『神の気苦労』

神様の管轄する範囲と考えたことはありますか?
 神様が人を作ったとか、全ての自然現象は神様の思し召しだとかいう人もいます
 つまり、全ての理は神により成り立っていると考える場合もあります
 ですが、人が神様となった場合、その人が管轄する範囲はどうなるのでしょうか

 分かりにくくてすいません。別の例を出したいと思います
 数ヶ月前、東北地方で大地震が起きました
 考え方によったらこれは神様の思し召しと考える人もいます
 けど、それは神様がこの地球を見守る立場として起こしたときの場合です
 でしたら見守る立場ではなく、人間と一緒に行動を起こす立場だったらその地震は望まれて起きたものなのでしょうか

 以前、私たちSOS団新入りの四人に、涼宮さんを除く四人はある話をしました
 涼宮さんが神様であり、古泉さんは超能力者、長門さんは宇宙人、朝比奈さんは未来人であること
 最初は私たち四人も驚きと疑いがありましたが、後にそれは事実であると証明もされました
 そして、私は上のような考えになったのです

 放課後、私は古泉さんと向かい合い、チェスをしている最中にこんな話題を持ちかけてみました
「涼宮さんが神様として持ちうる権限は何処までのものなのでしょうか?」
 その問いに対して、古泉さんはニッコリと微笑み答えました
「どうでしょうか。ほぼ全ての事において決定権は持ってると思いますが」
 古泉さんは駒を置き、話を続けます
「全て涼宮さんの思い通りになるのなら、こんな世の中にはなってないと思いますよ」
 それはどういうことでしょうか?
「全て涼宮さんの望んだ事だとすると、今行われている戦争も、金融危機も、涼宮さんの望んだ事となってしまいます」
「それは……こう言ったら失礼かもしれませんが、涼宮さんが興味が無いからではないでしょうか?」
 そう言うと、古泉くんは暫く考え込み返事をします
「では例を変えましょう。涼宮さんは秀才です、あなたにも負けないほどに。ですが、テストで常に満点を取れるかといったらそうではありません」
 確かに、涼宮さんが常に満点を取りたいと思うのなら満点を取るはずです
 となると、涼宮さんは満点を取る事を望んでいないのですか?
「それは違います。点を取りたくないと思う人はいませんから。つまり、取りたいけど取るのは難しい。そう考えてるわけので思い通りにならないのです」
 だとすると、世界情勢のことも、良いほうに向って欲しいと思っているのですが無理だろうと考えてるというわけですか?
「そういうことになりますね。力を持っているのに、その力に気づいていないとそういうことになるものですよ」
 私は、駒を一つ置きチェックメイトを告げる
 古泉くんは参りました、と一言言って駒を直していく

「でしたら、涼宮さんに神様である事を告げたらどうなるのですか?」
 先程との会話で新たにできた疑問を述べる
「そうすると、あなた方も苦労をなさらずにすむのではないでしょうか?」
 質問に再び質問を重ねる
「そうかもしれません。けどそれを伝えると涼宮さんにはとてつもない重圧がかかってしまいますよ?」
 と言いますと、どういう意味でしょうか?
「言うなれば、ある女子高生が痴漢をされたとしましょう。ですがその捕まった人はやってないと公言しています。この場合、どうなりますか?」
「有罪になるよネ」
 私の隣で携帯ゲームをしていた泉さんがいきなり返事をしました
「その通りです。ですが、その人はペットボトルを持っていて、それが当たっただけかも知れない。という状況だったらどうしますか?」
 悩みどころですね。
「そう、どう判断を下したらいいのか分からない。その裁判官と同じような状況に涼宮さんはなってしまいます。しかも、世界規模での」
 確かにそうなります。それだと、涼宮さんも苦労が耐えかねますね
「はい。その苦労が重なって病気にでもなって亡くなられたりすると、この世界は神を失うのと同じです。ですので、この事を伝えずに涼宮さんには伸び伸びと暮らしてもらうわけです」
 それだと、古泉さんたちが苦労するのではないでしょうか
「そんなの、涼宮さんが自覚した後の苦労に比べると大した事ありませんよ」
 彼の笑顔が、彼が紳士であることを教えてくれる

「あなた方は物事が全て上手くいく世の中を楽しいと思いますか?」
 どういう意味ですか?
「涼宮さんに神であることを伝える、もしくはそれを自覚すると全て涼宮さんの思い通りになるわけです。そうなったら、人生は楽しいといえるのでしょうか?」
「そりゃ楽しいんじゃない?」
 泉さんがさも同然のように答える。ですが、私はそれとは違った回答をする
「私はそうは思いませんが……」
「そうです。物事は全て上手くいくわけではないから楽しい、苦労があるからこそ成功したときの幸せが大きいんです」
「それもそうだネ。苦労して苦労して、ようやくレバ剣を手に入れたときの嬉さったらもう……」
 泉さんはそう言って感傷に浸っているようです
 確かに、過程あっての結果ですし、そういった苦労も全て幸せの部分に入るわけですね
「簡単に成し遂げれることもあればそう上手くいかない場合もある。そのとき、人は苛立ったり、悲しんだりする。感情とは人特有の物ですよ」
 古泉さんはそう言って再びニッコリと笑う
「ですので、その苛立ちが主に涼宮さんの場合、閉鎖空間に神人を作るといった形で発散されるのですよ。これも、神が人であるが故の感情です」
 そういい終えると、廊下の方からタタタと足音が聞こえてくる
 一つではなく複数の
「では、この話はこれまでで」
 古泉さんはそう言ってチェスを再び私と一緒に始めた

「ゴメーン。遅くなっちゃった」
 ドアが大きく開けられる音と共に、涼宮さんたちが部室へと入ってきます
「やれやれ、そんなに強く開けるとドアが壊れちまうぞ」
「そん時は直すの頼んだわよ」
「はぁ?何で俺が」
「決まってるじゃない。あんたがSOS団団員一号だからよ」
「無茶苦茶だ……」
 涼宮さんの顔からは笑顔が汲み取れます
 キョンさんも嫌そうな顔をしながらも毎日足を運ぶあたり、楽しんでいるのではないでしょうか
 それにしても、お二人は本当にお似合いですね
 世界情勢だとか、そう言うのは置いといて今はこの時この瞬間を楽しんだ方がいいのかも知れませんね






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最終更新:2008年10月19日 07:30
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