連れて来られたのは、先ほどまでの狂的な暗い部屋から一転。何の変哲も無いただの事務所。いや、少し違うのは大きなカプセル型の機材が一つあることくらいだ。
先ほどの俺を腕を引っ張ってきた少女は室内に入るや否や、腕を組みをし、不遜な態度で部屋の主を呼んだ。
「せんせー、いるー?あ、いたいた。」
先ほどの奇妙な装置の裏から先生と呼ばれた白衣の女性が現れた。
「おー、榊田か。今日も妹の見舞いかね。」
「そうなんだけど、ロビーで彼にあったんだけど・・・・・・」
と俺を指し、紹介したのだが。
「お前は・・・・・・誰だ?」
初対面にしては、当然な質問に榊田と呼ばれた少女は然も当然のように
、それがわからないからせんせーのところに連れてきたんだけど?と答えるが、白衣の先生の反応はそういったものではなかったようだ。
「あたしは、この施設の全ての職員、患者を記憶しているが、お前は知らない。どうやってこの施設に入り込んだんだ?」
不審者を見るような目で俺を睨むが、さてどう説明したものか。そもそも説明してもらいたいのは俺のほうなのだが。しかし、何も説明しないわけにもいかないので、ほんの2、30分程度しかない記憶を遡り、事情を話す。
「記憶喪失・・・・・・ねぇ。」
数分程度の身の上話を聞き終えた先生がそうつぶやく。
「全健忘の場合、その原因の多くは心因性。ストレスとかトラウマとかあったんじゃないの~?まぁ外傷によることもあるし、一応検査してみる?」
まぁ検査くらいはしておいたほうがいいのかもしれないな。
しかし、問題としては・・・・・・
正直なところ、お金はない。どころか財布もなく、それどころか、所持品らしい所持品など、衣服くらいのもんだ。
こんな俺の状況を察してか、先生の「別にタダでいいわよぉ~」に嬉々としたが、その後の「他からたんまり巻き上げてるからね!」って一言で一気に胡散臭さが増した。カップ麺の当社比1.5倍と同等くらいには増してるはずだ。
まぁ、タダのものにはあやかるべきだろうと、検査をお願いすることにした。
最終更新:2012年07月22日 11:21