あ、やべぇこれおもしれぇ。それが今回俺が最初に思ったことだったりした
りする。で、じゃあなにが面白いのかというとだ……。
「始めまして。私柊かがみといいます」
「ん、わたしは泉こなたっす」
そう丁寧な口調で会釈をするかがみと、それに応対する青髪少女こなたの二
人の事だ。かがみは三つも四つも年下(と俺が偽った)の少女に対しやや大げ
さな感じの挨拶をしていて。こなたのほうはまぁ外見はともかく俺達より実際
年上だという風格を漂わせてるつもりなのかやけに尊大な態度で。いやいや非
常にちぐはぐでお笑いの情景だった。変に笑いを堪えようとして鼻から変な息
が漏れる始末。
「んふ~? この子がキョンキョンの言ってた口煩い委員長?」
「俺はそんなことを言った覚えはねぇ!」
酷い捏造であった。笑いがどこぞにすっ飛んでいった。大切なものはなくし
てから始めてわかると婆ちゃんがよく言ってたな。ありがとうお婆ちゃん、僕
は今、笑うという感情の大切さをよくわかったよ、だからもういいよ、うん、
早く返して。
「はぁん? あんたなに、家で他人の陰口を言う様な陰険悪辣な奴だったわけ?」
「俺には欠片も見に覚えが無いな! 初対面の人間の言葉を信じて俺の言葉を
無視するとは俺達の間に信頼関係は無いに等しいな!」
「あたりきでしょうが。そもそもあんたの言葉を信用できないから
わざわざ家まで私が足を運んだんじゃないの。馬鹿?」
「とことん殺伐とした関係だな! 高校入って初めて家に上げた同級生がお前だということに
俺は最大級の後悔と自責に駆られることになりそうだ!」
「私も初めて家に上がったのがあんたの家って事に吐気がするわ、トイレ借りていい?」
「お前は初めて人の家に上がってトイレに吐瀉物を蒔く気か!?
最低だ! 史上最低の来訪者だ!」
「蒔いたからには芽吹くのよね? 若葉が萌えるわ」
「お前には最高に萌えねぇ!」
馬鹿みたいなやりとりだった、むしろ馬鹿そのものだった。特に俺が。世の
中は非情だ、非常に非情だ。憎まれっ子世にはばかるのだ。
俺は一方的に会話を切って部屋に入る、実は部屋の入り口で先ほどの言葉の
応酬は行われていたのだった。自室(押入れ)に腰掛け中空でぷらぷらさせて
るこなたの足をどかしつつ押入れの下の段から座布団を二つ取り出して部屋中
央に置き、片方に自分が座りもう片方をかがみに座るように促す。かがみは扉
を一瞬迷った後に閉めてから、座布団を引っ張り―――つまりは俺から少し距
離を取りそこに座った。……えっ、なに? 売り言葉に買い言葉じゃなくて本
当にそこまで俺嫌われてんの? 軽くショック。
「結構片付いてるのね」
「いまさらそんな定型句を平然と平坦な口調で言われても反応に困るがな」
「結構汚れてるのね」
「だからっていきなり反転させなくても」
「結構汚れてるけど思ってたより片付いてるのね」
「フォローになってないし、どうせならさっきのままのほうがよっぽどマシだな!
どんだけ汚れてると思われてたんだ!」
まぁ実際は俺の部屋は大して汚れてるわけじゃない、こなたが押入れに入る
様になってから―と言ってもまだ二日なのだが一体なんでこんな実は結構経っ
てるみたいな表現をしてしまうのだろう―より気を使うようになった。見られ
たくないものは思春期の男の子のお部屋には色々あるのだ。当然。
「なんか新生物でも発生してるんじゃないかと…」
「とんでもねぇ!まぁよくわからない生物なら押入れに住み着いてるがな!」
「おいおい、わたしの部屋に変な生物が居るなら退治しといてよ!」
「お前のことを言ってるんだよ!」
「え!? 可愛らしい生物!?」
「いやさ、柊。やっぱブラジルの豆は酸味が強いと思うんだ」
「私酸味が強い珈琲好きよ」
「いや苦味も酸味も抑え目がいいだろ、ブラックでも飲みやすい」
「安心してキョン君。あなたは格好つける必要ないから」
「そのままで十分と?」
「なにをしても変わらないと言ってるのよ」
「え? いきなり普通に会話をしてわたしを無視しちゃう?」
「いやいや、お前さっきの台詞に罵詈雑言で返さないだけありがたく思え」
「あぁ、わたし気付かないうちにそこまでのことをしでかしちゃった?」
「かなりの大暴投だったわよ」
「あぁ、なんかショートの辺りにデットボールをしてたな」
「それ暴投ってレベルじゃないよね、完全故意入ってるね」
「故意に恋焦がれてるのね」
「いみわかんねぇよ」
本当に意味がわからなくなってきた、収集がつかないとはこの事だろうか?
しかし、同年代―片方は同年代だと思えないが―の趣の違った女子が二人も俺
の部屋に居てこうやって和気藹々とオブラートに毛頭包んでいない言葉の全力
投球を交わすと言うのは相手が誰であれそれなりに非日常の感覚で新鮮だった
。というかそもそも俺は小中学生時代ともに友達と遊んだりという記憶がほと
んどない、といっても俺の海馬が正常に動作してないわけじゃなくてただそう
いう行動をとってないだけなのだが。
あぁそうか、俺はこの遠慮の無い会話を楽しんでいたわけだ。いや、被虐嗜
好とは離れての事で。しかしそういう目線で見るとなるほろかがみがいきなり
いい奴に思えるから不思議だ、これからも仲悪くこの関係を続けたいとも思え
る。立ち位置や思考思想でこうも見方が変わるとはな。
「ちょっと口開けてボーっとしてるとあんた薬キマッてる人みたいよ」
「腹立つ奴に変わりは無いな!」
「ちょっとキョンさんや、女の子にそんな口の利き方はないよ」
「だがこいつの台詞は女の子どころか全ての人間に対してやってはいけない口の利き方だぞ!」
「とと、ちょっとまって」
かがみが座布団からすこし身を乗り出して再び行われかけた舌戦を両手で制
する。こなたは一瞬訝しげに眉をしかめてから押入れから降りて自分の(文字
通り自分専用の座布団をこいつは既に所有している!)座布団を取り出してな
ぜか体育すわりをした。かがみは本当に咄嗟の行動だったのか少し気まずげに
拳を口に当ててわざとらしい咳払いを一つついて、俺を軽く睨み付けてからこ
なたに身体ごとむいて話しかける。
「そういえばなんか当初の目的を忘れて遊んでたけどさ」
「お前の遊びは少々俺には過激だぞ」
「こなた……さん。って年幾つなんですか?」
「ん? 18だよ」
「あっ」
俺は 現実逃避を 試みた!
しかし 現実は まわり込んだ
現実から 逃げられない!
「へぇ…この私のクラスメートはあなたが12歳の従妹だって言ってましたけど?」
「ん、女ってとこ以外かすってないね」
「あ! いっけね、スパゲッティ茹でてるの忘れてたぜ!」
しかしオーガ(悪魔)はまわり込んだ!
「やっぱりね、私のこと女の子って言ってたしね。それに親戚の小さな女の子が
部屋に来るからって部屋の片付けに力を入れるようないいお兄さんじゃなさそうだし」
「それは悪意と偏見に満ち満ちてるな!」
「わたしが12歳…」
「いやこなたさんそれは言葉の綾で、それぐらい幼く―否、若く見えると……」
一撃必殺!
とわかりやすい落ちがついたので本日は閉店なりと
最終更新:2008年05月26日 22:59