552 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:23:29.48 ID:96uM8gpo0
喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません。私の取り扱う品物は心、人間の心でございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり」
喪黒「そんなみなさんのココロのスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
部室
澪「と、いうわけなんだ……」
唯「おめでとう、澪ちゃん、あずにゃん!」
律「……」
田井中律(17) 高校生
『奪う』
553 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:28:23.29 ID:96uM8gpo0
紬「それにしてもびっくりね」
唯「まさか澪ちゃんとあずにゃんが付き合うことになったなんてね!」
澪「唯!声が大きい……」
梓「そ、そうですよ……!」
唯「えーいいじゃん。何もやましいことなんて無いんだから」
澪「女の子同士っていうのは、普通認められてないものなんだ」
梓「私達は気にしなくても、先輩達にまで迷惑が掛かるかもしれませんから」
紬「仕方ないわね。そういうことなら」
律「……」
澪「律?」
554 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:31:06.74 ID:96uM8gpo0
律「……ん?」
澪「ん?、じゃない。どうしたんだ?さっきから黙りっ放しじゃないか」
律「あはは、そんなに私の事見つめないでもいいのにー」
澪「律!」
律「……梓と、上手くやっていけそう?」
澪「な、なんだよ。心配されなくても大丈夫だから」
律「そっか」
澪「私達、親友なんだから、何かあったら相談すること!」
律「そうだよな、小さい時から一緒だったからな」
律「安心しろよ。何でもないから」
555 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:34:27.97 ID:96uM8gpo0
律「ムギ、唯、帰るぞ。二人の邪魔しちゃ悪いだろ」
紬「ええ。それじゃ」
唯「また明日」
澪「あぁ、今日はありがとう」
律「……頑張れよ」
梓「それじゃ澪先輩、行きましょう?」
澪「あぁ」
律「……」
唯「りっちゃん……大丈夫?」
律「んー?何が?」
唯「その、澪ちゃんのことなんだけど……」
律「あははー、……今日は帰るわ!」
唯「待ってりっちゃん!」
律「用事があるんだよ!また明日!」
557 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:37:43.68 ID:96uM8gpo0
唯「……」
紬「下手に励ましたりしたら駄目だと思う」
紬「腫れ物を触るような扱いをしたら、りっちゃん余計に傷付いちゃうから……」
唯「何も、してあげられないのかな……?」
紬「りっちゃんが立ち直るまでいつも通りで、ね?」
唯「うん……」
律「はっ……はっ……」
律(……何やってんだろな……くそっ、くそっ……!)
ドンッ
律「あたっ!す、すみません!」
喪黒「いえいえ、私の方こそすみませんでしたぁ」
558 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:40:31.40 ID:96uM8gpo0
律「そ、それじゃあ失礼します……」
喪黒「田井中律さん」
律「何で私の名前を?」
喪黒「まぁまぁまぁまぁそれはいいじゃありませんか。実は私こういう者でして」スッ
律「『心のスキマお埋めします』?」
喪黒「一種のボランティアです。あなたのように悩みを抱える人を救済しているんですよぉ♪」
律「は、はぁ……」
喪黒「どうです?私に悩みを話してみては?私ならあなたの心のスキマを必ず埋めて差し上げますよ?」
559 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:42:59.79 ID:96uM8gpo0
律(なんか怖い人だし、うさんくさいし……)
律「結構です……」
喪黒「おやまぁ残念ですねぇ♪あそこに『魔の巣』というお店が見えますか?」
喪黒「私を頼りたくなったら、いつでもどうぞ。大抵は居ますからねぇ♪」
律「……失礼します」
喪黒「ホーホッホッホッホ!」
律(気味悪いの……)
律(家に帰ろう……)
561 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:45:43.86 ID:96uM8gpo0
翌朝
律(あ、居た!)
律「みーおっ!」
澪「律、おはよう」
律「こんなところで何やってるんだよ。一緒に学校行かないか?」
澪「ごめん、今日から梓と待ち合わせすることになったから」
律「え?」
澪「悪いけど、一緒には行けないぞ」
律「そんな……」
562 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:48:31.27 ID:96uM8gpo0
放課後
唯「りっちゃん、部活行こう?」
律「……ちょっと職員室に用があるから、先に行っててくれ」
紬「じゃあ先に行ってるわね?」
律「あぁ」
澪の教室
澪「あれ?律?」
律「職員室に呼ばれてたからついでに寄ってきたんだ。部活行こうぜ!」
澪「いいけど……先に梓の所に寄ってからだからな」
律「いや、別に行かなくても梓なら部活に来るだろ……?な?」
澪「そうはいかないだろ。私達は一緒の時間が欲しいんだから」
律(梓、梓、梓……やっぱり付き合ってると、変わるんだな……)
563 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 09:50:59.19 ID:96uM8gpo0
澪「……だったんだよ」
梓「それ良いですね!今度一緒にどうですか?」
律(部室に着くまでの時間が長い…)
律(こんなことなら、最初から澪のところにいかなけりゃよかった……)
律(二人とも、どうせ『なんでコイツが居るんだ』って思ってるんだろうな……)
ガチャ
律「おっす」
紬「りっちゃん!あ、澪ちゃんに、梓ちゃんも……」
梓「こんにちは、唯先輩、紬先輩」
唯「む、ムギちゃん!皆揃ったしお茶にしようよ!私お腹ペコペコなんだぁ!」
紬「そ、そうね!すぐ用意するわ!」
564 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:04:12.97 ID:96uM8gpo0
梓「はい澪先輩♪あーん♪」
澪「やめろよ梓……皆見てるだろ?」
梓「嫌、ですか……?」
澪「ぐっ」パク
梓「さ、先輩、私にも♪」
澪「……ほら、あーん」
唯(どうしよう……完全に二人の世界だよ……)
紬(ちょっと冗談にならないわ……)
prrr
梓「ちょっと失礼しますね。……もしもし?」
565 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:07:02.90 ID:96uM8gpo0
梓「すみません、家の用事が入っちゃったみたいで……今日はこのまま帰らせてもらっていいですか?」
唯「家の用事なら仕方ないよ」
紬「ええ」
梓「じゃあこれで。失礼します」
バタン
澪「……練習するか」
紬「そうね……」
唯(すごく不機嫌……あずにゃんが居ないからかな)
566 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:09:53.67 ID:96uM8gpo0
澪「よし、今日はこのぐらいでいいか。私も帰るよ」
律「あ、澪!一緒に帰ろうぜ!」
澪「……ごめん。私には梓が居るから」
澪「そういう浮気みたいなことは、私には出来ないよ」
律「ご……ごめん……」
澪「悪いな、律。それじゃあまた」
律「……っ」
唯「私達も、帰ろう……?」
律「今日、寄る所あるから」
紬「りっちゃん……」
567 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:15:51.05 ID:96uM8gpo0
喪黒「ホーホッホッホッホ!お待ちしてましたよぉ田井中律さん♪」
律「澪が……私の物になるんですか?」
喪黒「もちろん。相談に乗るとは言っていましたが、実は事情は全て分かっています♪」
喪黒「さぁ、これをお受取りください」
律「……わら、人形……?」
喪黒「相手を呪う方法といえば、やはりわら人形でしょう」
律「こんなので……!」
喪黒「効果は本物ですよ?保証致します」
喪黒「使い方は簡単。ただ呪いたい相手を思い浮かべ、わら人形を弄るだけです」
律「……」
喪黒「ただ、一つ条件がございます♪」
律「条件ですか……?」
喪黒「効果は大きいので、一度使えば逃げ出すことは許されません」
喪黒「呪いをかけた相手は、死ぬまでわら人形と繋がります」
喪黒「もちろん、使うかどうかはあなた次第ですからねぇ♪」
568 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:18:31.71 ID:96uM8gpo0
律の家
律「結局、からかわれただけなのか……?」
律「足ボキッ……なんてな」
律「……馬鹿らし。寝よ」
翌日
澪「……」
和「どうしたのよ、澪」
澪「今日、朝の待ち合わせを梓に断られて……」
澪「嫌われるようなこと、したのかな……?」
和「一回断られたくらいでめげないの。何か訳があったんじゃない?部活で会えるでしょ」
澪「……放課後、話をしてみる」
和「ええ。昼休みはじっくり考えなさい」
569 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:22:47.10 ID:96uM8gpo0
紬「それで、梓ちゃんを待ってるのね」
澪「ああ……怖くなっちゃってて……」
唯「大丈夫。きっとあずにゃんは寝坊しちゃっただけだよ」
澪「だと良いんだけど……」
ガチャ
梓「こんにちは……」
澪「梓!どうしたんだ、その足…!」
梓「昨日、階段を下りていたら折れちゃったんです。疲労骨折が原因じゃないかって医者に言われました」
梓「今朝はすみませんでした。一緒に歩くだけでも、澪先輩に気を遣わせちゃうから……それはしたくなくて……」
澪「そんな迷惑なんて考えるな!私が助けるから!」
律(本当に折れてる……昨日私が握った所……!)
570 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:26:06.37 ID:96uM8gpo0
梓「みお、先輩……」
澪「大丈夫だから。な?」
梓「ありがとう、ございます……!」
紬「さ。お茶にしましょう?」
唯「そうだよ私もう倒れちゃう……」
律「わ、るい。用があるから帰るわ」
紬「りっちゃん……何かあったの?」
律「ちょっとな!また!」
紬「様子が変ね……あんなに急いで走って……」
梓「う……」
澪「梓?どうした?」
梓「頭が、ぐらぐらして……」
571 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:28:36.08 ID:96uM8gpo0
律「はぁっ……はぁっ……!」
律(本当に、折れた!こんなつもりなかったのに……!)
律(ごめん……梓、ごめん……!)
バタンッ!
律「喪黒さん!」
喪黒「おやぁ田井中さん♪調子の方は如何ですかぁ?」
律「これ……お返しします」
喪黒「これまたどうして?」
律「梓を傷つけてまで澪が欲しくない……」
喪黒「言いましたよぉ?一度使えば逃げ出すことは許されないと」
律「私は、こんなつもりはなかったんだよ!」
律「頼むから、呪いを取り消してくれ!」
573 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:32:01.05 ID:96uM8gpo0
喪黒「今更そんなことを言っても無駄無駄♪」
喪黒「いいですか?古今東西、略奪愛は恋愛の一つとして確立していました」
喪黒「奪い合いは動物の本能じゃありませんか」
喪黒「あなたも奪うのです。さもなくば、大切な人があなたから遠ざかっていくんですよぉ?」
喪黒「欲しい物はどんな手を使ってでも奪い取るのです」
律「そ……そんなの……」
喪黒「さぁ。奪う側へ行ってもらいましょう」
喪黒「ドーーーーーーーーーン!!」
律「アヒャーーーーーーーーー!!」
575 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 10:35:19.47 ID:96uM8gpo0
夜、公園
梓(律先輩……急に会いたいなんて、どうしたんだろう……)
梓(それになんだか、体中が痛い……締め付けられてるみたいな……)
梓「……あ、律先輩。急にどうしたんですか?」
律「遅いよ梓……思わず全身の骨を折る所だったじゃんかぁ……」
梓(わら人形……?)
律「話さ、簡単。澪を私にくれ」
梓「な、何言ってるんですか!そんなこと、痛っ!!」
律「頭に釘、打ち込むぞ?」
律「前からずっとお前が邪魔だったんだ」
律「澪の隣は永遠に私だけのものなんだから」
577 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 11:04:07.22 ID:ICeW/yvyO
梓「絶対にいやです……!」
律「……死ねっ!」
カーン!
梓「ああああああっ!!!」
律「あれ?貫通してんのに死なないなんて、ゴキブリ並だな」
律「澪を渡せば生かしてやるけど、どうすんだ?」
梓「やだ……!」
律「なんでだよ……!こんな目に遭ってんのに……死ぬかもしれないんだぞ!?」
梓「好き、だから……」
律「う、ぁ……うわぁぁぁぁぁっ!!!!」
ヒュン!
ゴシャッ!!!
579 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 11:09:10.58 ID:ICeW/yvyO
喪黒「これで秋山澪さんは田井中さんの物。おめでとうございます♪」
喪黒「奪うことは大変結構ですが、まぁ、今回のケースはあまり褒められたものではなかったですね」
喪黒「そもそも、手に入れる為に自ら行動を起こそうとせず、他人に奪われて駄々をこねるとは……」
喪黒「さて、田井中さんと秋山さん、二人の恋路はどうなるのでしょうか」
喪黒「また誰かに奪われたりは……しませんよねぇ♪」
喪黒「ホーホッホッホッホッホ……」
おわり
最終更新:2009年09月23日 14:32