単発
「ただいま」
2人して、無人の家に挨拶した。無人なので、当然帰ってくる返事は無言。誰も居ないのを、知っているけれどきちんと確認してから、自室に向かう。
2階に上がったところで、動都と別れる。最近習慣になった、
「静奈。暇になったら私の部屋ね」
うん、と心の中の喜びを懸命に堪えてそう伝える。動都は気分を良くしたみたいで、僕が言ったことと同じ事を、こちらは喜びを抑えもせず返してきた。せめて、公共の場所では普通にして欲しい。
余りに嬉しそうだったのと、後が怖いので僕は何も言わず、曖昧に微笑んで動都を見送った。部屋の扉を閉めるまで動都はこちらを向きっぱなしだったのでずっと手を振っている羽目にだった。
さて、と、迅速に自室に荷物を置く。と言っても鞄だけだ。
迅速に動都の部屋に向かう。ノブを回そうとして、それを止めて扉をノックした。
「入るよ?」
「うんー」
うきうきはまだ止まらないようだ。最初は部屋の左から響いていたのに、“ー”の部分が右から聞こえた。
とりあえず、突撃。ノブを回して、うきうき天国(仮名)に侵入する――っ。
「静奈ー、どっち着たい? 私決められないー」
訂正。うきうき天国なんかじゃなくてお花畑。気を抜いたらカーペットの床が人工芝に変わってしまいそうだ。
そんなお花畑1歩手前の空間をぴょんぴょん跳ねるウサギ(比喩)1匹。両手にはデザインが違うワンピース2着がぶら下がっている。因みに本人はいつの間にか制服から白いワンピースに着替えている。
「……どっちでも良いよ」
本当にどちらでもいいけど、このウサギは何とか退治しなければならない。いっそ動物園に引き取ってもらおうか。衣食完備と言っただけなら絶対吊られる。僕なら吊られる。僕が吊られるなら動都も吊られる間違いない。
「それはどっちも着たいって事かなー?」
うははー、なんてオーバーヒートをぶっちぎって昇天すらしてそうなのに跳び回る速度は一向に衰えてない。恐るべしマイシスター。
「まぁ、それでも良いけど」
僕の言葉が尻すぼみになっていったからか、動都は目の端を釣り上げた。噴火5秒前とかそんな感じだ。
「両方とも着たいよー、とか喚いてよ」
「いや」
「静奈のバカー。とりあえず、はい」
突きだしてきたのは右手。黒色でゴスロリ風味の方だった。奪うように動都の手からひったくる。
「外出ててよ」
「女の子は見せ合うんだよー?」
「いや」
「ちぇー」
悪態を吐きながら、動都が部屋を出て行く。本来なら僕が出て行くべきだろうけど、廊下で着替えるとか吐き気がするのでこういう流れになる。
外であんまり待たせる訳にもいかないので、ぱっぱ、と制服を脱いで、ワンピースを着る。
途中、鏡の中に居る自分と目があった。
男らしく居ようと、肩より少し上で切りそろえた、艶やかな黒髪。だと言うのに童顔で、逆に少女のような印象を受ける。
身体の線は男にしてはやけに細く。ゴスロリチックなワンピースを着ている今なら、100人中100人が性別を間違えるに違いない。
そんな少女の股間には、当然有るはずの無いものがあって――。
「――ぁ、」
知らぬ間に、僕のモノは盛っていた。気付いた途端、今まで冷静を気取っていた自分があっけなく崩れていった。
扱きたい。あの不気味に反り返っているグロテスクな肉棒から白濁液を吐き出させてそこらじゅうをぐちょぐちょにしてみたい。
おぼろげな妄想を具体的に想像すると、もう歯止めが効かなかった。立ったまま、右手でワンピースが掛かっている自分のモノを扱き上げる。
「っ――ぁっ」
びくん、と刺激が走る。とても気持ち良くて、それ以前に背徳的で、狂った犬のように僕は何度も、何度も手を往復させる。
鏡に映った自分は、例えようも無いほど、幸福そうに、顔をゆがめていた。
「は、ぁ――っ、ひぁ……っ!」
ついに、足が自分を支えられなくなった。がくん、と倒れて、それでも快楽に歪んだ自分の顔が見たくて、結跏趺坐のような態勢をとる。そのまま、続きをひたすら続ける。
口から涎が垂れそうになった。口を閉じようとしても、快楽でそれどころじゃなく、結果として涎が垂れた。
綺麗だったワンピースは見るも無惨によれていて台無しになっていたけど、非常に興奮した。
もう少しで射精感がこみ上げてくる、なんて思ったときに、
「静奈、おそ……またフライング?」
呆れた声がして、一気に我に返った。振り向いて部屋の入り口をみると、動都が呆れた表情で立っている。
「ぁ、どうと……」
半ばで止められた自分のモノは痛いくらいにずきんで自己主張する。なのに、それを無視できるほど、動都の登場は予想外だった。と言うより、頭の中からとんでいた。
「私が外にいるからって、大胆よねー。この変態さんは」
「――ぁ、」
いつものように罵倒されて、――また、おかしくなった。
動都はゆっくりとこちらに来て
――早く来て。
僕の目の前に立って、
「言ったでしょ」
――早く。
冷たい声で諭してくる。
「私の居ないところで」
――早く、早く。
しゃがんで、顔と顔が近づくくらいにまで近づいた。
「えっちなことしちゃだめって」
――早く、犯してよぉッ!
動都が唇を重ねてきた。目を瞑るロマンティックな事はせずに、ただ情欲の赴くままに舌を絡めて、互いの腔内を貪り合う。
僕を弄んでいる動都の瞳にも、狂ったような情欲の炎が見て取れた。
そうして僕たちは両方とも、ただ本能に赴くままの獣と化した。
絡めていた唇を離す。繋がっていた銀色を引き千切って、僕は動都の小振りの胸にむしゃぶりついた。
「静奈、赤ちゃんみた――いっ!?」
無視する。無視して、乳首を吸い上げる。途中で悲鳴に変わって、動都は僕から離れようともがいたので、両手を背中に回して逃げないようにする。
「なまい――きっ」
「っひぁっ!!?」
手で自分のアレを握られて、反射で力が抜けてしまう。その僅かな隙で、一瞬だけリードしていた力関係は完全に覆されてしまった。
「ダメだよね~? どMの静奈がこんなことするなんて」
「ぁ――いたっ」
動都は、何も潤滑油が付いていない僕のモノを直接扱きだした。勿論、相当痛い。痛みで泣いてしまいそう。
「……いいわ、ぬらしてあげる」
だらり、と涎を、ぼとり、と落とす。気持ち悪くなんか全然無くて、動都の体液が潤滑油になるのは嬉しくてたまらない。
ぐちゅり、ぐちゅり。
「づ――ひっ」
甘美過ぎる。もっと、もっと欲しい。もっとして欲しい。
「女の子の服装して、男の子のモノ弄られて、変態」
「うん、僕は変態だよ……っ。変態だから、もっとして……っ」
動都の言葉責めに、僕は抵抗すらしなかった。
手の往復運動が早まって、射精感がすぐにこみ上げてくる。
「で、る……よっ!」
――どく、どくっ!
返答させる暇もなく、精液が尿道から飛び散った。真上に吹き上げて、僕と動都を均等に汚す。
「――もう、もうちょっと早く言ってよ……」
そう言う精液に塗れた動都の顔はとても嬉しそうで、全く説得力がない。
「ごめん」
僕もニヤけているのが自分でも分った。
2人とも体中を濡らして、でも、2人とも全然足りない。
「動都、来て……」
「普通、私のセリフよ、それ」
冗談を交えつつも、動都は僕を倒して、上に跨った。
慣れた手つきで、僕を自分の中に埋めていく。
「「――くぁっ」」
同時に全く同じ喘ぎ。僕は千の手のような動都の中に耐えきれず。動都は槍のような僕のモノに耐えきれず、2人の快感が2人を襲う。
思考が重なる、静奈が動都に、動都が静奈に。
後はもう、単純な作業だった。
僕は腰を跳ね上げて、動都を貫き。
私は腰を下ろして、静奈を犯す。
身体に行き渡る快楽。
身体を満たす満足感。
「い、いくよ――どう、とぉっ」
「わたし、も――しず、なぁっ」
「――――っ!!!」
――絶叫を上げて、2人は寸分違わず同時に絶頂に達した。
~
「静奈ー。何で脱ぐのー」
「汚れてるし」
「黒いんだから分らないじゃない」
「気分が悪いんだよ、もう」
「私は大好きだけどー。あ、言ったっけ」
「……へぇー」
「あー。拗ねてる」
「拗ねてない」
「静奈のだから……もぅ、」
「そっちが拗ねてどうするの」
「先に言ってよ、恥ずかしい」
「……一緒に言おうよ。1人だと僕も流石に恥ずかしいもん」
「――大好き。愛してる。“静動”」
最終更新:2013年04月27日 17:50