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T-note 第四話

「ハッキリ言えよ!アンタが犯人だろ!」
「ハァ!?何いきなりキレてんの!?」
朝、下駄箱で靴を履き替えてると廊下の奥から怒声が聞こえた。
ざわざわと周囲はことの成り行きを見守っているが、誰も止める気は無いらしい。
ようするに野次馬である。

「アンタ以外にバラした奴はいないんだよ!!」

昇降口を後にする俺の背中に一際大きな声が響いた。
教室に向かうまでに(おそらく)騒ぎを聞きつけた教師とすれ違ったので喧嘩も間も無く収まるだろう。
何事も無かったかのように俺は教師に入り、席に座る。



「おはようさん」
「おぅ!?キョンキョンから挨拶を!これはフラグ!?」
「じゃないからな」
さっきまで眠そうに目を擦りながら欠伸までしてた奴が、どうしてこんなにもハイテンションになれるのか不思議である。
その推定年齢ギリギリ二桁、見た目幼女は前に座るなり俺と向かい合わせの形になるように座り直す。
「いやいや、照れなくていいよキョンキョン?そりゃあまだデートフラグは立てられないけど」
「…いや、ちょっと真面目な話がしたいんだが」
教室の固い空気を粉々、とまではいかないまでもある程度ほぐすことのできるムードメイカーの泉だが、ここでようやく気づいたらしい。
「……?」
キョロキョロ、と小動物が周りを見渡すような仕草で教室の空気を探す泉。
この姿をみて少し癒されたのは双方の尊厳に関わるので深く心の底に沈めさせてもらう。
「あー…昼休みに文芸部室に来ないか?ちょっと話辛い事もあるんでな」
「…話辛い事?」
「いや、お前には関係無いんだが…それも含めて昼休みに」
丁度そこで朝のチャイムが響いた。
おそらく廊下で待機していたであろう担任が同時に入ってくる。
そして日直が号令をかけた。
「きりーつ!」


昼休みになると泉は約束通りに文芸部室へと来てくれた。
「やほー」
ブンブン、と手を振る泉にパイプ椅子を譲る。
「おう。紅茶と緑茶、どっちがいい?」
一応ながら客人として迎える泉に、お茶くらいは振る舞おうと急須を掲げる。
「んー…じゃあ紅茶で」
「了解」
朝比奈さんの見よう見まねで紅茶を淹れる。
恐らく俺が普段味わう一割の美味さも無いだろうがそこは我慢してもらう。




「あー、芯まで温まるねぇ」
俺の淹れた紅茶に持参した牛乳を入れてミルクティにしながら泉はコロネを頬張る。
その姿に、手の掛かる娘を見るような父親の心境を感じてしまう。
「まあいい。話ってのは二つあるんだが…いいか?」
「こんな人気の無い所に誘い込んで……ハッ!!いけないよキョンキョン!!私にはかがみが!」
明らかに芝居ぶった動作をスルー。
すると恥ずかしくなったのか温めのミルクティをちびちび飲んで縮こまってしまった。
「ボケをスルーするなんて大概ヒドいよね…」
生憎と俺は芸人じゃないからな。
「まず一つ目なんだが、なんか学校全体がピリピリしてないか?」
「…そういえばそうかな」
ようやく真面目に話をする気持ちになったらしく、ふざけた表情は影を潜めている。
「なんかさ、男子はいいんだけど女子が対立してるんだよね」
「何かあったのか?」
「…女子の間の話なのにキョンキョンは何で入り込もうとしてるの?」
いきなりの方向転換。
…どうやら俺の蒔いた種は意外と根を深く下ろしたらしい。
「古泉が心配してるんだよ。ハルヒは女子の中ではまだまだ孤立してる。不安だからそれとなく話を聞けないかってな」
咄嗟に出た嘘にしては上出来だろう。
泉も納得したのかふむ、と頷いて今の言葉を反芻している。
「じゃあ話すけど…あんま口外するような話でもないから自重して欲しいんだけどさ」

どうやら泉自身もこの件については思う所があったらしく話は昼休みを半分程消費した。
要約すると「最近秘密を暴露するとを盾に脅迫されている」と言うことだった。

「ふぅむ、マズいな」
「えっ…?」
「泉、これからしばらくかがみと一緒にハルヒも連れてきて一緒に昼飯を食べてくれないか?」
「別にいいけど…なんで?」
「ハルヒはSOS団の団長なんてうさん臭い事をやってる上に1人が多い。そんな怪しい奴は因縁ふっかけられてもおかしく無い」
「…キョンキョンはハルにゃんが心配なんだね」
「同じくらいお前も、お前等も心配だよ」
「う、うわ……いや、50点!」
急に顔を赤く染めたかと思えば咳払いをして俺を採点しやがった。
「今は『お前が心配だ』で終わってれば75点オーバーでこなたルートに入るチャンスだったのに…残念だったね?」
「意味がわからん」
何をどう勘違いしたのか分からないが泉の中ですでに整理はついたらしい。
「とりあえずわかったよ。ハルにゃん誘えばいいんでしょ?」
「ああ、頼む」
「それでもう一つの話ってのは?」
「いや、時間もないしそんな急いで話すまでもない話だ」
時計を顎で示す。
残りは10分も無かった。
「そーだね、じゃあまた後で!紅茶ご馳走様」
泉は笑顔で俺を見るとバイバイ、と手を振った。
俺も同じ教室だろうが。





俺はポケットに突っ込んであった携帯を取り出すとメールフォルダを開いた。
この携帯は『T-note』では無く、俺のだ。
そこの受信メールに「K」という題名のメールがあった。
それを消去する。
…既に女子の噂話に上る程度には俺は有名になっていたらしい。
もしもまだ噂にもなっていなかったら泉にこのメールを見せてあと押しをする予定だったが、必要は無くなった。
最後の一押しは必要だが、それは余り問題でも無い。


全て順調。
あとは生徒会を利用するだけだ。


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最終更新:2008年03月06日 14:12
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