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Roundabout

七誌◆7SHIicilOU氏の作品です。

 


「絵を描かせてくださいッス!」

 廊下の窓から身を乗り出して
休み時間を風を浴びる事だけで過ごそうとそよ風に身をゆだねていると
横から早々にそれを邪魔されてしまった

「勝手に描けよ、お前に絵を描くの禁止と言った覚えは無いんで
 従って俺の許可を取る必要もないと明言しておいてやろうか?」

「そんな意味で言ってるわけじゃないとわかってやってるんですか!?
 先輩はまったく後輩が可愛くないんッスか?」

 先輩を敬わない後輩のどこをどうしたら可愛く思えるのかね
正直些か傲慢な発言ではないかね、世の中ギブ&テイクだぞ

「先輩の絵を描かして欲しいんッス!」
「俺の?」

 スケッチブックを胸に抱いて力強く俺に詰め寄ってくる
スケッチブックが折れるんじゃないかと要らぬ心配をしてしまう

「まぁまぁ落ち着けひよりん」
「ひよりん? …悪くないッスね」

 俺の咄嗟の発言にスッと顎に手をやり首をかしげ
小さく呟くひよりん、―じゃなくてひより

「どうして俺の絵なんか描きたいんだ?」

 無個性戦隊とまでは言わないが
しかし俺は周囲の濃い連中に比べれば非常に一般的なつもりだぞ
むしろそうでないと俺の中の諸々が崩れ去りかねん

「先輩は理由がなければ散歩にでられないんですか?」

 質問で返されてしまった、だが意図というか言いたいことは読めた
つまりは行動がそのまま理由につながるという一つの形態
やりたいからやる、風に当たりたいからとか気分転換したいからでなく
散歩したいから散歩するというそんな適当な感覚

「オーケイ、付き合おう」

 両の手を上に向けて肩をすくめる、暗に降参のポーズである
俺は放課後に教室かどっかで時間を作ってやると約束して
そろそろ廊下の端に姿を現すであろう教師を危惧して別れることにした
教室前の廊下で佇んでいた俺はともかく、ひよりの教室は一年だからな

「破ったら怒りますからね!」

 そういって手をブンブン勢いよくふる後輩にため息をついて
俺は教室に戻る、…そういえば絵ってどれくらいかかるんだ?
一日がかりとか平気のへーの世界だからな、そこまでなると付き合いきれんが… 

 放課後の教室、俺は自分の椅子に逆さまに座り
背もたれに肘をつき、正面には俺の後ろの席であるハルヒの椅子と机を借りたひよりが

「そんなに大したもんは描かないッス
 私のは芸術とかの絵じゃなくて漫画を描いてるだけッスから
 一枚の絵自体はそんなにかかんないですよ」

 そう俺の不安を切り捨てて、ひよりは早々にスケッチブックに向かっていた
俺としては真剣な表情のひよりをできるだけ動かないように見ていること位しか
やることがないので、当然暇を持て余すだろうと思っていたのだが
しかし存外ひよりの顔を眺めていると退屈を感じることは無かった

 たまにチラッと紙から目を離して俺を見て
そしてまた紙に戻りペンを忙しなく走らせる
そんな中々見ることのないおちゃらけ少女の一面を見ていると
なぜかペットショップで猫が寝てるのをいつまでも見てるような
どうにも心が和んでしょうがない


 そのまま俺はぼけっとひよりの顔を眺め
いつしか斜に構え、山に半身浴している太陽の光が
紅に街や空や教室に、ひよりの横顔までも染めていく時間になり
そうしてやっと

「ん、もういいッスよ、あとは家で道具使って仕上げて明日先輩に進呈します」

 スケッチブックも紅に染まっているのだろう
その中に一体黒の線でどんな俺が表現されてるのか
俺は興味津々とまでは行かなくとも、しかしそれに近いものがあった

「ダメッス! 完成するまで見せてあげません!」

 だが当然のように俺の申し出は却下され
ひよりは鞄に丁寧に丁寧にそのスケッチブックを仕舞い込み

「では、また明日会いましょう先輩」

 満面の笑みで鞄を持ってるのと反対の手で額に手を当て
不恰好な敬礼をして愉快そうに教室をでて行ってしまった
俺は今の瞬間を写真に収めたかったなぁと瞼を閉じて反芻しつつ

「さて、帰るか」

 教室をでた

 

 次の日、登校して下駄箱の蓋をひょいと開けると
自分の上履きの上に一枚の紙が折りたたんで置いてあった
俺は鞄を足元に置いてそれを手に取り
一応まわりに見られないようにそれを開く

「…あのバカ」

 俺は紙を再び折りたたんで胸ポケットにしまい
どんな奇抜なやりかたでひよりに告白しかえしてやろうかと
しばしの間悩んでみることにした





    了

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最終更新:2008年07月02日 22:57
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