためなら、おままごとでもなんでも協力してやるって、そう言ったよ
ね?」
 美也子は、それまで手にしていたサンドレスを無造作に床に放り投げると、晶の手首をつかんでいる右手を自分
の胸元に引き寄せた。
「さ、ちゃんと約束は守ってもらうわよ。どのお洋服を着たいかは後で聞いてあげるから、まずは男の子のお洋服を
脱ぎ脱ぎしましょうね。女の子がこんな汗臭いお洋服を着てるなんて可哀想だから、お姉ちゃんが手伝ってあげる」
 そう言うが早いか、美也子は、自分のすぐ目の前に立たせた晶のトレーナーの袖口をぐいっと引っ張り上げた。
「わっ! こら、てめ、何すんだよ。やめろ、やめろってば!」
 晶は手足を振り回し、必死の形相で暴れた。しかし、20センチ近くも身長の差がある上にバスケに明け暮れて引
き締まった体つきの美也子に、文芸部の部員で華奢な体つきの晶が勝てる筈がない。
「ほら、おとなしくしてなさい。せっかくお姉ちゃんが可愛いお洋服を着せてあげるって言ってるんだから、そんなに
暴れないの。女の子なんだから、おしとやかにしなゃいけないのよ」
 美也子の方は、晶の抵抗を受け流すなど雑作もないことだ。余裕の表情でたしなめるように言い聞かせ、いとも簡
単にトレーナーを脱がせると、それに続いて、ジーンズと靴下も手早く剥ぎとってしまった。
「美也子、てめ、こんなことしやがって――憶えとけよ、絶対とっちめてやるからな」
 とうとうパンツ一枚に剥かれてしまった晶は負け惜しみめいた口調で言った。
 だが、決して美也子と目を合わそうとしないところを見ると、とうてい自分が敵う相手ではないということを一瞬の内
に思い知らされたのかもしれない。
 そんな晶の強がりなど、美也子にとっては、どこ吹く風。
「へーえ、晶、ブリーフ派だったんだ。今ごろの男の子ってボクサーパンツやトランクスを穿く子が多いんだよって部
活動の更衣室じゃもっぱらの噂だけど、晶はブリーフだったんだね」
 美也子は晶の下半身を興味深げに見おろして感心したように言い、急に何か面白いことを思いついたように顔を輝
かせると、わざとらしい仕種で右手の甲を自分の唇の下に持ってゆき、ゆっくり左右に動かしながら言った。
「ふっふっふ。でも、ブリーフの方がショタっぽくてかーいいよね。いいわね、かーいい男の子のブリーフ姿は。あ、い
けない、思わずよだれが。うう、じゅるじゅる」
「って、おまえ、腐女子キャラだったのかよ~!」
 いささか悲鳴じみた晶のツッコミが美也子の部屋に虚しく響き渡った。

「いや、ま、これは冗談だけど」
 美也子は、にっと笑って手を振った。けれど、腐女子キャラなのは冗談としても、しかし、晶に女装させてのおまま
ごとは思いきり本気だ。
「はい、パンツも脱ぎ脱ぎしようね」
 美也子は晶の体に左右の腕を絡みつけるようにしてブリーフに指をかけた。
「わ、ちょ、おま、ちょ待てってば……」
 晶の口からは悲鳴も出ない。意味不明の言葉が途切れ途切れに漏れ出るだけだ。
「ほら、そんなに暴れちゃ駄目だってば。あとのことはお姉ちゃんにまかせておけばいいんだから」
 美也子はわざと優しく言って、晶のブリーフをさっと床まで引きおろした。
「わー、見るなよ。絶対に見るんじゃねーぞ!」
 とうとう美也子の手によってブリーフまで剥ぎ取られた晶は、喚き声をあげながら慌てて両手で股間を隠した。
「何してるのよ、晶ってば。いいじゃん、減るもんじゃないし、ちゃんと見せなさいよ」
 美也子は晶の両手の手首をつかむと、力まかせに左右に開かせて腰をかがめ、まじまじと股間を覗き込んだ。
「あら、晶ったら、意外に立派なのを持ってるんだ。小柄で見た目が女の子みたいだから、もっと可愛いのが付いて
るんだと思ってたけど、ちょっと意外」
 少し感心したように呟く美也子の声が晶の耳にも届く。
「意外と立派って、美也子、おま、別の男のナニを見たことあんのかよ。ってか、年ごろの女の子が男のナニをそん
なにじろじろ見て恥ずかしくないのかよ!?」
 全裸に剥かれ、両手の自由も奪われて、晶は負け惜しみめいた口調で吐き捨てるように言った。
「あら、知らなかった? 私たちくらいの年代の女の子って、わりと耳年増だったりするんだよ。特に、体育会系の部
活やってる子なんて、更衣室で着替える時とか、すごい話をしてるんだよ。それに、合宿の時にポータブルのDVD
プレーヤーをわざわざ持ってきてエッチなDVDを観せてくれる子とかもいるし。それにしても、最近のDVD、すっご
いんだね。丸見えなんてもんじゃないよ、あれ」
 しれっとした顔で美也子は説明した。
 たしかに、高校生くらいの年代だと、性知識は女子の方が上ということも珍しくない。それも、変にうじうじしない、良
い意味で大胆な一面も併せ持っているから、むしろ、自分のことを大人びてみせるために生半可な性知識をこれみ
よがしに吹聴することの多い男子の方が気圧されることもしばしばだ。
「そ、それにしたって、そんなにじろじろ見るもんじゃないだろ? おま、女の羞じらいっつうのがないのかよ」
 晶は口の中でぼそぼそ言った。言葉遣いこそ乱暴だが、声が弱々しい。

「あら、そんなに見られるのがいやだってことは、ひょっとして晶、恥ずかしがってる?」
 おずおずと目をそむける晶の顔をわざと意地悪く正面から見て、面白そうに美也子は言った。
「ったりまえだろが。女子に男の、その、なんだ、あー、ナニを見られて平気なヤツなんているわけないないだろが」
 執拗に追いかけてくる美也子の目から逃れるために晶は再び顔をそむけて言った。
「ふぅん、そうなんだ、恥ずかしいんだ」
 晶の返答に、美也子は意味ありげに微笑んだ。そうして、ねっとり絡みつくような声で続ける。
「じゃ、恥ずかしくないようにしてあげる。おちんちんが見えなくなればいいんだよね?」
「おま、よくもまぁ『おちんちん』なんて言葉を口にできるな。聞いてるこっちの方が恥ずかしいわ!」
「だから、恥ずかしくないようにしてあげるって言ってるのよ」
 半ばやけっぱちな晶の喚き声を軽く聞き流して美也子は言い、晶の腰に左腕を絡めると、アニメキャラ《カードキ
ャプターさくら》のバックプリントがついた女児用ショーツを床から拾い上げた。
「ほら、可愛いパンツでしょ? これを穿けば恥ずかしいおちんちんが隠れちゃうからね。さ、お姉ちゃんが穿かせて
あげるから、いい子にしてるのよ」
 美也子はそう言って、右手に持った、またがみの深いコットン生地のショーツを晶の目の前でひらひらと振ってみ
せた。
「ちょ、待てったら待て。てめ、俺にそんな物を穿かせてなにが楽しいんだよ!?」
 晶はさかんに身をよじった。
 けれど、美也子の左腕が体を締めあげて逃げることはかなわない。
「だから、何度も言わせないの。晶、おままごとにつきあってくれるんでしょ? 私がお姉ちゃんで晶が可愛い妹のお
ままごとにつきあってくれるって約束したでしょ? それに、そんな物って言い方はないでしょ? 私が小学校の時に
おねだりして買ってもらった大事なパンツなんだよ。それをママが大切にとっておいてくれたのに、そんな物って言い
方は、私のママに喧嘩を売ってるのと同じよ。もういちどそんなことを言ったら絶交だからね」
 美也子は強引に決めつけると、膝のあたりをつかんで晶に左足を上げさせた。
「ま、待て……」
 再び喚き声をあげかけた晶だが、くるぶしのあたりに触れるコットンの柔らかな感触に、唇を半分ほど開いたまま言
葉を飲み込んでしまう。

 そうして、左足に続いて上げさせられた右足の足首をショーツの股ぐりがすり抜けてゆく感触を覚えた途端、思わず
ぶるっと腰を震わせてしまう。
「どう、気持ちいいでしょ? 男の子のパンツなんか比べものにならないほど穿き心地がいいでしょ?」
 女児用ショーツの想像以上の柔らかな感触にうっすらと頬を赤くする晶の耳元に、美也子が、熱い吐息を吹きかけ
るようにして囁きかけた。
 それに対して晶は一言も応えられない。さっきまで穿いていたポリエステルなんかの合成繊維でできたブリーフと比
べてコットンのショーツがひどく柔らかで優しい肌触りなのは確かだけれど、それを「穿き心地がいいでしょ?」と言わ
れて同意できるわけがない。しかも、股ぐりの周囲が細かなフリルになっていて、それがさわさわと肌を撫でるような感
触に、想像以上の気恥ずかしさを掻きたてられて頭の中が真っ白になってしまいそうだから尚のことだ。
「じゃ、そのままおとなしくしているのよ。すぐに恥ずかしいおちんちんを隠してあげるからね」
 顔をほてらせて押し黙まったままの晶の様子にすっとを目を細くして、美也子は、足元に絡みついているショーツを
引き上げた。
 美也子の手の動きに合わせて、ショーツがゆっくりゆっくり這い上がってゆく。いくら伸縮性に富んでいる上に晶が小
柄とはいえ、もともとは女児用のショーツだからサイズに余裕がある筈もない。くるぶしから膝の上あたりまではまるで
抵抗なく引き上げることのできたショーツだが、太腿のあたりではどうしても引っかかり気味になってしまう。それを美也
子が半ば強引に引っ張り上げるものだから、細かいフリルになった股ぐりが晶の腿を軽く締めつけるような格好になる。
幾らか窮屈さを覚えるものの、それは決して苦痛などではなかった。柔らかなコットンが太腿にまとわりつく、言葉では
表現しようのない奇妙な、どこか淫靡な感じさえする拘束感。
「あらあら、晶ったら、いつのまにか元気になっちゃって」
 ショーツを引き上げる手を止め、美也子が晶の股間に目をやってくすりと笑った。
「……!」
 美也子の笑い声で我に返った晶は、美也子につられて自分の股間に目をやるなり、はっとしたような顔で大きく両目を
見開いた。晶の目に映ったのは、鎌首をもたげるようにしていきり立つ自分のペニスだった。
 それを見た途端、あまりの羞恥のために麻痺したようになっていた全身の神経が働きを取り戻し、下腹部の疼きが伝わ
ってきた。羞恥のために熱くほてった顔よりも熱い下腹部の疼きは、早鐘のように高鳴る胸の鼓動に合わせて、これ以上
はないくらいはっきりと自分の存在を主張していた。けれど、今の晶は、それを鎮める術は持っていない。

「いやだとか恥ずかしいとか言ったけど、こんなにおちんちんを大きくしちゃってるとこを見ると、本当は晶、女の子の
格好をするのが好きなんじゃないのかなぁ。じゃなきゃ、こんなにビンビンになんないよね」
 からかうような口調で美也子は言って、改めて晶のペニスを見つめた。
「そ、そんなわけあるもんか。お、俺が女の子の格好をするのが好きだなんて、言っていい冗談と言って悪い冗談があ
るんだぜ。そこんとこ気をつけないと、後でひどいからな」
 晶は激しく首を振った。
 そう。確かに、晶に女装癖はない。性指向もストレートだ。が、《カードキャプターさくら》のバックプリントのついた女児
用ショーツを穿かされている最中にペニスを大きくしてしまったのも、隠しようのない事実だった。もともと晶くらいの年頃
の男子は、普段から性欲を持て余しているものだ。そんなところへ、これまで経験したことのない柔らかな感触のショー
ツで下半身を撫でさすられたりしたら、不覚にもペニスを大きくしてしまうのも無理のないところだろう。それはそれで仕方
のないことだ。けれど、女児用のショーツの股ぐりに太腿を締めつけられてペニスをエレクトさせている姿では、何を言っ
てもその場限りの言い訳にしか聞こえない。いくら激しく首を横に振っても、まるで説得力がない。
「いいのよ、そんなにむきになって隠さなくても。今から晶は私の可愛い妹になるんだから、女の子の格好をするのが好
きだったら、それって却って都合がいいじゃない。無理して女の子の格好をするより、自分から進んで女の子の格好をし
た方が、おままごとも楽しくできるんだから」
 晶のペニスが大きくなった本当の理由を知ってか知らずか、美也子は、わざと晶が女装したがっているのだと決めつけ
た。そうして、もういちど晶のペニスにちらと目をやって、今度は思案顔になる。
「でも、このままじゃ窮屈かしら。ま、いいわ。ちょっと試してみましょう」
 美也子は独り言みたいに呟くと、改めてショーツを引き上げた。
 お洒落なスキャンティなどではなく、いかにも子供向けでまたがみの深いショーツだから、いきり立つ晶のペニスもすっ
ぽり隠れてしまう。けれど、おヘソの方を向いたまま下腹部の皮膚とショーツとの間に挟みこまれたペニスは、見るからに
窮屈そうだ。行き場を失い、ひくひく蠢くその様子は、どこか滑稽で、どこか猥雑だ。
「うーん。やっぱり窮屈なのかな。でも、少し時間が経てばおとなしくなるかもしれないわね。じゃ、今度はソックスを履かせ
てあげるから、もういちど足を上げてちょうだい。そうそう、さっきと同じで左足から。うふふ、あんよは上手っと」
 美也子は晶にそれこそ幼い妹に対するように言って足を上げさせ、ショーツと同じパステルピンクのソックスを履かせた。
足首よりも少し上までの長さで、くるぶしのあたりに赤いサクランボを模したボンボンの飾りが付いた、これも見るからに女
児向けといったデザインの可愛らしいソックスだ。

「やだ。晶ったら、女の子のパンツと女の子のソックスを履かせるだけで、こんなに可愛くなっちゃうんだ。このぶんだ
と、髪の毛をいじったらどうなるんだろ。よし、お洋服を着せる前にヘアスタイルを変えちゃおっと。ふっふっふ、楽しみ
楽しみ」
 飾りの付いたソックスを履いた晶の姿を正面から眺めて、美也子は唇の端を吊り上げて笑った。その顔は、まるで、
大好きな着せ替え人形で遊ぶ小学生みたいに輝いている。
「ほぉら、お姉ちゃんが髪の毛を綺麗にしてあげるからね。すぐにすむからおとなしくしてるんですよ」
 部屋の隅に置いてあるドレッサーの引出からヘアブラシと櫛を取り出した美也子は、ふんふんと鼻歌を唄いながら
晶の髪を整え始めた。美也子がドレッサーの引出を開けている間、晶は自由の身だったのだが、女児用のショーツに
女児用のソックスという格好では、自分の家に逃げ帰ることもできない。
 屈辱と羞恥にまみれて晶が身をすくめているのをいいことに、美也子は手早くヘアブラシと櫛を動かして楽しそうに
髪をいじり続けた。ヘアブラシで内巻きに髪を掬い上げてボリュームをもたせ、前髪とサイドを櫛で撫でつけ、肩の少
し上くらいの長さの晶の髪を、見るからに可愛らしいヘアスタイルに整えてゆく。
「ほら、できた。ちょっと鏡を見てみなさいよ、晶。自分でもびっくりすると思うわよ」
 最後の仕上げにソックスに付いているのと同じサクランボの飾りをあしらったカラーゴムで髪の二カ所をきゅっと結え、
晶の姿を頭のてっぺんから爪先まで無遠慮に眺めまわした美也子は、満足そうに頷いて、姿身の大きな鏡をドレッサー
の横から運んできた。
「ほら、見てごらん」
 姿見のキャスターをロックして、美也子は晶を大きな鏡の前に押しやった。
「こ、これが……これが、俺……?」
 晶は姿見を見るなり息を飲んだ。
 そこに映っているのは、ショーツとソックスだけを身につけ、羞じらいの表情を浮かべた、スレンダーな体つきの少女だ
った。晶の体つきは、細っこいものの、決して痩せぎすというわけではない。あまり筋肉がついているわけではないけれ
ど、あばら骨が浮いて見えるということもなく、いわゆる『線が細い』という感じで、痩せっぽちというよりも、華奢な印象を
受ける。それに、同年代の男の子に比べて幾らか腰骨が張っているため、お腹から腰のラインにくびれがあって、どちら
かというと女性的な体つきだ。そんな晶が女児用のショーツで下腹部を包まれ、女児用のソックスを履かされた上に、シ
ョーツのバックプリントになっている《カードキャプターさくら》そっくりのヘアスタイルにされてしまったものだから、それこ
そ小学生の女の子と見紛わんばかりだ。
 薄い胸はまだ乳房の発育を迎える前の少女そのままだし、ほっそりした腕は触れなば折れんばかりの弱々しさで、ヘア
スタイルとショーツのバックプリントとソックスの飾りとを《さくら》で統一した姿は、おしゃまな少女以外の何者でもなかった。
ただ、股ぐりに細かなフリルをあしらった女児用ショーツの前部の異様な盛り上がりを除いては。

「ね、すっごいでしょ? かなりの線までいくかなぁとは思ってたけど、でも、まさかこんなに可愛らしくなっちゃうなんて
予想してなかったから、私もびっくりよ。体つきも小学生の女の子みたいだけど、まん丸の童顔もこのヘアスタイルに
合ってて、本当、さくらちゃんの実写版を見てるみたい。このまま外へ連れ出したりしたらロリやペドが入ってるヲタに拉
致されちゃいそう。ああ、でも、それもよいわねぇ。背徳のかほりがするわ。おっといけない、またよだれが」
 美也子は再びわざとらしく手の甲で唇の端をじゅるっと拭ってみせた。
「や、やめろよ、美也子。なんだか、想像するだけで身の毛がよだつじゃないか。それに、なんていうか、おま、そんない
やらしい目で見るんじゃないよ。美也子、なんだか、中年のオヤヂみたいな目してるぞ」
 それまでの喚き声はどこへやら、晶は妙におどおどした様子で言った。無意識のうちに左手の掌で股間の膨らみを覆
い隠し、右腕の肘と掌で左右の乳首を美也子の目から隠そうとする仕種が美也子の加虐的な悦びを掻きたてる。
「おっと、いけない。可愛い妹に怖がられるようじゃ、お姉ちゃん失格ね。ほらほら、怖くないからね。優しいお姉ちゃんに
たっぷり甘えていいんだからね。でも、それにしても、どこからどう見ても小学生の女の子よね。私が小学生だった時よ
り可愛いのがちょっと悔しいほど」
 美也子は晶の目の前から少し体を退くと、晶の周囲をゆっくり歩きまわり、様々な角度から眺めては、半ば感心したよ
うな半ば呆れたような溜息をついて言った。
「だから、そうやって人の体をじろじろ見るのはやめろってば。なんだか、背中がむずむずすんだから」
 晶は美也子と目を合わせないよう僅かに顔を伏せて、抗議の声をあげるというよりは、なんだか懇願するみたいな口調
で言った。
「いいじゃん、たまには目の保養をさせてもらっても。中学の時からずっとバスケばっかりやってて、チームメイトの裸しか
見たことがないんだからさ。それも、みんな筋肉むきむきって感じで、ちっとも女の子らしい体つきじゃないんだよね。だか
ら、たまには、こういうかーいい裸体も愛でたいわけよ。減るもんじゃないし、ケチなこと言わないの。妹は妹らしくお姉ちゃ
んの言いつけに従っていればいいのよ」
 晶が頬を染め恥ずかしそうにすればするほど、美也子は嵩にかかって無遠慮な目つきで晶の体を眺めまわすのだった。

 そんな状態が十分間ほども続いたろうか。
 晶の周りを歩き廻っていた美也子が不意に足を止めると、改めて晶のすぐ目の前に歩み寄った。

「な、なんだよ、今度は何をしようっていうんだよ」
 大柄な美也子が目の前に立つと、ひどい威圧感を覚える。晶は強がってみせたものの、内心はすっかり怯えてしまっ
ていた。ただでさえ体格と腕力に差がありすぎるのに、美也子が小学生の時に身に着けていた女児用のショーツと女児
用のソックスだけという格好にさせられたものだから、羞恥と無力感は尚さらだ。
「えへへ、眺めてるだけじゃ物足りないから、ちょっと悪戯なんかしてみようかなとか思っちゃってさ」
 美也子は目をほそめて奇妙な笑みを浮かべると、晶の右腕を力まかせにぱっと払いのけた。
 と、晶の胸元があらわになって、左右の乳首が美也子の目にさらされる。
「な、なにを……」
 思わぬ美也子の行動に、晶の口をついて出たのは悲鳴じみた声だった。
 が、あらわになった右の乳首を美也子が人差指の先でぴんと弾いたものだから、悲鳴じみた声も途中までしか出てこ
ない。
「ふぅん。男の子でも乳首を固くしちゃうんだ。晶、自分でわかってる? 晶の乳首、ぴんと勃っちゃってるんだよ。エッチな
気分の時の女の子みたいにさ」
 美也子はくすくす笑いながらそう言って、今度は、人差指と中指の間に晶の乳首を挟み持って、こりこりと転がした。
「や、やめろよ。やめろってば、そんなことされたら……」
 晶は顔を伏せたまま、幼児がいやいやをするように何度も首を振った。
「ん? そんなことされたら? そんなことされたらどうなっちゃうのか、ちゃんと教えて欲しいんだけどな」
 美也子は腰をかがめ、上目遣いに晶の顔を覗き込んだ。もちろん、その間も、乳首を執拗に責める手が休むことはない。
「そんな、そんなこと言わなくてもいいだろ。……そんな意地悪なこと言わなくても……」
 晶は尚も弱々しく首を振って喘ぐように言った。

「意地悪なんかじゃないわよ。私はただ、こんなふうにしたら晶の体がどうなっちゃうのか知りたいだけなんだから」
 美也子は右手で晶の乳首を弄びながら、左手で股間にさわっと触れた。
「あらあら、晶ったら、さっきより元気になっちゃって。パンツを穿かせてあげた時、しばらくすればおとなしくなるかなって
思ったんだけど、どうやら勘違いしちゃったみたいね。女の子のパンツを穿いて女の子のソックスを履いて女の子の髪型
にして、でもって、女の子みたいにおっぱいをいじられて興奮しちゃうんだもの、晶ってば、どう見てもエッチな女の子よね。
小学生のくせにエッチなことが大好きなやーらしい女の子。うふふ、でも、お姉ちゃん、そんなやーらしい妹が大好きよ。
もっともっと気持ちよくさせてあげるから、さ、遠慮しないでお姉ちゃんに甘えてごらん」
 美也子の言う通り、晶のペニスは窮屈なショーツの中で今にもはちきれんばかりに怒張していた。ソックスを履くために
両足を上下するたびにペニスがショーツにこすれ、髪型を整える時には背中といわず胸といわず美也子の乳房が触れる
上に熱い吐息が首筋に吹きかかる状況で、ペニスが静まるわけがない。それは、晶ぐらいの年ごろの少年にとっては仕
方のないことだ。なのに、それを、さも晶が女の子の格好をすることで興奮しているのだと美也子は決めつける。
「だけど、このままじゃ、いくらなんでも窮屈で可哀想よね。それに、このままお洋服を着せたら、スカートの前のところに
テントを張っちゃいそう。可愛い女の子がそんなはしたない格好じゃいけないもの、なんとかしてあげなきゃね」
 美也子はわざとらしい思案顔になって独り言みたいに呟いた後、なんとも表現しようのない笑みを浮かべて晶の耳元
に囁きかけた。
「いいわ、お姉ちゃんが晶のおちんちんをおとなしくさせてあげる。パンツの中で窮屈そうにしてるおちんちんを楽にしてあ
げる。ついでに、晶をとっても気持ちよくさせてあげるわね。ううん、心配なんてしなくていいのよ。合宿の時に観たエッチ
なDVDでたっぷりお勉強してるから、お姉ちゃんにまかせておきなさい」
 そう囁き終える前に、美也子の左手はさわさわと動き始めていた。
 晶の大きく怒張したペニスをショーツの上からきゅっと握った左手が、ゆっくり静かに上下に動く。もちろん、右手で乳首
を念入りに責めるのも忘れない。
「だ、駄目だったら……やめて、やめてよ……」
 いつもなら『やめろったらやめろよな!』と怒鳴り出す筈の晶が、今にも泣き出しそうな弱々しい声で、まるで、許しを乞う
ように訴えかける。
「だーめ、やめてあげない。晶のおちんちんがおとなしくなるまでやめてあげない。やめて欲しかったら、ちょっとでも早く
出しちゃうことね」
 それもDVDで観たことの真似だろうか、美也子は晶の耳朶にふっと息を吹きかけた。
 美也子の左手は晶のペニスを掌で包み込むようにして動き、親指の先でペニスの先端を刺激する。
「や、やだ……そんなとこ、やだってば……」
 次第次第に晶の息が荒くなってくる。
「うふふ。晶の乳首、さっきよりずっと固くなってる。気持ちいいんでしょ? ほら、気持ちいいなら気持ちいいって、ちゃんと
お姉ちゃんに教えなきゃ駄目よ」
 美也子の手の動きは決して激しくはない。激しくはないが、ねっとり絡みつくみたいに動いて、晶の感じやすい部分を巧み
についてくる。

「お願いだから、もうやめて。どうにかなっちゃいそうだから、もう……」
 とうとう晶は『お願い』という言葉まで口に出すようになっていた。
 と、それを耳にした美也子が不意に手の動きを止める。
「そう。そんなにやめて欲しいの。だったら、やめてあげる。可愛い妹の『お願い』だものね」
 美也子はそれまで晶の股間と乳首を責めていた両手を体の横にすっとおろして、肩で息をする晶の姿を見おろした。
 しかし、口では「もうやめてよ」と言っていた晶だが、こんな中途半端な状態で放置されてはたまらないというのが本当の
ところだ。同級生の女の子の手でいかされるのは屈辱の極みだが、ここまできて急にやめられたのでは、ただでさえ持て
余している性欲の持って行き場がない。
 恨みがましい目で美也子の顔を見上げる晶の口が、何か言いたそうに開いては、すぐに思い直したかのようにおずおず
と閉じた。
「どうしたの? 言いたいことがあったらちゃんと言わなきゃ駄目よ。お姉ちゃんに何かまたお願いごとがあるのかな」
 美也子は左手を晶の股間に向けてそっと伸ばしながら言った。
 美也子の手が自分の方に動くのを見て、晶の顔に何かを期待するような表情が浮かぶ。
 だが、美也子は、晶の股間に触れる寸前のところで左手の動きを止めてしまった。
 途端に、晶の顔を絶望の色が浮かぶ。
 その様子を面白そうに眺めながら、美也子はねっとり絡みつくように言った。
「して欲しいんでしょう? 気持ちのいいこと、もっとして欲しいんでしょう? ちゃんと最後までいかせて欲しいんでしょう?」
 そんな美也子の言葉に、晶は何も応えられない。自分の胸を満たすいやらしい欲望を言葉にできるわけがない。
 けれど、若い肉体は正直だ。晶は無意識のうちに体をくねせら、左右の内腿を摺り合わせて、ショーツに包み込まれたペ
ニスを自らの動きで愛撫していた。
 それを見逃す美也子ではない。
「ほら、ちゃんとお姉ちゃんにお願いしてごらんなさい。『晶、もっと気持ちよくなりたいの。お願いだから、最後までいかせてち
ょうだいよ、お姉ちゃん』っておねだりするのよ。ちゃんとできたら、ご褒美に、気持ちのいいことを続けてあげるから」
 美也子は右手の人差指を真っ赤な舌でぺろっと嘗め、その人差指の先を晶の乳首につっと触れさせて、甘い声で言った。
「……つ、続けてくれないかな、美也子。もうどうにもたまらないんだ。お願いだから、続けてくれないかな」
 晶は屈辱にまみれた顔を伏せ、何度も浅い呼吸を繰り返してから、よく聞いていないとわからないほど小さな声でもごもご
言った。
「だーめ。そんなおねだりの仕方じゃ、お願いはきいてあげない。もっと大きな声でお願いしなきゃいけないでしょ? それに、
いつまで男の子のつもりでいるの? せっかく女の子になったんだから、もっと可愛らしくおねだりしてちょうだい」
 美也子は、小学生の女の子にしか見えない高校生の(それも、誕生日でいえば、実質的には一年近く年上の)男の子をい
たぶることをやめられないでいる自分に驚いていた。だが、どういうわけか、自らの心の奥底に潜むそんな加虐的な性癖が
いとおしく感じられる。ひょっとしたら、自分の体の大きさが強力な武器になることに気づき、晶と自分との立場が逆転したこ
とを実感したあの時から、この異形の感情を自分でも気がつかないまま心の奥底に住まわせていたのかもしれない。あの時、
今度は私が晶を守る番だと感じたのは思い違いで、実は、それまで何かと『おにいちゃん』ぶっていた晶を自分の庇護のもと
に置くことができるのだという悦びに身を震わせたのかもしれない。いや、もっと正確に言うなら、庇護ではなく、支配だろうか。

「……お、お願いだから、あ、晶に気持ちのいいことしてください。……このままだったら晶、変になっちゃうから、だから、
ちゃんとしてください。お願いだから……」
 回数ばかり多いくせにまるで空気を吸い込めない形ばかりの呼吸を繰り返し、下唇を噛みしめて、すがるような口調で
晶は言った。
「はい、よくできました。でも、最後に『お姉ちゃん』って付けて欲しいわね」
 首筋まで真っ赤にして顔を伏せる晶に、美也子は追い打ちをかけた。
「……お願いします、お……お姉ちゃん……」
 顔を伏せたままの晶の唇が微かに開いて、絞り出すような声が漏れ出た。
「うん、わかった。せっかくの可愛い妹のおねだりだもの、優しいお姉ちゃんとしては放っておけないわよね。じゃ、気持ち
のいいことを続けましょう。それでいいのよね、晶ちゃん」
 とうとう自分のことを『お姉ちゃん』呼ばせることに成功した美也子は晶のことを『ちゃん』付けで呼んでから、再び両手を
動かし始めた。
 が、美也子がさほど手を動かす間もなく、あっけないほど簡単に晶は絶頂に達してしまった。
 同級生の女の子から与えられる想像を絶するような屈辱と羞恥とで、美也子が手を休めている間に、普通なら、いきり
たっていたペニスが力なく萎えしぼんでしまってもおかしくないところだ。けれど、美也子に言葉でなぶられている間に、
晶のペニスはますます固くなっていた。幼なじみで幼稚園からずっと同じクラスの女の子の手でその子の『お下がり』の
ショーツとソックスを履かされた姿のまま恥ずかしいおねだりをするよう強要されるという異様な状況に、晶の下腹部は却
って強く疼きだしていた。美也子が胸の中に加虐的な性癖をひそませていたように、晶の心の奥底には被虐的な欲望が
芽生えていて、それがペニスをますます熱くいきり立たせていたのかもしれない。それとも、美也子のお下がりのショーツ
の柔らかな感触が愛撫し続けたために晶のペニスは萎えることなくますます固く怒帳していたのだろうか。
 いずれにしても、もう限界にまでエレクトしていたペニスは、美也子の手がそっと触れただけで爆発してしまうほど感じや
すくなっていたのだった。
「や、やだっ……」
 見た目そのまま女の子みたいな喘ぎ声をあげたかと思うと、晶の体がへなへなと崩れ落ち、そのまま、お尻を床にぺた
んたとつけ、「く」の字に曲げて左右に大きく開いた両脚もぺったり床につけた格好で、その場に座りこんでしまった。
「あらあら、せっかくおねだりしたくせに、あっという間だったわね。でも、そうやって『女の子座り』してるのも可愛いわよ、
晶ちゃん。ほら、鏡を見てごらんなさい」
 美也子は、床にぺたんと座り込んでしまった晶の姿を正面から映すよう姿見の位置を調整し、大きな鏡に映った晶を大
仰な身振りで指差してみせた。
 鏡の中の晶は、いわゆる『女の子座り』の格好で床にお尻をつけ、泣きべそをかきそうな顔をしていた。両脚が左右に大
きく開いた座り方だからパンツも正面から丸見えで、しかも、パンツのこんもり盛り上がった部分にはうっすらとシミができ
ていて、それがじわじわと広がってゆく様子もくっきり映っている。
「あらあら、晶ちゃんは小学生にもなって、まだおもらし癖が治ってなかったのね。こんなにたくさん白いおしっこをおもらし
しちゃうなんて、晶ちゃんはまだまだ赤ちゃんだったのかしら」
 美也子は、晶の下腹部を包み込む女児用ショーツのウエストゴムに指をかけて手前に引っ張り、まだどくどくと脈を打ち
ながら精液を溢れ出させているペニスをじっと見つめて、わざとらしく優しげな口調で言った。

「や、見ちゃ駄目!」
 晶は、一年近く年上の男子という威厳もかなぐり捨て、金切り声をあげて、慌ててショーツの前部を両手で押さえた。シ
ョーツの生地にしみ込んだ精液のねっとりした感触が掌から伝わってくるけれど、そんなもの気にかけている余裕もない。
「あらあら、そこは『見ないでちょうだい、お姉ちゃん』って言わなきゃいけないでしょ?」
 引っ張り上げていたショーツのゴムから指を離し、床に膝をついて晶と目の高さを合わせた美也子は、それこそ幼児に
教え諭すように言った。
「……は、恥ずかしいから見ないでちょうだい……お、お姉ちゃん」
 羞恥と屈辱のために薄い肩をぶるぶる震わせながら、晶は、美也子に教えられるまま言った。
「そう、それでいいのよ。これからも男の子みたいな乱暴な口のきき方にならないよう注意しようね、晶ちゃん」
 美也子は人差指を鈎型に曲げ、晶の顎をくいっと持ち上げて言い聞かせた。
 けれど、晶からの返事はない。もうこれ以上恥ずかしい言葉は口にできない。
「お返事はどうしたの? わかったらちゃんとお返事しないといけないでしょ?」
 美也子の口振りは、それこそ、しっかり者の姉が幼い妹に行儀を教える時そのままだ。
 それでも、晶は押し黙ったまま。
「そう、お返事できないの、晶ちゃんは。なら、ま、いいわ」
 美也子はひょいと肩をすくめてみせると身軽に立ち上がり、足早に、壁際に置いてある本棚の方に歩き出した。
 美也子が何をしようとしているのかまるでわからない晶は、きょとんとした顔つきで美也子の後ろ姿を見つめるばかりだ。

「ね、とっても便利なビデオカメラがあること、晶ちゃんは知ってた?」
 本棚の近くで何やらごそごそしてから元の場所に戻ってきた美也子は、そう言って、晶の目の前に小振りのビデオカメラ
を差し出した。
「テープに録画するんじゃなくて、ハードディスクに録画するから、いちいち巻き戻さなくてもすぐに見られるんだよ。それに、
リモコンを使えば離れた所から録画を始めたり中断したりできるし、ズームの倍率までリモコンで変えられちゃうの。ほら、
ちょっと見てごらん。何が写ってるかな」
 美也子は意味ありげに微笑んでみせると、ビデオカメラの側面に付いている液晶画面を晶の方に向けてボタンを操作した。
 待つほどもなく液晶画面に映し出された映像を目にした瞬間、晶は大きく目を見開いて息を飲んだ。
 映し出されたのは、「「お、おままごとだって~!?」と素っ頓狂な声をあげて呆れ顔をする晶の姿だった。

 更に美也子が早送りボタンを押すと、晶が紙袋に手を突っ込んでいる場面や、美也子が晶に女児用のショーツを穿かせ
ている場面、晶が美也子に髪を整えてもらっている場面といった、これまでこの部屋で起きた様々なシーンが次々に映し
出された。
 もちろん、美也子に責められてとうとう我慢できなくなった晶が床に座り込んでショーツを汚す場面も例外ではない。
「せっかくの記念のおままごとだから、どうしても録画しておきたかったの。晶ちゃんの笑顔を絶対に忘れたくないから」
 しれっとした顔で美也子は言った。
「あらあら、そんなに怖い顔をしないでちょうだい。私はこのビデオ、誰かに見せるために録画しているんじゃないのよ。ただ、
思い出作りのためなんだから。――でも、ま、誰かが私と晶ちゃんのおままごとのことを知ってどうしてもビデオを見せて欲
しいって言ってきたら、その時はどうしょうかな。晶ちゃんがお姉ちゃんの言いつけを守るいい子にしてくれるなら、大切な思
い出のビデオだもの、誰にも見せられないんだけど、聞き分けのない子だったら、晶ちゃんたらこんなに悪い子なのよって
説明するために見せちゃうかもね」
 美也子は思わせぶりに言いながら液晶画面を閉じ、ビデオカメラを再び本棚の上に戻した。
 美也子が何を言いたいのか、わからない晶ではない。
「……てめ、憶えてろよ。汚い真似しやがって、絶対に後でとっちめてやるからな」
 美也子の目の前でショーツを汚してしまった羞恥も忘れたかのように、晶は恨みがましい目で美也子の顔を見上げ、乱暴
な口調で言い捨てた。
 だが、小学生の女の子そのままの外見で女児用のショーツの前部にうすいシミをつくった晶がすごんでみせても、まるで
怖くない。どちらかというと、おもらしでパンツを汚してしまった幼女が自分の粗相をごまかそうとして失敗し、拗ねているよう
に思えて、むしろ微笑ましいくらいだ。
「はいはい、ちゃんと憶えておきますよ。だから、晶ちゃんも忘れないでちょうだいね。お姉ちゃんの目の前で白いおしっこで
パンツを汚しちゃったこと、絶対に忘れないでちょうだいね。お姉ちゃんの目の前で女の子座りをして丸見えにしたパンツに
できた恥ずかしいシミが大きくなったいった様子、いつまでも憶えておくのよ。いいわね?」
 美也子は腰に手の甲を押し当て、すっと細めた目で晶を見おろして、からかうように言った。
「それは……」
 美也子にそう言われて、たちまち晶は口ごもってしまう。
 あまりの屈辱のため一瞬は忘れていたが、美也子の言葉で、ショーツの内側から伝わってくるいやらしくねっとりした感触
を改めて思い出したからだ。さらさらの水などとはまるで違う、ねとねとと絡みついてくるそのいやーな感触は、晶自身のペニ
スから溢れ出た精液の感触に他ならなかった。可愛らしいバックプリントのついた女児用のショーツを汚してしまった『白い
おしっこ』の恥ずかしい感触に他ならなかった。

「でも、困ったわね。こんなじゃ、可愛らしいお洋服を着せてあげても、いつおもらしで汚しちゃうか知れたものじゃないわ。
パンツだけだったらお洗濯をすればすむけど、スカートやワンピースだとクリーニングに出さないといけないし。クリーニン
グに出す時、お店の人に恥ずかしいシミをみつけられたらなんて言えばいいんだろう。適当にごまかせばいいのかしら。
それとも、うちの妹ったらもう小学生なのに幼稚園の子や赤ちゃんみたいにおもらしでせっかくの可愛いお洋服を汚しちゃ
うんですよってちゃんと説明した方が綺麗にクリーニングしてくれるかしら。ね、晶ちゃんはどうすればいいと思う?」
 すっかり押し黙ってしまい時おりビデオカメラの方にちらちらと不安げな目を向ける晶に、美也子は、口では困った困っ
たと言いながらも実のところまるで困ってなどいないことが明らかな表情で言った。
「……」
 晶は一瞬だけ美也子の顔を見上げたが、じきに、弱々しく首を振って顔を伏せてしまう。
「あ、だけど、困ってばかりもいられないわね。いつまでもおもらしで濡れたパンツのまま裸んぼうだと晶ちゃんが風邪を
ひいちゃう。ちょっとだけ待っててね。新しいパンツに穿き替えさせてあげたら、すぐにお洋服を着せてあげるから」
 美也子はいかにも優しそうな姉を演じてそう言ってクローゼットの前に歩み寄った。
 けれど、紙袋の中にはあと何枚かショーツが入っていたのだから、本当ならわざわざクローゼットの扉を開ける必要は
ない筈だ。
 なのに紙袋に入っていたショーツをそのまま残して美也子がクローゼットに歩み寄ったのは、大きなビニール袋を取り出
すためだった。
「念のためにと思って午前中に買ってきておいたんだけど、まさかこれが役に立つとは思わなかったわ。でも、これならお
もらししちゃっても大丈夫よ」
 美也子はクローゼットの中から持ってきたビニール袋を晶の目の前に置くと、それを軽くぽんと叩いて言った。
 ビニール袋には大手のドラッグストアチェーンの名前が印刷してあって、中に入っているピンクのパッケージが薄く透けて
見えている。
「さ、開けてみて。きっと晶ちゃんも気に入ってくれると思うわよ」
 なぜとはなしに胸騒ぎをおぼえる晶に向かって、美也子が有無を言わさぬ口調で言った。

 晶はビニール袋を開けるのを躊躇ったが、美也子がビデオカメラと晶の顔を見比べながら
「晶ちゃんは聞き分けのいい子だもの、お姉ちゃんの言いつけをちゃんと守れるよね」
と言うものだから、最後にはビニール袋に手をかけるしかなかった。そうしなければ、美也子がビデオカメラの映像を誰に
見せるか知れたものではない。
 晶はのろのろと手を動かし、ビニール袋の結び目を解いて、中に入っているピンクのパッケージを取り出した。
 取り出したパッケージには『学童用Mサイズ(女の子用)・お徳用パック』という白抜きの文字とともに、有名な紙おむつの
ブランド名が大きく印刷してあった。
 文字を目にした途端、晶は信じられない物を見たような顔になり、ビニール袋から取り出した紙おむつのパッケージを取
り落としてしまった。
「最近は紙おむつの種類も増えて、よく探せば小学生用のも売ってるのね。それに、病人介護用のとは違って可愛いイラ
ストもついてるみたいだし、これなら晶ちゃんも気に入ってくれるよね。ほら、ちゃんと女の子用のを買ってきてあげたのよ。
どんなイラストか早く見てみたいよね」
 幼児がいやいやをするみたいに弱々しく首を振る晶の様子を面白そうに眺めながら、美也子は紙おむつのパッケージを
自分の手元に引き寄せ、ミシン目に沿ってビニールの外装を破った。
「ほら、見て見て。ハート模様の紙おむつよ。可愛いわね。晶ちゃん、早くあててみたいでしょ?」
 美也子は、パッケージの中からいそいそと取り出した三つ折りの紙おむつを晶の目の前で広げてみせた。淡いピンクの
表地に濃いめのピンクで大小様々なハート模様をプリントした紙おむつはパンツタイプで、ちょっと見には、厚手の生地で
できた女児用ショーツに見えなくもない。けれど、股ぐりを縁取る大きめのギャザーと、ショーツでいえばクロッチの部分に
あたる吸水帯の膨らみを見れば、それが普通のショーツなどではなく紙おむつだということは明らかだ。
「……そ、その紙おむつを……お、俺が……?」
 自分で口にした『紙おむつ』という言葉に顔を真っ赤にしながら、ごくりと唾を飲んで晶が言った。
「そうよ。いつおもらししちゃうかもしれない晶ちゃんだもの、普通のショーツだったらお洋服まで汚しちゃうでしょ? そんな
子にお似合いの下着はおむつに決まってるわよね? でも、そんなに恥ずかしがることはないのよ。新聞で読んだんだけ
ど、小さい子のおむつ離れが年々遅くなってるんだって。それで、おむつのメーカーも、これまで作ってなかったような年齢
向けのおむつを作るようになったそうよ。ちょっと前までは四歳児向けのおむつが一番大きいサイズだったんだけど、今は
こうして、晶ちゃんにも合うようなサイズのも作ってるの。それって、つまり、小学生でもおむつを使う子がたくさんいるってこ
とよ。ね、おむつのお世話になる小学生、晶ちゃんだけじゃないから恥ずかしくないでしょう? それに、ほら、こんなに可愛
いイラストがついてるんだよ。よかったね」
 美也子はそう言って、ハート模様の紙おむつを晶の目の前に突きつけた。

「ち、ちょっと待てよ。どうして俺がこんな扱いを受けなきゃいけないんだよ。そりゃ、おままごとにつきあってやるとは言っ
たけど、あれは、思い出をつくりたいって美也子に頼まれたからで……」
 女児用のショーツを穿かされ、その中に精液を溢れ出させてショーツをべとべとにしてしまって美也子のなすがままに
されていた晶だが、さすがに紙おむつを着用させられそうだとわかると、なけなしの気力を振り絞ってでも抵抗せざるを得
ない。
「あら、晶ちゃんてばまだ自分のことを『俺』だなんて言ってる。それに私のことを『美也子』ですって? さっきから何度も
教えてあげた筈よ。私のことは『お姉ちゃん』って呼びなさいって。それと、自分のことは『私』になさい。あ、ちょっと待って。
それだとちょっと大人っぽく聞こえるから――そうね、『あたし』がいいわ。わかった? これから自分のことは『あたし』よ。
いいわね?」
 震える声で晶が口にした抗弁などまるで気に介するふうもなく、むしろ美也子はますます嵩にかかって命令した。しかし
その言葉が厳しい命令口調ではなく幼い子供に優しく言い聞かせるような口調なのが、却って晶の屈辱を煽る。
 晶は下唇を噛みしめて弱々しく首を横に振った。
 そんな晶の態度に美也子は微かに首をかしげ、
「そう。晶ちゃんたら、そんなに聞き分けのわるい子だったの。もっと素直ないい子だと思ってたのに、お姉ちゃん悲しいわ」
と、殆ど感情のこもらない声で言ったかと思うと、両手で広げ持っていた紙おむつをパッケージの上に置き、晶の目の前に
正座した。
 思わず身を退こうとする晶だが、美也子の動きの方が早い。
 だらしなく床にぺたんと座り込んでいる晶の体に美也子の両手が絡みつき、そのまま力まかせに引き寄せた。
「な、何なんだよ!?」
 怯えの色を浮かべて金切り声をあげる晶に向かって美也子は
「そんなに聞き分けのわるい子にはお仕置きよ。晶ちゃんがいい子になるよう、お姉ちゃんがちゃんと躾けてあげるのよ」
と、聞きようによってはどこか淫靡な感じのする笑いを含んだ声で言い、きちんと両脚を揃えて正座をした自分の脚の上に
晶の体を腹這いにさせた。お腹が左脚の腿、下腹部が右脚の腿に乗るような格好だ。

 美也子の腿の上に腹這いの姿勢でうつ伏せにさせられた晶はさかんに身をよじるが、美也子の手で押さえつけられて
逃げ出すことはかなわない。
「お姉ちゃんは晶ちゃんにいい子になって欲しいからお仕置きをするのよ。晶ちゃんが憎くてこんなことをするんじゃない
んだからね」
 憎くてこんなことをするんじゃない。面白いからするんだ。ふと、心の中をそんな言葉がよぎった。美也子は胸の中で赤
い舌をぺろっと突き出すと、左手で晶の背中を押さえつけたまま、右手を高々と振り上げた。
 その直後、ぱんーん!という激しい音が部屋中に響き渡った。
 美也子が高々と振り上げた右手を力まかせに振りおろし、思いきり晶のお尻をぶった音だ。
「つっ!」
 体をのけぞらせた晶の口を悲痛な呻き声がついて出た。ぎゅっと目を閉じる顔が苦痛に歪む。
 けれど、美也子が手を止める気配はない。
 それから何度も筋肉の弾ける音が続いて、そのたびに、晶が悲鳴めいた呻き声をあげる。

「……やめて。お尻をぶつのは、もうやめて……」
 やがて、息も絶え絶えに懇願する晶。
「いい子にするのね? お姉ちゃんの言いつけを守る聞き分けのいい子になるのね?」
 ようやく右手の動きを止めた美也子は、自分の脚の上でぐったりと首をうなだれる晶に、念を押すように言った。
「いい子になる。いい子になるから、もうお尻をぶたないで……」
 一瞬だけ逡巡の表情を浮かべ、上目遣いに美也子の顔を見上げた晶だが、じきに、再び首をうなだれて諦めたように
言った。
 晶が屈服したのは、バスケットボールで体を鍛え上げている美也子の手で力まかせにお尻をぶたれ続ける痛みのため
だけではなかった。もちろん、肉体的な痛みを感じないわけではないけれど、それよりも、むしろ、精神的な苦痛の方が晶
には耐え難かったのだ。まるで物事の道理など何一つわからない幼児のように美也子の腿の上に腹這いにさせられて、
それこそ聞き分けの悪い幼児そのままおしりをぶたれるというお仕置きを受ける屈辱と羞恥。晶には、肉体的な痛みその
ものよりも、『お仕置き』と称してそうやって与えられる精神的な苦痛の方が辛かった。しかも、その上――。
「そう、いい子になるのね。それでいいのよ。お姉ちゃんだって、可愛い晶ちゃんにお仕置きをするのは辛いんだからね。
それは晶ちゃんもわかってちょうだい。うふふ、でも、ひょっとしたら晶ちゃんにはお仕置きなんてちっとも辛いことなんかじ
ゃないかもしれないけど」
 美也子は優しく教え諭すように言って、意味ありげに笑ってみせると、それまで腹這いにさせていた晶の体を両手で抱き
上げた。そうして美也子は上半身を起こしたまま爪先立ちになって、晶の体を背中から抱え上げ、自分の膝の上に晶のお
尻を載せた。膝を折って爪先立ちになった美也子が椅子の代わりになって、その上に晶がちょこんと座る、そんな格好だ。
 そうすると、美也子の目には、晶の肩越しに、女児用のショーツに包まれた晶の股間が丸見えになる。
 ――ついさっき美也子の手でいかされてショーツの中に精液を溢れ出させてしまいへなへなと萎えしぼんだ筈の晶のペ
ニスが、今はまた元気を取り戻して凶々しくいきり立っていた。

 晶が屈服せざるを得なかった一番の理由こそが、美也子の手でお尻をぶたれながらエレクトさせてしまった、その恥ず
かしい肉棒だった。美也子と晶の立場が逆転したあの時、美也子の心の中に加虐的な感情が芽生え、一方、晶の胸の
奥底には、被虐的な感情が生まれていた。それまで庇護されるべき存在だった美也子は晶を自分の支配下に置くことに
不埒な悦びを覚えるようになり、対して、それまでずっと美也子を庇ってきた晶は、逆に、美也子に全てを委ねることに甘
美な悦びを感じるようになっていたのだ。けれど、晶自身はその事実を認めるわけにはいかなかった。おにいちゃんぶっ
てヒーローを演じてきた晶にとって、自分の心の中に芽生えた歪んだ欲望は決して直視することのできない、忌避すべき
異物だった。自分の胸の奥底にそんなものを抱え持ってしまったことを認めまいとして、晶は、美也子との立場が逆転し
た後も男らしくふるまってみせ、わざと乱暴な口のきき方を続けてきていたのだった。なのに、美也子にお尻をぶたれるこ
とで醜く怒張してしまったペニス。それは、それまで必死に隠しおおしていた晶の異形の欲望を、これ以上はないくらいに
はっきりとした形にしてさらけ出してしまっていた。それを見る者は一人残らず、晶が心の奥底に隠し持っていた歪んだ欲
望の存在を知ることになるだろう。もちろん、美也子とて例外ではない。晶のお尻をぶっている間にむくむくと起きあがって
くるペニスの感触をジーンズの生地越しに腿に感じて、美也子は晶の胸の内を明瞭に見透かしていた。そうして、自らの意
思に反して下腹部が熱く疼き出すのを感じた晶は、とうとう屈服してしまったのだった。おそらくもう二度と美也子の支配下
から逃れることはかなわない、それは徹底的な屈服だった。
「それじゃ、ちゃんとお返事してちょうだい。晶ちゃんがいい子になること、ちゃんと言葉にしてお姉ちゃんにお返事してちょう
だい。なんて言えばいいか、もう教えなくてもわかってるよね? 晶ちゃんはお利口さんだものね?」
 美也子は自分の膝の上に晶を座らせたまま、姿見の鏡に向かい合った。
 美也子に背中から抱きかかえられた晶の姿が、大きな鏡に正面から映る。もちろん、うっすらとシミになった前部を再び
恥ずかしく膨らませたショーツも丸見えだ。
 晶は慌てて目を閉じたが、一瞬だけ目にした鏡に映る自分の姿はくっきりと瞼に焼き付いている。
「……い、いい子になる。聞き分けのいい素直な子になるから、もうお仕置きはやめて……」
 屈辱と羞恥に耳の先まで真っ赤に染めて、晶は蚊の鳴くような声で言った。
「そう、いい子になるって約束できるのね。でも、誰がいい子になるの? それを誰に約束するの? それもちゃんと言わな
きゃいけないでしょ?」
 真っ赤に染まって熱くほてる晶の耳朶にふっと息を吹きかけて、美也子はねっとりした口調で言った。
「……あ、あたし、いい子にする。言いつけもちゃんと守る。聞き分けのいい子になるって、お、お姉ちゃんに約束する。だか
ら、もう……」
 最後の方は泣き声になりながら、震える声で晶は言った。

「そうそう、それでいいのよ。晶ちゃんはちゃんとお約束できて、本当にお利口さんだわ。うん、わかった。晶ちゃんがいい
子になってくれるんだったら、お姉ちゃんもお仕置きはしないわよ。こんなに可愛い妹が悲しむとこなんて見るのはいやだ
もの。もうお仕置きはやめて、その代わり、たっぷり可愛がってあげるわね」
 晶の言葉に美也子は相好を崩して応え、膝の上に座らせた晶の背中に乳房を押し当てた。
 鍛え上げた美也子だから、乳房も、もともとの柔らかな感触に加えて適度な張りがある。そんな乳房の感触を背中に感
じて、晶のペニスがますます固くなってしまう。おままごとと称して自分を無理矢理に幼女扱いする美也子の乳首の感触
に敏感にベニスを大きくしてしまうなど屈辱のきわみだけれど、年ごろの男の子が持て余し気味の性欲を抑えつけるのは
簡単なことではない。しかも、美也子に支配されることに歪んだ悦びを覚える晶だから、その屈辱さえもがペニスをいきり
立たせる要因になってしまう。
「あらあら、おちんちんがこんなに元気になっちゃって。でも、晶ちゃんは女の子なんだから、おちんちんが大きいままじゃ
おかしいよね。気持ちのいいことをして、ついでに、おちんちんを小っちゃくしちゃおうね」
 美也子は膝の上に座らせた晶の股間に右手を伸ばした。
「ほら、鏡を見てごらん。お姉ちゃんに後ろから抱っこしてもらっている晶ちゃんが映っているでしょう? 小っちゃい子はね、
こうやって抱っこしてもらっておしっこするんだよ。だから、晶ちゃんも白いおしっこを出しちゃおうね。もういちど白いおしっ
こを出して、いやらしいおちんちんを小さくしようね。お姉ちゃんがおしっこさせてあげるから、晶ちゃんはそのまま何もしなく
ていいんだよ」
 ショーツにしみ込んだ精液の感触などまるで気にするふうもなく、むしろその感触を楽しむように、美也子はショーツの上
から晶のペニスをきゅっと握りしめた。
「や、駄目! そんなことしたら、そんなことしたら……」
 いきり立ってこれでもかと敏感になっているペニスに触れられて、晶の腰がぶるっと震えた。
「そんなことしたらどうなっちゃうの? お利口な晶ちゃんはちゃんとお姉ちゃんに教えられるよね? そんなことしたらどうな
っちゃうのか、さ、教えてちょうだい」
 美也子は、ショーツ越しにペニスを握る右手をゆっくり上下に動かしながら、左手の親指と人差指で晶の乳首をつまんだ。
「そんなことしたら……駄目、出ちゃう。あ、あたしのあそこからやらしいおしっこが出ちゃうよぉ」
 晶はうわずった声で言い、くねくねと体をよじった。
「いいのよ。それで。晶ちゃんに白いおしっこをさせてあげるためにお姉ちゃんはこうしてるんだから。ほら、お姉ちゃんにたっ
ぷり甘えながら、いやらしいおしっこを出しちゃおうね」
 美也子は晶のうなじに熱い吐息を吹きかけた。
「い、いやぁ。出ちゃう、ほんとに出ちゃうってば~」
 そう言って首を振る晶は、いやいやをする幼児そのままだ。

「いいのよ、出しちゃって。いつまでも我慢してると体に毒だから、さ、出しちゃおうね」
 美也子は言い聞かせるように甘く囁いて、とどめをさすみたいに右手をさわっと動かした。
 ペニスがどくんと脈打つ感触がショーツの生地越しに掌に伝わってくる。
「出ちゃう、白いおしっこ出ちゃう」
 喘ぎ声とも呻き声ともつかぬ、聞きようによってはまるで甘えてでもいるかのような声が晶の口から漏れる。
「出しちゃっていいのよ。早く出しちゃって楽になりましょうね」
「……パンツの中に?」
「そうよ。まだおもらしの治らない晶ちゃんだもの、パンツの中におもらししちゃっていいのよ。小学生のくせにまだおもら
しの治らない可哀想な女の子だもん、パンツを汚しちゃっても、お姉ちゃん、ちっとも怒らないよ。白いおしっこでパンツ
を濡らしちゃう晶ちゃん、とっても可愛いもん。お姉ちゃんが叱るわけないよ」
 美也子が甘い声で言い聞かせると、晶がこくんと頷いた。暗示にかかってしまったのか、それとも、あまりの羞恥に耐
えかねて、暗示にかかったふりをしているのか、それは美也子にはわからなかった。おそらく、当の晶自身もどちらなの
かわかっていないだろう。
 体をのけぞらせ美也子の乳房に寄りかかるようにして息を荒げる晶の下腹部を包むショーツの前部に、生温かくべと
べとした恥ずかしいシミが新たに広がってゆく。

「出ちゃった? 白いおしっこ、もうみんな出ちゃった?」
 ショーツの盛り上がりが萎えるのを待って、幼児をあやすように美也子が言った。
 その言葉に、はにかむような表情を浮かべて晶がこくりと頷く。
「そう。お姉ちゃんの言う通りにできて、晶ちゃんは本当にいい子だわ。じゃ、パンツを脱ぎ脱ぎしようね」
 おもらし癖の治らない小学生にというよりも、まるで幼稚園の年少さんに対するように言って、美也子は晶の頭を二度
三度と撫でた。
「パンツを脱いで……お、おむつなの? あ、あたし、やっぱり、おむつなの?」
 目の下をほんのり赤く染めて、晶は細い声で言った。
「そう、おむつよ。準備するから、ちょっとの間だけ待っててね。晶ちゃんはいい子だもの、一人で待ってられるよね?」
 美也子はとびきりの笑顔で応え、それまで膝の上に座らせていた晶を床に立たせると、紙おむつの入ったビニール袋
と一緒に持ってきていたバスタオルを晶の足元に広げた。

「はい、じゃ、このバスタオルの上に立ってちょうだい。ひょっとしておちんちんにまだ白いおしっこが残っていたら、パンツを
脱ぎ脱ぎする時に床を汚しちゃうかもしれないから」
 美也子は広げたバスタオルを二つ折りにし、その上に晶を立たせると、大きなシミになったショーツをすっと引きおろした。
 それまでも微かに漂っていた青臭い臭いが、こときわ強く匂いたつ。晶は、自分の体から溢れ出たいやらしい体液の臭い
に、いたたまれないような表情を浮かべた。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのよ、晶ちゃん。小っちゃな子のおしっこの臭いを嫌がる人なんていないから。お姉ち
ゃん、晶ちゃんのおしっこの臭い、大好きだよ」
 わざと優しく慰めて言う美也子の言葉が、いっそう晶の羞恥をくすぐる。
 いてもたってもいられないほど恥ずかしそうにする晶を満足そうに眺めながら、美也子はショーツを足元まで引きおろした。
 窮屈なショーツから解放されたペニスは晶の股間に力なくだらんと垂れ下がり、その先端から、ねっとりした細い糸をひい
た。本当のおしっことは違って粘りけのある精液だから、完全にはショーツに吸収されない。それが恥ずかしい糸になって滴
り落ちているのだ。
「バスタオルを敷いておいてよかったわね。床を汚しちゃって、それを晶ちゃんが気にしたら可哀想だものね」
 小さなねっとりした雫になってペニスの先から滴り落ち、バスタオルに吸い取られる精液の様子をじっと見つめて、美也子
は呟くように言った。そうして、不意に顔を上げると、晶の股間と顔を見比べて続けた。
「でも、残りのおしっこが落ちちゃうのをこのまま待っていたらいつになるかわからないから、お姉ちゃんがおちんちんを綺麗
綺麗してあげるわね。ちょっとひやっとするけど、我慢するのよ」
 そう言って美也子がドラッグストアのビニール袋から取り出したのは、ウエットタイプのお尻拭きの容器だった。おしっこや
うんちをしてしまった赤ん坊のお尻を新しいおむつで包み込む前に綺麗に拭くのに使う、ウエットティッシュに似た不織布だ。
「んっ……」
 汚れたお尻を清潔にするためアルコール系の消毒液をしみ込ませたお尻拭きが触れると、たちどころにペニスにひんやり
した感覚が走る。ショーツ越しに美也子の手で精液を搾り取られてだらしなく萎えてしまったペニスが、そのひんやりした感
触にますます身を縮める。
「おちんちんが小さくなってよかったわね、晶ちゃん。これで、可愛いショーツを穿いてもちっとも変じゃないわよ」
 恥ずかしそうに身をひそめるペニスを見て美也子は言い、晶の顔を正面から覗き込んで、悪戯っぽい口調で付け加えた。
「これで、女の子用のハート模様の紙おむつもお似合いね」

「お、おむつ……おむつあてられちゃうんだ、あ、あたし……」
 もう何度か口にしているのに、まだその言葉を口に乗せるのが恥ずかしいのだろう、『あたし』と言うたびに口ごもりなが
ら、晶はまるで自分自身に言い聞かせるように呟いた。
「そうよ、おむつよ。小学生のくせにおもらしの治らない子の下着はおむつなのよ。晶ちゃん、さっき約束したよね? 聞き
分けのいい素直な女の子になるって約束したよね?」
 美也子は『おむつ』というところを強調して言い、すっと目を細めて、『約束』という言葉を念入りに何度も繰り返した。
「や、約束は……したけど……」
 美也子が今度は何を言い出すのか激しい不安を覚えて、晶は思わず口ごもってしまう。
「じゃ、約束を忘れないようにちゃんとしておきましょうね」
 美也子は意味不明の言葉を残してくるりと背中を向け、女児用の衣類やドラッグストアのビニール袋を収納していたあ
のクローゼットの前に三たび歩み寄ると、今度は、プラスチック製の大きなトレイを両手に捧げ持って戻ってきた。
 美也子がトレイを床に置き、その上に載っている物を見て、晶の顔に訝るような表情が浮かんだ。
 陶器でできたカップのような物、小振りのポット、清潔そうなタオル、それに、長方形の金属製の容器。それが何をする
物なのか、いくら目を凝らして見つめても、晶にはまるで見当もつかない。
 が、トレイの上に載っている長方形の容器の蓋を美也子が思わせぶりな手つきで持ち上げた瞬間、
「い、いや! それは、それだけはいや!」
という叫び声が晶の口をついて出た。
 金属製の容器に入っていたのは、銀色に光る鋏に、どきどきするような鋭い刃の付いた剃刀、それに、見るからに柔ら
そうな豚毛をたっぷり植え込んだシェービングブラシと、シェービングソープの容器だった。それらは、普通に考えれば髭
を剃る時に使う道具なのだが、美也子がトレイを置く時に(体毛が薄くて殆ど髭など生えない)晶の顔ではなく股間にじっ
と視線を注いでいたことを考え合わせると、美也子がそれで何をしようとしているのかは明らかだった。
 美也子は、晶の、今は小さく縮こまったペニスがひそむ下腹部の黒い茂みを剃り落としてしまうつもりに違いない。

「晶ちゃんが約束を忘れそうになっても、綺麗になったあそこを見れば、すぐに思い出すんじゃないかしら。だから、素直
な女の子になりますっていう約束を忘れないよう、おちんちんの周りを綺麗にしておこうね。それに、おもらしの治らない
ような子があそこに毛を生やしてるなんて変でしょう? いつパンツを濡らしちゃうかわからないからおむつのお世話にな
らなきゃいけない子にお似合いの綺麗なあそこにしてあげる」
 下着も髪型も自分の呼び方も全て幼い女の子に変貌させられた晶に一つだけ残っている高校生男子としてのしるし。
そのしるしさえ、美也子は奪い去ってしまおうというのだ。
「で、でも、だって……」
 何をどう抗弁していいのかわからない。いや、そもそも、僅かな抗弁さえ許されない立場に置かれていることさえ忘れか
けて、晶は口をぱくぱくさせるばかりだ。
 けれど、美也子は晶の胸の内などまるで知らぬげに、、陶器のカップにシェービングソープの粉末とポットの湯を注ぎ入
れて豚毛のシェービングブラシでかき混ぜ、きめの細かい泡をたてる作業に夢中だ。
「いや、それだけはいや!」
 晶は金切り声をあげて後ずさった。
 けれど、さっきまで穿いていたショーツが足首に絡まって、まともに脚を動かせない。
 あっという叫び声が聞こえたかと思うと、晶が尻餅をついてその場に座り込んでしまっていた。普通、高校生の男の子が
尻餅をついたら、どすんという音が響き渡りそうなものだが、小柄で華奢な晶だから、ちょこんという感じだ。それがまた美
也子の加虐的な悦びを妖しくくすぐる。
 シミになったまたがみの深いショーツを足首に絡ませて尻餅をつき、お尻をぺたんと床につけて唇を半開きにしている晶
の姿は、股間の黒い茂みといやらしい肉棒さえ見えなければ、あどけない少女そのままだった。いや、少女というよりも、
まだおもらし癖が治らなくておむつを手離せない幼女といった方がふさわしいだろうか。しかも、その茂みさえもうじきに剃
り落とされようとしているのだ。
「あらあら、晶ちゃんはまだあんよもできない小っちゃい子だったのかな。だったら、尚のこと、あそこを綺麗にしてあげた方
がお似合いね。すぐに用意するから、そんなに暴れないでおとなしく待っていてちょうだい。ほら、こんなに綺麗な泡。柔ら
かい泡を塗り塗りしたら気持ちいいわよ、きっと」
 床にぺたんと座り込み丸見えになった晶の股間にシェービングブラシを押し当てて、美也子はあやすように言った。そうし
て、
「それに、体育の授業がプールになるのは七月からだったでしょう? きれいになったあそこのまま学校へ行っても心配す
ることはない筈よ」
と、それまで晶のことを徹底的に子供扱いしていたくせに、そうした方が晶の羞恥を余計に激しく掻きたてることができるの
を直感してか、不意に、晶を現実の世界に引き戻すような言葉を口にした。
 それを耳にして、晶の顔がみるみる間に朱に染まってゆく。

「私、いつも思ってたんだ。晶って、絶対、海パンよりもスク水の方が似合うだろうなって。胸はぺたんこだけど、世の中に
は、つるぺたが一番だって言い張るヲタもいるんだし、男の子にも結構モテちゃうんじゃないかな。ああ、でも、つるぺたの
内、つるんが抜けてるんだったっけ。見た目はまんま女の子なのに、こんなに立派なおちんちんの持ち主なんだもん、
もりぺたってとこね」
 まるで女の子みたいな羞じらいのそぶりを見せる晶に、美也子はますます恥ずかしい言葉を投げかけた。
 が、晶の股間をシェービングソープの細かな泡で真っ白に塗りたくり終えると、再び幼い妹に対するような口調に戻って
言う。
「じゃ、今からお姉ちゃんが晶ちゃんのあそこを綺麗にしてあげるわね。鋏も要るかなと思ってたんだけど、晶ちゃんのあ
そこ、あまり毛が生えてないから、剃刀だけでいいみたい。晶ちゃんって、顔の産毛も薄いし脇毛も薄いから、お手入れが
楽でいいわね。お姉ちゃん、ちょっぴり妬けちゃうな。――へんに動いたりしたら剃刀でおちんちんを切り落としちゃうかもし
れないから、おとなしくしててちょうだいね。ま、その時はその時。本当に女の子になっちゃえばいいんだけど」
 最後の方は冗談めかして言って、うふふと美也子は笑った。けれど、正直なところ、どこまでが冗談なのか知れたもので
はない。
 美也子はシェービングソープがまんべんなく塗れていることを確認してから、シェービングブラシの代わりに剃刀を手にし
た。薄く鋭い刃が、蛍光灯の光を冷たく反射する。
「いいわね、始めるわよ」
 お尻拭きの消毒液のひんやりする冷たさとはまた違う硬質のひやっとした感触が下腹部に触れて、晶は思わず体を固く
した。警告されなくても、剃刀の刃が触れている間は微塵も体を動かすつもりはない。
 じょり、じょり。
 じょり、じょり。
 プールの季節になると美也子もデルタゾーンの手入れは怠らない。けれど、今どきのことだから、使うのは電動のレディ
スシェーバーだ。使い慣れない剃刀で晶の飾り毛を剃り落としてゆく手つきはぎこちない。そのため、晶にしてみれば、無
惨に剃り落とされてゆく縮れ毛のことよりも、どこか切られはしないかという心配の方が大きかった。
 時おり剃刀の刃が下腹部の肌だけではなくペニスにも触れて、ぞくっとした感覚が背中を突き抜ける。その反動か、そっと
ペニスに添える美也子の掌があたたかく感じられる。
 剃刀の刃が下腹部を這いまわっている間、晶はまんじりともしない。いや、まんじりともできない。

 そんなふうにして、美也子の慣れない手つきながらも、黒い茂みが少しずつ姿を消してゆく。
 自分の下腹部が幼児めいた見た目に変わってく様子を、晶は身じろぎもせずに見つめるしかなかった。目を閉じようと
しても、なぜか吸い寄せられるように両目が美也子の手の動きを追い続けてしまう。
 そうして、やがて。
 美也子が剃刀をトレイに戻し、ポットの湯で湿らせたタオルを晶の下腹部に押し当てて、まだ幾らか残っている純白の
泡を拭き取り始めた。
「ちゃんとおとなしくしてて、本当に晶ちゃんはお利口さんだったわね。さ、お利口さんにお似合いの綺麗なあそこをよぉく
覧なさい」
 シェービングソープの泡を丁寧に拭い取った美也子は、にっと笑って晶の下腹部を掌で差し示した。
 もともと体毛が薄く女の子みたいな白い肌の晶だけれど、ほっそりした腿の肉の付き具合と相まって、飾り毛を剃り落
とした股間は肌の白さがいっそう際立ち、まるで汚れを知らない幼女そのままだった。ただ、その体に似合わぬ醜悪な
肉棒を除いては。けれど、その肉棒も、剃刀の刃の冷たい感触と、ひょっとしたら本当に怪我を負わされるのではないか
という恐怖にも似た怯えから、いつもになく縮こまり、その存在を目立たぬようにしている。
「それじゃ、今度こそちゃんとパンツを脱ぎ脱ぎしようね」
 一言も発することなく自分の股間を覗き込み薄い胸を盛んに動かして荒い呼吸を繰り返している晶の耳に囁きかけて、
美也子は、晶の足首にまとわりついているショーツを手元に引き寄せた。剃毛の間に晶が逃げ出すのを阻むためのコッ
トンの足枷も、役目を終えた今となってはもう用済みだ。
「さ、パンツの代わりにおむつよ。これでもう、いつおもらししちゃっても大丈夫だからね」
 美也子は、床にぺたんとお尻をつけて座る晶の足首をひょいと持ち上げて、パンツタイプの布おむつの左右の股ぐりを
同時にそれぞれの足に通し、膝のすぐ上まで引き上げた。
 シルクとも麻とも違う、どちらかというと幾らかコットンに近いのかもしれないが、これまで経験したことのない不織布の
感触が肌を撫でる。

「あとは座ったままじゃできないから、はい、立ってちょうだい」
 ハート模様のパンツタイプの紙おむつを膝の上まで引き上げた美也子は、晶の両手を引いて再びバスタオルの上に立
たせてから、改めて紙おむつを太腿のすぐ下のあたりまで引き上げた。
 そうして、そこでいったん手を止めると、股間にだらんと力なく垂れ下がる晶のペニスをつまんで、そのままお尻の方へ
折り曲げてしまう。エレクトしている時にはとてもではないができないことだけれど、力なく萎えた状態だから、あっけない
ほど簡単だ。
「晶ちゃんは女の子だから、もちろん、紙おむつも女の子用のを買ってきておいてあげたのよ。男の子用の紙おむつと女
の子用の紙おむつ、どこが違うか知っている?」
 突然ペニスをお尻の方に折り曲げられ、ぎょっとしたような表情を浮かべながらも、もう抵抗する気力など微塵も残って
いない晶はのろのろと首を振った。家庭科で育児の授業も受けている美也子と違って、まわりに幼い子供がいるわけでも
ない晶にそんな知識がある筈がない。
「紙おむつはね、高分子吸水材の入った吸収帯でおしっこを吸い取るようになっているの。で、おしっこの出る場所が女の
子と男の子とでは違うから、吸収帯の場所も少し変えてあるのよ。男の子はどちらかというと前の方で、女に子はそれより
も後ろの方が吸収帯が厚くなるように作ってあるの。だから、女の子用のおむつをあてる晶ちゃんは、おしっこの出口を後
ろの方にしとかなきゃいけないのよ。でないと、せっかくのおむつなのにおしっこが漏れちゃうの」
 美也子は、太腿のすぐ下まで引き上げた紙おむつの内側を指し示して説明してから、股を挟んで後ろにまわした晶のペ
ニスを吸収帯でしっかり押さえつけるようにして、改めて紙おむつのウエスト部分をおヘソのすぐ下まで引き上げた。
「あ……」
 それまでは両脚の肌だけに触れていた不織布の感触が、今度はお尻全体に広がった。想像もしてみなかった柔らかな
感触に羞恥をくすぐられて、晶の口から喘ぎ声が漏れてしまう。
 高校生としては随分と小柄な晶だけれど、小学生としてみれば大柄な方だ。学童用Mサイズの紙おむつでは少しばかり
窮屈なのは否めない。そのため、下腹部がぴっちり締めつけられるような感じになって、後ろにまわされたペニスも、お尻
と紙おむつに挟まれて自由に動けない。しかも膨らみは両脚の間に来るから、前から見ても後ろから見ても、一見したとこ
ろでは、晶が紙おむつの中にペニスを隠し持っていることに気がつかないだろう。
「へーえ、パンツからおむつに替えるだけで、すごく雰囲気が変わっちゃうんだね。ほら、鏡を見てごらん。まだ幼稚園にあ
がる前の小っちゃな女の子みたいでとっても可愛いから」
 美也子は、それまで自分に相対して立たせていた晶の肩に手をかけて、姿見の方にくるりと体の向きを変えさせた。

 美也子の言う通り、ショーツではなく紙おむつで下腹部を包み込んだ晶の姿は、小学生の女の子どころか、まだ幼稚
園にも通っていない小さな女の子そのままだった。全体に華奢で、お腹がへこみ加減な上に腰のくびれが目立つ晶の
体型は、丸っこくてお腹がぽこんと出た、いわゆる幼児体型とは正反対だが、細っこい手足と、美也子がふわっと整えた
髪に包まれたまん丸の童顔とが、見る者の保護欲をこれでもかと掻きたててやまない。ショーツの時には乳房の発育を
目の前に控えた少女めいて見えた薄い胸が、おむつ姿だと、少し前まで母親の乳房に顔を埋めて母乳を貪り飲んだ後
に慌てて呼吸をするのを思い出した幼児がさかんに動かす柔らかな胸元みたいに見えるし、ショーツの時にはリップクリ
ームを塗ったばかりの少女の唇のように思えた真っ赤な唇が、おむつだと、ちゅぱちゅぱと音をたてて母親の乳首をさか
んに吸う幼児の唇のように思える。
 一回りも二回りも体の大きな美也子と並んで立っているから余計にそう見えるのかもしれないけれど、くるぶしの所にサ
クランボのボンボンをあしらったピンクのソックスを履き、ハート模様の淡いピンクの紙おむつでお尻を包んだ晶の姿は、
赤ん坊ほどは頼りなくはないものの、一人で或る程度のことはできる幼稚園児ほどにはしっかりしていない、ちょうどそん
な年ごろの幼女のようだ。まさか身長が160センチにもなる幼女がいるわけはないが、全体の雰囲気が晶をいつもより
小柄に見せて、周囲に比べる物がない状況で写真を撮ったとすれば、それを見ただけで晶の実際の年齢を言い当てるこ
とのできる者は一人もいないだろう。付け加えるなら、実際の性別を即座に言い当てる者も一人もいないに違いない。
「あ、あたし……」
 晶は、拳をきゅっと握りしめて、傍らに立つ美也子の顔を振り仰いだ。
 なにか困ったことに直面してしっかり者の姉に助けを求める妹のような表情にも、大好きな姉に甘えたくてしかたないと
いった妹の表情にも見える。けれど、決して、実際の性別のまま弟には見えることはない。
「さ、次はお洋服を着ようね。お外は春のお日様で暖かいけど、部屋の中は少し冷えるから、このままじゃ風邪をひいちゃ
う。可愛い晶ちゃんが咳をして苦しがってるところなんて見たくないものね」
 美也子はそっと膝を折り、背の低い晶と目の高さを合わせて微笑んだ。

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最終更新:2013年05月07日 21:02