初出:エロパロ板「男の娘でエロパロ!」スレッド 559
「あのさ、俺…相談があるんだよね…」
僕の幼馴染、荒田 裕也は―――裕也兄ちゃんは、突然気不味そうに話を切り出した。
3歳年上で、ちょっと冴えない高校生、それが裕也兄ちゃんだ。
「どうしたの?兄ちゃんが相談だなんて、勉強の話だったら無理だよ」
僕がそう言うと、裕也兄ちゃんは顔を真っ赤にして、慌てて手と首を横に振りながら
「あ、い、いや!違う、違うぞ!断じて違うからな!だ…第一高校生が中学生に勉強の相談なんて恥ずかしくてできねえよ…」
と訂正した。もちろん僕は本気で裕也兄ちゃんが勉強を教えて貰いに来たものだとは思っていない。
ただ、頼り甲斐がある裕也兄ちゃんのたまに見せるこういうナチュナルな反応が可愛いくて
それでつい、辛かってしまうのだ。
「ははっ、分かってるよ。裕也兄ちゃん。」
「また誰かと休日に遊ぶ約束でもしたんでしょ?それで着ていく服がないから選んでくれ、とかそういう話なんでしょっ?」
とりあえず言っておくが、裕也兄ちゃんのルックスは少なくても上の中に入るぐらいには良い。
だが、飾り気がないのか、ワックスは使わない。流行りの服はきない。髪は弄られていない黒色。
パッと見何処にでもちょっと内気な青年に見える。
こんな裕也兄ちゃんは、最近よく友達と遊ぶ様になり、どんな服が良いか、僕に聞きにくるのだ。
僕としては、そりゃ裕也兄ちゃんがクラスの人と遊べるぐらいに仲良くなって嬉しい。
けど、前は休日はいつも僕と遊んでくれていたのに……。
どこの誰かとも知らない友達を名乗る人間に兄ちゃんを奪われて……正直悔しい……。
けど、裕也兄ちゃんが悲しむ姿は見たくない、だから僕はこうして辛い気持ちを抑えて、大人しく相談に乗るのだ。
「あ…いや…その、今回は…違うんだ…。」
今回は、違う?
何だかよくわからないけど、言葉に出来ない不安を感じた。
「お前って、女の子とかとは……付き合い、結構あるんだよな……?」
「うん、あるよ。まぁ口下手な兄ちゃんと違って?僕は、モテモテだしー!」
「だよな……。そうだよな……。あのさ、学(まなぶ)……。」
ん?冗談のつもりでちょっと茶化して見たんだけどな……。
今日の兄ちゃんは食い付きが悪いような……。
僕は確かに女子にはモテるが、もっぱら裕也兄ちゃん以外には興味がない僕にとっては害悪でしたかない。
一秒でも早く、裕也兄ちゃんに会いたくて、早く下校したい僕にとっては、放課後、屋上に来てください。
なんてありきたりな台詞は邪魔でしかない。
毎回、僕はそれを冗談めかして話題に出すので、兄ちゃんは僕がモテてるのは知っているはずだ。
なのに、改めて確認をとるなんて、今日の兄ちゃんはなんだかおかしい。
いつもなら「はいはい、嫌味はいいから、嫌味はいいから」なんて呆れ顔で平然と言うのに……。
―――も、もしかして、かの―――――――
い、いや!気の所為だ!そうに決まってる!!
く、クソ!僕はこんな時に何を考えてる……。に、兄ちゃんに限って……。そ、そんな筈は……ないのに……。
「あ、そうだ。僕新しいゲーム買ったんだよね~。兄ちゃんもやる?これって結構ネットでも評価よくてさ」
「学、真面目な話なんだ……。聞いてくれ。俺、」
「あ、そう言えばさ、こないだ兄ちゃん、僕、こないだ兄ちゃん漫画貸してたでしょ?」
「あれ、こないだでたばっかの最新巻なんだよね、読んだなら早く返して欲し」
「まなぶッッ!!!」
「…に、兄ちゃん?ど、どうしたんだよ、いきなり大声出しちゃってさ……」
「あ、お茶、出してなかったね…ご、ごめん、気づけなくて…い、今から用意するからね」
「…学、聞いてくれ。…俺、彼女ができた」
え……?う…嘘…だよね?
い、いや!違う!裕也お兄ちゃんに限って彼女なんて!彼女なんてできる訳ない!!
そんな…そんな訳ない!!
「ははっ、どうせアレでしょ?その、DSのゲームの…ラブ、なんだっけ…でしょ?」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんに彼女なんてできる訳ないじゃん、ね?現実を見よ、ね?」
「……最近できた友達っての…実は彼女だったんだ……」
「え…?」
「ほら、学も一度見た事あるだろ?あの、黒髪の、あの子だ。あの子が俺の…その…」
「違うッ!!!」
「違う違う違う違う違うッッ!!!」
「…ま、まなぶ…?」
「お兄ちゃんに彼女…?そんなのできる訳ないじゃん!!」
「運動もできなくて!!勉強もできない!!コミュニケーション能力だって他人より劣ってるんだよ!?」
「そんなお兄ちゃんに彼女…?嘘でしょ…?できる訳ないじゃん!!」
「おい…!まなぶ…ッ!!」
「あの人がお兄ちゃんの彼女?はは、冗談はやめてよ、お兄ちゃん」
「あんな綺麗な人、お兄ちゃんの事好きになる訳無いじゃん!現実を」
「どうせあの人もドッキリかなんかで無理矢理、」
「好い加減にしろッ!!まなぶッ!!!」
え―――――――バチン、と嫌な音がした。
その音が、僕の頬からでた音なのだと、痛みと共に気づいた。
「…お前がそんな奴だとは思わなかった……。」
ち、違うんだ!裕也兄ちゃん!違う!ぼ…僕は裕也兄ちゃんを傷付けるつもりで言ったんじゃなくて……。
なのに、涙が出て、情けない声しか出ない……。頭の中では謝りたい気持ちで一杯なのに、謝罪の言葉が口からでない。
「こんな俺と一緒に居てくれた、お前なら…分かってくれるとおもったのにな…」
そしてそのまま、裕也兄ちゃんは、僕の部屋から…家からでて行った……。
僕は…情けない自分を責める事しかできなかった……。声がでなくて、泣きじゃくって……。
何もできなかった…。裕也兄ちゃんを止める事も、謝る事も……。
いつも、いつも一緒に居てくれた…裕也兄ちゃんがあんな顔をするのは初めてだった…。
たぶん、一番傷ついたのは裕也兄ちゃんだった…。
僕は、自分の事だけ考えて…裕也兄ちゃんを傷付けてしまったのだ……。
いつも、抑えてきた筈だった……。裕也兄ちゃんの為と、我慢してきた筈だった……。
裕也兄ちゃんと女の人が笑顔で僕の前に現れた時も、必死に…アレは違う…とごまかしてきた……。
でも、その結果…あの女に裕也兄ちゃんは付け入られてしまった……。
何もかも…僕が悪いんだ…。
裕也兄ちゃんを傷付けた僕も……。悪い虫を分かっていながら放置した僕も……。
みんなみんな……僕の責任だ……。
待っててね…。裕也お兄ちゃん…。
僕は、大量の風邪薬を砕き、粉状にする作業に取り掛かった。
最終更新:2013年08月28日 22:28