432 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 03:44:23 ID:PNXCscA4
それは、唯先輩と付き合い始めてから1ヵ月が過ぎた頃のこと。
その日、私はムギ先輩と部室で二人きりだった。
梓「はぁ…」
紬「どうしたの梓ちゃん、唯ちゃんとケンカでもした?」
梓「いや、ケンカなんてしてません」
紬「じゃあもっと遊びたいとか?」
梓「いえ、毎日一緒に帰ってますし、休みのたびにデートしてます」
紬「じゃあ…キスがまだとか!」
梓「き、キスはまだですけど…それも違います」
紬「じゃ、なにが不満なの?」
梓「不満はないですけど…」
そう、私は現状の唯先輩になんの不満も感じていない。
優しいし、私のことを好きだと言ってくれる。そんな先輩に文句なんてあるわけがない。
でも、だからこそ…私は違和感を感じていた。
紬「つまり…唯ちゃんが梓ちゃんに対して気を遣いすぎてるってこと?」
梓「私を抱きしめてくれる時も、なにかぎこちないっていうか…前みたいに頬ずりもしてくれないし」
紬「頬ずりしてもらいたいの?」
梓「べ、別にそういうわけじゃ…以前との対比で例に挙げただけです!」
紬「うふふ…とにかく、唯ちゃんにもっと大胆に愛情表現をしてほしいってことね!」
梓「まぁ…そんなとこです」
433 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 03:47:14 ID:PNXCscA4
紬「任せておいて!いい作戦があるわ!」
梓「作戦?なんですかそれ」
紬「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ♪」
そう6回つぶやいたムギ先輩は、なにやら笑みを浮かべていた。
唯先輩が大胆になるって、一体どんな作戦なんだろう…?
そうこうしているうちに、唯先輩たち3人が部室にやってきた。
唯「おーすあずにゃん、今日も元気ー?」
梓「は、はい!あの先輩、今日も帰り一緒にかえ…」
唯「あ、りっちゃーん!こないだ借りたマンガ返すよ!すっごくおもしろかった!」
梓「……うぅ」
紬「確かに、前みたいにすぐに抱きついたりしないわね…」
梓「はい…」
紬「よし、早速作戦を実行に移しましょう!梓ちゃん、ちょっとこっちきて?」
そういうとムギ先輩は、私を音楽雑誌を読んでいる澪先輩の前に連れてきた。
梓「あの、一体なにを…」
紬「澪ちゃん、ちょっと立って?」
澪「ん?なんだムギ?梓も…」
紬「えーい♪」
梓「きゃっ…」
澪「わっ…」
突然ムギ先輩は、私の背中を押して澪先輩に向けて倒れこませた。
あわてて私を支えようとした澪先輩はバランスを崩して倒れこみ、私が澪先輩を押し倒した格好になる。
434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 03:51:48 ID:PNXCscA4
澪「だ、大丈夫か梓?」
梓「は、はい大丈夫です…ちょっとムギ先輩、一体…」
紬「それより、あれ♪」
ムギ先輩が指差す先には、ポカーンと口を開けた律先輩、そして…
ジトーッとした目付きで私を見つめる唯先輩の姿だった。
あんな目で私を見るなんて…ムギ先輩の作戦、逆効果なんじゃ…
梓「あ、あのこれは…」
唯「……」
私が弁解する間もなく唯先輩はのしのしと私の方へやってきた。
そして私を羽交い締めにし、澪先輩から引き離した。
梓「あ、あの…唯先輩?」
唯「…ちゃダメ…」
梓「え?」
唯「浮気しちゃダメ!」
梓「う、浮気ってそんな…ふにゅ!」
唯先輩は胸に顔を押し付けるようにして私を抱きしめると、今度は澪先輩に向かって言った。
唯「澪ちゃん!いくら親友でも、私のあずにゃん取るのは許さないから!」
澪「あ…え?」
フンス、と荒い鼻息が私の頭に当たる。
どうやら唯先輩は、私が澪先輩を押し倒したのを見て浮気だと勘違いしたらしい。
それでこんなに必死になるなんて…私はなんだかおかしくなって、クスクス、と笑ってしまう。
435 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 04:00:06 ID:PNXCscA4
唯「どしたのあずにゃん?」
梓「いえ、なんでも…大丈夫ですよ。私は唯先輩だけのものですから」
唯「ホント?」
梓「ホントです。でもその代わり、おもいっきり好きでいてください」
唯「おもいっきり?」
梓「あまり気を遣ったりしないでいいので、前みたいにもっとその…大胆な感じでいてください」
唯「え、いいの?恋人はおしとやかじゃなきゃいけないって憂が言ってたから…」
憂の言うことも一理あるけど…でも、そんな気を遣う唯先輩はやっぱりらしくないと思う。
それに恋人の私には、ありのままの姿を見せてほしいし。
梓「いいんです。私が許します。だから…」
唯「うん、いいよ♪」
そう言うと唯先輩は、さらに強く私を抱きしめた。
梓「あ、あの…苦しいです…」
唯「いーの!あずにゃんがいいって言ったんだから♪」
梓「もう…先輩ったら」
ふと横を見ると律先輩たちがじーっと私たちを見つめていた。は、恥ずかしい…
律「…まったく、いいバカップルだよなあ」
澪「まあ、仲がいいに越したことはないんじゃないか?」
紬「梓ちゃん…やったわね!」
436 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/07(水) 04:03:38 ID:PNXCscA4
ガッツポーズを作るムギ先輩に、人を押しこくっといて何がですか、と突っ込みたくなるがまあいい。
今は唯先輩と抱き合っていられれば、それで…
梓「先輩、大好き♪」
唯「私も大好きだよ、あずにゃん♪」
すばらしい作品をありがとう
最終更新:2009年10月07日 23:21