「はいキョンキョン。リンゴ剥けたヨー」
炎天下の夏、外では40度を超えるではないかと言うほどの暑さが人々を襲う
そんな中、俺とこなたは涼まされた部屋で渡されたリンゴを食そうとしている
「ありがとうよ」
そう言ってこなたが剥いたリンゴを口に含む
料理は上手だ、と聞いてはいたが確かにりんごの皮にも余り果実はついていない
人間、得得手不得手とはあるものだな、と痛感した
「……それ酷くない?」
少し膨れているこなたはとりあえずほっておいて、状況の整理をしたいと思う
今俺たちがいる場所は、病院だ
何故病院なのか、というのは単純明快。なぜなら、俺が入院をしているから
だが、重い病気といったわけでもなく、ただ足を骨折しただけなので後数日もすれば松葉杖付きで退院する事ができる
原因はと言うと、今ベッドで寝ている俺の横で自分の剥いたリンゴを食べている泉こなたである
かといって、恨んでるわけでもないのだが
それはつい一昨日のこと
俺はこなたに連れまわされ初めて秋葉原というものを体験しにいった日だった
長期休暇中といった事もあってか、そこは予想以上に人が多かった
そして、その人から出る熱気と人々を苦しめる太陽により秋葉原は異常に暑かった
まぁ、ここらへんはどうでも良い。問題は帰るときだ
「今日は楽しかったネ」
一通りこなたが楽しみ、俺が疲れた夕暮れの頃、帰り道の事である
「そうか?俺はいまいちよく分からんかったがな。挙句の果てには荷物持ちだしな」
「いいじゃんいいじゃん。それとも、キョンキョンは女の子に荷物を持たせるような人だったのかい?」
「お前の荷物だろうが」
と俺は言った後、俺たちは曲がり角を曲がった
すると、左折した先に、車が俺たちを目掛けて突進してきたのだ
とっさに俺は泉を押さえ込むように庇いお互い一命は取り留めたのだが、そのとき間違った方向に足が曲がってしまい今の状態に至る
入院生活でも余り不便はない
今はこなたが手取り足取り助けてくれるし、朝から晩まで付きっ切りでいてくれている
やはり、自分が原因だという事に責任を感じているのだろうか
そして今が夏休みでよかったとつくづく痛感している。学校があったら朝から昼にかけては何もすることもなく、暇だっただろうからな
と、俺が回想にしている内に、こなたは自分が剥いたリンゴを半分以上食べてしまっていた
「キョンキョンがボーっとしてる内にたくさん食べちゃったヨ」
糸目の少女は俺にそう言った
「別になんとも思わん。それはお前が買ってきたりんごなんだろう?」
まぁネと糸目少女は答えた
それにしても、昨日といい今日といい来てくれるのはこなただけだ
来てくれとまでは言わないが、あいつらはこんなに冷酷な奴らだったのだろうか。それとも、何か理由があってこれないのだろうか
いや、そもそもあいつらは俺が入院してる事を知ってるのだろうか
「なぁこなた」
「ん?」
俺は疑問を投げかける
「ハルヒたちは、俺が入院してる事を知ってるのか?」
こなたの目が少し見開いた……気がした
「さ、さぁ?どうなんだろうネ~」
何か動揺してるような感じがするのは気のせいか?
「気のせいだよ気のせい。ほら、早くリンゴ食べなヨ」
そう言って俺にリンゴを向けてくる
俺はそれを口に入れる。そして、やっぱりハルヒたちは入院してる事は知らないのかと思った
退院当日
俺は松葉杖をつきながら病院を出た
隣には、こなたもいる
結局俺のお見舞いには俺の家族とこなた以外誰もくることはなかった
それに引き換え、こなたは毎日見舞いに来てくれていた
「ありがとうな。こなた」
病院から自分の家までの帰り道までもこなたはついてきてくれている
「何が?」
「ずっと見舞ってくれて、だよ。結局、こなた以外誰も団のメンバーは来なかったからな」
「まぁ良いんだヨ。元はわたしが原因だったんだからネ」
照れたように頭を撫でながらこなたは答えた
「そうか。今度こなたが入院するような事になったら、俺も毎日見舞ってやるからな」
「ありがと。けどま、入院するような事はないけどネ」
そう言って今日は分かれた
俺が退院してから初めての団活
入院している間は団活はなったらしい
モチロン俺は松葉杖をついての登場だったのだが、それにしてもみんなの反応が薄い
普通ならもっと驚いたり、松葉杖をいじったりすると思ったのだが、さも前から知っていたような感じでおれに接してくる
唯一、つかさだけが松葉杖を珍しそうに見ているが、ここまで普通にされると俺としても気味が悪くなってくる
「なぁ、俺が入院してた事知ってたのか?」
三人ずつの三組で行う不思議探索の時に俺はかがみとつかさに尋ねた
「もちろん、知ってたわよ」
なっ、知ってたなら見舞いに来てくれてもよかったではないか。冷たい奴らだな
「そりゃ、行きたかったわよ。けど、こなたが来ないで欲しいってね」
こなたが?
「そ、なんか『わたしの所為でこうなったんだから、みんなには迷惑かけたくない』とか意地張っちゃってわたし達に余計な心配かけたくなかったみたい」
「そうそう。こなちゃん、だいぶ責任感じてたからね」
アイスを食べているつかさはそういった
どうやら、俺が思っていた以上にこなたは責任を感じていたらしい
「で?こなたはどれくらい病院にいたの?」
アイスのコーンをも食べ終え、かがみは俺に尋ねた
「朝から晩まで、ずっと俺のそばにいたぞ」
「ずっと?……こなたの奴凄いわね。普通そこまで出来ないわよ」
それもそうだな。俺だったらそこまでは出来ない
「“普通”ならって言ったでしょ?つまり、こなたにとってアンタは普通じゃないって事よ」
普通じゃない?どういう意味だ?
「さすがアンタね……。乙女心は複雑なの、そう言うところ察してあげないと逃げてっちゃうわよ?」
いまいちかがみのいいたい事が分からない
「逃げるって何が?」
どうやら、つかさも分かってないらしい
「とりあえず、そこから察する事からはじめなさい」
そう言ってかがみはベンチから立ち上がり徐に歩き始めた
「待ってよお姉ちゃ~ん」
と、つかさもかがみの後を追って行った
かがみが言いたい事がいまいちわからないが、感謝の印も含めて今度こなたが行きたい所に行くとしよう
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最終更新:2008年10月01日 22:28