結果的に、9歳の妹に出し抜かれた私は、なんだか母親の泣き顔を見るのが辛くて、そそくさと部屋へ戻った。
変な時間に昼寝を挟んだせいで、ベッドへ横になっても全然眠れない。深夜、DVDでも見ようとリビングへ行くと、母親が勉強をしていた。
「まだ起きてたの?もう3時だよ」と言っても、母親はノートから目を離さず、「あんたが作ってくれたプリンでやる気全快だから、あと30時間は起きていられる」と冗談ぽく言ってた。
母ちゃんのために作ったんじゃない、と言いかけたけど、なんだか言ってはいけない雰囲気な気がして、結局黙って部屋へ戻った。
母ちゃんの会社には社報みたいなものがあるんだけど、ある日母ちゃんが社報を持って帰ってきて、自分に見せてきた。
社報いっぱいの見出しは、「課長の娘さんは世界一のパティシエ」(とかそんなだったと思う)
課長が疲れて帰ってきた時…自慢の娘さんが何と手作りプリンを作って出迎えてくれた!
母ちゃん「私は世界一幸せな母親です(笑)」
みたいな、そんな記事が書かれた社報。
「専務にちょっと自慢したら社報に乗っけてくれてさぁ」
とか言って嬉しそうにしている母ちゃんを前に、嬉しいとか恥ずかしいとか、そんな気持ちより先に母ちゃんが 課 長 へ昇進した事が一番驚きだった。
うちの母ちゃん、ふっつーの高校卒業して、ふっつーに高卒でOL経験して、ふっつーに結婚した人。
特に秀才でもないし、特に何か飛びぬけて凄い物もっているわけでもない(と思う)
生活費の足しに始めたパートで、パートから社員へ、社員から主任へ、主任から現場責任者へ、そして課長。
いやもう、どっかのテレビ局が取材に来てもおかしくないんじゃね?と思うばかりのトントン出世にみえた。
ちょとうんこしてくる
社員数60人くらいの小さい会社だけど、それでも課長は凄いと思う。
しかしまぁ、母ちゃんの出世と引き換えに、母ちゃんの帰宅時間はどんどん遅くなっていった。
理由は簡単。ISOとかいうのを、母ちゃんが筆頭に会社で取得しようとしていたらしく、母ちゃんは勉強に研修に、と
あちこち回っていたからだ。
>>244
>>1
町工場なので、現場の人間はDQNか派遣かパートのおばちゃんばかり。(工場勤務の人、偏見ある言い方すまん)
人間関係もだめだめらしく、ISO取得と同時に、そのだめだめな人間関係も修復しなくちゃ駄目だ!と思ったらしい母ちゃんは、
自ら“24時間電話相談”とかいうのを始めて、人間関係や仕事の悩み、果てはパートのおばちゃんの家庭の悩みや若い社員の恋愛事情まで
全部丸ごと相談に乗るわよ!みたいな活動を始めた。
>>249
あれはあくまでもモデルはいるが、架空の話だろ?(多分。読んだ事ないから詳しくはしらんがw)
母ちゃんは日本のどこかで今日も元気に生きてる実在の人だからな
毎日毎日遅く帰宅しては、電話で社員の悩み相談を受ける母ちゃん。
ある時なんか、パートのおばちゃんが「旦那が浮気してるかもしれない」と泣いて電話をかけてきた時、「今から行くから!」と夜中に家を飛び出していったし、
またある時は派遣で将来が心配…と言った男の子を、午前休を使ってハロワへ連れて行った事もあるくらいだ。
のめりこむと凄まじいというか、周りが見えなくなる母ちゃん。
なにをやらせても、常に100パーセントを出す人だと思った。
相変わらずニートだった自分と、アルバイトで忙しい兄と、ほとんど家にいる時間がなくなった母ちゃん。
自分はニートながらに、ずっと貯めてたお年玉(w)とかを切り崩して、時に兄から小遣いをもらい、自由奔放に遊びまわっていた。
その内、家に帰るのがいやになってきて、寮付きのキャバクラにでも勤めればもっと自由になれるとか本気で思っていた当時の自分。
ふらふら遊んでは、夜中に自宅へ戻る事が増えてきた。
>>271
すまん、そんな壮大なオチはない…
ある日、夜中遊ぶ友人が捕まらなかったので、久々に早い時間(といっても夕方6時くらい)に自宅へ戻った自分。
家へ戻ると妹がテレビを見ていて、自分を見るなり嬉しそうに「おかえりなさい」と言って抱きついてきた。
相変わらずおもらしが続いているらしく、まだおむつが外せない妹。ほこりをかぶったランドセルを見れば、やはりまだ不登校のようだった。
不登校の妹が、誰かと話す機会はなかったらしい。
私は家へ戻らないし、兄はアルバイトの合間しか家へ戻ってこない。母ちゃんも、同様。
孤独だったらしい妹は、「お姉ちゃん、今日はもうお出かけしない?」「○○(妹)と一緒にポケモンしてくれる?」としきりに聞いてきた。なんかちょっと泣けてきた。
なんだか妹が不憫に思えて、ぴったりと自分に寄り添って離れようとしない妹の頭をその日はずっと撫でていたと思う。
そんなこの日。一番衝撃だった出来事。それは妹の夕食だった。
「お姉ちゃん一緒にご飯食べよう」と言って、妹がどこからか持ってきたのは、カロリーメイトの4本パック。
「お姉ちゃんの分もあるよ」といって、同じ4本パックのカロリーメイトの箱を自分へ手渡して、妹は当たり前のようにそれを食べ始めた。