辺りがすっかり暗くなった夜道を一人歩く男子高校生。
別に、夜道を高校生が歩くこと自体珍しくない。塾帰りやバイト帰り、部活帰りなど
いろいろと忙しい高校生には当たり前だ。

 しかし、晶だけは別だった。晶は、周りをキョロキョロしながら何かに怯える用に
ゆっくりと歩く。顔は俯き加減で、極力人と目を合わせないようにしている。
頬も恥ずかしいのか、少し赤く染まっている。普通にしていればいいものを、
晶がそんな態度をとるので、通りかかる人はチラチラと晶の顔を伺おうとする。

 そう言っても、晶には堂々と歩けないある秘密があった。
晶の今着ている服は、男子高校生なら『着るもの』としては縁の無いはずである
女子生徒の制服を着ていたから。―――つまり、晶は女装していたのだ。

 女装しているからといって、誰もが見ても男だという風な、言うなれば、バラエティで
笑いを取るために出てくる『オカマ』とは違う。
童顔で、何処と無く華奢な体つきをしている晶は、昔から女子に間違えられることも
あったぐらいだ。それに加え、髭も産毛程度で、髪も丁度良い長さに伸びている所から、
女装していてたら男らしい要素が無かったので、誰も男じゃないかと疑うような視線を
向けなかった。

 晶は今まで女装しても精々が部屋の中だけだった。しかし、両親が長い出張でいなく、姉も
大学に行って一人暮らしをしているので家にいるのは晶一人だった。開放的になった
晶は、学校から帰ってきてからは、ずっと姉の部屋から借りている制服を着てすごしていた。
しかし、そのうち晶はもっと見てほしいという欲望に駆られ、ついに抑えきれなくなり
思い切って、制服を着たまま外に出たのだ。


 見てほしいという欲望に駆られたのは確かだったが、やはり、家で一人で女装していた時とは
明らかに違う不安が晶を攻め立ててくる。
(もしかしたら、ばれてるかも…)
(同級生に会ったらどうしよう…)
 考えれば考えるほど足が震えてくる。外に出て、まだ数10分位しか経っていないが
晶にとっては、1時間ぐらい外に出ていたような感じだった。
(もう帰ろう……誰か知ってる人に会わない内に…)
 晶はそう決心すると、家の方向に向かって歩き出す。相変わらずキョロキョロと周りを警戒
しながら歩いていると、前方からいかにも部活帰りというショートヘアーの女子高生が歩いてくる。
一瞬目が合ってしまい、晶はハッとして目を逸らす。それは紛れも無く晶の同級生である、由紀だった。
晶は、その瞬間心臓が破裂しそうなほど動悸が早まっていることが手に取るようにわかる。
(どうしようどうしようどうしよう…)
 晶は走って逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、慣れないスカートを履いている為それは
できなかった。かと言って、急に方向転換なんかすると怪しまれそうなので、必死に冷静を装って歩く。
相手は晶だということに気づいていないのか、普通に歩いてくる。もうだめだと晶は思った。
しかし、予想外にも相手は別に気にかけることも無く、晶の横を素通りしていった。
(杞憂だったか…)
 晶は内心ほっとした。それと共に、もう女装したまま家に出るのはやめておこうと心に決めた。


 暫くして、自分の家に着いた。あの後は、人通りを少ない道を選んで歩いたため、同級生はおろか、
人にすらあまり会うことなく家まで来ることができた。玄関で靴を脱ぎ、自分の部屋に行くとベットの上
で倒れるように横になる。
「つ、疲れた…」
 外に出ていたのは数10分程度だったが、緊張しっぱなしだったので精神的にはかなり疲れたようだった。
その時、机に置き忘れていた携帯電話の着信音がなる。晶はそれを取って確認する。すると、差出人が
書いていないメールだった。見たこともないメールアドレスだったので迷惑メールかとは思ったが、
一様内容を確認することにした。
「え…な、なにこれ…」
 そのメールを見て晶は呆然とした。そのメールには、恥ずかしそうに歩いている女子高生姿の晶の写メール
が張ってあり、本文には、
『晶君、女装にあうね。私ビックリしちゃった♪そうそう、明日暇だったらウチの部活来てよ。きっと晶君
気に入ると思うよ~♪P.S.メールアドレスは晶君の友達から聞きました~by由紀』
と書いてあった。あの時、由紀は何も言ってこなかったが、やはり気づいていたのだ。
 由紀は、悪魔でも強要していないが、行かなかったらばらすと言わん限りの内容だった。
晶は、もうどうしようも出来ず、携帯を投げ捨てると制服のまま布団に包まり咽び泣いた。
もう、頭の中には悪いことばかりしか思いつかない。考えれば考えるほど涙があふれ出てきた。
そして、永遠に続くかと思っていた涙はいつしか途絶えいつの間にか寝てしまった。


 あの悪夢のような出来事の翌日、晶は携帯のアラーム音で目が覚める。
ベッドからだるそうに、起き上がると晶は改めて自分の今来ている服を見る。
そこにはまぎれも無く姉の制服を着ていた自分の姿があった。
(夢じゃなかったんだ・・・)
 そう思うと、余計学校に行きづらくなる。学校に行けば当然、由紀とは同じクラスなので顔を合わせなければ
ならない。今日は仮病を使って学校を休もう。そう心に決め、またベッドの中に潜り込もうとしたとき、
携帯の着信音が鳴る。ビクッとして、床に置いたままの携帯を拾い上げ、確認する。
そのメール相手は紛れもなく由里だった。晶は、また変なことを要求してくるんじゃないかと内心ドキドキしながら
メールを開く。そこには、晶が絶対に避けてほしかった内容がズラズラと書かれていた。
『おはよー。由紀からのモーニングコールのサービスだよー♪ちょっと昨日言い忘れたんだけど、今日晶君の
お気に入りの制服、持ってきてね。部活で使うから。じゃあ、学校でね♪さぼったら・・・わかってるよね♪』
「うぅ・・やっぱり・・でも部活で使うって・・なんで・・?」
 晶は、なぜ部活動で制服を、それも女子生徒の制服を使うのかが理解できなかった。無論、できることなら、
適当に汚して今日は持ってこれない、などとバレバレな言い訳をしてでももって行きたくなかった。
しかし、そんなこと言ってどうにかなる相手ではないことは百も承知だった。晶は、仕方なく着ている制服を脱ぎ
適当な紙袋につめると、いつもの制服に着替え食事を取るために、台所がある一階へと降りる。
 そして、適当にパンにジャムなどを塗って軽く食事をすませ、洗面台で歯と顔を洗うと、まじまじと自分の姿を
覗き込む。そこには、男子用制服を着た晶の姿があった。
家に居る大半は女子用制服で過ごしている晶にとって、その制服は窮屈なもの意外何者でもなかった。
「はぁ・・・」
 少しため息をつく晶。晶は、こんな窮屈な制服は1秒たりとも脱ぎ去りたい気持ちでいっぱいだった。


 そんなことを思いながら、晶はボーっとしながら鏡を見つめる。その時、晶がハッとしたように思い出す。
「あ、そういえば・・昨日お風呂入ってなかったな」
 晶は時間を確認し、まだ学校までの登校には間に合うことを確認すると。着ていた制服を一枚ずつ脱ぎ捨てる。
そして、下着も脱ぎしてると晶は一糸纏わない姿になる。そして、風呂のボイラーを入れて浴室に入る。
浴槽に浸かりたい気持ちだった晶だが、今から張ると登校時間に間に合わなくなる。仕方なく、簡単にシャワー
だけで済ませることにした。
 シャワーで頭と体を簡単に洗うと、湯気で曇った鏡にシャワーを当て湯気を消し、改めて自分の体を
見る。髭が無く、まったく男らしくない顔つき。男としては少々長くサラサラな髪の毛。そして、まるで女のような華奢な体。
 いつもなら、ほとんど気にせず浴室から出て行くのだが、由紀にばれたことを思い出すと何故か変な気分になった。
段々と晶が男であることを示す唯一のペニスが勃起していくと共に、自分が少し興奮していることが手に取るようにわかった。
「やば・・もうでよ・・」
 晶はその気持ちを抑えるため、浴室から出る。しかし、ペニスは萎えるどころかますます硬くなっていくことがわかる。
晶自身も、段々と自分の理性で抑えられないなってくる。
「クソッ・・早く収まれよぉ・・」
 自分自身の体に言い聞かせようとするが、体は言うことを聞きそうにも無い。
少しでも気を紛らわそうと、晶は脱衣所に散らかっていた服を洗濯機に放り込もうとして、洗濯機の中を覗く。
そこには、姉から借りている真っ白なショーツとブラジャーが入っていた。
晶はそれを見ると、生唾を飲み込む。心臓の鼓動がドクドクと音を鳴らしている。晶はもう我慢できなかった。


「ちょっとだけ…なら……いいよね…」
 晶はその下着を取り出すと、ゆっくりと着始める。
いつも女装してなれている筈なのに、緊張しているのか手が震え、
興奮からか、異常までに顔が火照ってしまう。
まるで初めて女装した日を思い出すようだった。
ショーツに足を通し、慣れた手つきでブラジャーのホックを止める。
いつも以上に息が荒くなっていくことがわかる。
晶は、全身が移る鏡で自分の姿が見たくなり、その姿のまま再び浴室に入った。

 浴室に入ると、湯気で曇っている鏡にシャワーを当てて湯気を取り除く。
そして、改めて鏡で自分の姿を確認する。当たり前であるが、そこには下着姿の
晶の姿があった。その姿は、華奢な体と童顔が相まって、晶を知らない他人が
見たら女にしか見えなかった。……ショーツを盛り上げている股間を除けば。
その姿を見て、晶はとうとう我慢できなくなったのかショーツを脱ぐと、その
ショーツを勃起しているペニスに被せてオナニーを始めた。
「はぁ………はぁ……」
 必死に扱くが中々射精するまでに至らない。晶は、登校時間を考えると焦ってしまい
早く射精するために、キュッと目を瞑ると抜くためのネタを必死に妄想した。
そして、真っ先に出てきたのが、いつも女装している時にオナニーするネタが浮かんできた。
「あぁ…ゆ、祐樹君……いいよぉ…」
 そのネタとは、晶が女装している祐樹とセックスしているというシチュエーションだった。
祐樹というのは、晶の数少ない男友達で、容姿は晶に似ており物静かで男らしいというには程遠かった。
そんなこともあって、祐樹もあまり男友達が多いほうではなかった。
祐樹が晶と似ているといっても、晶は祐樹が女装しているなんてことは聞いたこともないし、
晶自身も興味ないに決まっていると勝手に決め付けている。


 晶のペニスを扱く手が段々と早まっていく。もう限界なのだろうかペニスもビクビクと
小さく痙攣していることが、晶の手に伝わってくる。
「あぁ…祐樹君だ、だすよ…んんっ…あぅっ!!でるっ…!!」
 今まで以上に目を強く瞑ると、晶はショーツの中に大量に精液を吐き出していく。
腰もヒクヒクと痙攣して、暫くの間は座ったまま動けなかった。
「はぁ……んぅ……はぁ……」
 頬を真っ赤に染め、射精した後の疲れかトロンとした表情で息を整える。そして、自分の精液を
吐き出したショーツを見る。そこには、ねっとりとした濃厚な精液が大量に付着していた。
それを見るたびに、晶は罪悪感を感じていた。
(ごめんね…祐樹君……こんな僕って気持ち悪いよね…)
 ため息を一息つくと、ますます自分のしたことが最低だということに気づかされるようで、
少し自己嫌悪に陥ってしまう。そして、今日も二度とこんなことをしないと心に決めると、
ショーツを洗い、浴室を後にした。

 脱衣所に上がると、晶は時間を確認する。すると、すでに遅刻するかしないかというギリギリの
時間だった。
「ど、どうしよう…早く着替えなきゃ!」
 晶は、我を忘れて着替えを始めた。無意識の内に、持っていたショーツを履くと、ブラジャーも
着けたまま、その上から男子生徒用の制服を羽織る。そして、鞄と由紀に言われた昨日女装している時
に着ていた制服が入っている紙袋を持つと家を飛び出した。
 外に出たとき、晶の体にはなんだか違和感があったがそんなこと気にしていられなかった。
必死に走り学校を目指す。
 学校には何とか時間内に滑り込め、教室にもHRが始まる直前に滑り込めた。晶はホッと胸をなでおろし
席に着く。そして、HRが始まり話を聞いているとなんだか体に先ほど以上の強い違和感を感じ始める。
(なんだこれ…変だな…あの時ちゃんと脱いだ…は…ず…)
 晶は気づいたのか、段々顔が青ざめていく。あの時、下着は全部脱いで着替えていたと思っていた
ブラジャーとショーツを着たまま学校に来ていたことに、今ようやく気づいたのだ。


(う…うそだろ……)
 晶は、そっと周りに怪しまれないよう制服の上から胸を摩り確認する。すると、ブラジャー特有の凹凸が
確認できる。この瞬間、気のせいだという思い込みはできなくなった。
(やばいよ……今日体育あるのに……)
 晶の中では、もう2時限目にある体育のことで頭がいっぱいだった。昔から運動神経が鈍く、体育が嫌いな
晶は、特に苦手な種目を行う日になると仮病をついて教員に見学を申し込んだりしていた。
 しかし、最近ではその仮病が教員にばれて、晶が保健室に行って病気なので体育には参加できないことを
証明する書類を書いて持ってこなければ、体育を見学で済ますことはできなくなってしまった。
今日の晶は、由紀に放課後なにされるかわからないといった不安から、多少憂鬱だったが無論こんなことで
体育を見学で済ますことなどはできない。必死に考えたが、晶には逃げ道がなかった。
 そう考えている内に、いつの間にかHRが終わり教員が教室に入って1時限目が始まるわずかな時間の間
教室が話し声でざわめき始める。いつもなら、小説を読んだり祐樹の席まで行って他愛もない話で時間を潰す
のだが、今の晶にはそんな余裕などない。周りに顔を見られないよう、机に頭を突っ伏し寝ているフリして
ただ時が止まることを祈るばかりだった。


「晶君?大丈夫?」
 暫くすると、頭の上から聞き覚えのある声が降ってくる。晶は顔を上げると、そこには祐樹が心配そうな顔で
こちらを見ていた。
 恐らく、晶の深刻な顔を見て心配に思っていたのだろう。晶は必死に平常を装い、祐樹に言い返す。
「あ、祐樹君?大丈夫だよ。」
 晶は平常を装っているつもりだが、やはりどこかぎこちない。
そんな所を感知してか、祐樹は心配そうに聞き返す。
「でもさっき、なんか顔色悪くなってたけど…」
「あ、あれね…あれはね…えーと……きょ、教科書忘れてきちゃって、まずいなーって思ってさ」
「そうなの?じゃあ、隣の教室から教科書借りてきてあげようか?」
「大丈夫だよ。鞄よく探したらあったから。ありがとう。」
 晶は何時もなら、この時間が授業が始まる前の憂鬱な気持ちをやわらげてくれるはずなのに、
今日は早く祐樹が席に戻ってくれることを祈るばかりだった。
 祐樹は、晶の何時もと違う様子に違和感を感じていたが、1限目の授業の時間も近づいてきたこともあって、
これ以上突っ込んで聞き込むことをやめる。
「それならいいけど……どっか悪かったら言ってね。」
「う、うん。ありがと。」
「あ、そういえば由紀さんが晶君のアドレス教えてって言ってたから教えちゃったけど…」
 晶は、薄々祐樹が教えたのではないかと感じてはいた。しかし、本当に祐樹が教えたと聞くと少し祐樹が恨めしく思えた。
「え、いや、大丈夫だよ。なんか、部活でするから協力してくれってこと。別に、由紀さんとは特別な関係があるわけじゃないからね。」
「え…」
 祐樹はその言葉に一瞬顔を曇らせる。しかし、直ぐにいつもの表情に戻る。
「あ、そうなんだ。何か勝手に教えちゃったから怒ってないかって心配で…」
「いや別に気にしなくてもいいよ。こっちも女の子のアドレスゲットできたわけだしね。」
 適当に冗談を言ってごまかす晶。
祐樹は、内心やはり怒っているのではないかと思っていたが、表情には出さずに言い返す。
「よかった…晶君に嫌われたらどうしようかと思っていたから。」
「そ、そんなことないよ。あ、もう授業始まるから席に着いたほうがいいんじゃない?」
 晶がそういって時計のほうに視線をやると、もう授業のチャイムがなる1分前を指していた。
祐樹はあわてて席に戻る。
「あ、本当だ。じゃあね。」
「うん、また。」
 祐樹は軽く晶に会釈をすると、自分の席に戻っていった。


 チャイムが鳴ると、一時間目の授業が始まる。
晶はというと、相変わらずばれるか心配で、授業どころではなかった。幸い、騒ぎや私語をしない限りは特に注意しない教員
だったので、晶はひたすら顔を机に突っ伏せて寝ているフリをし一時間をやり過ごした。
 そして、1時間目が終わり、2時間目が始まるまでの短い休み時間に入ると、晶の表情が段々と深刻になっていく。
女子が更衣室に移動し、男子が着替え始めている最中、晶は一人座って頭を抱えて考えていた。
(どうしよう…トイレで着替えようかな…いや、そんなことしたら服が摩れる音で怪しまれるかもしれないし…
かといって、みんながいるここで着替えたら…あぁ…なんでこんなことに……)
 必死に考えたが、やはり思いつかない。もうどうしようもなく、頭を抱えて座り込んでいた。
残酷にも時間は過ぎていき、2時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。晶は周りを見ると、
教室には、祐樹が一人先ほどから深刻そうな顔をしている晶を心配そうに見守っている祐樹の姿しかなかった。
 晶は、一瞬祐樹と目が合ったが、すぐに視線を逸らす。
その様子を見てますます不安になったのか、遂に祐樹は晶の席に行くと心配そうに話しかける。
「ね、ねぇ…本当に大丈夫?もうチャイムなっちゃったけど…着替えないの?」
「あ、大丈夫だよ。ただ、今日やるのが球技だって聞いたから…ちょっと憂鬱になってただけだよ。
すぐに着替えていくから、先に行っててよ。」
「そうなの?でもなんだかそんな感じじゃなかったけど…」
「大丈夫だって!しつこいよ!」
 晶は、つい祐樹に対して今まで発したことも無かった乱暴で強い口調で祐樹に言い返す。
祐樹は、その言葉にショックを受けたのか悲しげな表情を浮かべる。
そんな祐樹の表情をみて、晶は申し訳なさそうに謝る。
「あ…ごめん。でも、本当に大丈夫だから…心配してくれてありがとう。僕は着替えたらすぐ後から行くから。先に行ってて。」
「うん…ごめんね。しつこく言っちゃって。じゃあ先に行くね。」
 そう言うと、祐樹は小走りで体育館のほうへ向かっていった。そして、教室には晶一人取り残された。


(早く着替えないと…)
 晶は、何度も廊下側を確認すると教室のドアを閉め、窓にもカーテンをかけ極力周りから見られないように徹底する。
いつもなら、雑に脱ぎ捨てる制服だが今日は何故か一つ一つのボタンを丁寧にはずしていく。
その手も、いつもとは違い震えて中々思うように制服を脱げない。何度も自分の手を叩き、体の中から湧き上がる異常な興奮を
抑えて制服を脱いでいく。最後に、ズボンのベルトをはずし終わると、そこには女物の下着に身を包んだ晶の姿があった。
 本来ならここで、体操服の上からブラが透けないように、ブラをはずして体操服とそのズボンを履くべきだろう。
しかし、晶は一向に体操服を着ようとはしない。それどころか、教室で女装しているという異常な状態の中で興奮してきたのか
登校前に射精したにもかからず、またペニスが勃起してきた。これには流石にマズイと思い、元に戻そうとする。
しかし、ペニスは萎えるどころかどんどん硬くなっていく。そのペニスはまるで自己主張するかのようにヒクヒクとショーツを
前に押し出している。そんな自分のペニスを見て、抑えてきた興奮が沸々と湧き上がってきた。
(誰もいない…)
 晶は、周辺を改めて見渡し誰もいなことを確認すると、椅子に座りゆっくりとペニスをショーツの上からなでる。
場所が場所だけあって、少し撫でただけでも強い快感が晶の脳を刺激する。
「あっ…ぁぁ…」
 晶はばれないように、蚊の鳴くような小さな声で喘ぐ。もう、その手を止めることは晶には出来なかった。


一方、体育館に着いた祐樹はというと、晶がいなくて全員がそろっていないということで授業を始められずにいた。
祐樹は、呼びに行こうかとも考えたがさっき言われた一言を思い出しその考えを捨てた。
痺れを切らした生徒が、晶は休みましたと嘘をつくが担任から出席簿のコピーを渡されているため、そんな嘘通るわけもなかった。
(晶君…どうしたのかな…)
 祐樹は先ほど、きつい一言を言われたのにも関わらず、晶の身の上を心配していた。
そうこうしている内に、教員が痺れを切らしたのか怒鳴りあげる。
「まだこないのか!もういい!誰か呼びに言って来い!」
 その言葉に、授業が始まらず雑談をしていた生徒が一瞬に静まり返る。
「呼びに言ってくるやつはいないのか!?」
 生徒が自分から手を挙げさせるように強要させる。当然、人気のない晶を自分から呼びに行くという生徒は居らず、
周りはお前が行けと言う声がひそひそと聞こえてくる。そんな中、祐樹がスッと立つ。
「あ、あの…僕行ってきます。」
「早く戻ってこいよ。じゃあ、他は先に授業始めるぞ!もう10分も損した…まったくあの餓鬼…」
 教員はぶつぶつ文句を言いながら、祐樹を除いた生徒に指導を始める。そして、祐樹は体育館を後にして自分のクラスまで小走りで戻る。

(あれ…ドアと窓閉まってたっけ…?)
 祐樹が自分のクラスまで来ると、出るときには開きっぱなしだったドアと窓がきっちりと閉まっていた。
少し疑問に思いながらドアを開ける。
「晶君!先生が……ぇ…?」
「ひゃぅっ!?」
 祐樹が見た視線の先には、ブラの上から胸をまさぐりながら、ショーツの上から勃起したペニスを掴んで扱いている晶の姿があった。

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最終更新:2013年04月27日 18:54