雪茶◆yukichanHA氏の作品です。
布団で全身を掛け布団に埋めて、放課後を思い出す。
…何で言った?……いいじゃないか。
言わないともう何も手がつきそうにないくらい日増しに膨らんでいくんだ。
見ているだけ、近くに俺という存在があるだけで幸せだったのは入学数ヶ月程度だけで。
いつからか俺は好きになっていた。否、自身の気持ちに否定的だったのかも知れん。
木の下や体育館裏、そんなものはよくあるシチュエーションではあるのだが、俺は二人きりで話せれば良かった。
廊下、誰もいない廊下だ。彼女以外。
彼女が一人で重そうにしてたから、何気なく手伝ってたんだ。
知り合いで、しかも女子だ。他に人目が無いなら、別に困る事じゃない。
「ありがとう」
これを言われた時、もう既に俺は理性がおかしくなっていた。
職員室で、担当の教師の机に2つのプリントの山を置いて、一礼して教室を出る。
二人きりというのはこの時しか無かったと思ってる。
次を待てば、いつになるか解らない。
言うか言わないか、2つの気持ちが葛藤していた。
自然に拳が固まってた。
隣で彼女は笑っていた。嬉しそうに。
それだけで充分…そんなワケなかった。
やる事を終えて、溜め息を吐く彼女も好ましい。
これを他人に言えば「変態だな」と言われるだろうな。
恋は盲目、これの意味がよく解る。
さっきまで話してた世間話をもう覚えていないんだ。
「柊」
「ん、何?」
腕を上に伸ばしながら彼女、柊かがみは振り返る。
「あ、あのな…」
胸が高鳴る、今自分が言おうか悩んでる時間はどんなものかも計り知れない。
体内時計が狂ってる。助けてくれ。
口が開いたままになってる。
あんだけハルヒに慎ましく「凡人たる我々は」とか説いてた俺という人格はもういないのか?
あの冷静さで言わせて貰いたいね。
誰だ、"恥じらい"なんつー感情を導入した神様は。
早くしろ、彼女は首を傾げてるぞ。
「その…」
出ろ、声!頼むからっ!
「どうしたの?キョン」
頼むっ!俺の声帯、活動しろ!
俺は後ろに回した左手で思いっきり太腿を摘まむ。
「いっ!」
声が出た!
「ひ…柊っ、…俺…お…お前の事が、す、好き、だ」
言っちまった。
「ふー……… へっ!?」
大きな目を更に見開く。ああ、可愛いな。
「…すまん、自己満足かも知れないんだが…、今言った通りなんだ」
後付けするのは良くないかも知れないが、性格上の問題だから仕方ない。
「え、あ、あの……」
柊は次第に頬を紅潮させて
「~~~!!!」
俺に背を向けて走り去ってしまった。
追いかける気力なんか無いさ。言うのに帰る為の体力しか残してない、さ。
「ははっ」
何故か軽く笑えて来た。
そりゃそうだよな、あれだけ谷口も騒いでたんだ。彼氏がいてもおかしくねぇよな。
――言えて満足、と思っておこう。
壁に凭れ掛かって、暫く振り返る。
恥ずかしさに頭抱えて声にならない叫びをあげた後で、家に帰った。
―――という所まで振り返って悶えた後、俺は眠るコトにした
翌日、ばったりと柊と接する事は無かった。
が、俺が何の気も無しに柊を見ると、俊敏に目線を逸らされてる気はする。
仕方ないか。
「俺、柊かがみに告白する事にしたんだ」
谷口は授業合間の休み時間にこそっと言って来た。
どうでもいいが国木田は今日欠席だ。
「ほぅ、また何でだ」
因みに谷口曰く、柊はAAAランクらしい。何処までランクがあるのか気になるね。
「AAAの後はSになるんだぜ? …ってそんな事はどうでもいい」
谷口は一回、教室の対角で泉こなた達と話している彼女に一目やってから顔を近づけて来る。
「調べたんだが、今彼女に彼氏はいないらしいぜ」
少し昨日の件で引っ掛かりを感じたが、無表情を装う。
「で、だ。もう俺は我慢出来ん」
こいつは外に発するタイプの俺か。
「実は今日、靴箱に手紙を入れて来た」
「…………は?」
「だから、今日、校舎裏に来てくださいって手紙をだな」
「お前バカか…、怪しい野郎からの手紙と認識して来なかったらどうするんだよ」
「大丈夫だ、ああいうタイプの女は絶対来る」
何故か親指を立てて、勝ち誇っている。
もう告白OKだと思っているのか。喜ばしい野郎だ。
「明日手を繋いでやって来てるの見てハンカチでも銜えてろよな!」
教師が教室に来た所で谷口が去り際に言ったセリフで解った。
バカじゃないなアホなんだな、と。
俺的解釈で、バカとアホの区別を語らせて貰おう。
勉強は好きではないからな。
まず、"バカ"
これは、学力的な衰えをさしていると思っている。
馬と鹿には失礼だが。
そして、"アホ"
これは、考えがトんでいってしまってる人だと思っている。
天才的な発想はアホの発想、そんな風に思っている。
認められれば天才、卑下にされればアホ。世知辛い世の中だな。
似たように"ボケ"が存在するが、これは的外れな回答返事をする時に用いるんじゃないかね。
あと、なんかあったっけ?昨日の事で頭はすっきりしたんだが…。
あ、"マヌケ"だ。
こいつは普通にぽけーっとしてる奴を示すんだろう。
従って、今授業にるんるん気分でいる谷口は"マヌケ"ではない。
結果として教師に当てられて答えられなかった点では"バカ"になるんだろうけどな。
そんな考えをして、気付けば放課後だ。
谷口はもう教室にいない。
さり気無く谷口に「いつ言うんだ?」と聞いてみれば「放課後、もっと言えば4時半だ」
今日の時間割を頭で思い浮かべて、SHR終了から30分ある事を知る。
俺は放課後突入してもゆっくりと机に頭を置いて、緩い日光を顔で感じていた。
耳は働いていて、泉や柊、高良の会話を聞き取っている。本当に現れるのかね。
泉は相変わらず、エロゲがどーとか教室で話している。面白いのか?エロゲって。
高良も知的な会話を日常会話の中に入れて言ってる。聞こえても字が思い浮かばん。
「っと、ゴメン」
柊の声だ。
「今日私用事あるんだ。じゃあねっ」
「そーだったのか、ばいにー」「では、また明日」
柊が急いで教室を出る姿をイメージしてから、俺も腰を上げる。
「帰るか」
さり気無く言ってみる。まぁ反応する奴はいないんだが。
国木田もいれば面白い事になってただろうな。というか、面白そうに行くだろうな。
明日報告してやるか。
教室を見回せば、案の定柊はいない。泉と高良も帰ったのかいない。
俺は少し早歩きで校舎内を歩く。
俺が校舎裏が見える所に来る頃には外は蒲色に照らされていた。
陽光は俺の後ろから差している。
フットサルがぎりぎり出来るくらいの空間に人影が2つ。
言わずとも柊と谷口だ。
しかし、柊2日連続とは…。
「俺、お前の事が好きでした!付き合って下さい」
谷口が思いっきり頭を下げる。
「……なんかの罰ゲーム…とかじゃなわよね?」
柊が半歩下がる。谷口は顔をあげてクエスチョンマークを浮かべている。
すまん、俺も多分谷口も本気なんだよ…
「え? いや、そんなんじゃないぞ?俺はお前が…」
「……えと…ご、ごめんなさいっ!」
柊が先の谷口に負けないくらい頭を下げる。
谷口は硬直して、呆けてしまった。
「あ、あのね…私」
もう谷口の視線は柊の頭上にあるじゃないかね。
柊は谷口の足元くらいに目を落として、手をもじもじさせている。
とりあえず俺はまだ陰に立ち尽くす。
「私、そ…その、好き、な、人がいて…」
ああ、だからか。……うん、びっくりさせてすまん、柊。
「う…うそだ……」
谷口は勇者に負かされたラスボスみたいに変に呟いている。
そのまま、膝が折れて地面に倒れ込む。
「ほ、ホントなんで……ってへっ!?……た、谷口?」
ああ、もう死んでるじゃないか。俺が見ててよかったな、っと。
俺は陰から姿を現す。
「すまんな、柊。俺がそいつは片付けておくよ」
「へっ!?きょ、キョン?…聞いてたの?」
柊は俺から2,3歩後退する。
「ん、ああ。すまん よっと」
俺は構わず谷口の方へ駆け寄り、脇の部分に手を差して持ち上げる。
「おーい、谷口ー?」
返事がない、既にしかばねのようだ。な。
「そんじゃあな、……言っておくが俺もコイツも自分の気持ちで言ったんだっつーのを解っててくれ」
そのまま谷口を背負い、校舎裏から去る。
とりあえず昇降口の隅に寝かせておけば邪魔にもならんだろう。
付箋紙で『起こすな』と書き、それを谷口の額に貼って、俺は帰路を歩む。
「ちょっ…ねぇキョン!」
校門を出ようとした所、柊が後ろから呼び、俺の方へ来る。
「ん、どした?谷口ならもう大丈夫だぞ?」
「そうじゃなくてっ」
柊は胸に鞄を持ってない方の手を当てて、深呼吸する。
「えっと、昨日逃げちゃってゴメン…」
昨日のアレがフラッシュバックする。
柊が途端に踵を返し、廊下を曲がって行く所。
「ああ、別に。急に言った俺が悪いんだ」
「そっ、そうよ。急に言って来たから…」
「盗み聞きしてて何だが、好きな人がいるんだもんな」
校舎の方から教師が車でやって来る。
俺達は端っこに寄った。
「そうよ、私には好きな人が……」
「そういうのは言う前に知っとくべきだったな。悪い」
黒光りする車が低いエンジン音を鳴らして通り過ぎて行く。
「わ…、キョン、アンタが好き、なの…」
俺の後ろで反射した射光が柊の頬を赤らめている。…いや、違うか。本当に…。
「私の好きな人ってのは…キョン。アンタ、よ」
「……へ?」
「だーかーらー、ずっと私はアンタが好きだったって何度言わせればっ
昨日アンタが手伝ってくれた時も嬉しかったわよ
しかも、ただでさえ昂ってた気持ちをアンタが告白するもんだから…」
その後は、俯いて小さく呟いてるから聞こえなかった。
「…解ってるんでしょうね?」
上目遣い――但し睨み付けるタイプなワケだが――で柊は睨んでる。
「何がだ」
「私が告白したのよ、返事が必要でしょ?それよ!」
柊は俺の元へ歩み寄り、すぐ目の前で睨み始める。
こいつ、こんな奴だったのか。
思わず笑いが込み上げて来る。
「…何笑ってるのよ」
俺は、一度息を整える。
「俺も、お前が好きだ。…付き合って下さい」
一度言っちまった分、楽に言えた。
「そんくらい昨日もスムーズに言えたら…」
うるせぇ、告白なんて初めてのモンだよ。
柊、お前も返事して貰おうか?
「"こちらこそよろしくお願いします"…これでいい?」
「ああ、充分だ」
「あ、あのさ"柊"じゃなくて"かがみ"って呼んでよ。そっちの方が私も楽だし。…彼氏彼女っぽいでしょ?」
最後は、頬をまた赤らめて言っている。
「ああ、そうだな。――かがみ」
「…やっぱ恥ずかしいわね、でもまぁいっか」
ひいらg……かがみは照れ臭そうに頬を掻く。
―――よろしくっ
――ああ、よろしく