「今日もつかさは休みなの」
朝、会ったかがみの第一声がそうだった。
少し残念だったが、仕方ない。私はかがみと一緒にバスに乗り込んだ。
いつものようにアニメやラノベネタの話で花を咲かせる。
教室ではみゆきさんも加わり、花は一層広がる…はずだった。
教室に着くと同時にかがみとハルにゃんが目を合わせた。途端に周りが凍ったようになった。
少し寒気がする。この2人の間には……いたくない。その気持ちからか、私は思わず2人から引いていたようだ。
気づくと、みゆきさんも隣にいた。何も言わないが、何が言いたいかはよくわかる。そんな顔だった。
しばらくして、かがみは鼻を鳴らして教室を出ていった。
一体何があったんだろう。
私はハルにゃんに理由を聞こうと思ったけど、ハルにゃんから出るオーラに負けて、聞くことは出来なかった。
放課後になり、私とみゆきさんはキョンキョンと一緒に部室に行くことになった。
かがみは今日もつかさの看病をするんだとか。偉いもんだねぇ。
部室に着くと、ハルにゃんとみくるちゃんが既に来ていた。
でも何か様子がおかしい。
みくるちゃんは俯いてしょんぼりとしている。
ハルにゃんは対照的に怒っているようだ。
みゆきさんもキョンキョンも「何事か?」という表情でポカンとしている。
そうしている私達にハルにゃんは声をかけてきた。
「あら、ちょうどいいわ。みゆきちゃん、ちょっとこっちに来なさい。それと…キョンとみくるちゃんは出ていって」
ハルにゃんがそう言ったと同時に、みくるちゃんが立ち上がり、キョンキョンの腕を取って出ていった。
みくるちゃんはえー、キョンキョンは何か言いたげだったな。
そんな感想を考えているとハルにゃんが「ほら!こなたも手伝って」
と言ってきた。
見ると、みゆきさんがセーラー服を脱がされそうになってた。
「涼宮さん、やめてくださ~い」
みゆきさんが黄色い声をあげる。
「ちょ、ちょっと何してんのさ」
私は一応、止める側に立つ。
「決まってるでしょ、みゆきちゃんにメイド服を着せるのよ」
「……ああ、なるほど。OK」
私はすぐに納得、了承し、みゆきさんの着替えを手伝うことにした。
「泉さんまで…やめてくださ~い」
「ごめんね、みゆきさん」
そう言って私はみゆきさんのスカートのホックを外した。
しばらくして。
高良みゆきメイドが誕生した。
「うう…涼宮さん、泉さん、恥ずかしいんですが…」
「そんなことないわ。とても可愛いじゃない」
「そだよ、みゆきさん。もっと自信を持ちなよ」
「で、でも…」
みゆきさんは顔が赤くなっている。だけどまたそれが萌えるんだよね。
「さて、これをキョンに見せないとね」
このハルにゃんの言葉に私は違和感を持った。何だろう…?
だけど、ハルにゃんの声で考える時間はなくなってしまった。
「もう入って良いわよー」
その声に反応してガチャリとドアが開く。
「おい、ハル…」
と言いかけたその口がそのまま開く。キョンキョンだ。
ここでも私は違和感を覚えた。何だろう。
「どう?キョン。なかなか似合うと思うじゃない?やっぱりみゆきちゃんは歩く萌え要素よね」
私は全面的に同意する。
「ああ、なかなか似合ってるな」
とってつけたような返事をするキョンキョン。
続けてキョンキョンは話し出した。
「それとハルヒ、今日はもう帰っていいか?」
「あら、どうして?まさか、みくるちゃんとどっか行くとか?」
「違う違う、実はシャミセンがまた病気でな。病院に連れていかないといけないんだ」
「また?シャミセンって意外に病弱ね」
シャミセンって…確かキョンキョンが飼ってる猫だっけ。
…そっか、違和感はこれか。キョンキョンが焦ってるのか。
「でも、そういうことなら仕方ないわ。その代わり、明日は絶対休まないこと!」
「ああ、分かったよ。それじゃな」
キョンがこっちも見てきたので、私も挨拶することにした。
「…あ、さよなら」
みゆきさんに先に言われてしまった。
「またね、キョンキョン」
キョンキョンは軽く片手を挙げると部室を出ていった。
「それにしても本当に良いわねぇ。みゆきちゃんのメイド姿」
ハルにゃんはほれぼれとした声を出す。
「本当に良いねぇ」
「そ、そうですか…?」
「いやぁすばらしいよ。かがみんやつかさもきっと誉めるよ」
そう言った瞬間、ハルにゃんの表情が変わった。笑いから憮然へと。
「…?どうしたの?ハルにゃん」
「……出さないでちょうだい」
「え?」
「その2人の名前を出さないでちょうだい!」
いきなり出した大声に私もみゆきさんもしこたま驚いた。
「ど、どうされました?涼宮さん」
「そ、そう。いきなりどしたのさ」
「あ、ゴメン…」
それだけ言うとハルにゃんは珍しくしおらしい顔をしていた。
それからの部活は重い空気が流れていた。
私はみゆきさんとオセロ(私が3戦3敗)、ハルにゃんは適当にパソコンをいじっていた(ネトゲっぽかった)だけなのに、なんとも言えない重圧感がそこにはあった。
そういえば、今日はみんな来ないなぁ。
何かあったのかな?
日も落ちてきた頃、ハルにゃんの解散宣言により私とみゆきさんは帰ることにした。
帰りの電車の中、私は疑問をぶつけた。
「ねえ、みゆきさん」
「どうしました?泉さん」
「……今日のハルにゃん、随分変だったよね?」
「ええ…そうですね。朝比奈さんに対する態度、私に対する行動、『かがみ』、『つかさ』の言葉に対する反応…確かにいつもとは違う様子でした」
「一体、ハルにゃんはどうしちゃったんだろう…」
「もしかしたら、かがみさん達と何かトラブルでもあったのではないでしょうか?」
「そういえば、今日は2人とも仲が悪かったっけ」
「何かあったのかもしれませんね…」
「つかさのことかな…」
「さあ…そこまでは…」
そこで会話は途切れた。
2人に何かあったのか。
もしかして私達は何か大きな事態に巻き込まれているのか………。
漫画かアニメの観すぎなのかもね。
少しは冷静になろう。
私はみゆきさんと別れ、家路に着いた。
明日もきっといつもの一日が始まるよ。
つかさが学校に来て、かがみんとハルにゃんは機嫌を直して、みくるちゃんがメイド服を着て…。
だけど。
そんなことはなかった。
そればかりか、事態は悪い方へと進んでいった。
しかも。
私のせいでー。
最終更新:2008年04月09日 21:10