吊り橋 -21-

朝日が射し込む。
私はゆっくりと目を開いた。
今日は何曜日だっけ…。
ぼーっとする頭を抱えてベッドから出ると、私はパソコンの電源を入れた。
しばらくしてディスプレイがブワンと浮かぶ。
右上には有名ポータルサイトのガジェットの一つのカレンダーがある。
今日は月曜日だった。

支度をしていつものようにバス停に向かう。
珍しいことにかがみにもつかさにも出会わなかった。
それはバスが来て、教室に着くまで同じで、2人の姿を見ることはなかった。
「みゆきさん、おっはよー」
「あ、おはようございます。泉さん」
「今日つかさ来てないね~」
「ええ、かがみさんも来てないようですし…何事もないと良いんですが」
「あたしちょっとメールしてみるよ」
「お願いします」
昨日の事件があっだけに少し心配でもあったし。
「かがみ~ん今日はどうしたいんだ~い。寝坊(笑)?もう始まるよ~」
「つかさ~そろそろ始まるよ~」
文章量に差があるのは仕様だ。
しばらくしてかがみから返事が来た。
「ごめん、今日は2人とも休むわ。
昨日の夕飯に出た刺身で当たったらしくて…。
だからごめん。先生には言っといて。」
かがみにしてはなかなかしおらしいぶんしょうではないか。
つかさから返事がないのを見ると、これが2人の総意だろう。
私はメールをみゆきさんに見せた。
「食中毒ですか…心配ですね…」
「かがみんはともかく、つかさが心配だよ~」
「泉さんたら…」
そう微笑みながら私に携帯を渡す。私の言葉が本気でないことを知っている証拠だ。
「泉さん、放課後にかがみさんとつかささんのお見舞いに行きませんか?」
「良いねぇ。行こうか行こうか」
ということで私とみゆきさんで2人のお見舞いに行くことにした。
今日の部活は来れないことをキョンキョンに言おうと思ったら、キョンキョンの方からやってきた。
「泉、今日は柊姉妹が来てないようだが」
「あ、それならメールがあってね、2人とも食中毒なんだって」
「食中毒…?」
キョンキョンは少し訝しげな顔をしていたけど、やがて
「そっか、ありがとな」
と自分の席に戻っていった。
あ、部活を休むこと言ってないじゃん。
私は慌ててキョンキョンの席に向かった。



放課後。
私とみゆきさんは2人の家へ向かった。
私の手にはケーキの箱が握られている。
2人のためだ。
「2人とも大丈夫でしょうか…」
ふと、みゆきさんが言った。
「大丈夫だよ、ただの食中毒だもん」
「いえ、それとは少し違うんですが…」
「…?」
「何か、こう嫌な予感がするんです。どういうのかは説明できませんが」
「大丈夫だよ、みゆきさん。考えすぎだって」
「……そうですね。すみません。変に恐怖を煽ってしまいまして」
そうやってみゆきさんを励ます傍ら、実は私も感じていた。
このまま2人のお見舞いに行くと何か悪いフラグが立つような、そんな気分を感じていた。
でも後戻りは出来ない。決定ボタンは押され、賽は投げられたのだ。

結果として。別段何もなかった。
フラグとか言っていた自分に恥ずかしさすら覚える。
それはみゆきさんも同じようで、
「何だったんでしょうねえ」
と少し照れている。
「やっぱり考え過ぎだったんだよ。かがみ達には会えなかったけどさ」
「そうですね。それに今は2人が治るよう、祈るべきですね」
会話はそれで終わり、私はみゆきさんを駅まで送った。
そう、別に何もないんだよ。
家に着いた私はパソコンの電源を入れ、いつものようにネトゲにはまっていった。

次の日も、かがみとつかさは休んでいた。
教室に着くとキョンキョンが話しかけてきた。さすがに心配だったのかねぇ。
「2人は今日も来てないみたいだな…昨日はどんな様子だったんだ?」
「私達が行った時には2人とも寝ちゃっててねぇ~。それに結構ひどい風邪になったらしいからまっすぐ帰ったよ」
「ええ、2人とも心配です…快方に向かってくれれば良いのですが…」
「そうか…まあすぐに治るさ」
とキョンキョンは自分の席に戻ってハルにゃんと話をし出した。
ふとみゆきさんを見ると、すごく暗そうだった。
「みゆきさんみゆきさん」
「あ、はい、何でしょう?」
「何かこう暗いよ。顔に縦線入っちゃってるよ!」
「泉さんこそ…いつもの明るさに陰りが見えますよ」
「あり?そうかな?」
みゆきさんに指摘されて初めて気づいた。
私も大分ダメージ受けているんだなー…早く元気になってよ…かがみん、つかさ…。
放課後はハルにゃんの気分を損ねないためにも部室へ向かった。
いつものSOS団だった。
ハルにゃんだけが。



また次の日。
昨日までとの大きな違いはかがみんがいることだ。
私とみゆきさんは早速休み時間にかがみへのクラスに出向いた。
教室ではすでにみさきちと峰岸さんがいる。
「よぉーチビッコ」
「やっほー、かがみ、峰岸さん」
「ってあたしは無視かよ!」
「ついでにみさきちも」
「ついでかよっ!」
かがみはそれを見て笑っている。随分元気になったようだ。
残念ながら、つかさはまだ風邪が治らないらしい。
「あの子って普段は病気にならないだけに一度かかると大変なのよね」
「まるで柊がお母さんみたいだな」
「かがみさんは結構そういうところありますよね」
「ま、まあ…一応姉妹だし、双子だしね…心配するのは当然でしょ」
「なんなら照れることないんじゃないの?かがみん」
「なっ…照れてないわよ!」
「顔が真っ赤ですぜ、お姉さん」
「こなたー!」
私に襲いかかろうとするかがみを峰岸さんが押さえる。
「まあまあ、柊ちゃん」
「峰岸、あんた、あいつの肩を持つわけ?」
「だって泉ちゃんが言ってることは本当だし…」
かがみの顔がますます赤くなる。
それを見てニコニコ2名、ニヤニヤ2名。
そしてイライラorムカムカ1名。
誰のことかは言わずもがな。
そんな時、キョンキョンがやってきた。
「かがみが来てるって聞いたんでな」
なかなか気を遣いますね。兄貴。
その時、一瞬だけかがみの目が変わった。
どういう風に変わったか、詳しくは言えない。それほど一瞬だったのだ。
みゆきさんはおろか、その場にいた全員は気づいていない様子だ。
かがみの目はもう元に戻っており、かがみも何ともなかった。
私の思い違いか…。
私はこのことを忘れることにした。
結果として。忘れてよかったのかな。
でも仕方がない。この時の私はこの方法しか選べなかったのだから。

そしてまたまた次の日。事件は起きたのだ。


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最終更新:2008年03月22日 11:37
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