七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。
「五十音の最初の二文字」
俺が愛ってなんだろうか、とありがちでべたべたな質問をした際の
こなたの答えがそれだった
べつにありがちな質問に対しありがちな返答をしたというわけでもないだろう
ただ、真面目に答えるほうが馬鹿なだけだ
正直者は馬鹿を見る
「愛 藍 哀」
しかしこなたはそこで終わらせず
続けて少しだけ呟いた
「あいにも色々あるよ?」
「そうだな」
慈愛、友愛、情愛、親愛、恋愛
こなたが言った色々あるのベクトルは違えど
しかし同じことだった、"あい"には色々な種類がありすぎる
「例えばね、キョン」
こなたは俺より頭一つ以上小さい体を伸ばして
俺の頬を両手でつかんで真正面から目を合わせる
「私はあなたを"あい"しています」
蒼い瞳に映った自分の間抜け面に脱力しつつ
しかしそれ以上にこなたの台詞に緊張した
「さて、私の"あい"はどの漢字が割り当てられるのかな?」
手を離し柔らかく微笑みながら
その細い目を、しかししっかりと開いてこなたは俺を見上げる
「さぁな」
俺は頬を掻き、気まずげに顔を逸らして空を見る
こうするとこなたはどうやっても俺の表情を窺う事はできない
突然の行動に照れてしまった自分の顔を見せずに済む
「愛しい」
呟く声が、そよ風になびく
視線を戻すと青い髪が風に乗って舞い
こなたはそれを片手で押さえながら、俺が顔を戻すのをわかっていたように
まっすぐにこっちを見つめていた
「私のあいは愛しいの愛だよ」
「それは、告白か?」
「それを聞くのは酷薄ではあるね」
髪を押さえていた手を前に伸ばし
俺の胸を手の平でそっと触れるこなた
「キョンさ、女の子から告白するのは勇気100倍状態でも難しいんだよ?」
目を伏せて少し手に力をこめるこなた
ちょっとした質問から派生した、この状況
俺は、こなたの長くさらさらの髪に触れて
それから丁度の位置にあるこなたの頭を撫で、深く息を吸ってから
「―――」
風にかき消された言葉、もしかして聞こえなかったんじゃないかといぶかしんだが
しかし、その心配は、こなたの満面の笑みによって杞憂となった
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