俺は一人、上機嫌だった。
先日の校内放送ジャック。
そして広がりつつあった噂。
この2つの効果は絶大だった。
女生徒の間での噂はすでに全員に行き渡っているだろう。
噂の中の登場人物が実際に行動を起こしたのだ。
信憑性は段違いに跳ね上がったに違いない。
"K"が誰なのか分からない。
もしかしたら隣のアイツが"K"かもしれない。
秘密を知られまいと躍起になっている為にいわゆる友達関係とやらはボロボロ、だそうだ。
「…キョンキョン?」
眉間にシワを寄せていた俺に声がかかった。
どうやら頭の中で今の状況を整理している時間は思いの外、長かったらしい。
女生徒しか脅されていないと言う状況から女の殆どの奴は貝のように口を閉ざしていた。
その例外的な一人である泉に世間話を交えながら今の状況を聞いてた訳だが。
「ん?ああ、すまん。ぼーっとしてた」
遠くを見るようにしていた目を正面の泉に合わせる。
「それで、お前らは大丈夫なのか?」
「んー…私たちは特別に被害を被ったワケじゃないしね」
他の人と少し気まずいダケダヨ、とどこか疲れ気味な声で話した。
貴重な情報源である泉をねぎらってやりたい気持ちはあるが、今は迂闊な事は慎まなければならない。
何が原因で足を取られるか分からないのだ。
「そういえばハルにゃんのことだけどサ」
ハルヒ…?あぁ、そういえば頼んでいたな。孤立してるから誘ってやれだとか。
「なんだか昨日から凄い元気になってヤバいヤバい」
何だそのヤバいって。
気になったが変な胸騒ぎがして聞くのを止めた。
別のクラスになったとはいえ俺の『ハルヒ苦情処理係』という看板は完全に外れてはいないのだ(仕事は主に先生の愚痴を聞く)。
…さすがにそんな無駄な時間は費やしたくない。
「だが皆から変な疑いはかけられて無いだろうな?」
「うん、まぁ。キョンキョンの言った通りに最近はかがみ達と一緒だよ」
ふと、泉の顔が曇った。
…重そうに口を開ける。
「でもやっぱり、こんな変な事やるのはハルにゃんだって噂は…」
「多い、か」
こくん。
泉は人形がそうするような、そんな首肯をした。
普段ふざけた態度ばかりのコイツだが、根は優しい奴なのだ。
友だちであるハルヒが何だかんだと言われるのは心苦しいのだろう。
同様に、つかさやみゆきさん等も少しは胸を痛めてるだろう。
泉のとても同世代とは思えないような、小さな頭をぽんぽん、となでるように叩いた。
「予想はしてた」
「…え?」
「あのハルヒはきっと疑われてるだろうってな」
「キョンキョン…?」
何が言いたいのか計りかねているような目で俺を見つめる泉。
「…泉、放課後に文芸部室に来てくれ。話したい事がある」
「……あのさ、キョンキョンはハルにゃんの味方だよね?」
そんな不安そうな顔をされては困る。
まるで俺が苛めてるような錯覚をしてしまうじゃないか。
「当たり前の事を聞くな」
ほぼ計算通り、だが…少し不安だな。
授業を聞くふりをしながら失敗の修正を考える。
表面上は静かなこの学校生活。
しかし水面下ではざわざわと蠢いている。
が、それでは足りない。
予定では生徒会"も"動く予定だったのだ。
出来得るなら先生まで巻き込みたかった。
"K"はまだ不完全なのだ。
噂をどこからか聞きつけ、脅す。
……その信頼性が足りない!!
俺が望んだ結果では例え嘘の脅しであっても周りが完全に信用するような影響力を持つ筈だった!
しかし古泉は見越して、か偶然かそれを阻止した。
「T-note」は俺の能力では更新できない。
持ち主がどうやって調べたか想像もつかない。
それを最大限に利用するための策だったが……
いや、そうでなくてはならない。
最高の戦いは、負け戦と紙一重だ。
退屈しのぎで始めた戦いだが、今は退く事を考えるな俺!!
お前の望んだ戦いだ!!
楽しいだろ?
ああ楽しいさ!!
ようやく始まったばかりだ!
これから、そう!これからだ!!
ああ!!これからが本番だ!!
最終更新:2008年04月06日 17:06