「う……」
目を覚ますとそこは夕暮れの部室であった
元の世界に戻ってこれたのだろうか?
もしかしたらまた別の世界なのかもしれない
もしくはまたこの十日間を繰り返すはめになる可能性だってある
「確かめる方法は……」
迷わず長門に電話を掛けた
「長門、俺だ」
――沈黙。
「今回の出来事についてなんだが……」
「私の家に来て。それから説明する」
「ああ。わかった」
どうやら元の世界にちゃんと戻ってきたようだ
これでようやく一安心できそうだ
……なにやら物凄い足音が聞こえてくる
今度は何だ?
こんな時間に鬼ごっこするような奴はいるわけがない
そうこう考えているうちに勢いよくドアが開けられた
とっさに身構えた、って別に必要ないか
現れたのは息を切らしたかがみとデフォルトスマイルの古泉であった
「キョン無事!?ってアンタその手に持ってるのって」
「ん?」
そう言われ手を見るといつの間にかここ数日で使い慣れた双剣が……
ちょっと待て、元の世界に戻ったんだよな?
ならば何で俺がまだ魔術を使えるんだ?
だが考えても答えは出るはずもなく
とっとと三人で長門の家に向かうことにした
Fate/unlucky night ~その後
俺は玄関入り口のパネルでテンキーを708と押してからベルのマークが付いたボタンを押した。
数秒の間があって、ぷつんとインターホンが繋がった。
「入って」
お馴染みとなった708号室へ
「やほー」
どうやら先客がいたようだ
まあ、こなたも関係者だからいてもおかしくないか
「さて、今回はどういうことなんだ長門」
「今回の原因は急進派の独断専行。以前、私が異常動作を起こした時のことを参考にして
涼宮ハルヒの力を使い情報爆発を起こしたものと思われる
だが発生した情報は拡散せずに世界を変化させ始めた。そしてその世界はあるものの影響を強く受けていた」
「それがFateだったってか」
「そう。最近、涼宮ハルヒが強い興味を示していた。
よって発生した情報に影響を与えていたと思われる」
「なるほどな。だいたいはわかった。ああそうだ、これを見てくれ」
長門に剣を投影して見せる
長門は僅かに驚いたような表情をした。まあ、俺にしかわからんような変化だが
「改変された世界で俺が使っていた魔術なんだが、なんでまだ使えるんだ?」
「原因は不明。おそらく発生した情報の一部が完全に身体に取り込まれたのだと推測される」
ああ……、とうとう俺も一般人ではなくなっちまったようだ
よりによって魔術使いなどというかなり特殊な属性をつけられたようだ
「だがな、なんで俺だけなんだ」
長門の言うとおりならかがみや古泉だって魔術が使えるはずなのだが
使うどころか、使う感覚すら覚えてないと言っていた
「…………」
――沈黙。
長門にもわからないことがあるとはな
この謎は墓の下まで持っていくのか等と考え始め、諦め始めた頃
「少し僕なりに推測してみたのですが、よろしいでしょうか」
古泉が何か思いついたようだ
「かまわん、言ってみろ」
「それでは。僕が考えるにはあの世界でいつから魔術を使えたかです。
僕達は世界が変化した時に能力が与えられ魔術が使えた。しかし、あなたは
一部だけしか能力を与えられなかったので突発的にしか使えなかった。
けれども後に完全に使えるようになった。これが原因です」
……何が言いたいのかさっぱりわからん
「僕達の能力はあくまでも与えられたものです、だから世界が戻れば消えてしまいます。
あなたは能力を一部しか与えられず残りを自分で手に入れた、よって世界が戻っても
消えるのは与えられた部分だけで自分で得た部分が残っているのです」
確かにそれなら説明がつく、確かに投影は出来るが強化は出来なくなっていた
だが正解なのかどうかはどうでもいい
判っているのは俺が妙な能力を手に入れたことだ
「長門、お前の力で消せないのか」
「不可能。それに情報統合思念体が興味を持った。
可能だとしても許可されない」
とうとう長門のパトロンにも興味を持たれるとはな
その後、ハルヒや関わった奴らは無事やら
いろいろと話した後、解散した
そして、帰り道。
かがみと一緒に歩いている
家の方向が同じなので普通のことだ
「キョン、ちょっといい?」
「何だ?」
「ちょっと話があるから公園に寄ってかない?」
「ああ、構わんが」
そして近くの公園に行きベンチに座る
「で、なんだ話って?」
「まだ言ってなかったわね」
「何をだ?」
「もう、こんな所でこんな時に言うようなことは決まってるでしょ。
まあ、キョンらしいけどね」
「なんかすごく酷いことを言われている気がするのだが」
「気のせいよ。ちゃんと聞いてなさいよ」
「はいはい」
「あたしはキョンのことが好きよ。キョンはどうなの?」
「――――――――」
一瞬で真っ赤になる。
「あら、突然だんまり? 答えを聞いてないんだけど」
いだすらな微笑み
俺の答えなんて分かってるクセに、更に追い討ちをかけるとは
「ね。キョン、答えは?」
囁くような、穏やかな声
…………まいった
たった一言、たった一度素直に頷くのって、こんなに難しかったのか
「……そんな判りきったコト、訊くな」
精一杯の本心を口にする
その言葉だけで、微笑みは笑顔になった
「うん。じゃ、これからもよろしくねキョン」
「ああ、よろしくな」
「そろそろ帰りましょ。そうだ、あたしの家で晩ごはん食べてって」
「ちょ、人の手を引っ張って走るな」
その後、柊家で起きたことや後日ハルヒが騒いだことは別の話だ
Fate/unlucky night End
最終更新:2008年05月26日 23:17