「それじゃーかんぱーい!」
「かんぱーい!」
ハルヒの元気な掛け声と共に俺たちはグラスを掲げた
「んぐ…んぐ…ぷはー!やっぱビールは生が一番ね!」
「おい、ハルヒ、あんまり飲みすぎるなよ
お前はいつも飲んだ翌朝に後悔して『もうお酒なんてこりごりよー』とか言うのがオチなんだからな」
「大丈夫だって、キョン」
何を持って大丈夫なんだか、俺は肩をすくめた
「相変わらず仲が良いね~お二人さん、後は子供だけだね」
「う、うるさいな」
こうやってニヤニヤしながら俺をからかうのは泉だ
泉は卒業後に専門学校へ行き、今では人気声優としてアニメ界にその名を知られている…そうだ
「いや、人気と言っても儲けは少ないんだよね、これが
今やってるアニメでキャラソンを3枚も出したのに、印税を事務所が持っていくんだよ
酷いと思わない?」
「へえ~こなちゃん大変なんだね~あんなにテレビに出てるのに…」
と返事をしたのは柊姉妹の妹、つかさだ
つかさも卒業後に専門学校に行き、調理師となった
が、3年前に結婚し、今では2児の母親だ
そしてその相手が…
「皆さん、本当に変わっていませんね」
そう、古泉だ
てなわけでつかさは今は古泉つかさという名前だ…泉ばかりだな、俺達は
古泉は俺が卒業後も頻繁に連絡を取り合っていた仲で、今回の同窓会兼飲み会も俺達が音頭を取っている
古泉は卒業後、旧帝の国立大学に進学、卒業してこれまた有名な外資系企業に就職
つまりはエリートコースを歩んでいる
普通の大学を出て、普通の会社に就職した俺とは全く違うぜ
「それにしても懐かしいわね、2人の結婚式
もう3年も前なのよ」
そう思い出に浸るのはつかさの姉、かがみだ
かがみもやはり古泉と同じ大学に進学、今では弁護士として活躍している
裁判所なんて所にお世話になるつもりはないが、いざという時には頼るつもりだ
「そうですね、あの結婚式は感動しました」
同じく思い出に浸るのは高良さんだ
高良さんもやはり、古泉やかがみと同じ大学へ進学し、今は女医として活躍している
数年前、風邪をこじらせて肺炎になった時はお世話になったものだ
「古泉君もかっこよかったしね…有希もそう思ったわよね」
「…………」コクリ
相変わらず無口無表情なのは長門だ
長門は卒業後、何とSE、システムエンジニアとしてコンピュータ会社に就職
天才的な能力を発揮し、すでにその会社では課長にまでなっている
「でも、結婚式と言えば涼宮さんとキョンくんのもよかったですよ」
「!!」
ハルヒは焦ったのか、から揚げを一飲みしたようだ
「だ、大丈夫!?」
すぐさま隣にいたかがみが自分のピーチサワーを渡す
「んんんん」
もはや言葉になってないお礼を言ったハルヒは渡されたサワーを一気飲みする
「ゴク…ゴク…はぁ、助かったわ…もう、みくるちゃん、驚かさないで!」
「あ、すみません…」
とかわいらしく謝ったの朝比奈さんだ
朝比奈さんは俺達が高校を卒業するまでは「この時間」にいたが、その後、未来に帰ってしまったのだが、時々、こうやって遊ぶに来てくれる
仕事は…過去の、俺達の高校時代にいた朝比奈さんの監視役だ
そして俺はというと…朝比奈さんの言ったとおり、ハルヒと結婚した
卒業後、俺とハルヒは同じ大学、同じ会社に就職した
そして結婚したのだ…詳しくは聞かないでくれ、後生の頼みだ
さて、3年ぶりの全員揃っての宴会ともあって、かなりの盛り上がりを見せた
ハルヒとかがみがつまみを取り合ってる横で長門が掠め取ったり
つかさと古泉の新婚生活の話をなぜか既婚者の俺が一番羨ましがったり
高良さんや朝比奈さん、そしてかがみ、長門のお相手はいつ出来るか…などなど
そして2時間も過ぎたあたりだろうか、ハルヒが突然立ち上がった
「えー、本日は大切なお知らせがあります」
「何なの?急に」
かがみが思わず止める
ハルヒが急に切り出すとろくなことがないのは重々承知だからだ
「ちょっと黙ってなさいよ…本日集まってもらったのは他でもありません
懐かしい高校時代を思い出してもらうためです」
ハルヒは続ける
「あの頃の私達はまさに青春を謳歌していました
勿論、今もそれぞれ充実した人生を送っているとはお思いですが」
俺は誰かさんのせいで充実しながらも疲れてばっかりだがな
「しかし!あの頃はもっとかがやいていたのではないかと思います
そう…SOS団のあった、あの頃は」
そういや、朝比奈さんはその頃の俺達を看るのが今の仕事だったな
「ええ、あの頃の皆さんはとても楽しそうでしたよ」
「そうでしょう、みくるちゃん
…………我々は一度SOS団を解散させました」
そういや、そうだったな
高校を卒業した日、部室に全員を集めてハルヒはこう言い放ったのだ
「私達はもうこの団の意味も目的も全て失いました
よってSOS団を解散させます!」
というのも、卒業間近になって長門達の正体をついにハルヒが知ったのだ
そこら辺に絡む話はまた長くなるので割愛するが、ハルヒはそれを全て受け入れ、SOS団を解散させたのだ
「しかし!今日改めてSOS団をここに再結成させます!
この世にはまだまだ我々の知らない謎や不思議があります
それらがある限り、我がSOS団は不滅です!」
全員が最初ポカーンとなったが、つかさが拍手をしたのを皮切りに全員が拍手した
今ここにSOS団が再結成されたのだ