運転手も慣れた物で、眉一つ動かさず安っぽいラブホテルの駐車場まで送り届けると、二人が降りるや否や何も言わずにサッサと走り去ってしまった。
「……あれ、お金は?」
「鈴原さん達が会社と直接契約してるみたい。だからアタシが無事に着いたよって鈴原さんにメールしとけば全部オッケーって感じ」
「そ、そうなんだ……」
「じゃ、行こっか?」
「うん……」
車内での会話のお陰か、あるいは現場に到着したことでスイッチが切り替わったのか。余裕を取り戻し柔らかい笑みを浮かべるトモに手を握られ、啓介は生まれて初めてのラブホテルへと覚束ない足取りでチェックインする。
「ここ、基本的に他の人と顔合わせたりとか絶対ないっぽいシステムだからビビらなくても大丈夫だって。どうせ見られたって正体不明の女の子だし、しかもアタシ等ホントは男の子だし」
「そ、そうだけど……」
手を引かれるままエレベーターで目的階まで上がる間も、降りた廊下にも人の気配は全くない。よくテレビドラマか何かに出ていそうな安っぽいホテルと余り変わらないようにも思えるフロア。
「初めてで緊張するのもわかるけど、あんまりソワソワしてたらお客さんに足下見られるから気を付けてね? こんなだけど、客商売って奴だし?」
「お客さん……か。ねぇ、どんな人なの? 知ってる人?」
小鴨のようにトモに寄り添って進む啓介。
「アタシ的にって意味? それならうん、今日の人は常連さんだから知ってるよ。いっつもアタシを指定してくれるしお小遣いも結構くれるんだ、名前とか知らないけど」
「ふ、ふ~ん?」ちょっと得意げなトモの横顔を恐る恐る伺う啓介「で、どんな人?」
「どんなって…………まぁ、変態?」
「へ、変態!?」
「だって、お金払ってでも女のカッコしてる男の子とズッコンバッコンやってお尻ン中に射精したがる男なんか全員変態に決まってんじゃん? しかもさぁ、アタシが一番小柄でパインパンの包茎だからって理由で指名して必死に気を引こうとしてるんだよ? マジ人間として終わってない?」
「そ、それは確かに……ちょっと……」
「それから全部脱ぐより下だけ裸の方が興奮するとか言ってさ? しかもアタシが自分で脱ぐとこ見るのエロくて好きだからってパンツルック限定とか言っちゃってるマジキチだから。そうそう、けーちゃんもアタシと背丈一緒くらいだから見せろとか言われるかも知んないけど、ガン無視ね」
「…………」
部屋に入る前から嫌悪感で身震いしそうになってしまう啓介。
「って言っても一応お客さんだし、面と向かって変態呼ばわりとかはNGだから。逆ギレされない程度に良い子ぶって、あとはあっちの好きな体位で入れてもらって気持ち良いなって思ってる間に勝手に終わってお給料って寸法なわけ。年上とか買ってくれてるとか必要以上に意識して安売りしないって言うか、あんま天狗にさせないってのがコツかな?」
だって、これも一応売買だし……あっちがオナホだと思ってなら、こっちはバイブの代わりだよって頭ん中で小馬鹿にする位で丁度良いんだよ、と笑うトモに青い顔で頷くしか無い啓介。
「そ、そうなんだ……」
「あ……そう言えば、大事なこと忘れてた」とドアを開く寸前で止まったトモ「基本、アタシ等って偽物っていうかフィクションの存在でしょ? だからセックスしてる間以外は赤の他人でプライベートとか一切知らない知らせないが暗黙のルールだから。中には年とか聞きたがるお客さんもいるけど、なんか聞かれても全部シカトかデマで良いくらいだと思ってよね。あっちもマジで期待したりしてないし」
「その子が新人? 大人しそうで可愛いね」
変態というキーワードから連想される脂ぎった中年よりは随分と若そうだ、というのが啓介が受けた第一印象だった。髪をオールバックにした三十代前半くらいの男性はバスローブに着替え、ピンクの照明で桃色に染まったベッドに腰掛けた状態で二人を出迎えた。
「よ、よろしくお願いします……」
声も出し方も、黙っていても構わないと言われた事も忘れ小声で挨拶をしてしまう啓介。
「ほほぉ、確かに初めてっぽいね。初心な感じがたまらないなぁ」
「ひぃっ!?」
ネットリと値踏みするかのような目が怖くなり、思わずトモの背中に隠れてしまう。
「ちょっとォ!」啓介を庇うように仁王立ちになるトモ「鈴原さんから聞いてるっしょ? この子、今日は見学だけなんですけォ!?」
「も、もちろん聞いてるよ! でも見学って事は将来的には抱いても良いってことだし、別に触ったりしないし……とりあえず服を着たままなら見せてくれても良いんじゃないかな?」
「う、うぅぅ!」
覗き込もうと首を伸ばす動きから逃げるように小さくなる啓介。だが、その挙動は客観的に見て内気な少女が可愛らしく恥じらう様子と全く同じなわけで、小柄で細身な女装少年が好物らしい男の食指を刺激しない訳がない。
「だから、この子はダメって……」
「ほんとうに可愛いよ、うん! 君、名前は? トモちゃんと同じくらいに見えるけど中学生? それとも……ひょっとして小学生!? まだ剥けてないよね? ちょっとだけ見せて……」
目が血走っていて、いまにも襲いかかって来そうな勢いだ。
「い、いやぁ……!!」
怖すぎて、女の子みたいな悲鳴が漏れてしまう。
「いい加減にしろって言ってんのが聞こえないのッ!?」
我慢の限界を超えたらしいトモの一喝で部屋の空気が凍った。
「あ……」
我に返ったらしい男も言葉を失ってしっまった。
「あんま、調子乗らないで欲しいんだけど?」くるりと向きを変え、啓介を守るように抱き寄せたトモは不機嫌さを隠そうともしない顔で男を睨む「これ以上、この子怖がらせるんだったら今すぐ鈴原さんにメール打つけど、それでも良いわけ?」
「い、いや、それは困るよ! 悪かった、悪かったから!!」
感染の恐怖も、露見の心配も無く未成年の女装少年を定期的に買うことが出来る環境。その貴重さを誰よりもよく知っている客にとって、仲介役である鈴原女史への苦情報告ほど怖い物は無い。一瞬でイニシアチブを奪われてしまった男が、きっと一回り以上は年が離れているであろうトモに向かってペコペコと頭を下げる姿は哀れを通り越して滑稽にしか映らない。
「大丈夫、大丈夫だからね。けーちゃん」
「う、うん……」
ぽんぽんと優しく背中を叩かれながら囁かれ、横目で男の情けない姿を盗み見していると少しだけ恐怖心が和らいでくれる。
「そ、そうだ! お詫びにお小遣いあげるからさ、終わった後でケーキでも食べに行って元気出してくれよ! もちろん、その子の分も出すし!」
「…………ふ~ん?」
トモの目から険しさが薄れてゆく。
「お、お小遣いって……お金なんかで……」
と言いかけて啓介は思い出す。確かに心まで金で買おうとする男の姿勢には憤りしか感じられないが、自分達と男の接点は今、ここだけなのだ。互いにプライベートには一切踏み込まない上に、女装して体を重ねている間しか、この世に存在しないトモ達に確実に誠意を示す方法は現金しかないのだ。
それがどんなに即物的、短絡的にしか見えない浅ましい結論だとしても。
「どうする、けーちゃん?」
「……わかりました」
ぱちり、と啓介にしか見えない角度で得意げにウインクして見せるトモ。
やったね! と言いたげに。
「け、ケイちゃんていうのか! もう怖いことはしないし……えっと……ほら、どっちみちトモちゃんとしてる間はアレだし、そこから動かなくても良いから少しだけ見せてくれないかな?」
「とかいって、スカート捲れとか言い出したらアタシも速攻帰るからね!」
「しないしない! 無理強いは絶対しないからっ!」
「そこまで言うなら……良いよね、けーちゃん?」
男の言うとおり、行為が始まってしまえばイヤでも見られるのだ。啓介が頷くと、トモはそっと抱擁を解いてから啓介の後ろに周り背中に寄り添ってくれる。
「お、おおっ!」男の目が興奮で大きくなる「い、良い……すごく良いよ、うん! そのまま腕を背中に回して前をもっと見せて……うんうん、可愛いよ!」
「あ、ありがとうございます……」
赤く染まった顔をウイッグの前髪で隠し、斜め下に逸らしながら恥じらう啓介。ミケの持ち物だった所為か少し大きすぎる制服を着たツインテールの女装少年が初々しく内股を擦り合わせる様子に、いまにも涎を垂らしそうなほど大喜びな男。
ただただ気持ち悪いだけの筈なのに、自分の女装姿を認められ褒められているみたいで少しだけ嬉しくなってきてしまう啓介。
「そういやさぁ?」そんな啓介の横からジト目で顔を出すトモ「アタシ、部屋に入ってから一度も褒めてもらってないんですけどぉ! 張り切って新しいピアスしたりパンツも新調したってのにガン無視とか、なんかヒドくない?」
「え? あ……」
サービス不足を指摘され、またも男が顔色を変える。
「あ~あ、なんかヤル気なくなったって感じ? ヤらせてあげるアタシのことスルーして他の子ばっかべた褒めされてさ、な~んかアソコ乾いちゃったかもぉ~?」
「そ、そんな……もう払ってるのに……」
「えー」頬を膨らませたままのトモ「ンなこと言ったって、アタシ悪くないし! なんかメンドクサクなっちゃったし、う~ん……」
わざとらしく考え込む振りをするトモのペースで話が進んでゆく。
「た、頼むよ! トモちゃん!」
「……じゃあ、なんか気分じゃなくなっちゃったからフェラ無しで。セックスさせてあげるけどローションで。あと中に出してもお掃除もなしで」
「それならせめて、トモちゃんの手でローション塗ってくれないかな?」
「え~っ! それって要するに手マンじゃん!?」
「あと、出来ればで良いけどケイちゃんにも手伝ってもらったりは……」
「だからぁ、けーちゃんはダメって何回言わせる気!?」ぎゅっ、と後ろから啓介のウエストを抱きしめて頬摺り「この子、正真正銘の処女なんだからね! それどころかお口だって手だって綺麗なままだっての! おちんちんなんか触ったこともないアタシのお友達にイキナリ生手マンとか、調子こくのも大概にしとけっての!!」
「しょ、処女って本当に? 触ったこともないの!?」
或いはトモの計算だったのか、処女という単語に早速食い付く男。
「……えっと……はぃ……」
女装少年だと知っているのなら、当然ながら啓介自身の持ち物以外の話に違いない。そう結論づけて上目遣いに小さく頷く啓介。
「じゃあ、ここで頼めば僕が初めてになるんだよね!」
「い、いちおうは……」
「だったら追加で三……いや五枚渡してあげるから手で握っててくれないかな? もも、もちろん軽く握るだけで良いし、扱いてとか脱いでとか絶対言わないからっ!!」
「あ、あの……でも……」
「うわ必死すぎ! 正直引くよね~?」手で握ったら五千円くれるって、と啓介にしか聞こえない小声で呟くトモ「でもでもお金くれるって言ってるし、おちんちんに慣れる練習だと思って軽く握ってみる? 親指と人差し指で輪っかを作って軽く握るだけなら汚れないと思うし」
「……えと……えっと……」
「そ、それで良いからっ! 軽く持っててくれるだけで良いからっ!!」
「れ、練習……」
確かにトモの言うことにも一理はある。遅かれ早かれ手淫や口腔性交、果てはアナルセックスまで体得し、体中何処ででも客の欲望を受け止められるようにならなくてはいけない。
それも、出来るだけ早く。
「ローション塗るだけなんだから超簡単だし、アタシも一緒にやるから。ほら、大丈夫だから手を出してみて?」
「う、うん……」
曖昧に頷いた啓介の掌にトモの自前らしいローションがゆっくりと垂らされる。
「慌てなくて良いからね。先ずは……こーやって手に馴染ませてぇ、指の間とかにもタップリ絡ませて体温で温めて……えへへっ、ヌルヌルして面白いっしょ?」
肩を密着させながら、トモの動きを真似るようにして独特の感触と粘度を持つ液体を全体に塗り込めてゆく啓介。
「な、なんか泡石鹸で手を洗ってるみたいな……」
「あ、その例え上手い! 頭良いじゃん!」
「なぁトモちゃん? そろそろ……」
「はいはい、じゃあサッサと脱いじゃえば?」
予想通り、男はバスローブの下に何も付けていなかった。同じ男性だし、裏ビデオで見たことくらいはあるので勃起した成人男性の性器で取り乱したりはしないとは言え、気持ちの良い物でも無い。
そんな男の前に自然な動きでトモが跪き、男の右横に啓介が腰掛ける形で最初の奉仕は始まった。
「てか、こんなにギンギンにしちゃってさ? 知ってると思うけどアタシ顔射は嫌いだから。勝手に出したら怒るかんね?」
「だ、大丈夫だから早く頼むよ!」
「ったく、犬みたいにガッつくなっての。んと……よいしょっと」
「お……おおっ!」
なんの躊躇いもなく先端に顔を近づけたトモが両手で包み込むように握ると、それだけで男は獣のような嬌声をあげビクビクと震える。
「力、入れなくても平気だから……こうやってヌルヌルで擦る感じでシコシコシコっと」
自慰よりも優しいタッチで極力、刺激を与えないようにローションを塗してゆく。
「うわぁ……」
「ね、簡単っしょ? けーちゃんも、左手だけでいいから軽く握ってみて。怖かったら指だけで良いからキュッと……ゆっくり、ゆっくりね?」
逃げ腰のまま腕だけを伸ばし、男から顔を隠しながら啓介自身のモノより二回りは大きいペニスを恐る恐る指で摘まんでみる。
「うぅ……」
「おおっ、おおおっ!」
余り気持ち良くはない筈である陰茎の根本付近。そこを親指と人差し指で軽く挟んだだけで男の体は歓喜に震える。きっと物理的な刺激以上に、無垢で内気な女装少年の真っ新な指を征服した感激が大きいのだろう。
「どう、けーちゃん?」
「な、なんだか生暖かくて……固くて柔らかくて、うぅぅ……!」
我ながらボキャブラリーが足りていないとは思うが、それどころではない。
「そのまま、ちょっとだけ動かせる? ほんのちょっとで良いから」
「う、うん……」
ほんの数ミリ動かしただけで中の血管が脈動するのを感じる。正直言って気持ち悪いが、それを口に出すべきでは無いと自制できる程度の理性は辛うじて保てている。
「トモちゃんは上手いし、ケイちゃんの細い指も良いよっ! こんな可愛くて小さな子二人に手でシてもらえるなんて感動だよっ!!」
「だから、ホント勝手に射精しないでよ!?」
「わ、わかってるって……うぅっ!!」
「って言ってる側から先、膨れてるじゃん! どんだけ興奮してんのよっ!」
トモの物言いは辛辣だが、啓介的には男にも多少の同情の余地もある。もしも自分が可愛い女の子二人を侍らせて手で擦って貰ったとしたら、我慢出来るかどうか怪しいものだし。
もっとも啓介の想像の中での相手は飽くまでも同世代か、あまり年の離れていない少女。
だから、こんなに気前よく現金を払えるほどの大人が、自分より十歳は若い未成年に翻弄され小馬鹿にされながらも必死に媚び、ちょっと触っただけで大袈裟に騒いでいる様を間近で見ていると先程以上に滑稽に見えてきて余裕さえ生まれてくる。
「……ーちゃん? けーちゃん! ちょっと、けーちゃんってば!」
「え? あ……トモ……」
「そんくらいで良いよ。いまにも射精しちゃいそうだもん」
いつの間にか啓介は指三本で小刻みに扱いていた。そして、そのお陰かローションで光る肉棒は触る前以上に大きく硬くなっていた。
「あ…………!」
そんな男の興奮する様に、ちょっとだけ鼓動が早くなる啓介。
「ほんと、お尻に入れただけで爆発しちゃいそうじゃん。カッコ悪ぅ~!」
「で……でも、ほら、トモちゃんの中って二回目の方が気持ちいいし……」
「精液でタップタプのお尻掻き回すの好きだもんねぇ? でも今日は舐めて綺麗にとかしてあげないって約束だし。忘れないでよね?」
「お、覚えてるって! その代わり……その、ケイちゃんに持ってもらったままで……」
「え? あ、あの……は……」
「そこまでさせンだったら、けーちゃんも一緒にシたって鈴原さんに連絡しといて貰わないと、けーちゃん丸損になっちゃうんだけど? ヤリ逃げなんて甘いコト考えてたら二度と入れさせてやんないんだから!!」
危うく無条件で頷きそうだった啓介を遮って釘を刺すトモ。
「も、もちろんだよ! もちろん!」
コクコクと引きつった顔で頷く男を見て納得したのか、立ち上がったトモはショートブーツを脱ぎながら軽々とベッドに飛び乗り、仰向けに転がる。
「じゃあヤらせてあげるけど……脱がしてくれる? それともぉ……」
「そ、それは……」
「あははっ! やっぱ脱ぐトコ見たいんだ?」ケラケラと笑いながら返事を待つこと無くベルトを外すトモ「それじゃ、ちゃ~んと見ててね?」
小悪魔の笑顔でウインクしてから、下着ごとショートパンツを脱ぎ始めるトモ。わざと動きにくそうにモゾモゾと体を揺らし、こちらに股間が見えるような角度でお尻を持ち上げ焦らすように徐々に両手で下ろしてゆく。
「んしょ、んしょっと」
そうして真っ白な臀部が半分ほど露出したところで動きを止め、今度は股を閉じてから両足を垂直に掲げ、幼い性器や濡れ光る肛門まで全て見せびらかすように上下に動かしながら膝の位置まで上へ上へと下ろして……最後は膝から足先までを開帳しつつ寝台の外へと不要になったパンツと下着を放り投げた。
「「……………」」
その間、啓介と男はトモの裸の下半身を瞬きするのも忘れながら見入ってしまっていた。
「…………ちょっと、寒くなっちゃった……」
そう呟くトモに、物欲しそうに濡れた瞳で見つめられた男は啓介を振り払ってトモの股間にかぶりついて力任せに膝を割り広げる。
「いい、入れるよっ! 入れるからね!!」
「あんっ」と色っぽい声を上げるトモ「まだだよ。まだ、だぁ~め! けーちゃん、こっち来て? アタシの隣」
押し込まれる寸前だった切っ先を片手で握って逸らしながら、もう片手で自分の隣をぽんぽん叩いて誘うトモ。啓介は言われるままベッドに乗り、導かれるままトモと添い寝するような格好で横になる。
「えっと……トモ?」
至近距離で見つめ合うと、下手な女の子よりもトモの方が美少女だと改めて思ってしまう。それは造形とか化粧は余り関係なく、些細な仕草や表情や魅せ方の違いによるものなのだろう。
「アタシ、けーちゃんに入れて欲しいな?」
顔は啓介と向き合いつつ、ちらりと横目で視線を送ると男の顔にも理解の色が浮かぶ。
「そ、そうだよね! どうせなら……ケイちゃん、また握ってくれる?」
「あ……」一呼吸遅れて啓介にもトモの意思は伝わった「……は、はい!」
添い寝したまま啓介が手を伸ばして遠慮がちに竿を握ると、トモが自分の手で先端の角度を合わせながらズリズリと下がり、お尻を上げて位置を調整してくれる。
「あふん……熱……」
トモの体で最も敏感な部分。そこと鈴口が触れ合って熱い先走りを粘膜で感じ取ったトモが啓介の唇に甘いと息を吹きかける。
「と、トモ……」
「これで入ると思うから……食べさせてくれる?」
それは啓介と男と、どちらに向けての言葉だったのか。ともかく啓介が手で押し込むのと同時に男が腰を突き出し、トモの数倍はあろう肉棒は真っ白な菊門を目一杯に広げながらも何の抵抗もなく啓介の手が当たるまでトモの直腸に飲み込まれてしまった。
「んんんんんんんっ!」
「おおおおお……!!」
「うぁ!」
三者三様の感嘆の呻きも一瞬のこと。元から射精寸前まで高まっていた男は、何度も貫いて十分な開発が済んでいると熟知している女装少年の体内を遠慮なしで味わい始めた。
「あん! あはん! やん、激しいよぉ……!!」
男の動きに合わせ、グッチュグッチュとお世辞にも上品とは言えない音が立つ。倍近い体格差で翻弄される華奢なトモだが、その顔に浮かんでいるのは乱暴に扱われることへの苦痛ではなく他者と交わることでしか得られない快楽に溺れる寸前の歓喜だ。
「トモちゃん、やっぱり狭くてキツくて最高だよ! トモちゃんも気持ちいいだろ!?」
「うん、気持ちいいっ! 大人のぶっ太いおちんちん、たまんないよぉ!!」
「そうだよね! トモちゃん太いのが好きだもんね! 今日はどうして欲しい、どこを虐めて欲しいのかなっ!?」
「奥っ! もっと奥っ! 一番奥ズンズンしてぇ!!」
「……トモ……」
タクシーの中で聞いていたとは言え、こうして見たことも無い男に抱かれて悦んでいる顔を至近で見せつけられ少なからずショックを受けてしまう啓介。夢中になっている今は耳に入らないだろうと心の片隅で諦めながらも小声で名前を呼んでしまう。
が……
「うふふっ! どうしたのかな、けーちゃん?」
汗塗れの顔を更に近づけ、ぺろりと鼻先を舐められてしまった。
「え? いま……」
「しっ!」
トモの視線に従って男の方を盗み見してみると、トモが喜ぶ最深部を責めようと必死になっている男はすっかり下半身に気を取られている。
「ね、けーちゃん?」ゆっさゆっさと揺さぶられながらも器用に息を継いで喋るトモ「あのね、アタシ、けーちゃんのベロ、舐めたくなっちゃった」
「え? えぇっ?」
「こいつの口、タバコ臭くてね、ヤなんだ。けーちゃんさえ嫌じゃなかったら……はふん! 二人でベロの舐めっこして、見せたら興奮してくれるし、キスもしなくて済むんだ」
セックスの最中のトモは全身から甘酸っぱい発情臭を放つ。男に抱かれて間違いなく快感を得ているであろうトモの妖艶に火照った顔は、文字通り目と鼻の先に。
「ね、けーちゃん。可愛いベロ……見せて?」
「……………………」
口から鼻から流れ込む甘い香りに誘われるまま、トモの吐息を吸い込むように開いた唇の中から少しだけ舌先を覗かせる啓介。
「んちゅ……」
その先端を祝福するように、そっと目を閉じ口付けで迎えるトモ。
「っ!!」
既にトモのアヌスで童貞は捨てているとは言え、キスは初めてだった啓介。軽く舌を吸われただけで顔は火照り頭にまで血が上って反射的に舌を引っ込めようとする。
「あん、逃げちゃらめらってばぁ!」
が、それよりも早く伸びてきたヌルヌルの舌が絡みついてきて放してくれない。男に体内をに貪られて自由に動けないはずのトモの小さくて柔らかい舌で粘膜愛撫される気持ちよさに逆らえない。
「うあ……あ……あ……!」
そして手を引かれる様に舌を引き出されて……
「ちゅるるるるるるっ!」
「んん~~~~~んっ!?」
唇で挟まれ吸われ、反射的に男のペニスを握る手を締めてしまう。
「ううっ、それ良いよケイちゃん! なんか二人一緒に抱いてるみたいな……って、二人とも何をっ!?」
「なにって……けーちゃんの初キッスに決まってんじゃん」
「~~~~~~っ!!!」
「どう? どう?」と舌舐めずりしながら、驚きの余り思わず動きを止めてしまった男に得意顔で見せつけるトモ「こういうのも興奮するっしょ? 特別サービスなんだからね!」
「す、する、それ凄く興奮するよ! すごいよ二人とも! まだ子供なのに凄いよ!」
女装少年同士の痴態に煽られ、男が再び腰を振るい始める。
「ああん太いぃ! さっきより大きくてかちかちぃ! これ、気持ち良いよぉっ!!」
「ケイちゃんも、さっきみたいに手で締め付けて……おおおっ、それ凄く良いよ! トモちゃんも中がウネウネして吸い込まれそうだ!」
「けーちゃ、けーちゃんも一緒に! 早くっ、早くぅ!」
男がラストスパートに入ると、小柄なトモは嵐に飲まれた小舟も同然。関節という関節が外れてバラバラになってしまわないかと思ってしまう程に激しく揺さぶられている。
「と、トモ……」
「トモちゃんの中も締まって……出すよっ! もうすぐ、ありったけ出だすからっ!!」
「あはん、お腹の中で膨らんで……けーちゃんもベロ! ベロ早くぅ!!」
失禁と間違いそうな腸液の染みをシーツに広げ、暴れ回る幼い勃起の先端から透明な滴を撒き散らし、泣き出す寸前の様に蕩けた顔で他の男と交わり快感を露わにしながらもトモは啓介を求めている。
もう満足に体を動かすことが出来ない状態でも一生懸命、自分を見つめ自分に向けてに舌を差し出すトモのいじらしさに応えたくて、今度は自分の方から舌を吸って口の中で愛撫する啓介。
「トモ、トモっ! じゅるるるるるるっ!!」
「あぁぁぁぁぁんいぐ! いぐいぐいぐいぐ、あちゅいのいっぱい出ひゃれれいぐっ! アラシ、けーひゃんとキスしにゃがらお尻に射精しゃれれいぐっ!」
「トモちゃん、トモちゃんっっっっっっっっ!!」
そして最後の一突き、とばかりに限界まで押し込んだ男が達すると、握っていた啓介の手にも射精特有の脈動が伝わり、直腸内粘膜に熱い飛沫を浴びたトモの体がエビ反り跳ね上がる。
「いぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
射精に反応した一足遅れで訪れたトモのアクメ。射精並みの勢いで何回もカウパー氏腺液を吐き出し、女性の様に痙攣を繰り返すトモのドライオーガニズムは括約筋が力尽きるまで続いた。
「あ~あ、お腹空いたぁ!」
帰りの送迎タクシーの中。ホテルの部屋を後にする時に啓介の方から無言で手を握って離さないでいると、それだけで安心したらしいトモは明け透けな女装少年のままでいてくれている。
「ね? ね? お小遣いもらったし、どっかで何か食べて帰らない? ね~~~っ?」
「う、うん……」
「やた~~っ!!」
満面の笑みになり、少女同士がじゃれ合うみたいにコロリと啓介の足を枕に寝転がるトモ。
「…………あれ? あれれっ?」
が、スカート越しに側頭部を突く突起物に気がついた。
「っ!!」
「けーちゃん、これ……もしかして、おっきしてる?」
「~~~~~~~っ!!」
これはもう、何も知らない何も聞こえない作戦しかない。
「ねぇ、けーちゃん?」座り直したトモ、こんな有様でも握った手だけは離したくない啓介の耳元に唇を寄せて囁く「実はアタシも、ちょっと射精したいかなーって思ってたんだけどぉ?」
「う、うん……」
「けーちゃん、手で擦れるようになったし事務所に帰ったら二人でコキっこしない? お化粧落とす前に女の子のカッコのままで?」
「っ!!」
「あ、今ビクンってなったよ? 可愛い~ぃ!」
「だ、だって……」
「けーちゃん、まだ知らないと思うけど事務所のお風呂って大きいんだよ? だから後始末も楽ちんだし他の子も殆どは直帰だから……そうだ! キスしながらシコシコってどう? 一人でオナニーするより絶対気持ち良いって思うんだけどぉ?」
頬を真っ赤に染めて返答に困る啓介の様子にトモの小悪魔スイッチが入る。一番端に逃げる啓介を追い詰め体を密着させ、握り合った手に強弱を付けながら残った片手でスカートを持ち上げる物体を撫で回し、トドメとばかりに吐息を乗せた囁き攻撃。
「アタシのおちんちん、興味あるんでしょ? けーちゃんだったらニギニギでもシコシコでも好きなだけ弄らせてあげても良いよ。それこそ、けーちゃんがしたかったら舐めっこでも……」
「ててて、手だけでいいからっ………………あ!」
思わず大声を出してしまった啓介、恥ずかしさの余り頭から湯気を上げながら俯いてしまう。
「けーちゃんのそういう可愛いトコ大好きっ! 帰ったらお風呂でいっぱい洗いっこしようね? 特にぃ、おちんちんはヌルヌルにして重点的にね?」
心底可笑しそうに笑い転げるトモと、汗と湯気で干上がってしまいそうな啓介を乗せたタクシーは深夜の街を埋め尽くす無数のライトの中に溶けていった。
最終更新:2014年02月01日 12:17