前日がサークルの飲み会だったこともあってか、由利は日課である2c○の女装SSスレの観覧は
せずにその日は簡単にシャワーを浴びて歯を磨き、下着のまま寝てしまった。次の日、酒のおかげ
からか、まだ空が薄暗い早朝の6時に目が覚めてしまった。
「うわ…こんな時間に起きたの高校の時の朝練以来だわ。……ラジオ体操でも行ってこようかな」
耳を澄ますと、若干聞き覚えのあるピアノの伴奏と独特の声が聞こえてくる。それを聞いてなん
となく言って見たが、当然のことながら行く気はなかった。とりあえず、得意の二度寝でもう一回
夢の中に戻ろうとするが、なぜか目がさえて寝ようとしても眠れない。
(講義のある日は当たり前のようにして遅刻してるのに…。)
頭の中で少し愚痴った後、どうしようかと部屋を見渡す。すると机の上においてある、親から大
学入学祝いに買ってもらった自分専用のノートパソコンを見て思い出す。
「あぁ…そうだ。女装スレ見るの忘れてた。」
そう独り言を、ボソッと呟いた後机に座りノートパソコンの画面を開ける。ノートパソコンはい
つも休止状態にしてあるので勝手にデスクトップの画面が開く。そして、ブラウザのお気に入りか
らブックマークしてあるスレッドを開く。さっそく新着がないか確認する。
(今日は……お、あるある)
そこには、男装した女性に強制的に女装を強いられた男性との結婚生活を題材としたSSが投下
されていた。
「この現実ではありえないシチュエーション…辱められる男の心情…やっぱ最高だわ…」
投下された分を前回の投下分と一緒に、自分の頭の中で勝手にアニメーションを作りながらゆっ
くりと見ていく。これが、由利にとっては毎日の楽しみの一つとなっていた。そして、読み終わっ
たころには7時になろうとしていた。昨夜、結構な酒を飲んだのにも関わらず、腹が減ってきたの
か、腹の虫が弱々しく鳴く。
「久しぶりに朝飯でも食べようかな。」
大きなあくびをしながら、下着姿のままだらしなく一階の台所に向かう。途中、玄関が勢いよく
開く。入ってきたのは、ラジオ体操から帰ってきた弟の敬二だった。
「ただいまー。あれ?由利姉早いね。いつも寝てるのに。」
「うるさいよっ。あ、そうだ。姉ちゃんがたまには料理してあげようか?」
「いいよ。由利姉がなんか作ると食べれるかわかんないから。」
そういって、敬二は台所に向かって走っていく。
(あの糞餓鬼……)
殴ってやりたい気持ちを抑えて、脱衣所に行き短パンと赤色をベースに簡単なプリントが施され
ている服を着込む。そして、洗顔、歯磨きをして少し長くなってきた髪をポニテ風にゴムで縛ると、
ようやく台所に向かう。
そこには、食パンにバタークリームをつけて2つ折にしたサンドイッチを敬二が頬張っていた。
机の上にはもうひとつサンドイッチがのっていた。
「…これ、私の分?」
「違うに決まってるじゃん。俺が食べる分だよ。」
由利は確実にそういうと思っていたが、『もしかして』という可能性にかけて言ってみたが、言
うだけ無駄だった。由利は少しため息をつき、机の上においてある食パンを取ると敬二同様サンド
イッチにして頬張る。由利は、ラジオ体操のスタンプ表を見ながらサンドイッチを食べている敬二
の顔をじっと見る。
(黙ってればかわいいのに…どうしてこんな生意気になっちゃったんだろ)
敬二は小学生に入るまでは大人しい性格で、どちらかというとすぐに泣いて由利を困らせていた。
幼稚園ではいつも女子とおままごとしては、男子にからかわれていた。誕生日会も来るのは殆ど女
子だった。しかし、小学生に入りサッカーを始めた時から徐々に性格が変わっていき、今ではどち
らかというと、やんちゃな性格だった。しかし、いつも外で遊びまわっているせいか、体の線が細く
顔もショートヘアーに相まって、瞼が二重で目も大きくクリッとしているせいか、近所の人たちに
は、今も女子に間違えられることがある。
敬二はじっとこちらを見ている由利を不審に思い、話しかける。
「……な、なにみてんのさ。俺の顔に何かついてるの?」
「え、あ、いや、なんでもないよ。いや、まじめにスタンプ帳みてるなぁって思って。」
「あ、これ?このスタンプ全部集めたら母ちゃんが、500円くれるんだって。いいだろぉ~」
そういいながら、敬二はスタンプ帳をやたら見せびらかす。
「あ、そうなの…はは、いいね。」
(そんなのコミケの交通費の足しにもならないよ…)
もう大学生の、それにバイトも経験したこともある由利にとってはまったく羨ましくなかった。
「ふふん。ほしがっても分けてやんないから。これは仮○ライダーアギトの変身セットを買うために
貯金するんだ。……あっ!そういえばもうアギト始まってる!」
敬二はあわてて時計を見ると針は8時を指している。この時間は、敬二の大好きな戦隊モノ(特撮?)
が始まっているのだ。あわてて敬二は、隣のリビングに行きテレビをつけてチャンネルを合わせ、
番組を見る。幸いまだオープニングの途中だったので間に合った。
「ふう…間に合った……」
「あんた、小学4年にもなってそんなもん見て恥ずかしくないの?」
「変なアニメばっかり見てる由利姉より恥ずかしくないよ」
敬二がテレビを見ながら、台所ごしから聞こえる由利に反論する。実際、由利は実際に友人から借り
てきた地方ではやっていないような少々マニアックなアニメのDVDを見ているため反論できない。
「この餓鬼はまったく……」
最近はこの調子でいつも由利はおちょくられている。いい加減、由利も少し仕返しをして減らず口を
黙らせたいと思っていた。
(あぁ…なんか餓鬼相手にむかつく自分も情けないけど……なんか無いかねぇ~…あ、そうだ)
由利は何かを思いつくと、急いで2階の自分の部屋に入る。そして、箪笥の一番下を開ける。そこに
はコスプレに使ったのだろうか、様々な衣装が入っていた。
「確かここに……あった!」
由利は散々漁って、一着の衣装を取り出した。それは、プリ○ュアというアニメに出てくる、ブラック
という少女が着ている衣装であった。しかし、それはスパッツにヒラヒラとしたスカートや、胸元に大き
なリボンがあしらってあり、とても男が着るような物ではなかった。一つ幸いなのは、そのアニメが由利
が住んでいる地方では放送されていないということだった。この衣装は由利が初めて買ったものだったが
サイズが小さすぎて着れなかったが、どうも捨てられずとっておいた物だった(対象年齢が低いので当然
といえば当然だが)その衣装を見ながら、由利は不気味に微笑む。
「ふふ…これをアイツに着させて……でも、どうやって着せようかな…。」
由利は敬二が見ている番組が終わるまで、どう着させるか、そして着させた後はどうやって楽しもうか
計画を練っていた。敬二はそんなことも知らずに、食い入るように番組を見ていた。
「あ~おもしろかった。やっぱりアギトはカッコイイなぁ」
テレビの画面からはスタッフロールとエンディングが流れる。敬二は背伸びをすると、テレビのスイッ
チを消す。敬二が今からどうしようかと、部屋をキョロキョロ見渡していると、由利が時間を見計らった
ように敬二がいるリビングに向かってくる。もちろん、手には先ほど見つけた衣装を持って。そして、由
利が敬二の後ろから声をかける。
「ケ~イちゃん。ちょっといい?」
敬二が振り向くと、いつもはあまり笑顔を見せない由利が後ろに手を回しニコニコしながら話しかけて
いる。そして、初めて聞く呼び名。敬二は、咄嗟に後ずさりして、警戒する。
「……な、なに?そんなニコニコしちゃって……。それに、後ろになにもってるのさ…」
「な~に怖がってるのっ。ケイちゃん、仮面ライダーが好きだって言うからね、プレゼントしようかと思
って持ってきたのよ。」
敬二はそれを聞くと、糸も簡単に警戒心を解き、由利に擦り寄ってくる。
「え…!なになに??もしかして…」
「そのもしかしてよ。ケイちゃんは私のかわいい弟だもんね~。お姉ちゃん特別に買ってきちゃった。」
その言葉を聞いたとたん、敬二の目がきらきら光る。もう、頭がプレゼントの中身のことでいっぱいだ
った。
「あ、ありがとう、由利姉!!じゃあ、早く早く!」
「わかったから、そんなに興奮しないの。それでは、ケイちゃんにこれを進呈しま~す!」
由利はそういうと、後ろに回していた手を敬二の前に突き出す。すると、みるみると敬二の顔が期待から
落胆に変わっていった。
「やった……あ……?な、なにこれ…?」
「ふふ…これはね、東京限定発売のやつで超レア物のアギトの変身スーツセットなの。」
敬二は、まじまじとその衣装を見る。それには、ヒラヒラのスカート、でっかいリボン、ベルトや肩の部
分にはハートに形とった飾りがつけてある。男の敬二にはとても、仮面ライダーが着るものだとは思えなか
った。
「えぇ~?こんなの女子が着るものだよ。男は着ないよ~。」
当然のごとく疑う敬二。当たり前だが由利はこんなこと想定済みだったので、すぐに反論する。
「馬鹿ね。東京じゃこの変身スーツがほしいって駄々こねる子がいっぱい居るのよ。それに、こんな田舎じ
ゃ流行ってないけど、このハート型の飾りとか、リボンとか、スカートとかすごい流行ってるのよ。私東京
に去年行ったけどね、ほんとにみんなスカートとか穿いてるのよ。」
もちろん、まったくのでたらめである。ちょっと考えたら、小学4年でもあり得ないとわかる嘘だが、由
利が去年東京に行っていた事は事実ということと、あまり物事を深く考えない性格が相まって敬二は本当だ
と信じこんでしまう。
「そういえば、なんかカッコイイかも…それにこの黒色の服もカッコイイかも。」
「カッコイイかも、じゃなくてカッコイイのよ。でも、ケイちゃんが嫌なら別にあげなくてもいいよ。欲し
いって人はい~っぱい居るんだから。…あ、そうだ。そういえば私の友達の弟も欲しがってたなぁ~。その
子にあげちゃお。ケイちゃん要らないんだからあげてもいいよね?」
「え…いや…それは……」
いきなり、取捨選択を迫られ露骨に焦る敬二。そんな様子を見て、由利はついニヤけてしまう。
(馬鹿ね…こんなのどうみたって女物じゃない。まぁ…そんなアホの子っぷりもかわいんだけどね。)
しばらく様子を見ても敬二は悩んでいるだけで一向に決めようともしない。そんな様子を黙って見ていた
由利の口が開く。
「悩むぐらいだったらいらないってことだよね。じゃあ、これあげてくるからお留守番頼むね。」
そういうと、由利は玄関のほうに向かって歩き出す。そんな様子を見て敬二は、急いで由利を引き止める。
「あ…だめ!由利姉!」
敬二が後姿の由利に向かって大声を出し引きとめようとする。それを聞いたとき、由利は何度も小さくガッ
ツポーズを取る。しばらくして、冷静さを取り戻したのか、敬二のほうを振り向いて話しかける。振り向くと
敬二は少し俯き半泣き状態だった。
「それ…俺のプレゼントなんだろぉ……ひどいよっ…」
「ごめんごめん、あんまり嫌そうだったから。嫌いなのかなぁ~って思って。じゃあ、これあげるから機嫌直
して。」
由利は敬二の頭をなでながら、衣装を渡す。受け取った敬二は俯いて涙を見せないようにしていたが、少し
泣いていることがわかった。
「もしかして、泣いてる?」
「な…ないてなんかない!目にごみが入っただけ!」
敬二は目を手で荒々しくこする。そして、顔を上げるが明らかに涙の後が残っていた。よっぽど他人に渡るの
が惜しい代物だったらしい。そんな敬二を見て由利が少し顔を赤くする。
(か、かわいい…しかもツンデレとな……こんなかわいかったっけ……)
「そ、そうだよね。ごみが入っただけだよね。ごめんね。私ったら早とちりしちゃって…」
「い、いいよ。そんなの。」
少しの沈黙が二人の間に訪れる。そんな沈黙を始めに破ったのが由利だった。
「あ、そういえば、今日はアギトごっこやらないの?」
アギトごっことは、仮面ライダーアギトが終わった直後に興奮が収まらない敬二が、勝手に由利を敵扱いして
由利の部屋に突撃して、アギトの物まねをやることである。普段は相手にするのがめんどくさい由利はすぐに、
『やられたー』と棒読みで言ってベットの上にねっころがる。そして、敬二が出て行くまで狸寝入りする。
その言葉を聞いて思い出したのかハッとする敬二。しかし、すぐ拗ねた表情になる。
「あ、そうだ。やるの忘れてたよ。…でも由利姉あんまりやる気になってくれないし…今日はいいよ。」
「あら、つれないのね。今日はせっかくプレゼントした変身スーツ着てやってみようという気にはならないの?」
「そりゃ…やってみたいけど…」
「じゃあ、やろうよ。私も今日は特別にちゃんと敵役になりきるからさ。」
そういうと、敬二の表情が晴れる。
「やる気になったみたいね。じゃあ、私はいつもの通り部屋で待ってるからさ。それに着替えて…あ、いや『変身
』しておいで」
「うん、待ってて。すぐ着替えるから!」
よっぽどうれしいのか、敬二の顔に笑顔があふれる。そんな敬二を見て、(違った意味で)由利の顔にも笑顔が
あふれる。敬二が脱衣所に着替えに行くのを見送ると、由利はゆっくりと階段を上り自分の部屋へと向かった。
「これで……っと、いいかな」
敬二は最後に上着を着ると、脱衣所にある鏡を見てちゃんと着れているかどうか確認する。そこには、髪の色と
性別が男性ということを除けば、本当にアニメから出てきたような格好の敬二の姿があった。もちろん当の本人は
自分がプリキュアではなくアギトの格好をしていると思い込んでいる。敬二は、鏡を見ながら作中でアギトがとる
ようなポーズを何度かしてみるが、やはり、由利に対する疑いが晴れない。
「う~ん…これ本当にアギトが着ていたのかなぁ…1話から見ていたけどこんな姿に変身してたことないし…それに
このハートの飾りとリボンが女の子っぽいよ。…で、でもアニメに詳しい由利姉が言うんだからきっと俺の見落とし
てただけだよな。そうだよ、それによく見ればなんか似合ってるし、カッコイイよな…。いや、カッコいいんだ!
うん!」
無理やり自分の由利に対する疑いをねじ伏せて、今の自分はカッコイイと認めさせる敬二。
しかし、傍から見れば、例えアニメを知らないものが見ても、女装しているとしか見えない。
敬二は早速、由利に見せるために由利の部屋にバタバタと走りながら階段を上がっていく。そして、いつものように荒々
しくドアを開けるといつもはベットにめんどくさそうに座って待っている由利が、ドアの前に仁王立ちして待っていた。
部屋に入ってきた来ると共に敬二がいつもの台詞を言う。
「でたなー!オタク怪獣ユリめ!今日も懲らしめてやる!」
いつものように、失礼な敵名で姉を怪獣扱いする敬二。敬二はもうスイッチが入っているのか、いつもの様に姉を上目遣いで睨みつけながら台詞を吐き捨てる。しかし、どう見てもアギトには見えず、黒キュアにしか見えなかった。由利は、敬二があまりにも衣装が似合っているため頬を少し赤く染めて、敬二の姿に見入ったまま自分の妄想に入ってしまう。
(うわ…かわいい~!この子本当に男なの…?…あ、やば…少し濡れてきちゃったかも…こんな茶番チャッチャと終わらせて…あんなことや…)
敬二はじっと自分の顔を見つめているだけで硬直している由利に痺れをきかせて、台詞を言うように促す。
「……ゆ、由利姉~敵がつっ立っているだけじゃ、雰囲気でないよ~…」
由利は敬二のその言葉に、ようやく自分の妄想から抜け出す。しかし動揺して、少し声が上ずってしまう。
「……あ、あぁ。ごめんね。…じゃ、じゃあ行くわよ。が、がお~…よくここまできたな~黒キュ…じゃなかった。
ブラッ…でもなかった。えぇと…仮面ライダーアギトめ~。今日の私はそんなに弱くないわよ~覚悟しなさい!」
少々、噛みながらも何とかそれっぽい台詞を言う由利。敬二は、その台詞を合図に由利に襲い掛かる。
「倒せるもんなら倒してみろ!食らえ、ライダーキック!」
敬二は、そう言うと由利の足を蹴る。もちろん、作中のようにジャンプしてキックするなどできないので、ただひたすら
足を蹴るだけだ。敬二にしては力を入れて精一杯やっているつもりだが、如何せん大学生と小学生じゃたとえ男女の差があっても力の差が歴然なので由利にしてみれば、まったく痛くない。むしろ、そんな敬二を見てますます愛おしくなる由利。
「このっ…くそっ…これでもかっ!」
力を入れて思いっきり足を踏みつける。さすがにこれは痛かったのか、反射的に声を出してしまいそうになる由利。
「イタッ……くぅ…はないもんね!というか、正義のヒーローがキックとか言っておきながら足を踏むのは反則じゃないの~?」
「こ…これは…これも、ライダーキックの一つなんだよ!」
「あ~らそう。それじゃあ、そろそろこっちも反撃させてもらいましょうかね~?」
「え、な、何を……うわっ!」
由利は、敬二が戸惑って攻撃していない隙を狙って、敬二を背中から抱きかかえる。敬二はその腕から必死に逃げようと足をバタつかせるが、両腕でがっちりと抱きかかえれているため、小柄な敬二には無駄な抵抗だった。そして、由利は敬二を抱きかかえたままベットの上に腰を降ろす。
「よいしょっと…。相変わらず軽いわね~ちっちゃい正義のヒーローさん。」
由利が敬二の耳元でささやく。若干、今からする反撃の興奮からか由利の息が荒くなっていた。
「はっ、離せよ!このオタク女!!」
敬二が、いつもにない由利の本気に半ば恐怖さえ覚えていた。これはもしかしたら、本気でやられる――と思ったらもう演技ではなく、本気で由利を罵倒し始めた。
「あら~、お姉ちゃんに対して酷い言い草ね。そんな口の悪いヒーローさんにはたっぷり反撃して反省してもらわないとね。」
敬二の顔から血の気が引いていくのが手に取るようにわかる。そして、由利は細く笑うとさっきまでがっちり抑えていた両腕を敬二のわきの下に移動させる。
「ふふ…ケイちゃんここ弱かったよね~。」
由利がつんつんと両手で敬二のわきの下をつつく。
「ひゃっ…な、なにを……」
敬二が恐る恐る尋ねる。そして、由利が敬二の耳元で荒い吐息をかけながらゆっくりと言う。
「決まってるじゃないの……くすぐりだよ~それっ!」
そう言うのが早いか、由利は一気に敬二の脇をくすぐり始める。敬二が着ていた衣装の生地が薄かったこともあって、ほぼ直でくすぐられていると変わらない。敬二は、本当に弱いのかすぐに根をあげ始める。
「ひゃっ…あ、あはははははははは!ひゃ、あははははは、も~もうやめてぇはははっ。お、俺の負けだからあああ!」
顔は笑っているが、体はそのくすぐり魔と化した由利から逃げようと、必死に身を捩る。しかし、由利がくすぐりながらもしっかりと体を抑えているので、逃げることはできなかった。しかし、敬二が負けを認めたらあっさりと手を止める。敬二にとっては由利に体を押さえられていなかったので、逃げるためのチャンスであったが、息を整えるので精一杯でとても逃げる気力などはなかった。
「はぁ…はぁ……はぁ…」
「ふふ…ようやく負けを認めたね。それじゃあ、今からはお姉ちゃんがいっぱい『反撃』してあげるね。」
「え…も、もう…はぁ…お、終わろうよ…」
「だ~め。いつも勝たしてあげてるんだから、今日ぐらいお姉ちゃんの言うこと聞いてよね。」
由利はそう言うと、脇から手を離し左手で敬二が暴れないようにしっかりと抑えると、右手をスカートの中に入れると、敬二が穿いているスパッツの上からペニスをさすり始める。
「ひゃぅっ!な、何!?」
「ん~何って、お姉ちゃんがケイちゃんが健康かどうかを見てあげようと思って。心配しなくても大丈夫だよ~だからじっとしてようね。」
優しく敬二の耳元でささやくように話す由利。しかし、敬二はそう言われてもじっとしているわけにはいかない。
「や、やめろよ!!へ、変なところ触るなよ!離せよ!離せってば!!」
「ちょ、ちょっと、暴れないでよ」
敬二が必死になって手をバタつかせ、暴れる。由利もさすがに左手だけでは収集がつかなくなり、このままでは逃げられてしまうと悟った。それを防ぐために、由利は使いたくはなかったが奥の手を使うことにした。
(や、やば…このままじゃ逃げられる…それだけは、なんとしても防がなければ……あんまり使いたくないけど、もうそうも言ってられないよね…)
由利は体を抑えていた左腕を、敬二の首元へスライドさせて敬二が苦しくならないように軽く首を締め付ける。そして、由利は今までの優しい声から一転、氷のような冷たい声で敬二を脅す。
「じっとしてって言ってるでしょ……言うこと聞けないんならもっと苦しくなっちゃうよ…?」
「ひっ…そ、そんな……でも…こんなこと…おかしいよ…や、やめたほうが…いいんじゃ…」
敬二の声が震えている。あんまり脅すようなことはしたくなかったが、由利はなおも抵抗する敬二に耳に冷たく囁く。
「あ、そうなの。ふぅん…ケイちゃん苦しいの好きなんだね…。」
由利はそういうと、敬二の首を絞めている左腕に少し力を入れる。さすがに少し苦しくなったのか敬二の目に涙がたまってくる。
「やぁ…や、やめてよ……」
「じゃあ、じっとしてる?暴れたりしない?」
敬二は必死に首を縦に振る。その合図に由利は細く笑みを浮かべると、パッと左腕を離す。敬二が必死に咳き込む
「げほっ…げほげほ…ひ、ひどいよ…由利姉…」
「ごめんね。でも、ケイちゃんが悪いのよ。お姉ちゃんの言うこと聞かないから。それじゃあ、もう一回最初から触診を再開しましょうね~」
由利はそういうと、右手を再びスカートの中に滑り込ませ、スパッツの上から敬二のペニスをさすり始める。敬二はもう何も抵抗できず、ぎゅっと目を瞑り、嵐を過ぎ去るのを待っていた。しかし、そんなことでさえ、由利は許さなかった。
「だめよ。目を瞑っちゃ。ちゃ~んと、自分が何されているのか見ておくのよ。」
「そ、そんな……」
由利が横から、敬二を睨みつける。由利は何も言わないものの、その目を見られたとたん抵抗することをやめた。
「は、はい……目を…開けます…」
「そうそう。いい子ね、ケイちゃんは。さすが、お姉ちゃんの自慢の弟だわ。」
敬二はほめられているが全然うれしくない。むしろ、自慢の子じゃなくていいからもう開放してほしい気持ちでいっぱいだった。敬二は目を恐る恐る開けると、スカートを捲り上げられて自分のペニスをゆっくりとさすっている由利の手が見える。しかし、敬二のペニスは恐怖からか、あまり反応しない。すると由利は、先ほどまで敬二の体を抑えていた左手を、敬二のわきの下から胸元に滑り込ませて今度は敬二の胸をさすり始める。敬二は少し感じたのか、小さく声を出して反応する。
「あっ…」
「ここ?ここがいいのね。お姉ちゃんが気持ちよくしてあげるからじっとしてるのよ。」
由利はそういって、胸とペニスをゆっくりとさする。気持ちいいのか、敬二のあえぎ声がどんどん多くなってくる。それに合わせて、由利の吐息もどんどん荒くなっていく。
「あっ…ふぁ……や、やぁ……あぁ…」
「はぁ…はぁ…ケイちゃん可愛すぎ……ね、ねぇ…こっち向いて…」
「ふぁ……?」
敬二が横を向く。その顔は気持ちよさからか、目はトロンとして頬は恥ずかしさからか真っ赤になっていた。そんな敬二を見て由利は我慢できるはずもなく、胸から左手を取り出すと敬二のサラサラの髪をなでる。
「ケイちゃん……か、可愛すぎ…そんな顔されたら…我慢できないっ…!」
「ん…むぐぅ…!?」
由利はそういうと、左手で顔を無理やり引き込み、荒々しくキスをし始める。それと同時に、敬二のカチカチに勃起したペニスをさするのではなく、スパッツ越しからペニスを無理やりつかみ扱き始めた。敬二はあまりの突然のことに、目をキュッと瞑る。
「んんっ~!!やぁ……!」
敬二が必死に首を横に振る。もう射精しそうなことは、由利もスパッツ越しからわかっていた。しかし、由利は扱く速さを落とそうとはしない。由利は敬二から唇を離すと、頭をなでながら優しく囁く。
「ぷはっ……大丈夫だよ。スパッツの中に白いおしっこいっぱい、いっぱいお漏らしようね。」
「あぁ…はぁ……だめぇ…由利姉~…はぅっ…!俺…もらしちゃうよぉ……」
敬二は本当に限界なのか、腰をヒクヒクと痙攣させる。
「もらしちゃいなさい。大丈夫。お姉ちゃんがついてるから、ね?…お漏らししちゃお?」
「お漏らしは…あぁ…やだぁ……ふぐぅ……」
敬二は目を瞑り、歯を食いしばり初めての射精を必死に耐えていた。しかし、それも時間の問題だった。
「がんばるね、ケイちゃん。…でも、これはどうかなぁ~?」
そういうと、由利は左手で敬二の肛門をスパッツ越しで刺激する。その独特の感触に思わず今まで耐えていた力が抜けてしまう。
「ひゃぅ!?あ、あ、由利姉やだ、やぁ、だめえええええ!!!」
敬二は大きく目を見開くと思いっきり腰を反り返しスパッツの中に初めてだったこともあってか大量の精液を噴出していく。スパッツには染みがどんどん広がって大きくなっていく。
「あ……あ…あぁ……」
敬二にはもう抵抗するどころか、由利が体を支えていないとベットに倒れこむぐらい力が抜けていた。
「あわ、ケイちゃん大丈夫?」
「はぁ…はぁ……だ、大丈夫……でも、由利姉のベット汚しちゃった…」
「だからぁ、そんなことは気にしなくていいの。そんなことより、お漏らしでベトベトになったスパッツ脱いで、お風呂にでもはいろ?」
「う…うん。」
そう敬二が言うと、早速由利のひざから降りて立ち上がろうとする。しかし、腰に力が入らず床にしりもちをついてしまう。
「うわっ…イタタ…」
「あらら、腰が抜けちゃったのね。ほら、お姉ちゃんの背中に乗りなさい。おんぶしてあげる」
由利が自らしゃがみ、背中を差し出す。しかし、敬二は恥ずかしいのか中々乗ろうとはしない。
「い、いいよ…自分で歩けるから。」
「何いってんの。あんなガクガクの足で階段下りたら危ないでしょ。落ちたら大怪我するよ。それに、今家には私とケイちゃんしか居ないんだから。恥ずかしがらないの。」
大怪我と聞いて少し怖くなったのか、渋々由利の背中に乗る敬二。
「あ~あ、お姉ちゃんもケイちゃんのおしっこで汚れちゃった。」
「ゆ、由利姉~」
「ふふ、冗談よ。さ、お風呂に行きましょうか。」
由利が敬二を乗せて部屋を出て風呂に向かう。その途中に敬二が由利に話しかける。
「ねぇ…俺、由利姉からのプレゼント似合ってた?」
「そりゃもう、似合いすぎて…あ、もちろんカッコイイって意味でね。」
「そ、そう?ありがとう…由利姉」
「ふふ…どういたしまして、さ、お風呂に着いたわよ。久しぶりに一緒に入ろうか?」
「ま、まぁ今日ぐらいなら…いいよ」
「ふふ…ありがと、可愛い弟君」
そして、二人は風呂に入っていった。
――――翌日、敬二が遊びに行った女友達の部屋に、昨日自分が姉にプレゼントされた衣装と同じ衣装が飾ってあり、ようやく自分が騙されていたということに気づいた敬二であった。
(おわり)
最終更新:2013年04月27日 18:44